はじめに
保険業界は、人々の生活には欠かせない保険というサービスを提供し、社会的信頼性の高いイメージのある業種です。
学生に人気のある業種の一つでもあり、内定を獲得するために、業界研究に力を入れている就活生も少なくありません。
保険業界は、ほかの業界と異なる面がたくさんあります。
保険業界に身を置く企業は、独自の仕組みを構築し、事業を展開しています。
保険業界の取り巻く状況やトレンドにも特徴があるため、業界研究をして、どんな人材が必要とされているかを発見することが求められるのです。
ここでは、業務研究の必要性や企業研究との違いを明らかにするとともに、保険業界の業務研究について、必要な情報を提供します。
業界研究はなぜ必要?
業界研究とはその名の通り、特定の業界について研究することです。
業界の実態を調べることで、業界に対して正しいイメージを持つと同時に、企業選択に役立てることが業界研究の目的です。
業界研究では、業界の現状(市場規模やトレンドなど)について情報を収集し、業界の全体像を把握しすることからはじまります。
次に業界属する企業や、業界内でのシェアの割合・平均利益率など、業界内の企業について調べます。
他業界の企業でも、業界内に関連していれば、その企業についてもチェックしておくと、より理解が深まるでしょう。
最後に調べるのは、業界の将来性についてです。
市場は常に変動するもので、それに合わせて業界の将来性も変化します。
業界の将来を自分で予測するのではなく、業界の変化や、今後力を入れると考えられるサービスなどに言及している情報を収集します。
予測なので必ずその通りになるとは限りませんが、就職を見極める、判断材料の一つとなるでしょう。
企業研究とは何が違うの?
業界研究のほかに、企業研究と呼ばれるものがありますが、業界全体を調査する業界研究と異なり、企業研究は個別の企業に対して理解を深めることが目的です。
業界研究は、その業界を理解し、企業選択に役立てますが、企業研究はその企業を知ることで、その企業に就職するかどうか選択したり、面接対策の方向性を決めたりします。
企業研究で調べる主なことは、会社の概要(代表者名や上場区分など)、事業内容、考え方(企業理念や社風など)、将来性、売上高、競合企業などです。
企業研究は業界研究よりもより細部にわたって調べるため、その内容は多岐にわたります。
業界研究と企業研究にはそれぞれ特徴がありますが、業界研究で知識をつけたことで、企業研究がスムーズに行くというように、完全に独立した存在というわけではありません。
業界研究で全体像を把握し、企業研究で特定の企業について理解を深めるという流れが理想的です。
【保険業界】業界研究のやり方・研究の例
業界研究のやり方には絶対という方法はありませんが、研究を成功させるポイントは、志望する業界に対する理解を深めるために、情報収集することです。
具体的には業界団体のホームページや、業界に関する書籍、専門誌、それから毎日報道されるニュースや新聞も、情報ソースとして役に立ちます。
こうした情報について毎日目を通すことで情報が蓄積されていき、業界への理解が徐々に深まります。
保険業界の研究についても、同じように進めていけば問題ありません。
保険業界の業界研究例を挙げておきますので、研究する際の参考にしてください。
【保険業界】①保険業界の概要と現状
保険にはいくつか種類があり、よく知られている生命保険や死亡保険は、「第1分野の保険」と呼ばれています。
交通事故や災害、盗難などに備えた保険には、自動車保険や火災保険などがありますが、これらの保険は「第2分野の保険」になります。
がん保険や介護保険など、医療分野にはいくつかの保険が登場していますが、第1分野の保険と第2分野の保険の中間的な存在の保険は、「第3分野の保険」に分類されます。
生命保険会社が取り扱うのは、第1分野の保険と第3分野の保険です。
第2分野の保険は損害保険会社が手掛けています。
外資系生命保険会社の参入や少子高齢化、ライフスタイルの多様化、インターネットの普及などを受け、保険業界は大きな転換期に差し掛かっていると言えます。
以前はなかった「第3分野の保険」誕生も、時代を反映しています。
第3分野の保険は契約件数を伸ばしていることから、多くの人が老後や病気の備えに興味を持っていると考えられるでしょう。
【保険業界】市場規模
日本は保険大国と呼ばれ、生命保険の市場規模は約40兆円と、アメリカに次いで世界第2位です。
生命保険の世帯加入率を見ると、9割近くにのぼります。
つまり、10世帯のうち9世帯は生命保険に加入しているという計算になります。
損害保険の市場規模はおよそ8億円と、生命保険に比べ小さいものの、2011年に発生した、東日本大震災後順調に市場規模を拡大させています。
地震保険は火災保険に特約として付帯されている保険ですが、震災発生以降地震保険の付帯率が伸び、2016年には62.1%に上昇しました。
生命保険の加入率の高さや少子高齢化から、新規顧客獲得が難しいという課題は残りますが、第3分野の保険の登場など、時代のニーズに合わせた商品やサービスを開発することで、新たな市場開拓が可能です。
【保険業界】現在のトレンドとなっている事柄
従来の生命保険では、営業マンが足繁く顧客のもとに通い、心を通じあわせて契約するというのが定番でしたが、テクノロジーの普及で、「わかりやすさ」「利用しやすさ」をアピールした営業が主流になりつつあります。
具体的にはネット保険や、特定の分野にアピールした保険商品の登場などが挙げられます。
「健康寿命」という意識の高まりが国民の間に広まり、健康リスクに備えた保険商品の開発が進み、年齢ではなく、健康年齢によって保険料に差をつける動きも出てきました。
「健康増進型保険」と呼ばれる商品がその例です。
外資系の保険会社が、日本のマーケットに参入し、そのうちの何社かは知名度を上げ、シェアを伸ばしています。
外国系保険会社の生命保険は、単品で販売されていることが多く、保険料も安く明瞭、ということが魅力として挙げられます。
日本の生命保険はどちらかというと、いくつかの保障を組み合わせたものが多く、人によっては選びにくいと感じることもあります。
【保険業界】どのような事業を行っているか
保険業界の主な事業は、保険商品の開発と販売です。
「保険外交員」「生保レディ」などという言葉が誕生しましたが、保険業界は営業が主流で、保険業界のでの就職は、営業職に就くと言っても過言ではありません。
と言っても営業だけが業務ではなく、ファイナンシャルプランナーやライフコンサルタントという職種があるように、販売事業のほかにもいくつかの業務を行っています。
生命保険と人々のライフスタイルは、切っても切れない関係で、生命保険加入の際に、必ずと言って良いほど話題になるのは、家計や将来必要となるお金のことです。
そうしたライフプランの相談に応じるため、ファイナンシャルプランナーや、ライフコンサルタントを在籍させている保険会社も少なくありません。
【保険業界】②保険業界の主な企業や企業に関する情報
保険業界には、業界を代表する大手企業が複数あります。
それらの企業について情報を収集することで、保険業界全体の特徴や動向を把握し、競合同士を比較することが可能です。
保険業界の企業について調べる際、「主な企業」「関連する業界」「保険業界内でのシェア率」「平均利益率」にポイントを絞って情報を収集すると、把握しやすくなります。
【保険業界】主な企業
保険業界の中でも、大手と呼ばれる日本の生命保険会社は、「かんぽ生命保険」「明治安田生命保険」「日本生命保険」「住友生命保険」「第一生命保険」があります。
どの生命会社も古い歴史を持ち、年間の売上高が2~6兆円という、巨大な企業です。
純資産も軽く1兆円を超え、中には総資産が80兆円に迫る会社もあります。
国内で大手と呼ばれている損害保険会社は、「東京海上日動火災保険」「損保ジャパン日本興亜」「三井住友海上火災保険」「あいおいニッセイ同和損害保険」の4社で、それぞれ「3メガ損保」(「東京海上ホールディングスグループ」「SOMPOホールディングスグループ」「MS&ADインシュアランスグループ」)の傘下にあり、安定した成長を続けています。
日本市場で活躍する外資系やネット系生命保険会社は、無視できない存在です。
ネット系生命保険会社と言えば、「ライフネット生命」が有名ですし、「アフラック生命」「アリアンツ生命保険株式会社」「チューリッヒ保険会社」「エヌエヌ生命保険株式会社」など、保険業界は、数多くの企業でひしめき合っています。
【保険業界】関連する業界
インターネットの広まりを受け、IT技術を導入して生命保険商品を販売する生命保険会社が増えています。
これにより、これまでにないインターネットサービスが登場したほか、システムやソフト、アプリの開発、ニーズに合わせた保険商品の短期開発などが可能になりました。
都市銀行の中には、窓口で生命保険商品の相談を受け付けているところがあります。
都市銀行の窓口で生命保険について相談する人も多く、生命保険会社にとっては、重要な販路となっています。
介護に関する保険商品を取り扱っている保険会社は多く、その流れで介護・福祉サービスに乗り出すところもあります。
介護サービスを提供しながら、希望であれば高齢者に介護保険商品を提案しています。
【保険業界】保険業界内でのシェア率
保険業界内でのシェア率(2017年度)は、かんぽ生命が全体の14%を占め、安田生命や第一生命など、「伝統的生保」と呼ばれる生命保険会社のシェア率は、49%となっています。
外資系の生命保険会社は25%、損保系の保険会社は9%、そして楽天生命やソニー生命など「異業種系生保」のシェア率は4%でした。
【保険業界】平均利益率
利益率は、売上高に対して利益がどのくらいあるかを示した比率のことです。
利益率は会社が利益を上げているかどうかの指標となり、経常利益(会社の利益)率は、経常利益を売上高で割り、100をかけて算出されます。
生命保険会社上位3社の平均利益率(2018-2019)は、3.8%で、損害保険会社上位3社の平均利益率(2018-2019)は、7.4%です。
全産業の平均経常利益は3.5%と言われていますので、保険業界の平均利益率は高めと言えるでしょう。
【保険業界】③業界の将来性・未来予想
ライフスタイルの変化や少子高齢化などで、ニーズのある保険商品は時代とともに変化しています。
収入保険料が伸び悩むとする見方もありますが、将来のリスクに備える保険は、常に需要のある分野です。
人々が必要とする生命保険商品を提供する余地は、十分残されています。
労働人口や自動車保有台数の減少などで、保険料の収入が伸び悩むという問題が浮上し、国内市場だけでなく、海外市場に目を向けている保険会社も少なくありません。
海外には保険の普及率が低い国が多いため、海外での市場拡大が期待できます。
【保険業界】最後にわかったこと・感想を書こう!
ひと通り業界研究をすると、それまで知らなかったことに気づいたり、驚きや期待など、いろいろな気持ちになったりします。
そうした気づきや感想は、忘れないうちに書くことをおすすめします。
オリジナリティに富んだ志望動機や自己PRを書く要素になることもありますので、たかが自分の感想と言わず、メモなど文字にして残しておきましょう。
【保険業界】まとめ
保険業界は、人々の生活に密着し、将来の安全を保障してくれるサービスや商品を提供する業種です。
その人にあった保険商品を提案したり、時代のニーズに合わせた商品を企画・開発したりするのが、保険業界の仕事です。
保険市場は社会情勢に影響されますので、業界研究する際は、保険業界だけでなく、医療ニュースや社会問題についても、こまめにチェックするようにしましょう。
保険業界の業界研究は、応募する企業の選択に重要な役割を果たしますので、十分な時間をかけて取り組んでください。
明治大学院卒業後、就活メディア運営|自社メディア「就活市場」「Digmedia」「ベンチャー就活ナビ」などの運営を軸に、年間10万人の就活生の内定獲得をサポート