介護業界にはどんな職種があるのか|業界の動向と課題などもあわせて紹介

介護業界にはどんな職種があるのか|業界の動向と課題などもあわせて紹介

「介護職の職場や会社はどんなところがあるのかな?」 「介護職にはどんな職種や資格があるのだろう?」 「介護職のやりがいってどんなことかな?」 このように、介護業界の仕事に就くことを考えている方にはたくさんの疑問があるのではないでしょうか。

高齢化社会が進む日本では、介護業界を取り巻く環境はどんどん変化していくため、介護技術を身につけるだけでなく様々な周辺知識を身につけておくのが望ましいでしょう。

この記事では介護業界の職場、職種、有名企業、年収、業界動向、有利な資格、やりがいなどについて解説しています。

この記事を読むことで、介護業界の状況や職場での業務内容、キャリアアップなどのイメージがつかみやすくなるでしょう。

介護業界で働くことを検討している方は、是非この記事を読んでみて下さい。

介護業界のメインは介護施設である

介護業界の職域は、介護に関わるという意味では幅広いですが、やはりメインは介護を行う現場である介護施設です。他には、地域の総合相談窓口としての機能を担う「地域包括支援センター」や福祉用具メーカーや業者、介護職員を育成する専門学校などが挙げられるでしょう。

介護施設は、大きく民間施設と介護保険施設に分けられます。

民間施設

民間施設は、民間企業が運営している介護施設です。

公的施設(介護保険施設)は地方自治体や社会福祉法人、医療法人などが国の補助金で運営しており、月々の費用を比較的安く設定することができます。

民間施設の場合、費用は公的施設より高い傾向がありますが、公的施設にはない設備やサービスが整っており各施設に特徴があります。そして、利用者が自分のニーズに合った施設、サービスを選択して利用することが可能です。

介護保険施設

介護保険施設とは、介護保険サービスで利用できる公的施設のことです。

特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)、介護老人保健施設、介護医療院、介護療養型医療施設の4種類があります。特別養護老人ホームは「特養(とくよう)」の呼称が一般的です。

介護療養型医療施設は2023年度で廃止予定となっており、その転換先として介護医療院が創設されました。

出典:介護療養型医療施設|厚生労働省 参照:https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000663474.pdf

介護業界にはどんな職種があるのか

一口に介護といっても例えばケアスタッフ、ホームヘルパー、介護補助、ケアマネージャー、生活相談員、施設長、介護事務、調理スタッフ、福祉用具専門相談員、介護ドライバーなど様々な職種があります。

ここでは介護業界の代表的な職種として、直接利用者に関わるケアスタッフ・介護職員、ホームヘルパー、介護補助・介護助手と、介護サービス全般の調整を行うケアマネージャーについて解説していきます。

ケアスタッフ・介護職員

ケアスタッフは、介護施設や病院、在宅などで介護サービスや生活全般にわたる支援サービスを行います。介護職員や介護スタッフと呼ばれることもあります。ケアスタッフの仕事は主に身体介護、生活援助、その他の支援、事務業務などです。

身体介護は、食事や排泄など生活動作の介護や見守りを行います。生活援助では洗濯、掃除、買い物など家事的なことを行い、直接利用者の身体には触れず生活の援助を行うものです。

その他の支援では、体操やレクリエーション、散歩の同行などがあります。施設ではこのようなサービスを行っていることが多いです。事務業務は、例えば介護記録や会議への参加などがあります。

ケアスタッフは未経験や無資格でもなることができますが、身体介護のサービスを行うには介護職員初任者研修以上の介護の専門資格が必要です。

ホームヘルパー

ホームヘルパーは、「自宅」で暮らす要介護者の生活の介護や援助を行います。介護保険上では「訪問介護員」と呼ばれており、ホームヘルパーが行うサービスは主に「身体介護」と「生活援助」、「外出支援などの移動介助」です。

身体介護は排泄、食事、着替え、入浴などの生活動作の介助です。生活援助は掃除、洗濯、調理、買い物などの家事の援助や、薬の受け取りなどがあります。外出支援などの移動介助は、例えば通院で利用者を車で送り、乗り降りや移動の介助、受診手続きの介助などを行います。

ホームヘルパーになるためには、「介護職員初任者研修課程」を受講・修了することが必要です。

介護補助・介護助手

「介護補助」は、「介護福祉士」などの資格を持つ介護スタッフのサポートを行う職種です。職場によっては、「介護助手」と呼ばれることもあります。「介護補助」という資格はなく、明確な定義はありません。一般的に資格のない介護スタッフ全般が「介護補助」と呼ばれています。

仕事内容も職場によって異なりますが、例えば食事の配膳やベッドメイキング、掃除、片付け、備品の準備、整理、利用者の見守り、話し相手などを行うことが多いです。

ケアマネージャー

ケアマネージャーは、利用者が適切な介護保険サービスを受けられるようにケアプラン(介護サービス計画書)を作成したり、サービス事業者との調整を行ったりします。

ケアマネージャーは、介護保険上は「介護支援専門員」という名称で、一般には「ケアマネ」と略して呼ばれています。

ケアマネージャーになるためには、指定業務を5年以上などの経験を有し、介護支援専門員実務研修受講試験に合格することが必要です。合格後、研修を受講・修了し、ケアマネージャーとして登録されます。

出典:介護支援専門員(ケアマネジャー) |厚生労働省 参照:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000114687.pdf

介護業界の有名企業を紹介!

介護業界の大手企業は全国規模で事業を展開しています。そのため、就職を考えるにあたり志望先となったり、他企業と比較したりする際の参考となる可能性が高いでしょう。

ここでは、有名企業を4社紹介します。

株式会社 ニチイ学館

株式会社ニチイ学館は、東京に本社を置き、社業の発展を通して豊かな人間生活の向上に貢献することを経営理念に掲げて事業を運営しています。

介護事業は「いつでもお客様目線」でサービス向上を目指し、全国約1,800拠点で展開されています。

株式会社ニチイ学館の採用サイト「きゃりあネット」では、「職種」、「勤務地」、「雇用形態」などから希望の仕事を調べることが可能です。

株式会社ベネッセスタイルケア

株式会社ベネッセスタイルケアは、東京に本社を置く社員数約18,000人の会社で、「自分や自分の家族がしてもらいたいサービスを提供する」という理念のもと事業を運営しています。

介護関連事業としては、入居型介護サービス、在宅介護サービス、研修・人材サービス、サービス付き高齢者向け住宅運営などがあります。

株式会社ベネッセスタイルケアが運営する「介護求人ナビ」は、全国の介護・福祉の求人情報を掲載している求人サイトです。

株式会社ツクイ

株式会社ツクイは、神奈川県に本社を置く従業員数約22,000人の会社です。

「地域に根付いた真心のこもったサービスを提供し、誠意ある行動で責任をもって、お客様と社会に貢献する」ことを理念に掲げ、デイサービス、在宅介護サービス、居住系介護サービスを展開しています。

株式会社ソラスト

株式会社ソラストは、東京に本社を置く従業員数約30,000人の会社です。「人とテクノロジーの融合により、安心して暮らせる地域社会を支え続ける」ことを企業理念に掲げています。

ソラストグループでは、「介護のお仕事相談窓口」のサイトで、専属コーディネーターが悩みや疑問をヒアリングして最適な仕事探しのサポートを行ってくれます。

介護職の年収はどれくらい?

厚生労働省が運営する職業情報提供サイトによると、令和3年度の施設介護員の平均年齢は43.8歳、平均労働時間は163時間、平均年収は352.8万円で、ホームヘルパーの平均年齢は46.8歳、平均労働時間は168時間、平均年収は364.1万円です。

出典:施設介護員|厚生労働省 参照:https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/134

出典:訪問介護員/ホームヘルパー|厚生労働省 参照:https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/133

介護業界の動向と課題

日本は少子高齢化が進行しており介護業界の問題は早急な取り組みが求められています。そのため、介護業界を取り巻く環境の変化も速く、適宜情報収集することが望ましいでしょう。

ここでは、介護業界の動向と課題について説明していきます。

人手不足

令和3年度の「介護労働実態調査」によれば、介護事業所全体における人材の過不足状況は、「大いに不足」が8.5%、「不足」が21.5%、「やや不足」が33.0%、「適当」が36.6%、「過剰」が0.4%となっています。

「不足感」の合計とみられる「大いに不足」、「不足」、「やや不足」を足した値は、前年を上回り63.0%となっています。職種別の不足感では「訪問介護員」が80.6%で最も高く、次いで「介護職員」が64.4%です。

令和3年度の訪問介護員と介護職員の合計の離職率は、14.3%です。離職率は平成19年をピークに低下傾向にあり、ピーク時の約2/3まで低下しています。

出典:令和3年度「介護労働実態調査」結果の概要について |公益財団法人 介護労働安定センター 参照:http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2022r01_chousa_kekka_gaiyou_0822.pdf

介護保険料の増加

内閣府によると介護給付は、平成12年度3.6兆円(実績)だったのが平成30年度は11.1兆円(予算)に増えています。それに伴い全国平均の介護保険料は、2,911円(平成12~14年度実績)だったのが、5,869円(平成30年度予算)に上昇しているのです。

今後も高齢化が進むにつれ介護保険料は上昇することが予想されており、地域包括ケアシステムの構築を図るとともに、介護保険制度の持続可能性の確保が必要となっています。

出典:介護保険制度の見直し|内閣府 参照:https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg1/310328/shiryou2-2.pdf

要介護者の増加

内閣府によると、介護保険制度での要介護者等(要介護または要支援の認定を受けた人)は、平成15年度末370.4万人から236.4万人増加して平成27年度末では606.8万人になっています。

また、要介護者等は、第1号被保険者の17.9%を占めています。

出典:第2節 高齢期の暮らしの動向(2)|内閣府 参照:https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/zenbun/s1_2_2.html

「子が親を介護する」という認識の変化

以前は、親の介護は子の義務のように捉えられていた風潮があり、施設に入れるのは子の義務を放棄したと周囲から見なされることもありました。

しかし、現代はほとんどが核家族で親と同居しておらず、介護しようにも状況的に困難なことがあります。また、以前なかった介護保険制度ができたことにより、介護保険サービス事業所が急激に増え、サービスを利用することが一般的となってきました。

今では義務感から介護を行っている人は少なく、自分たちでカバーしきれないところを事業所に任せているという人も多いです。

厚生労働省が始めた取り組み

介護業界の現状や課題に対して、厚生労働省では以下のような様々な取り組みを始めています。

・ICT化を進めることで事務作業等を効率化し介護サービスの充実を図る。また、ビッグデータを活用し介護サービスの質向上を図る。 ・介護未経験者の参入を促進するため、介護に関する入門的研修の実施を推進する。 ・人材育成や就労環境等の改善のため、「人材育成等に取り組む介護事業者の認証評価制度」の運営経費を支援する。 ・多様な働き方、柔軟な勤務形態ができるように「介護現場における多様な働き方導入モデル事業」を展開する。 ・「福祉人材確保重点期間」を設定し、介護の仕事の魅力発信などによる普及啓発活動を推進する。

外国人採用について

介護業界では現在、外国人の介護職員が増えてきています。事業所からは、外国人が働くことで職場が明るくなった、外国人への教育を通してサービスの質の見直しが図れたといった前向きな声があがっています。

外国人介護職員を雇用できる制度として以下の4つがあります。 ・EPA(経済連携協定)に基づく外国人介護福祉士候補者の雇用 ・日本の介護福祉士養成校を卒業した在留資格「介護」をもつ外国人の雇用 ・技能実習制度を活用した外国人(技能実習生)の雇用 ・在留資格「特定技能1号」をもつ外国人の雇用

介護業界で有利な資格とは?

介護業界で役立つ資格はたくさんありますが、ここでは代表的な「介護職員初任者研修」、「介護福祉士実務者研修」と「介護福祉士」の3つの資格を紹介します。

「介護職員初任者研修」では、介護の基礎的な知識や技術を身につけることができます。受験資格は特にありません。

「介護福祉士実務者研修」は、介護職員初任者研修の上位資格です。こちらも受験資格は特にありません。

「介護福祉士」は、介護資格のなかで唯一の国家資格です。介護職で働く方はこの資格取得を目指すとよいでしょう。資格取得ルートはたくさんあり、例えば「養成施設ルート」や「実務経験ルート」があります。

詳細は、公益財団法人社会福祉振興・試験センターのホームページで確認できます。

出典:介護福祉士国家試験|公益財団法人 社会福祉振興・試験センター 参照:https://www.sssc.or.jp/kaigo/shikaku/route.html

介護業界での仕事のやりがい

介護業界での仕事のやりがいは、「直接もらえる感謝の言葉が嬉しい」、「利用者の方の変化を実感できる」、「奥が深く学びが多い」といったことが挙げられます。

「感謝の言葉」は、現場であれば直接利用者の方やご家族から感謝の言葉を聞くことができて、その喜びは他には代えがたいものがあるでしょう。

「利用者の方の変化」では、介護によって利用者の方の生活動作がスムーズになったり表情が和やかになったりすれば、そのこと自体が喜ばしいことですし、仕事の達成感を感じることもできます。

「奥の深さ」に関しては、同じ利用者の方はいないため、それぞれの方に適したオンリーワンのサービスを追求して提供することができますし、様々な資格を取得してキャリアアップすることもできます。

介護業界について理解を深めよう

今後も日本の少子高齢化は進むとともに、国の施策は変更・追加されていくでしょう。それに伴い資格や仕事の内容、給料などの待遇も変わってきます。

介護の仕事は、夜勤や人手が足りないこと、昨今ではコロナ対応など大変な面もありますが、前述したような素晴らしいやりがいもあります。

仕事に就く方は、自分が何に魅力を感じやりたいと思うのか今一度考えるとともに、今後の介護業界の動向などにも気を配っておくとよいでしょう。

柴田貴司
監修者

明治大学院卒業後、就活メディア運営|自社メディア「就活市場」「Digmedia」「ベンチャー就活ナビ」などの運営を軸に、年間10万人の就活生の内定獲得をサポート

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