電子部品業界へ就職するなら知っておきたいこと|業界動向などを解説

電子部品業界へ就職するなら知っておきたいこと|業界動向などを解説

「電子部品業界の職種って?」 「就職を考える上で、電子部品業界の将来性はどうなんだろう?」 「どんな企業があるんだろう?」 このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

本記事では、電子部品業界の構造や半導体産業との違い、電子部品業界に分類される3つの職種、電子部品業界に見られる動向について説明していきます。また電子部品業界の主な企業や、就活生が読んでおきたい電子部品業界の研究に役立つ書籍もご紹介します。

この記事を読むことで、電子部品業界への理解が深まり、就活生として知っておくべき電子部品業界の特徴や、概要がつかみやすくなるでしょう。よってスムーズに就職活動を行うことができるようになります。

電子部品業界へ就職を考えている方は、ぜひこの記事をチェックしてみてください。

電子部品業界の構造とは

電子部品とは、スマートフォンやパソコン・車のカーナビなどの電子機器、冷蔵庫や洗濯機などの家電製品に使用される部品を広く指します。よって電子部品と一言で言っても、多種多様なものがあります。

電子部品業界の構造としては、多様な部品をすべて扱う総合企業が独占的に存在している状態ではありません。ある部品の分野はある企業が得意とし、別の分野は別の企業が強いというように、それぞれ特性のある多くの企業により構成されています。

電子部品業界と半導体産業との違い

半導体は電子部品の一種であり、「半導体・電子部品業界」のようにセットで一つの分類として使用されるケースが多く見られます。

一方で、「半導体産業」として大きな産業界を形成している面もあります。半導体集積回路の製造には、ごく小さい数ミリなどの範囲に複雑な回路を描き込む半導体製造装置が必要です。

この装置など設備を用意するには規模の大きな投資が必要であり、製品は世界的な市場に向けて作られていくからです。

また半導体の種類は違っても、装置を用いて半導体を製造する基本的な方法は同じであり、独自性が育まれにくい産業構造と言えます。この点が扱う電子部品によって各社特色のある、電子部品業界との違いと言えます。

電子部品業界に分類される3つの職種

電子部品業界の職種も一般的な企業と同じように、大きく分けて生産技術・研究開発・営業の3種類です。営業は、技術営業も含みます。ここからは、この3種の仕事内容について解説していきます。

1:生産技術

電子部品を生産するためには、相応の設備が必要です。安定した質と量で製品を生産するために、さまざまな製造技術を用いて設備を開発・導入し、調整していきます。これを担当するのが生産技術です。

また工場での在庫や生産量の管理を行う、生産管理と呼ばれる職種もあります。

2:研究開発

自社製品の研究開発を担う職種です。市場動向や他社製品などを研究し、求められる新製品の製作・自社既存品の改良等などを行います。これらには素材や技術の開発研究なども含まれます。

特に半導体などは専門性が高く、理系的な素養は必須です。また開発には試行錯誤がつきものであるため、忍耐力が必要とされるでしょう。

3:営業及び技術営業

営業は自社製品を他社に売り込む職種であり、高いコミュニケーション能力が必要です。また電子機器の海外展開のため、英語での会話など語学力が必要となることが多く、文系出身の人が営業に配属される傾向もあります。

しかし研究開発や生産技術の人達を相手取り営業していくため、自社製品を含めた電子機器自体への深い理解や、業界全体への広い見識、理系的な知見も必要です。

よって技術営業と呼ばれる、技術的な専門知識に基づいて営業を行う職種もあります。製品のセールスだけではなく、技術的な問題点への対応やサポートを行うこともあります。セールスエンジニアとも呼ばれ、エンジニアからの転身も少なくありません。

電子部品業界に見られる動向

電子部品業界に見られる動向を考えるためには、世界的なデジタル化の進展やカーボンニュートラルに向けた動きなども視野に入れる必要があります。以下で詳しく見てみましょう。

通信技術の発展に伴い電子部品需要が増加している

経済産業省は2021年6月に、「半導体・デジタル産業戦略」をとりまとめました。これは世界的デジタル化の進展やカーボンニュートラルに向けた動き、半導体需給、これらに関わる貿易や経済安全保障などの問題を踏まえたものです。

さまざまな機器やシステムなどがネットにつながるiotや、クラウド、テレワークなどのデジタル化の普及を可能としたのは、通信技術の発展です。通信インフラを支えるために必要とされる半導体や電子部品の需要は増加しています。

今後も継続的な市場拡大が見込まれる

世界的にすでに広く普及した、スマートフォンの需要は落ち着きを見せています。一方、カーボンニュートラル=脱炭素社会に向けた、EV=電気自動車や、自動運転などはまだ発展の余地が多く、自動車関連の電子部品需要は増加しています。

またスマートハウスやスマート家電、スマートシティなども普及途上です。前記のiotや、工場など生産設備の自動化も含め、電子部品業界は今後も継続的な市場拡大が見込まれています。

電子部品業界の主な企業

前記のように、電子部品業界は特性のある多くの企業により構成されています。その特性を踏まえて、電子部品大手8社を紹介します。強い分野や本社所在地、2022年3月期の売上高などについてです。

電子部品業界のビジネスモデルはBtoB、つまり企業間で行われる取引が基本であるため、一般消費者にはなじみのない企業も多くあります。しかしスマートフォンなどの電子機器は、これらの企業の電子部品なしには成立し得ないのです。

日本電産株式会社

日本電産は、精密モーターの大手です。本社は京都にあります。2022年3月期の売上高は1兆9千億円を超えております。

小型から大型のモーター、工作機械、機器装置、電子・光学部品など幅広く扱っています。モーターは医療・介護製品にも使われるため、高齢化が進む日本での需要増が見込まれるでしょう。

出典:2022年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)|日本電産株式会社 参照:https://www.nidec.com/-/media/www-nidec-com/ir/news/2022/0421-02/220421-02.pdf?rev=7bd08c84a9ed4ee185d4e148d951ad18&sc_lang=ja-JP

京セラ株式会社

京セラは、セラミック関連に強い電子部品大手企業です。本社は京都にあります。2022年3月期の売上高は、1兆8千億円を超えています。

情報通信や自動車、環境・エネルギー関連など、幅広い分野で多様な製品を提供しています。またスマートフォンでその名を知っている人も多いでしょう。

出典:京セラ株式会社 2022 年 3 月期 通期 決算説明会(2022 年 4 月 28 日開催) |京セラ株式会社 参照:https://www.kyocera.co.jp/ir/library/pdf/presentation/FY22_4Q_sp.pdf

TDK株式会社

TDKは磁気ヘッドなど磁性技術で世界を牽引する大手企業です。本社は東京にあります。2022年3月期の売上高は、1兆9千億円を超えています。

電子部品の小型化の技術力も高く、さまざまな電子機器の小型化が進む中で大きな強みと言えるでしょう。

出典: 2022年3月期 通期 決算説明会|TDK株式会社 参照:https://www.tdk.com/ja/ir/ir_events/conference/2022

株式会社村田製作所

株式会社村田製作所はセラミックコンデンサーに強い会社です。本社は京都にあります。2022年3月期の売上高は、1兆8千億円を超えています。

材料からの一貫生産体制により、信頼性の高い製品を生み出しています。コンデンサーはさまざまな電子機器に必須の部品です。スマートフォンには数百ものコンデンサーが搭載されています。

出典: 財務ハイライト|株式会社村田製作所 参照:https://corporate.murata.com/ja-jp/ir/financial/highlite

アルプスアルパイン株式会社

アルプスアルパインは電子部品事業と車載情報機器事業を中核とした企業です。本社は東京にあります。2022年3月期の売上高は、8千億円強です。

採用コンセプトとして失敗をおそれないこと、今でも大きな「町工場」であること、「NO」を言わない矜持、などを挙げています。

出典: 2022年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)|アルプスアルパイン株式会社 参照:https://www.alpsalpine.com/cms.media/ir_tanshin_2021con4_ja_7cc1800fe1.pdf

ミネベアミツミ株式会社

ミネベアミツミ株式会社は、極小軸受に強い会社です。本社所在地が京都や東京の企業が多い中、ミネベアミツミは長野県にあります。2022年3月期の売上高は、1兆1千億円を超えています。

自社の強みとして、「コア事業の強化」「ニッチ分野で多角化経営」などを挙げており、m&aの活用で製品拡大し、航空関連部品も手がけている会社です。

出典:決算説明会 2022年3月期 説明要旨 - ミネベアミツミ |ミネベアミツミ株式会社 参照:https://www.minebeamitsumi.com/corp/investors/disclosure/financial/p2022

オムロン株式会社

オムロンは制御機器の大手企業です。本社は京都にあります。2022年3月期の売上高は、7千億円台です。

血圧計や体温計などのヘルスケア製品でその名を知っている人も多いでしょう。工場の自動化=オートメーションを進めるリーディングカンパニーでもあります。

出典:2022年3月期 決算短信〔米国基準〕(連結) |オムロン株式会社 参照:https://www.omron.com/jp/ja/ir/irlib/pdfs/20220426_tanshin.pdf

株式会社キーエンス

株式会社キーエンスはFA用センサー大手です。本社は大阪にあります。2022年3月期の売上高は、7千億円台です。

FAとはファクトリー・オートメーションのことです。海外人件費の高騰や日本の少子高齢化により、難しくなっている労働力の確保のためにもFA化を必要としています。

出典: 2022年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)|株式会社キーエンス 参照:https://www.keyence.co.jp/pdf/tansin_2021_4Qfinal.pdf

就活生が読んでおきたい電子部品業界の研究に役立つ書籍

電子部品業界への就職を考えたとき、ネットで情報収集することは多いでしょう。確かにさまざまな、新しい情報を得ることはできます。

しかし一方で、似たような情報、断片的な情報のつぎはぎになってしまうこともあります。過去から未来へと時系列的に、あるいは世界的な視野から、業界動向を把握することは難しいでしょう。

その点書籍では、専門的な視点から俯瞰し、深掘りした知見を得られます。ここではそのような書籍を2冊紹介します。

電子部品 営業利益率20%のビジネスモデル

この記事では電子部品業界の構造として、「ある部品の分野はある企業が得意とし、別の分野は別の企業が強いというように、それぞれ特性のある多くの企業により構成されています」と記しました。

本著では、この構造について理解を深めることができるでしょう。強い会社は人と違うことをする(=競争しない)として、競争せず高収益をもたらす「ニッチ経営」=「良い寡占」のビジネスモデルを示しています。

前述の企業、キーエンスや村田製作所、日本電産などが紹介されています。

電子部品だけがなぜ強い

前記「電子部品 営業利益率20%のビジネスモデル」と同じ著者による本であり、出版はその前となっています。

各証券会社などで電子部品業界を担当してきたアナリストである著者が、日本の電子部品企業の成功事例などを取り上げながら、共通するのは他社と同じことをしない「天邪鬼経営」だと分析しています。

電子部品業界について知り就職を目指そう

電子部品業界は、さまざまな特性ある企業により構成される、魅力ある業界です。日本や世界のさまざまな需要に応え、課題を解決していく力のあるこの業界について知り、就職を目指してみてはいかがでしょうか。

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