はじめに
今も昔も憧れの職業とされるアナウンサー。日常生活の中でもテレビでよく目にする華やかな職業であるため、アナウンサー就職は狭き門であると言われています。この記事では、他の業種の就活とは異なるアナウンサー就活について、どのようにすれば良いのか体験談を交えてまとめていきます。
アナウンサー就活とは
アナウンサー職は人気が高く、就職倍率1000倍以上とも言われる超難関です。
数少ない就職枠を求め、全国からハイレベルな就職希望者が集まります。その上、他の企業と比べて圧倒的に選考時期が早く、選考方法も特殊なものとなっているため、早めの対策が必須となります。
アナウンサー試験の時期
就活といえば、大学3年生の3月に情報解禁されて就活開始となる企業が一般的です。しかし、アナウンサー就活では、他業種よりも半年以上早い日程が組まれています。
大学3年生の春から夏にかけてセミナーが行われ、秋から冬にかけて本採用試験が番組放送の中心となるキー局(東京)、準キー局(大阪)で行われます。その後、名古屋、福岡、札幌、仙台と大都市から地方へと順番に拡大していきます。そして、大学4年生の秋から冬にかけてNHK契約のキャスターリポーターの募集があり、年明けに民放地方局の最後の募集があります。
局によっては系列キーのセミナー参加者を優遇するというケースも耳にするため、やはりキー局のセミナーから参加するべきでしょう。
年々早まる就活時期
アナウンサーは、本番の採用試験からの選考だけでなく、セミナーやインターンシップと言われる早期選考からも採用されることがあります。早期選考の中から数少ないアナウンサー枠が全て決まってしまうと、本採用がなくなってしまうこともあると言われています。
セミナーは、本採用と同じように書類選考や面接があります。絞られた人数の中で、原稿読みやフリートーク、カメラテストを行います。その中でも優れた人に上級のセミナーが用意されており、選考が進められます。
2018卒:大学3年 8月〜
2019卒:大学3年 7月〜
2020卒:大学3年 6月〜
2021卒:大学3年 5月中旬〜
2022卒:大学3年 5月〜
2023卒:大学3年 4月〜
ここ数年の開始時期を見ると年々早まっていることが分かります。最近では大学3年生の春頃から早期選考が始まっているようです。
2023年卒 キー局 試験日程
日程は年々早まっているため、直近の試験日程を参考にすると良いでしょう。
テレビ朝日(ANN系)セミナー 2021/5/7、本採用 2021/9/28
TBSテレビ(JNN系)セミナー 2021/5/6
テレビ東京(TXN系)セミナー 2021/9/30、本採用 2021/11/8
フジテレビ(FNN系)セミナー 2021/4/7、本採用 2021/10/4
2023年入社の日程を見ると、日テレとTBSは早期選考で全て決まっています。2022年入社も日テレは本採用がありませんでした。他のテレビ局でも早期選考で既に1枠埋まってしまったという話も聞きました。こう見ると、インターンがとても重要ということが分かります。
第一関門の書類選考
アナウンサー試験だけでなく、就職活動で必ず必要となってくる書類審査。まず、書類での審査が厳しく応募する学生の数も多いため、面接までなかなか進めない学生がたくさんいます。しかも、アナウンサー就活は大学3年生の早い段階で試験がスタートしてしまうため、大学2年生までに考えておかなければ手遅れになってしまうのです。
魅力が伝わるES
アナウンサー試験のESにおいて、ほぼマストで聞かれるのが次の5つの項目です。
②学生時代に頑張ったこと
③きっかけ
④志望理由
⑤将来どんな番組に出演したいか
「③きっかけ」はなりたいと思った動機なので「過去」のことです。「④志望理由」この業種が良いと思う理由であり「現在」の考えを聞かれています。 少し異なるものなので気をつけましょう。
また、テレビ局ということもあり「好きなテレビ番組」もよく聞かれます。
最近のESの形態としては、PC上に入力して提出するスタイルが多くなっています。しかし、テレビ朝日や地方局のいくつかでは、手書きのエントリーシートが用いられています。
また、ESでよく見られるとされているのが「素の姿が見えるかどうか」。素が見えることで親近感や説得力を持たせ、その人への興味をより一層引くことが出来ます。ESでは普段の様子や魅力を伝える意識が重要となります。まず、自分が自分自身のことを把握していなければ、面接官や人事の方に理解してもらうことは出来ません。特に、アナウンサーは莫大な数の初対面の人の前に出る仕事であるため、自分自身をよく知る必要があります。
相手に自分の魅力を最大限伝えられるよう、深い自己分析を行うことが大切となります。
あなたらしい写真
他の就職活動と最も異なる点がESに貼る写真です。他の業種では、証明写真やスーツでの写真を1枚貼ることが主流です。しかし、アナウンサー試験では「全身」「上半身」「顔写真」の3種類の写真を求められることが多いです。
スーツでの写真が禁止されているわけではありませんが、普段の雰囲気が伝わるような自然体な写真が好まれます。そのため、写真館で鮮明な写真を撮ってもらう人もいますが、緑の多い自然の中や街中での写真を用意する人もいます。服装は、男性であれば爽やかな雰囲気の私服や部活動のユニフォーム、女性であれば白ワンピースなど、あなたらしさが伝わるようにしましょう。
雰囲気が伝わる自己PR動画
ESと同様、必ずと言っても良いほど提出を求められるのが「自己PR動画」です。文章や写真では伝わりきらない、話す際の雰囲気や話し方が見られます。服装や撮影場所が決められているわけではないため、最も自由に表現することが出来ます。
身振り手振りを用いた説得力の増す話し方、内容に沿った格好や撮影場所、撮影方法などに工夫を凝らすことが可能です。提出までは撮り直しを何度も行えるため、入念な準備と練習でより良い動画を撮影するべきです。
アナウンサーになるための準備
アナウンサーになるために必要なことは、人間性、知性、学歴、容姿、コミュニケーションスキルなど数多く挙げられます。しかし、その中でも「視聴者に求められる魅力的な人間であるか」が重要です。大学生の間に多くの経験をすることで人間としての魅力を増したり、自分の魅力に気づくことが出来るでしょう。
また、競争倍率の高いアナウンサー試験の対策を専門学校に通うことで効率的に行うことが出来ます。アナウンススクールは、元アナウンサーの方などがアナウンススキルを徹底的に教えてくれるスクールです。アナウンサー志望の学生の多くは利用しており、アナウンサーになった人の9割はアナウンススクールに通った経験があると言われています。
アナウンススクール
アナウンススクールはアナウンススキルを学ぶことのできるアナウンス専門学校です。
学べることは、滑舌やイントネーション、発声・発音など声の仕事をする上での基礎。また、ニュース原稿の読み、スポーツ実況や災害現場からのリポート、写真や映像を見ながらコメントする発展的なスキル。フリートークや模擬面接練習、自己PR動画の撮り方などアナウンサー就活を細かく指導してくれます。
授業は、十数人の生徒が机を囲み、順番に1人ずつ文章や原稿を読みます。読みなどに対して講師の方が1人1人に講評を入れてくれるスタイルで行われています。
メリット
スキルを身につける以外にもたくさんのメリットがあります。
先生方はアナウンサー職などの経験を踏まえた上で親身に相談に乗ってくれるため、とても心強いでしょう。また、アナウンサー志望の友達やアナウンス試験を終えた先輩方とも出会えるため、1人就活になりません。キー局主催のスクールであればキャスターオーディションがあるため、アナウンサーという職業を学生のうちから経験することが出来るかもしれません。
スクールに通うことはお金と時間はかかってしまいますが、アナウンサー職内定への道がグッと近づきます。
主要なアナウンススクール
【キー局主宰のスクール】
・日テレ学院(日本テレビ)https://www.ntvg.jp
・テレビ朝日アスク(テレビ朝日)https://www.tv-asahi-ask.co.jp
・TBS Voice(TBSテレビ)https://www.tbs.co.jp/anatsu/school/
・アナトレ(フジテレビ)http://anatore.fujitv.co.jp
【NHK主宰のスクール】
・CTI日本語センタースクールhttps://www.nhk-cti.jp
【個人経営のスクール】
・東京アナウンスセミナーhttp://www.anasemi.jp
・SAEKIアナウンススクール https://saeki-announce.jp
・KEE’Sアナウンススクール https://www.kees-net.com
・若林健治アナウンススクール https://www.wakabayashi-sc.com
・メリディアンアナウンススクール https://www.meridian-announceschool.com
・山本勉強会 https://山本勉強会.com
・専門学校 東京アナウンス学院 https://www.tohogakuen.ac.jp/announce/
・生田教室(大阪)http://www.ikuta-ana.com
【事務所経営のスクール】
・セントフォースカレッジ https://college.centforce.com
・オスカーアナウンス学院 https://www.アナウンサー学校.com/005/ent79.html
・アクセント附属養成所シャイン http://shain-s.com
・エスオープロモーションのトークアカデミー http://www.so-pro.co.jp/academy.html
・Sankei Media Academy https://www.sankeipro.co.jp/plus/school.html
・オフィスキイワード アナウンススクール http://www.keyword.co.jp/school/
学生キャスターオーディション
キー局主催のアナウンススクールでは「学生キャスター」に応募することが出来ます。
学生キャスターは、BS番組やAbemaでのニュース読みやインタビュー、ラジオやイベントでのMCの仕事を行うことが出来ます。学生のうちからアナウンサー経験を積むことが出来るだけでなく、アナウンサー試験で有利になったり、推薦をしてもらえたりします。
日テレ学院には学生キャスター制度がない代わりに「イベントコンパニオン(イベコン)」に応募することが出来ます。イベコンに選ばれると、しゃべくり007の番組内でパネルを運ぶ役や日テレ主催のイベント受付などの仕事をもらうことが出来ます。
体験談
私は幼い頃からアナウンサーになりたいという夢を持ち、中学高校はアナウンサーを多く輩出している大学の附属に進学し、大学ではメディア関連を学べる学部に進学をしました。夢を追い続けていれば叶うと信じていました。
しかし、大学生になりアナウンススクールに通ってみると、アナウンサー志望の優秀な学生は五万と存在し、自分がいかにちっぽけな世界で過ごしてきたのかと現実を思い知りました。
早期選考であるセミナー募集が始まると、アナウンススクールで出来た友達と近況を報告し合いながら、東京キー局と大阪準キー局、地方局でインターンを行っているテレビ局など全20社ほどのテレビ局にESや動画を提出しました。先輩方も20社や30社を普通に出していたので、出来るのかなと何となく思っていました。しかし、テレビ局は特に質問事項が多く、特殊な内容の動画提出もあったため、想像以上に苦戦しました。時期によっては毎日のように提出に追われたりもしていました。
そして気付くと、東京キー局の本採用が始まっているという怒涛の流れでした。本採用の書類選考は、セミナーやインターンよりも多めに通過させているとよく聞きます。しかし、本採用を実施しないテレビ局があったり、早期で1人決まっていてあと1枠しか空いていないなどの事例もあります。やはり競争倍率は高く、自信を持って提出しても落とされてしまうことは多いということは肝に銘じておくべきだと思います。
私は最初の頃、セミナー募集でいくつか落ちてしまったことで心が折れそうになりました。しかし、倍率を見て「アナウンサー就活は宝くじのようなもの」と考えるようになってから、自分の気持ちを強く持つことが出来ていたように感じます。また、もしアナウンサーになれなかったとしても、競争倍率の高い就活を経験したこと、同期の中で早めに就活を始めていたこと、そしてアナウンススクールで学んだ多くのことは絶対に無駄にはなりません。アナウンサー就活は挑戦するだけでも価値ある経験だと私は思っています。
大切なこと
私がアナウンサー就活を経験して大切にするべきだと感じたことは、好奇心に従ってたくさんの経験を積むこと、そしてアナウンサーになりたいという強い気持ちを持ち続けることです。
私は大学3年生の11月まで学園祭の実行委員会に所属していたため、就活に専念する時間が限られていた上、ガクチカがなかなか固められずにいました。結果的に、私は3年間の経験により悔いを残すことなくガクチカも引き出せたため後悔はしていないのですが、アナウンサー就活を控えた学生は2年生までにガクチカを作り3年生はアナウンサー就活と授業に専念することをオススメします。大学2年生までに興味を持ったことには全て挑戦する勢いで、多くの経験に触れると共に多くの人と関わり合い、感性や人間性を豊かにしていくことが大切であると実感しました。
次に、アナウンサーになりたいという強い思いを持ち続けることが私は1番大切であると思います。人事や役員の方は、魅力溢れる人かどうかも見ていますが何よりこの仕事がしたいと強く思っている人が欲しいはずです。アナウンサー試験を受ける人は勿論みんなアナウンサーになりたいと思い試験に挑んでいます。その中で誰よりも強い思いを持ち、ESの文面や面接で気持ちを素直に伝えることがとても重要です。中学生の頃、授業でアナウンサーの方のお話を伺う機会がありました。そのアナウンサーの方は「倍率が高く途中で諦めてしまう人がたくさんいる。諦めずに頑張っていれば倍率は自然と落ちてくるので、アナウンサーという夢に近付くのだ」と教えて下さいました。絶対にアナウンサーになるという強い気持ちを諦めずに持ち続け、本番で自分の気持ちを率直に表現出来るよう頑張って欲しいです。
おわりに
アナウンサーは華やかで目立つ職種であるからこそ、競争倍率の高い超難関試験を乗り越える必要があります。
開始時期は早く、選考方法は他の職種で経験しないようなカメラテストなどが含まれる特殊なものとなっています。早めの万全な準備が不可欠となるのです。
しかし、挑戦する価値のある素晴らしい職種であるのでぜひ頑張って欲しいです!!
明治大学院卒業後、就活メディア運営|自社メディア「就活市場」「Digmedia」「ベンチャー就活ナビ」などの運営を軸に、年間10万人の就活生の内定獲得をサポート