はじめに
アセットマネジメント業界は、古くは新卒採用をおこなわない外資系なども多く、就活生には馴染みのある業界ではありませんでした。
ところが近年になって、積極的に新卒採用を実施する国内系企業なども増え、就活で認知されるとともに、人気が出はじめています。
その理由は、やはり金融業界ならではの好待遇ですが、それだけで飛びつくわけにもいきません。
はたしてアセットマネジメントの仕事内容は、どのようなものなのでしょうか。
【アセットマネジメント】そもそもアセットマネジメントとは?
そもそもアセットマネジメントが具体的にどのような業務をおこなっているか、よく知らない人のほうが多いでしょう。
アセットマネジメントという言葉は耳にすることも増えてきましたが、何か投資に関係する仕事という程度で、基本情報を知らずに応募するわけにはいきません。
名称から察するに、アセットは資産、マネジメントは管理や運用ですので、そのまま資産管理・資産運用が仕事だと理解するのは正解です。
資産に該当するのはヒト・モノ・金ですので、それらを有効に活用し、価値を生むのが主な業務といえます。
アセットマネジメントの意味
前述したとおり、アセットマネジメントは、アセット(資産)をマネジメント(管理・運用)するという意味です。
広義の意味では、資産所有者や投資家に代わって株式や債券、不動産といった金融資産の管理を代行する業務を意味します。
もともとは個人や企業の金融資産や不動産などのリスク資産を管理する業種として、金融業界で発展しました。
現在もそれは変わりませんが、昨今は活動の幅が広がり、道路や橋といった公共資産の運用にも、アセットマネジメントが適用されはじめています。
そうした意味では、金融業界すら飛び出し、現在は不動産業界、建設業界などにおいてもアセットマネジメントの仕事は広がっているといえるでしょう。
プロパティマネジメントとの違い
プロパティマネジメントは、主に個別の不動産の物理的な管理や賃借人との契約管理、賃料の回収などの管理業務を担う仕事です。
これに対し、アセットマネジメントは、不動産所有者・投資家の代理人としてポートフォリオ全体を管理し、プロパティマネジメントの選択や指示などをおこなう点が大きな違いです。
投資家に対し、その資産価値を最大化する責務を負っている存在であり、顧客が投資家という面でも、専門性や責任が重い仕事といえるでしょう。
ただアセットマネジメントとプロパティマネジメントで、どちらが上位の仕事だという話ではありません。
大きなプロジェクトなどでは両方の立場で別チームが協働することもありますが、目的は共有され、立場や見方を変えて協力し合います。
【アセットマネジメント】アセットマネジメントの仕事内容
それでは、アセットマネジメントの具体的な仕事内容をまとめていきましょう。
まず、顧客のバランスシートの、左側の資産の部の管理をおこない、その対価として報酬を受け取るのが、ビジネスモデルです。
顧客から資金を預かり、それを用いて顧客の代わりに運用をおこなうのが仕事で、個人業務ではなく、チームで取り組むのが一般的です。
役割としては、運用系と営業系の2つに大別され、運用系はフロントとミドルバックに、営業系はリテール業務と商品企画業務にわけることができます。
運用系
フロント
フロントの仕事も、さらに細分化されます。
アナリスト・・・個別企業を分析
エコノミスト・・・内外の経済状況を調査
クオンツアナリスト・・・数理モデルで資産価値を調査
当然ながら最終目的は運用益へ結びつけることであり、専門チームが資産クラスや運用手法ごとに組まれ、それぞれがわかれて自チームの作業にあたります。
アナリストは証券会社にも存在する職種ですが、証券会社にいるセルサイド(売り手側)アナリストと区別するため、バイサイド(買い手側)アナリストと呼ばれます。
セルサイドアナリストは幅広い投資家の収益に貢献するのが目的ですが、バイサイドアナリストは社内のファンドマネジャーに向けて作業し、ポートフォリオの収益に貢献するのが目的です。
ミドルバック
ミドルバックは、以下の業務に細分化されます。
トレーダー・・・ファンドマネジャーの発注に従って売買を執行
経理業務・・・ファンドが保有する資産の資金決済や時価算出、財務諸表の作成
どちらかというと事務的な作業が多く、海外とのコミュニケーションも非常に活発な業務です。
専門性が非常に高く、運用に関する法令や自主規制などルールに精通した人材が求められます。
営業系
リテール業務
リテール業務は、ファンドのマーケティングや個人投資家への対応をおこないます。
通常リテール業務といえば、銀行や証券会社など、金融機関が手がける小口業務を指します。
ただしアセットマネジメントでは、販売促進用資料を作成したり、債券や為替などのウィークリーレポートを作成したりといった資料や報告書の作成業務が主になります。
また、セミナーを個人投資家へおこなったり、販売会社向けにおこなったりするのも、営業系のリテール業務に含まれるのが特徴です。
商品企画業務
商品企画業務は、その名のとおり新しいファンド(商品)を作るのが仕事です。
ただしアセットマネジメントの場合、ゼロから商品をつくる組織ではないため、営業や機関投資家、証券や銀行などの販売会社からニーズを吸い上げ、新しい企画につなげるスキルが必要です。
つまり営業と運用を橋渡しし、いかに価値ある企画にまとめるかが手腕の見せどころといえます。
ただし商品企画業務の採用枠は、どの企業でもほかの運用や営業部署に比べてはるかに少ないため、かなり狭き門になることは否めません。
就活生がいきなり希望するには、ハードルの高い業務になります。
【アセットマネジメント】アセットマネジメントはどんな人が向いている?
それでは、アセットマネジメントがどのような仕事か理解が深まったところで、はたして自身にマッチするかどうかを深く考えてみましょう。
実際に現場ではどのような人が働き、活躍しているのでしょうか。
近年になって、比較的採用に前向きな姿勢を見せている業界ですが、採用活動が華々しくおこなわれる業界ではなく、情報収集はあまり容易ではありません。
各社の採用ページなどを読み解き、実際に働いている人の貴重な意見を集めながら検証していきましょう。
チームワーク力がある人
クライアントの資産を管理運用する責務は重く、あらゆる専門知識やスキルをもつ人員がチームとなってそれぞれの作業を実施するのがアセットマネジメントです。
そのため、チームワーク力が求められるのは当然のことですが、はたして仕事で求められるチームワーク力とはどのようなものでしょうか。
そもそもなぜ仕事でチームワークが必要とされるか、理由は、個人がバラバラに働くより、高い目標が達成できる期待があるからです。
仕事は個々人がおこなうものですが、それでもチームワークが発揮されている環境では、一人ひとりの強みが存分に活かされています。
互いに弱みを補い、資産価値を最大化する目標達成に向けて、自分の仕事ができる人がチームワーク力のある人です。
人に気を遣える人
仕事で人に気を遣えるというのは、相手に対し、失礼のないように配慮することができるという意味です。
依頼者あっての仕事ではとくにそうですが、常に相手の気分がよくなるよう、配慮して立ち居振る舞いができる人は向いているでしょう。
気遣い、心遣いというのは、相手の立場に立って物事を考えるということです。
仕事ができる気遣いの人は、まず相手の目を見て表情の変化を感じ取り、押し付けがましくなく、相手が求める言葉を発することができます。
常に周囲の状況を正しく判断し行動できるため、チームが全体で回るような行動ができるでしょう。
周囲が見えていることは、アセットマネジメントの仕事において、非常に高いポテンシャルにつながります。
金融の知識がある人
アセットマネジメントの仕事で難しいのは、顧客が投資家だという点です。
当然相手は幅広い知識をもち、専門的なことも理解したうえで、それ以上の成果を出せる相手をビジネスパートナーとして求めます。
つまり、その企業の顔として顧客に相対するなら、相手以上の専門知識や情報、スキルをもっていなければ信頼してもらえません。
投資家が、「この程度なら、わざわざ報酬を支払ってまで仕事を頼むほどの相手ではない」と判断してしまったら、依頼してくれることはないでしょう。
当然学生が社会人と同じ高い金融の知識を身につけるのは、そう簡単なことではありません。
ただし、いくらでもよいのでまずは自身で投資してみたほうがよいとよくいわれるように、金融に関する知識がまったくない状態で志望するのは、かなりハードルが高いことは間違いないでしょう。
【アセットマネジメント】アセットマネジメントの代表的な企業
国内系のアセットマネジメント企業がどのような事業をおこなっていて、どのような採用を考えているかを調べてみましょう。
ここでは大手企業3社に絞って、事業内容や求める人材などをまとめます。
野村アセットマネジメント
野村アセットマネジメントは、国内トップの証券会社グループである野村ホールディングス傘下の大手資産運用会社です。
「最高の付加価値の創造」、「高度な専門性の追求」、「信頼の獲得と社会への貢献」を3本の柱とし、世界で55.6兆円の運用資産残高を築いています。
国内公募投資信託シェアは27.9%とトップであり、国内ETF資産額シェアは45%と国内1位、世界5位の業績を納めます。
海外拠点数は13拠点あり、近年は海外進出も積極的におこなっているのが特徴です。
インベストメントマネジメント、マーケティング、ビジネスマネジメントの3つの職種を設けています。
アセットマネジメントOne
コーポレート・メッセージは「投資の力で 未来をはぐくむ」です。
2016年10月1日にDIAMアセットマネジメント株式会社、みずほ投信投資顧問株式会社、新光投信株式会社、みずほ信託銀行株式会社の資産運用部門の4社が統合し発足しました。
東京に本社を構え、海外にはロンドン、ニューヨーク、シンガポール、香港に100%出資の子会社を展開しています。
投資信託業務、投資顧問業務を主にビジネスとし、資産運用業務をおこなっています。
2019年9月末時点では、国内系第二位の運用資産残高を有していました。
運用会社と運用部門の4つが統合したため、ノウハウが集約され、ファンドマネジャーやエコノミストなど資産運用業務のプロフェッショナルが多く在籍しているのが特徴です。
大和アセットマネジメント
設立60周年にあたる2020年4月に、大和証券投資信託委託が大和アセットマネジメントに社名変更されました。
大和証券グループ傘下であり、投資信託にもっとも強みをもつ企業です。
2019年度末の運用資産残高は、15.9兆円となっています。
統廃合の多いアセットマネジメント業界においては、ほぼ単独のまま生き抜いて来ていることから、業界でも不動の地位を誇るといえるでしょう。
資産運用業界では、リーディングカンパニーであり、歴史をもつ投資信託の運用会社として、多くの商品を生み出してきた実績があります。
欧米やアジア、オセアニア、ラテンアメリカなど海外市場でもビジネス展開しています。
2015年には子育てサポート企業として、厚生労働大臣の認定「くるみん認定」も受けていることから、働きやすい環境も整えている企業です。
まとめ
近年、徐々に新卒採用枠も拡大しつつあるアセットマネジメント業界ですが、金融に関する知識や各種専門性も必要とされる業務のため、決して容易に採用が望める職種ではありません。
海外とのコミュニケーションが必須なため、語学力も必要になってきますし、クライアントと築きあげてきた信頼が重視されるため、社会人としての立ち居振る舞いや気遣いも求められます。
高収入が望めるため、就活生から注目されやすい業界ですが、より高度な人材が求められる傾向にあることは否めません。
目指すなら、業界研究や企業研究を徹底的におこなうことと、自分のお金でいくらでもいいから、まずは投資をしてみることもおすすめです。
明治大学院卒業後、就活メディア運営|自社メディア「就活市場」「Digmedia」「ベンチャー就活ナビ」などの運営を軸に、年間10万人の就活生の内定獲得をサポート