食品業界とは?仕組みや主な職種・業界の現状や今後の動向も詳しく紹介

食品業界とは?仕組みや主な職種・業界の現状や今後の動向も詳しく紹介

「食品業界って実際にどんな業界?」 「食品業界への就活を考えているけど、業界の現状や今後はどうなる?」 このように、食品業界について詳しく知らない方や、現状・今後の状況に不安を抱いている方は多いのではないでしょうか。

本記事では食品業界の基本的な情報から主な仕事、食品業界の現状や今後について紹介します。また、食品業界の代表的な企業についても紹介しています。

この記事を読むことで、食品業界とはどんな業界なのかや仕事の情報、食品業界が現状どうなっているのか、今後の動向などについて知ることができ、食品業界の主な企業の知識も得られるため、就活に役立てることができるでしょう。

食品業界への就活を考えている方は、ぜひこの記事をチェックしてみてください。

食品業界とは?

食品業界とは、いわゆる食品を開発・製造し、小売店等を通じて消費者に販売している業界のことです。

食品といってもその幅は広く、野菜や果物といった食品原料(食材)から砂糖や塩といった調味料、加工食品や冷凍食品、ビールをはじめとした酒類や清涼飲料水、飲料なども食品に含まれます。

人が生活していく上で、食事は毎日何度もする必要があります。そのことからも、食品業界は生活のために必要不可欠な業界の1つと言えるでしょう。

食品業界の仕組み

食品業界は食品原料の開発・製造から販売までと幅広い業界になっています。しかしその仕組みは、大きく3つに分けることができます。

食品原料(食材)である農産物や水産物、油などを製造する第一次産業と食品を卸したり海外から輸入したりする商社、そして食品原料を加工して食品として消費者に販売する食品メーカーです。

ここからは食品業界における、近年起こっている問題について紹介します。

輸入原料価格の高騰

2022年に入って、より円安が進んだことと原油高の影響によって、商社が輸入している原料価格が高騰を続けています。

商社の輸入価格が高騰しているということは、そこから食品を購入し、加工等をして消費者に販売する食品メーカーも価格高騰のあおりを受け、輸入食品の販売価格が高騰する事態を招いています。

またこの輸入原料価格の高騰の影響は、輸入食品に限った話ではありません。家畜の飼料を輸入していた場合はその飼料価格も高騰すること、農産物も原油高高騰の影響を受けることから、国内で製造される食品も高騰する事態となっています。

重要な課題は食の安全性

食品業界では、食の安全性を確保することを重要課題としています。農林水産省もそれは同様であり、平成30年度の改正食品衛生法の交付により、食の安全性を確保する衛生管理の手法「HACCP(ハサップ)」が令和3年6月より完全義務化されました。

HACCPは、先進国で多く用いられている衛生管理の手法です。HACCPでは食品の原料の製造や加工といったあらゆる工程ごとに危害要因分析をし、危害の防止について重要なポイントを定め、継続的に監視・記録しています。

出典:食品衛生法の改正について|厚生労働省 参照:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000197196.html

出典:食品企業の安全・信頼対策、標準化|農林水産省 参照:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/koudou/koudou_top.html

食品業界の主な仕事とは

食品業界というのは、食品の製造や開発から加工、消費者へ届けることまでを含む業界だと紹介してきました。そのため、食品業界といってもその仕事はかなり幅広くなります。

ここからは、食品業界の主な仕事について紹介します。

食品業界へ就活している場合は、食品業界に入って何をしたいのか、と聞かれることがあるでしょう。その時に食品業界にどのような仕事があって、自分は何の仕事をしたいのかしっかり答えることができれば、採用担当者に良い印象を与えられる可能性があります。

営業

食品業界においては、多くの場面で営業の仕事があります。たとえば食品製造者から食品卸会社への営業や、商社から食品メーカーへの営業、食品メーカーから小売店等への営業や、外食産業への営業などがあるでしょう。

営業の仕事というと販売することが目的のように感じる方も多いでしょう。しかし実際には、自社の食品を市場に幅広く提供するだけでなく、消費者のニーズや市場のトレンドをいち早く察知し、商品開発やマーケティングに活かせるようにするという役割も持っています。

研究・開発

食品業界では、常に食品の研究・開発が続けられています。研究・開発の仕事では新たな食品を開発するだけでなく、すでにある食品を研究し、不人気であれば人気がでるよう味を改良しマイナーチェンジするといった仕事もあります。

生産・品質管理

生産管理や品質管理といった仕事は、食品業界の課題である、食の安全性を確保する上で重要な仕事となります。

生産管理では、品質の保たれた食品を経済的に生産し続けるため、生産計画の立案や製造工程の調整といった仕事を行います。食品が必要な数、また高品質で製造できるように管理することが仕事です。

品質管理では、食品の品質が一定以上に保たれているかをチェックし、品質不良の食品を出さないようにすることが求められます。各種の工程での検査をはじめ、細菌検査や従業員の衛生管理なども行います。

マーケティング

食品業界では、消費者のニーズや市場のトレンドに沿った食品を販売する必要があります。そのために重要なのがマーケティングで、消費者のニーズや市場のトレンドを研究し、それに沿った食品を研究・開発、販売することです。

マーケティングでは営業からもたらされたデータの分析や、そういった市場調査結果からの商品の企画、新たな市場や販売チャネルの開発などが仕事となります。

消費者に求められている食品を迅速に生産し、販売することが求められるでしょう。

経営企画

食品業界における経営企画では、経営戦略や事業戦略を立案し、実行することが仕事となります。ただ、食品業界といっても幅広いため、企業によってどのような仕事になるのか変わるでしょう。

また、経営戦略や事業戦略の立案だけでなく、経営側と各部門との調整や広報、総務までが業務に含まれる場合があります。こちらもまた、各企業によって何が求められるかが変わるため、一概には言えません。

ただ経営企画の仕事ではコミュニケーション能力や提案力、論理的思考や分析力などが求められるでしょう。

人事・労務

食品業界でも、人材に関する人事や労務といった仕事はあります。人事・労務の仕事内容は他の業界とあまり変わらず、社員の管理が業務となるでしょう。

人事では具体的に、社員の募集や選考、面接を含む社員の募集の仕事や、研修の企画・実施といった社員の教育やトレーニング、人事制度の管理などを行います。労務では、社員の労働時間や休暇・給与や福利厚生などを管理する必要があるでしょう。

社員と接する仕事であるため、コミュニケーション能力やカウンセリング力が必要になります。

総務

総務は「会社の潤滑油」とも呼ばれ、食品業界の企業が行う事業活動全般をサポートすることが仕事です。そのため、仕事内容は広範囲で、多岐にわたるでしょう。

たとえば郵便物の管理といった仕事から、社員食堂や休憩室などの管理、備品の管理や会議室のスケジュール管理、事務所や工場といった施設の設備を管理したり防犯や防災の対策も講じたりする必要があります。株主総会をする場合は、その準備や運営も業務に含まれるでしょう。

総務では、コミュニケーション能力や判断力などが求められます。

経理

経理の仕事は、利益や資産を出すためにお金を管理することです。そのために取引で仕入れや販売に関する金額、経費の金額などを正しく数値化し、お金の流れがどうなっているのかを可視化します。

また、企業の事業活動に関する数値を出し、管理・分析することによって、現在どのような経営状況になっているのかを明らかにする役目も担っています。

食品業界の現状

食品業界で就活するならば、食品業界が現状どうなっているのか気になる方は多いのではないでしょうか。現在(2022年11月)でも世界的流行を続けている、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響も気になるところでしょう。

ここでは、食品業界の現状について紹介します。

成長傾向で推移

食品業界は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威をふるうまではゆるやかに成長傾向に推移していました。しかし感染者が増加した際に外食産業が休業や時短営業を求められたことにより、とくに外食産業に関して大きく落ち込んだことは事実でしょう。

ただ、2022年になって経済活動が再び活発に動き出したこと、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が一段落したと見られたことから、製造・食品卸し・飲食業などは持ち直してきています。今後も、成長傾向で推移していくものと見られています。

健康食品の分野が注目されている

健康食品は、近年もともと注目されていた分野ではありました。そこへ新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の爆発的な感染拡大を受け、消費者の健康食品に対するニーズがいっきに高まったのです。

2022年現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の状況が落ち着くと共に健康食品への注目度も少し下がったものの、いまだ不安に感じる方は少なくないため、健康食品への注目は続いています。今後も、健康食品の市場は継続していくものと見られています。

海外に目を向ける企業の増加

食品業界は現在、成長の落ち着いた国内よりも、成長力のある海外に目を向ける企業が増えています。これは、日本の成長率や食品の価格改定のしにくさなどが要因とされています。

日本国内では少子高齢化の影響が大きく、経済成長率もあまり高くありません。そして食品の価格改定が受け入れられにくく、何度も価格改定を繰り返すことが難しいという問題があります。そのため、経済成長率が高く価格改定のしやすい海外へ、目を向ける企業が増えているのです。

食品業界の今後は?

人が生活していく上で、食事は必要なことです。そのため食品に関する業界は今後もなくなる心配はないとされ、就活市場でも人気の業界の1つとなっています。しかし、社会情勢や消費者のニーズに影響を受けることはあるでしょう。

ここからは、食品業界が今後どうなっていくのか、中長期的な展望や注目が集まると予想される食品、ECマーケットやD2Cなどについて紹介します。

中長期的には業界全体の需要は減少

食品業界は人が口に入れる食べ物や飲み物を製造や加工し、販売しています。そのため、食品業界の今後を予想する上では、人口変化の影響を無視することはできません。

日本国内においては、長年少子化であると言われ続けてきました。現在も少子高齢化が進んでいるため、将来的に人口は段々と減り、若い方よりも高齢者の数が増えていくことが予想されています。

こういった影響から、とくに国内の食品業界では、中長期的に業界全体の需要が減少し、業界は縮小すると予想されています。

さらに注目が高まる健康食・介護食

業界全体の需要は減少するとしても、その中で注目株となっているのが健康食・介護食の分野です。世界的な感染症の流行や少子高齢化で高齢者が増えることにより、健康的な食事や介護のための食事の需要はさらに増えていくことでしょう。

他には、高齢者の数が増えることから、一人暮らしの高齢者向けの食品の配送サービスの需要も増えると予想されています。介護食のことも含めると、今後はより、調理済み食品の需要が高まっていくでしょう。

SDGsへの取り組み

SDGs(Sustainable Development Goals)というのは、2030年までの持続可能な、より良い世界を目指すための開発目標のことです。食品業界においては、食品ロスの削減や環境への配慮といった取り組みが行われています。

日本国内において、消費期限を過ぎた食品あるいは消費期限の近い食品の廃棄が多いことは、よく知られていることでしょう。食品業界は、2030年までに食品ロスを半減(2000年度比)させることを目標にしています。

環境への配慮に関しては、プラスチックの容器から紙でできたパッケージや捨てない飲料容器等の開発、普及が進んでいるのが現状です。

出典:食品ロス削減に向けて|農林水産省 参照:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/ryutu/attach/pdf/buturyu-27.pdf

同業他社との合併・業務提携

食品業界では中長期的に業界全体が縮小すると予想されているため、同業他社との合併や業務提携が積極的に行われています。合併や業務提携をする目的は、同業他社との合併・業務提携により生産性を向上させること、ビジネスを多角化させることにあるでしょう。

ECマーケットの拡大

現代ではECマーケットを利用して買い物する方が増えています。食品についてもECマーケットを利用する方は増えていましたが、近年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、外出を避けるためにさらにECマーケットで食品を購入する方が増えました。

令和2年度の「産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、食品・飲料・酒類(BtoC-EC) の市場規模は前年比21.13%となっています。EC化率は3.31%であり、けして高い数値とは言えませんが、この数値はこれからも拡大していくと予想されています。

出典:令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)|経済産業省 参照:https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/210730_new_hokokusho.pdf

産地直送販売

食の安全という観点から、誰がどんな場所で作った食材なのかを気にする方が増えています。スーパー等でも、食材のところに生産者の情報が表示されているのを見たことがある方は多いのではないでしょうか。

こういった消費者のニーズにより、インターネットを通じて生産者から直接食材を購入できる産地直送販売のサービスが普及し、利用者が増えてきました。インターネットを使った産地直送販売は、これからも利用が増えるとされています。

D2C

D2C(Direct to Consumer)は企業が開発・製造した商品を、消費者に直接販売する方式のことです。アパレルや美容業界でトレンドのD2Cですが、食品業界でも注目を集めてきています。

食品業界でもD2Cがトレンドになったのは、通販業者を挟まず利益が増やせることや、マーケティングやキャンペーンの自由度が高いことなどが理由でしょう。

その反面、顧客獲得が最初は難しいため、なかなか売り上げが軌道に乗らないといった問題はありますが、今後もD2Cは拡大していくと予想されています。

食品業界の企業紹介

食品業界は事業の範囲が広く、食品に関わる企業が多数存在しています。ここでは、その中から代表的な企業を紹介します。

サントリーグループやキリン、明治グループや味の素、森永乳業はいずれも日本で名の知れた大企業です。食品業界でも大手のこれらの企業の情報を、しっかり押さえておきましょう。

サントリーグループ

サントリーグループは飲料や酒類、健康食品から外食や花、ゴルフ場やリゾートレストランの運営委託まで行うリーディングカンパニーです。

食品に関する事業だけでなく花苗や野菜苗、切花の開発・生産・販売を手掛けることや、外食ビジネスの展開など食品業界で幅広く事業を行っています。

日本国内だけでなく、中国をはじめとしたアジア圏、アメリカやメキシコなどでの事業展開も手掛けているため、海外事業に携わりたい方におすすめです。

キリン

キリンといえば、キリンビールを思い浮かべる方も多いでしょう。キリンは、食品業界の中でも主に飲料事業をメインとしている大企業です。キリンでおなじみのビールをはじめとした酒類、午後の紅茶等のソフトドリンクや乳製品、健康食品の開発・製造・販売等を行っています。

基本的に飲料に特化している大企業であるため、飲料関係の開発や製造、販売に携わりたい方に向いているでしょう。

明治グループ

明治グループといえばお菓子を思い浮かべる方も多いでしょうが、実際にはおかしやアイスだけでなく、乳製品や飲料、乳児・幼児用商品やスポーツ栄養、美容・健康や栄養食品・流動食といった多くの食品を取り扱っている大企業です。

粉ミルク等の乳児用食品から、高齢者向けの流動食といったように、幅広い食品を扱っていることが特徴でしょう。様々な食品の開発・製造・販売に関わりたい方に向いています。

味の素

味の素といえば、味の素という調味料が有名です。実際に味の素をはじめとした調味料を多数製造・販売している他、加工食品やアミノ酸含有食品、栄養ケア食品や冷凍食品・食用油、飲料など多くの商品を手掛けています。

味の素グループはアミノ酸の働きによる「食と健康の課題解決企業」を目指しているということで、とくに健康に注目している企業であることが分かるでしょう。

医療や健康や美容といった業界でも活躍していること、海外展開にも力を入れていることから、食品だけでなく幅広い分野に興味のある方、海外で活躍したい方等に向いています。

森永乳業

森永乳業は、乳製品の製造を主たる事業目的として設立された企業です。現在でも乳製品に強いですが、他に飲料やデザート、アイスや育児用食品、ヘルスケア・健康食品から流動食・介護食まで幅広い事業展開を行っています。

乳製品関係をはじめとした開発や研究も盛んで、論文・学会発表も積極的に行っている企業です。近年では健康食品や高齢者向けの食品にも注力していることから、乳製品やそれらに興味のある方に向いている企業でしょう。

食品業界について理解を深めよう

食品業界について、詳しく紹介してきました。食品業界といっても事業の幅がかなり広いことから、就活においては業界の仕組みや、どのような仕事があるのかを押さえておくことが大切です。

食品業界が置かれている現状や、今後の展望についても理解を深め、自分がどういう形で活躍したいのかをアピールしていきましょう。

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