はじめに
OB訪問は、必ずすべきものというわけではありません。
事実、実施の意義を疑問視する学生がOB訪問はせずに就活をし、成功を収めている事例もたくさんあります。
するべきかしないべきか迷う人は少なくありませんが、それを決めるためにはまず、OB訪問の必要性やメリット・デメリットを正しく理解することが第一です。
ここではOB訪問をしないことによる選考への影響と、実施の意義について詳しく解説します。
OB訪問とは
それではまず、OB訪問とはそもそもどういったものなのか、あらためて考えてみましょう。
ちなみにOBは和製英語なので、そのままネイティブに言っても通用しません。
Old boyという、なんとも不思議な英単語の組み合わせを略していますが、日本では主に大学などの卒業生を指す言葉としていつからか定着しています。
(英語で卒業生はalumniと呼ばれるのが一般的です。)
つまりOB訪問というのは、就活生が企業で働く大学の先輩を訪ね、社風や業務内容などを教えてもらう行為を指します。
OB訪問をするメリットとは
OB訪問をするメリットについてまとめてみましょう。
OB訪問は業界研究や企業研究の一環であり、実際の現場を知る人から生の声を聞けることで、得られるメリットがさまざまあるのも事実です。
就活が本格化する大学4年生になると時間も取りにくいため、大学3年生のうちか、もっと早い2年生のうちから気軽に実施している人もいます。
そこにはいったいどんなメリットがあるのでしょうか。
先輩なので気軽に聞ける
現場のリアルの声を聞きたいだけなら、目指す企業の社員であれば基本的に誰でもいいはずです。
可能なら志望する部署で実際に働いている人の話を聞くのが一番ですが、あえて自分の大学の先輩を訪ねる理由は、何と言っても気軽なことが第一です。
もともとは企業研究で詳しい情報を知りたい学生が、先に就職した親しい先輩から話を聞くという行為から自然発生したものです。
大学で親しくしていた、サークルで一緒だったというように、知り合いに会って内情を気軽に聞けるのが何よりのメリットと言えるでしょう。
ただしそれがエスカレートして、まったく知らない相手にわざわざ会いに行く行為に形骸化してしまったのもまた事実です。
そうなるとそもそも打ち解けた話をするのも難しいので、気軽とも言えなくなったのが現状でしょう。
人事の人と会う前に関係が作れる
OB訪問は、学生が本格的な就活前に企業とコネクションを作るチャンスでもあります。
就活となれば人事担当とコンタクトすることになりますが、それがその企業とのファーストコンタクトだとなると、なかなか関係性を築くのが難しい場合もあります。
人事は公平にすべての応募者に対して同じ対応をしますので、自分だけ特別に情報を仕入れることもできません。
その点、OB訪問なら公式な場で人事担当と会う前になんらかの関係を築き、情報を独自に得ることができるのが大きなメリットです。
企業とつながるための最初のハードルが少し下がりますし、一歩踏み出したことで心理的にも焦らず余裕につなげられるでしょう。
OB訪問をするデメリット
OB訪問は一見すると、実施するにしてもしないにしても、メリットはあってもデメリットはなさそうに思えます。
ところが実は、就活生によってはかえって実施することがマイナスに振れてしまうケースもあるのです。
単に先輩に会って話を聞くだけなのに、何がそんなにマイナスになるのでしょうか。
それはOB訪問をする目的によるのですが、いったいどんなことがデメリットにつながってしまうのか、詳しく見ていきましょう。
対応してくれる人がどんな人かわからない
就活生が自分ではどうしようもないデメリットとして、対応してくれる相手の当たりはずれがあります。
事実、約束した日時に指定場所で待っていたのに何時間待っても現れず、すっぽかされたという経験を持つ人も少なくありません。
そんな人のいる企業は選ばないという選択もありますが、時間が貴重なのは何も社会人だけではありません。
たとえ会えたとしても、質問に対していい加減な受け答えしかしてくれない相手では、会うだけ時間の無駄です。
限られた時間を有効に使うためには、効率的にインタビューを進める必要があります。
そうした準備に対して真摯に応えてくれる人かどうか、そこがメリット・デメリットを分けるポイントにもなるでしょう。
印象が悪いと選考に響く可能性もある
前項では訪問する相手の問題を挙げましたが、反対に就活生側の問題がデメリットとなるケースもあります。
実際にOB訪問を受けた側の声として、非常に不快に感じた学生の事例が挙げられています。
時間を割いてくれた相手に対して感謝と礼儀を表すのは人として当然ですし、就活生側は謙虚であるべきなのは当たり前です。
また、限られた時間を有効活用するために質問を事前に準備することは、必須というより大前提と言えます。
もしOB訪問に来た学生が最初から何の質問もする気がないとしたら、それは選考に響くレベルでNGです。
用意する質問は自分が知りたいことで構いませんが、相手に失礼にならないようきちんと礼儀をわきまえましょう。
有効なのは、実際にどんな人が働いているか、どんな人が求められているかを質問をすることです。
一番つかみにくい「空気感」をつかみ取れる質問を用意するのがポイントです。
OB訪問はしなくても大丈夫!?大丈夫な理由
結論から言えば、OB訪問はしたくないならしなくても構いません。
企業側が選考に必須としているなら話は別ですが、とくに必要がなく自分も意義を感じないなら、むしろしないほうがよいでしょう。
通常どおりESを提出して面接を受け、内定を目指せばよいだけです。
そうは言っても、周りがみんなやっているのに自分だけ取り残されるのはまずいのではないかと焦る学生は多いので、なぜしなくても大丈夫なのかを解説しましょう。
OB訪問の有無が選考に関係しない
まず、OB訪問の目的を思い出してください。
OB訪問は、企業の外側からはわかりにくい情報を得るために行うのが前提です。
つまりその会社の内情を知ることが目的であって、内定を取ることが目的ではありません。
簡単に言えば、OB訪問をしたかしないかは、通常選考には関係しないということです。
先ほど述べたように、「OB訪問の実施を本選考の条件にする」と明示している企業があれば話は別です。
外資系企業などの中には、「サマーインターンシップへの参加が本選考の条件」と明示しているところもありますので、そうした条件に含まれているなら内定を取る行為にあたります。
ただとくにそうした指定がないなら、OB訪問はしてもしてなくても選考には関係ありませんし、乱暴な言い方をすれば学生が企業研究のために勝手にやることです。
企業も学生も必要ないと考えるなら、当然実施しなくてもよいでしょう。
OB訪問をすることが目的では意味はない
一番問題なのは、OB訪問をすること自体が目的にすり替わってしまうことです。
先ほどOB訪問を受けた側が不快に感じた学生としても挙げましたが、何の準備もなく質問も用意せずに訪問する人は、すでに目的を見失っています。
OB訪問の目的は企業の先輩に会いに行くことではありません。
業界のことをもっと深く知りたい、その企業の内情や業務、社風など外からではつかみにくいことを深く知りたいという目的があってこそ、手段として活きます。
自分は何のために実施しようとしているのか目的をあらためて考えてみて、とくに思い浮かばないなら実施すべきではありません。
サイトやSNSから必要な情報が取れる!
大昔なら状況は別ですが、現代は企業のwebサイトやSNSなどから必要な情報がいくらでも取れる時代です。
採用に積極的な企業は新卒専用ページを開設していますし、そこに掲載されている情報量も非常に豊かでわかりやすくなっています。
今や、限られた人から部分的な情報を聞き出すよりも、企業サイトを徹底的に研究したほうがずっと効果は高いです。
実際に働く社員のインタビューや記事がたくさん掲載されているサイトも多いですし、わざわざ誰かに会いに行かなくてもたくさんの有力情報を得られるでしょう。
それでもどうしても生の声を聞きたいと言うなら、そこではじめて実施すればよいのです。
そうした状況ならすでに聞きたいことが山ほどあるでしょうから、無意味な訪問にはなりにくいでしょう。
OB訪問をしないほうがいい人の特徴
それでは、OB訪問はあえてしないほうがよいという人の特徴をまとめてみましょう。
総じて言えるのはたくさんの勘違いをしている人で、無理にOB訪問をしても得られるものがないどころか、大幅なマイナス評価になる恐れもあります。
相手あってのことですから迷惑をかけることにもなりますし、双方ともに時間の無駄遣いになりますのでおすすめできません。
OB訪問に向かない人、実施しても意義が薄い人は果たしてどのような人でしょうか。
面接で有利になると考える人
非常に多い勘違いが、OB訪問をすれば面接で有利なネタになると考えることです。
先ほども触れましたが、OB訪問は会社の内部を知る行為で内定を取る行為ではありません。
面接で話すためだけにやるだけやっておこうという考えの人は、相手に不快な印象を与えてNG要員になってしまうか、双方ともに時間の無駄遣いになってしまうかのどちらかです。
また、OBは人事とつながっていて、よい印象を与えておくと選考で有利になるに違いないと考える人もいます。
実際には終わった後、社内でなんらかのフィードバックアンケートがあるとしても、それが採用に影響することはまずありません。
そもそも対応するOBは入社1~3年目未満の若手社員ですから、その立場の人がたとえ強く推薦してもなんら影響力を持たないことのほうが普通です。
みんながやってるからという理由の人
就活では気持ちばかり焦って周りの真似ばかりする人が後を絶ちませんが、「みんながやっているから」という理由で何かをするのは、OB訪問に限らずやめたほうが賢明です。
とくにOB訪問は自分一人でできることではありませんし、相手と自分の時間と労力を費やして結局何の成果もなく終わってしまうという最悪の状態になりかねません。
目的の洗い出しが必須ということはこれまでにも述べましたが、どうしても実施したいならまず目的が明確になってからにしましょう。
あいまいなまま真似だけすると、受けなくてもよいマイナス評価を受ける事態になる可能性があります。
OB訪問から何が得たいか不明確の人
OB訪問から何を得たいか自分でわかっていない人は、とにかく落ち着いて目的の洗い出しをするのが先決です。
なぜ今OB訪問をしなければならないのか、OB訪問の前にすべきことは終わっているのか、少し落ち着いて考えてみてください。
インタビュアーが、何の事前準備もなく知らない企業の社員にいきなりインタビューしようとしても、うまくできるわけがありません。
どんな企業なのか、どんな事業をしているのか、業績はどうか、あらゆる情報を調べたうえで自分が更に知りたいことを整理するからこそ、インタビューは成功します。
相手からどんな情報を得たいのか不明確な人は、OB訪問はしないほうが賢明です。
OB訪問をしない代わりに何をすべき?
どうやら自分にはOB訪問は向かない、不必要だと感じたら、ほかの手段を考える必要があります。
就活において業界研究、企業研究は必須なことは変わりありませんので、どのような手段でそれが実施できるかを考えましょう。
わざわざ直接会いに行くという手段を取らなくても、現代はさまざまな方法で情報を得られる時代です。
OBとコンタクトを取るにしても面と向かって会う必要はありませんし、情報のやり取りだけなら相手を拘束することがないため、時間的ハードルが一気に下がる可能性もあります。
OB訪問の代わりに何をすべきか、いくつか手段を紹介しましょう。
webサイトを見よう
人に会う前にまず自分で集められるだけの情報をかき集め、じっくり研究しましょう。
一番よいのはその会社のwebサイトを見ることです。
採用に積極的な企業は就活生向けの専用サイトを開設していることが多いですし、学生にわかりやすく、企業理念や経営方針を解説しています。
とくに社長が自分の想いを語っている記事は、絶対に見ておくべき内容です。
近年は動画がアップされていたり、メディアに掲載された過去の記事なども見られたりするようになっています。
その企業の方針を決定する権限を持つ人物が、いったいどのような想いで事業を行っているのか、深く理解できるまで研究することが大切です。
チャット上で連絡をとってみよう
直接遭うのは時間的にも労力的にも難しいですが、チャット上での情報交換は一気にハードルが下がります。
ツテを使ってIDを交換できれば、会って話すより気軽に質問ができるのもメリットです。
またOB訪問は通常1回限りで限られた時間内に実施する必要がありますが、チャットであれば相手さえ了承すれば継続的にやり取りをすることも可能でしょう。
あまりしつこくするのも失礼ですが、新たなコネクションが築ける可能性もあります。
SNSで会社や社長、社員をフォロー
近年ではSNSを積極的に活用する企業が急増しました。
とくに新卒採用に積極的な企業は、社員はもとより社長自身がSNSでブランディングしているケースも多いので、興味のある企業はフォローするのがおすすめです。
継続的に最新情報を知ることができますし、より身近に感じることができるため業界理解、企業理解が一気に進む可能性があります。
SNSだと就活しているという気負いもあまりなく、普段どおりに使えるので心理的なハードルが下がるメリットもあるでしょう。
YouTubeサイトを確認
SNSと同様、インターネットを活用した採用活動の一環として、自社でYouTubeチャンネルを持つ企業が増えています。
動画は伝えられる情報が一気に増えるため、より企業の内部や社風、雰囲気なども知ることができる有用なコンテンツです。
企業サイトにリンクが貼ってある場合には、是非YouTubeサイトも確認してみましょう。
1回のOB訪問から得られる情報の、何百倍もの情報が簡単に得られる期待があります。
動画でさまざまな部署の様子や、社長、人事部長の顔を知っておくと、いざ本選考のときに緊張せずに済む可能性もあるでしょう。
まとめ
OB訪問は得られるメリットももちろんありますが、場合によってはデメリットになるケースもあります。
実施する目的があいまいな場合やOB訪問自体が目的にすり替わってしまう場合は、むしろ実施しないほうが賢明です。
そもそもOB訪問の実施は企業側が選考の条件に明示していない限り、内定を左右するものではありません。
意義を感じないなら実施する必要はありませんし、OB訪問以外の手段で十分に情報を得られますので、ほかの方法で業界研究や企業研究を進めることも考えましょう。
明治大学院卒業後、就活メディア運営|自社メディア「就活市場」「Digmedia」「ベンチャー就活ナビ」などの運営を軸に、年間10万人の就活生の内定獲得をサポート