人材派遣業界の現状や今後の見通しは?採用につながる志望動機のポイントも解説

人材派遣業界の現状や今後の見通しは?採用につながる志望動機のポイントも解説

「人材派遣業界ってどういう業界?」 「今後も需要がある業種なのだろうか?」 人材派遣業界について、このように考えたことはないでしょうか。

人材派遣業界と聞くと多くの人は「派遣」というイメージが1番に浮かぶでしょう。

本記事では、人材派遣業界とはどういった仕事内容なのか、派遣以外に取り扱っている仕事はどういうものか、事業展開の将来性について紹介しています。

この記事を読むことで、人材派遣業界がどういった仕事をするのか、知っておいた方が良いこと等をまとめて把握できます。

就職活動は、情報が不足したまま進めてしまい、思っていたものと実際が大きく違うと、採用されても悩まされるものです。その業界がどういった事業を展開しており、どのようなニーズに対応しているのか知ることは、就職活動する上でとても大事になります。

人材派遣業界が気になる方は、ぜひこの記事をチェックしてみてください。

人材派遣業界とは

人材派遣業界は、人材を派遣または紹介や斡旋を顧客企業に提案し、ニーズに応える業界です。いまや企業が直接求人広告を出すよりも、人材派遣会社が求人広告を出しているほうが多く見受けられます。

求人を出すなど、人員の確保には多くの時間と労力が必要です。企業によっては「今すぐ人材を確保したい」や「勤怠管理もお願いしたい」といったように、ニーズも大きく異なります。

では、人材派遣業界は、どのような事業展開して企業のニーズに答えているのでしょうか。人材派遣業界の業務実態や事業展開について紹介します。

人材派遣業界の現状

人材派遣業界は、主に人材派遣、人材紹介、業務委託、求人広告の4種類の事業を展開している業界です。

人材派遣の場合は一般事務職系のニーズが多く、アウトソーシングの場合には製造関連の業種にニーズが高い傾向があります。

また、研究や開発ができる専門的な人材を中心に派遣している人材派遣会社もあり、医療品メーカーの開発研究やIT業界に労働者を派遣しています。

企業の人材不足による需要拡大

日本は少子高齢化が進み、働ける人材の確保が企業にとって優先事項になりつつあります。

近年の動向は、転職に対する考え方の変化により転職市場も活発化され、アプリや採用サイトの普及で求人や採用も容易になりました。こうした背景により、人材派遣業界は市場を拡大し続けています。

飲食サービス業・宿泊業の派遣ニーズは減少傾向

かつては飲食業や宿泊業の人材採用ニーズが高かったですが、現在は減退してきています。

新型コロナウイルス感染症の影響により、外出自粛やイベント参加の自粛が続いたことで、飲食サービスや宿泊サービスの働き手の仕事が出来ない状況が続いたことが原因です。

飲食業は未経験から始めやすい業種でもあり、リーマンショック以降は増加傾向でした。しかし思いもよらぬ新型コロナウイルス感染症の蔓延により、人々の外出機会が減ったことで大きな痛手となっており、今後の行政改革等が求められている現状です。

医療・物流関係の派遣ニーズは増加傾向

新型コロナウイルス感染症の影響により、医療関係と物流関係の人材採用は増加傾向にあります。医療関係については、看護師等の働き手が元々不足しており、新型コロナウイルス感染症の影響による医療の逼迫が追い打ちをかけている状態です。

物流関係は、新型コロナウイルス感染症の影響により外出自粛が増え、インターネットを利用しての通信販売が浸透しました。しかしながら、それらを運搬する人は不足しており、物流関係の人材が需要に対して足りていない状況です。

外国人派遣労働者の増加

近年、外国人労働者を採用することによるメリットも多くあり、以前より採用の敷居は下がっていることから、外国人派遣労働者が増加しています。

その背景のひとつとして、日本政府による外国人留学生就職支援制度があります。日本に留学した外国人の就労を支援する団体機構も設立され、日本においての就労しやすい環境作りに取り組んでいます。

もうひとつの背景は、日本の超少子高齢化により働き手が減ったことから外国人を招き入れ就労してもらう取り組みを日本政府は実施しています。外国人にとっても日本の処遇の良さがマッチングしていることもあり、就労者が増加しているとも言われています。

働き方改革による影響

2020年4月に労働者派遣法が施行されたことで、企業内での正規雇用と非正規雇用の待遇是正を図る取り組みが進められています。結果として人材派遣業界の売上が増加している反面、人材派遣企業には多くの課題が生じる可能性もあります。

同一労働同一賃金や、同じ職場・部署においての有期雇用派遣社員が働ける期間は最大3年間と決められたことにより、派遣等の非正規労働者の待遇や給与面の改善が進むようになりました。

同一労働同一賃金は、非正規雇用者のモチベーションやスキルの向上が目指せる反面、派遣先の企業の負担が増えたことにより派遣先が縮小されるリスクもあります。

同じ職場・部署においての有期雇用派遣社員が働ける期間は最大3年間は、通称、派遣先3年ルールと呼ばれ、有期派遣社員として同じ企業・部署で3年以上働くことはできません。

企業側へ直接雇用してもらえるチャンスもありますが、契約が解除されたりする可能性もあります。

また、現在の問題として新型コロナウイルス感染症による働き方の多様化もあり、人材派遣業界の新しいニーズも高まっています。

インターネットを利用したリモートワークの普及等、デジタルトランスフォーメーションを活用した業務を臨む顧客企業も増加しており、柔軟に対応することが求められています。

人材派遣業界において、新制度導入についての理解や対応、社会のニーズに応じた変化に柔軟に対応していくことが求められるでしょう。

出典:同一労働同一賃金特集ページ|厚生労働省 URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html

人材派遣業界の展望

人材派遣業界は今後、どのような見通しなのでしょうか。現在はコロナ禍で、派遣先の企業の業績悪化による有効求人倍率は下がっていると言えます。しかし、コロナ対策も進んでいることから、このまま下がり続けるとは考えにくいでしょう。

長期的に少子高齢化問題が解消されない状況が続くことから、人材派遣業界には、まだまだ需要があります。ただし、人材派遣業界ならではの悩みや顧客企業の新しいニーズに応えられないと事業継続は難しいでしょう。

派遣スタッフの教育推進

2015年9月30日に施行されたキャリア形成支援制度の後押しもあり、派遣元にて有給かつ無償で一定時間の教育訓練計画の策定が義務となりました。

人材派遣業界において、人員が過剰になっている分野から人手不足の分野へスムーズに労働力を移行させることがポイントとなるため、職業訓練やスタッフの教育制度を強化していく必要があります。

今後はITや福祉、医療、物流といった分野において労働力の必要性が高まり、人材派遣会社は就業出来るための教育や人材確保が課題となるでしょう。

出典:キャリア形成支援|厚生労働省 URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/shokugyounouryoku/career_formation/index.html

営業利益率の改善が課題

人材派遣業の利益は、派遣先企業が支払う賃金の約30%を手数料として徴収し、残りの約70%を派遣社員の賃金とすることが一般的です。

人材派遣会社の手取り利益約30%からオフィスの賃料等の固定費、派遣スタッフの社会保険料等を支払うため、人材派遣業の利益率はわずかになります。市場規模は大きく売上高があっても、利益が極端に少ないという点が派遣業界の特徴です。

人材派遣会社の営業利益率はそれほど高くないため、事業の多角化や業務の効率化により利益率を伸ばすことが課題と言えるでしょう。

出典:派遣会社のマージン率等について|厚生労働省 URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00013.html

特定の業界に絞ったサービスの提供

人材派遣業界は幅広くニーズに応える会社が多いですが、ITや金融に特化した人材派遣に加え、農業など特定のジャンルに絞った人材派遣も増加しています。

また、50歳以上のシニア世代向けの人材紹介を希望する企業もあり、人材派遣業界が対応するサービスは多様化が進んでいると言えるでしょう。

事務職よりも専門職の派遣が増える可能性がある

一般事務職や飲食店勤務など、未経験でも就業出来る業種は減少傾向にありますが、医療や物流、ITといった専門的なスキルや実務経験が必要な業界は人手不足が続いています。

職業訓練を受けても即時に実務可能な業務スキルを得られるとは限りません。そのため、人手不足の業界は人手不足のまま、飽和状態の業界は溢れたままという二極的な状態になると予測されています。

人材派遣業界の職種

人材派遣業界では、どういった仕事の役割があるのでしょうか。会社の規模や特色によって違いはありますが、ここからは人材派遣業界によくみられる職種をご紹介しまします。

コーディネーター

コーディネーターは、求職者と求人者を仲介する役割があります。求職者の面接や希望する職種のヒアリング、仕事紹介を主にしますが、派遣社員との面談や事務手続き等の管理も行います。

コーディネーターは、キャリアコンサルタントという国家資格を狙うことも出来ます。資格を取得すると、より具体的なキャリアプランを提案できるようになり、自身のスキルアップにも繋がるでしょう。

ジョブカウンセラー

登録した派遣社員が、派遣先で業務内容や人間関係など困っていることがないかをヒアリングしサポートします。場合によっては派遣先企業へ相談するなど、派遣社員に寄り添う姿勢が大切になります。

スタッフ支援

スタッフとは登録した求職者のことで、登録の補助や研修なども実施し、登録者がスキルアップできるように補助することをスタッフ支援と言います。求職者がスキルアップすることで、紹介する企業側からの需要も高まるでしょう。

法人営業

人材派遣や紹介を活用した商材を企業向けに提案する業務です。

人材派遣は形のある商品を売るのではなく、クライアントの抱える課題やニーズををくみ取り、提案をします。大きく分けると、新たなクライアントを獲得する新規開拓や、既存クライアントに対し企画・提案を行うルート営業があります。

人材派遣業界に向いている人は?

人材派遣業界は、人と人を繋ぐサービスを提供する業界になります。人材を確保する際や、企業に派遣した派遣社員と顧客企業の間を取り持ったりなど、人と対応する機会が多くあります。

ここからは、実際にどういったスキルが適性を持つのかをご紹介します。

コミュニケーション能力がある

人材派遣業界は、人の技術力や能力を扱う業種です。そのため、人と接する機会が必然であり高いコミュニケーション能力が求められます。人に信頼される行動ができる人柄であることが重要視されるでしょう。

情報収集のためにアンテナを張っている

人材派遣業界は、その人のキャリアを企業に提供する働きをするため、双方に信頼してもらえる行動力が必要です。常に周囲の機微な変化に着目し、早めの対処ができるようにしていることも大切です。

トラブルに落ち着いて対応できる

人と人を繋ぐ職種であることから、誤解によるトラブルやクレームといったことが起こります。時には紹介者と求職者とのすれ違いによる関係の悪化もあるでしょう。

トラブルは早めに察知し未然に防ぐことがベストではありますが、起きてしまった際には冷静に対処ができる精神力が必要になります。

また、起きてしまったトラブルやクレームをいつまでも引きずらないことも大切です。今後のための反省は必要ですが、必要以上に気にしないように心掛けましょう。

人材派遣業界の志望動機や自己PRを考える時のポイント

志望動機や自己PRを考える時は、「なぜ人材派遣業界を志望するのか」「なぜその企業なのか」ということを自分の中で明確化しておかなければなりません。そのため、その業界の状況や業務形態、希望する企業について丹念に調べて把握しておくことが重要となります。

  • 業界研究を入念に行う
  • その企業を志望した理由を答えられるようにする
  • 柔軟な考え方ができることをアピールする
  • 採用後どのように貢献するか考えておく

業界研究を入念に行う

人材派遣業界を志望する場合、なぜ人材派遣企業を選んだのかをしっかりと明確化してくことが重要です。

人材派遣業界は、人と企業をマッチングさせるサポートするなど、顧客企業のニーズに寄り添ってサービスを提案する無形商材を取り扱う業種です。企業によって強みや提案している商材が異なりますので、事前によく調べておきましょう。

その企業を志望した理由を答えられるようにする

なぜその企業を志望したのか、具体的な理由を考えることは大切です。企業ごとに経営理念や得意としている強みは異なります。

多くの企業の中から、なぜその企業を選んだのかを明確に答えられるように、インターネットで調べたり企業訪問したりするなどして、事前に調べるようにしましょう。

柔軟な考え方ができることをアピールする

人材派遣業界は様々な人や企業に適応し、柔軟に対応できる能力が必要不可欠です。相手の条件や意見を受け止めつつ、自分の意見を通せるといった経験がある場合には活かせるでしょう。相手を納得させる話し方も大切になります。

採用後どのように貢献するか考えておく

就職希望する企業に採用された場合、その後の目標や自分がどうやってキャリアを築くのかを具体的に思い描いておくと良いでしょう。

そのため、企業や業種の情報をよく調査して、就職後に何をして活躍していきたいのかといった考えを具体的に持つことが大切です。

人材派遣業界の特徴について知っておこう

人材派遣業界は、無形商材を交渉するなど、人と円滑な関係を築くコミュニケーション能力が磨ける職種です。

就職先として人気が高い反面、就職を希望する企業がどういったビジネス展開しているのか把握しにくく、様々な情報をよく調べる必要があります。

人材派遣業界は、クライアントのニーズによって日々業務が多様化しています。本当に自分の希望に近い企業なのかなど、最新の情報をキャッチアップした上で就職活動に臨みましょう。

柴田貴司
監修者

明治大学院卒業後、就活メディア運営|自社メディア「就活市場」「Digmedia」「ベンチャー就活ナビ」などの運営を軸に、年間10万人の就活生の内定獲得をサポート

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