はじめに
就職活動をする際、資格を持っていたほうが有利であるとはよく聞く話です。
特にそのなかでも、簿記の資格について耳にする機会は多いでしょう。
就活に向けて取るべき資格の筆頭のように扱われがちな簿記ですが、本当に就職に必要な資格なのでしょうか。
この記事では、簿記とは何のために存在する資格なのか、簿記の資格が就職に与える影響や資格を取るメリットなどについて解説しています。
簿記の資格について知りたいという人は、ぜひ読んで資格取得と就活準備の参考にしてください。
簿記って何?
まずは簿記について、理解しておきましょう。
簿記とは、端的に言えば「お金やモノの動きを記録するための方法」です。
会社には、日々さまざまなモノやお金が出入りします。
その毎日行われる取り引きを帳簿と呼ばれるものに記入し、一定期間の最後、決算書にまとめるまでの作業が簿記です。
簿記にはざっくり分けると「単式簿記」と「複式簿記」の2種類があります。
単式簿記は、家計簿のように日付・項目とその詳細・入出金額・残高を記入する方式です。
複式簿記は、お金の出入りだけでなく商品や借金、利益などの増減も記入します。
この複式簿記の記録を使って作成されるのが決算書なのです。
したがって、資格を取得するうえで学ぶのは複式簿記の方法であると言えます。
簿記は難しいの?レベル別解説!
それでは、簿記の資格について見ていきましょう。
資格の中には1級、2級といったように等級が分かれているものもありますが、簿記にもそれはあるのでしょうか。
実は、簿記には初級・3級・2級・1級という4つの段階があります。
これらの等級によって、資格取得までの難易度や勉強にかかる期間などが変わってくるのです。
今回は、3級から1級までの3つのレベルについて詳細を解説します。
簿記資格のレベルについて理解し、実際に試験を受けてみましょう。
簿記3級
初級を除けば、もっとも簡単なのは簿記3級の資格です。
簿記3級は、簿記の基本的な知識などが問われ、比較的容易に取得できます。
簿記の基本原理をはじめ、各種取引の処理方法や決算書類の作成方法・株式の発行や剰余金の配当・純損益の繰越利益剰余金勘定への振替などが範囲に含まれているのが特徴です。
簿記3級の試験範囲は、小規模な株式会社での業務が想定されています。
簿記3級の場合、勉強にかかる平均的な時間は50〜100時間ほどです。
1日につき1時間勉強するとしたら3ヶ月前後、2時間であれば1ヶ月半ほどかかることになります。
試験にかかる時間は60分、正答率70%以上で合格です。
まずは簿記の基本の仕組みからじっくり理解したいという場合は、簿記3級の勉強から始めてみると良いでしょう。
簿記2級
簿記3級のすぐ上のレベルが簿記2級です。
簿記2級は「工業簿記」と「商業簿記」の2科目に分かれます。
商業簿記は、簿記3級でも学んだような商取引に関する簿記です。
簿記2級では経営管理などでも用いるような、財務諸表の見方がわかるようになります。
工業簿記は、製造業の工場などで利用される簿記です。
材料の仕入れや製造にかかる原価などのコストの計算が必要になるため、商業簿記よりも難易度が上がります。
2科目に分かれ、どちらもしっかり学ばなければならない分、簿記2級からはしっかり時間を割いて勉強していないければ、取得は難しいでしょう。
平均的な勉強時間としては、100〜200時間が目安です。
取得までには半年ほどかかると考えたほうが良いでしょう。
試験時間は90分、2科目合計で70点以上取れば合格できます。
簿記1級
簿記の資格試験でもっとも難しいのは簿記1級です。
簿記1級を取るまでともなると、大半の人は税理士や公認会計士を目指すようになります。
また、試験範囲がぐっと広がるのも特徴です。
簿記2級でも学んだ「工業簿記」「商業簿記」の2科目に加え、「会計学」や「原価計算」についても学ばなければなりません。
簿記の知識の応用はもちろん、法に関する知識の取得や理解も重要です。
難易度もかなり高くなるため、必要な勉強時間も長くなります。
平均的な勉強時間は500〜600時間で、年単位で勉強してから臨む人も存在する等級です。
試験時間は商業簿記と会計学で90分、工業簿記と原価計算で90分の合計180分になります。
1科目ごとに40%以上得点を取ったうえで、合計70点以上獲得すれば合格です。
簿記を取ったらどんなメリットがあるの?
今の時代「就活を始めるまでに簿記の資格をできるだけ取っておいたほうが良い」と言われています。
しかし、取るまでにそこそこ時間をかけて勉強しなければならない資格であることはたしかです。
一体、簿記の資格を取ることにどのようなメリットがあるのでしょうか。
簿記の資格を取ることで、就活やキャリア形成をするうえで3つのメリットが発生します。
自分がどのような職業を目指すかにより、必要な簿記資格のレベルも異なるため、それぞれどのようなメリットを得られるのか確認してみましょう。
就職に有利
まず、簿記の資格を取ることで一般的な企業への就活を有利に進められます。
それは、どの会社にも経理部が存在するためです。
経理部では、社内のお金や物品の出入りや流れを処理しています。
簿記の資格で得られる知識は、そのようなお金やものの出入りを記帳して管理するための専門知識であるため、この資格を取得しておけば就職で有利に働くのです。
また、取得するのに時間がかかり、努力が必要な資格であることも重要なポイントになります。
簿記資格を取るために勉強した経験は「学生時代に力を入れたこと」としてプラスのアピールに用いることが可能です。
ただし、「なんのためにその資格を取得したのか」というエピソードも求められるため注意しましょう。
通常の企業に入社して経理の仕事に就くだけならば、簿記2級まで取得しておけば充分業務をこなせます。
企業の経営状況がわかるようになる
次に、簿記の資格を取ることで企業の経営状況がわかるようになるというメリットがあげられます。
簿記について学ぶことで、財務諸表が読めるようになるためです。
財務諸表は、上場企業に提出が義務付けられている決算書の種類の1つで、株主や従業員など会社の利害関係者に経営状況を公開するために作成されます。
財務諸表を見ることで、企業が何によってどれだけ利益を出しているのかが把握できるのです。
そのため、就活前に簿記の資格を取っておくことで企業研究に役立てられます。
企業の現状や今後の戦略、経営者の意向などを読み取れるため、企業選びに活用できるほか、面接など選考での受け答えにも応用が可能です。
社会に出る前の段階からすでに利用できる資格であるため、取っておいて損はありません。
ほかの資格につながる
簿記の資格を取ることで、ほかの資格につながるというメリットもあります。
簿記1級の試験を受けるまでになると、税理士や公認会計士などを目指す人が多くなることについてはすでに触れました。
簿記1級の試験範囲には、単純に経理に携わるための知識だけでなく法律に関わる知識など、そういった専門性の高い資格に必要な知識や技術が含まれています。
そのため、ほかの資格を取るための足掛かりとしての役割が期待できるのです。
税理士や公認会計士は国家資格であるため、取得することで一生ものの技術にできます。
これらの道に進むのであれば、簿記1級相当の知識は当然持っていなくてはなりません。
自分のキャリアを確かなものとするためにも、簿記の資格を取ることは重要な意味があるのです。
おわりに
ここまで、簿記の資格に関する基本やレベルごとの難易度・勉強にかかる期間・資格取得のメリットなどを解説してきました。
簿記の資格は、就活の開始から就職、そしてさらなるキャリア形成など、人生の中でさまざまに役立つものです。
一般的な企業への就職を有利にしたいのであれば、簿記2級の取得までを目安に勉強すると良いでしょう。
もしも簿記1級まで取得することを考えるのであれば、税理士や公認会計士を視野に入れたほうがより高みを目指せます。
自分に必要なレベルを見極めて、ぜひ簿記の資格試験にチャレンジしてください。
明治大学院卒業後、就活メディア運営|自社メディア「就活市場」「Digmedia」「ベンチャー就活ナビ」などの運営を軸に、年間10万人の就活生の内定獲得をサポート