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はじめに
就活で自己PRに「観察力」をアピールしたい学生は多いのではないでしょうか。なぜなら、サークルやアルバイトなどで直面した課題を解決するため状況把握に務めた経験は、そのまま「観察力を鍛えました」とアピールに置き換えやすいからです。
しかし、アピールしたい観察力の定義があいまいなままだと、せっかくのアピールが悪い方向へと行きかねません。
そんな簡単なようで難しい「観察力」の効果的なアピール方法とは何かを紹介していきます。
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アピールしたいのは「状況観察」か「自己観察」か
自己PRで観察力をアピールしたい場合、採用側に良い印象を与えやすいのは「状況観察」と「自己観察」の二通りでしょう。
状況観察は「アルバイトでは、レジ打ちのかたわらでお客様の行動を観察し続け、手に届きやすい商品配置となるよう意識しながら陳列した」
などと、置かれた状況を俯瞰して情報にまとめることができる能力です。
自己観察は「自分が目標を達成するうえで、現在どのような立ち位置で、どのようなことをすればクリアできるのか」
と、自身の性格や成長するうえでの課題を把握できる自己管理能力のことを指します。
自己PRでは「状況(自己)観察力に優れています」と、どんな観察力に優れているかを細かくアピールできると、より面接官の心に響きやすいでしょう。
採用側が求めている「観察力」
企業は業績を伸ばし続けるために、課題となっている点を探したり、商品開発に取り入れられそうな新しい視点を社員に求めたりしています。
採用では、観察力のある人材を常に求めていますので、アピールポイントに観察力を持ってくるのは有効です。ただ、観察力を生かした自己PRは、採用側を説得させられるだけのエピソードが求められます。
お客の行動を把握することで売上の改善に繋げることができたのであれば、お客がどのように店内を動き、何を探して迷いがちなことに気づいたのかなどを詳細に書くことができなければ、中身の無いアピールとなってしまうでしょう。
初対面の人にも短時間で理解してもらえるように何度も練り直してください。
観察力と洞察力はどう違うのか
自己PRでは観察力と洞察力の違いがわからないという人もいるでしょう。
観察力は表面的な物事の変化を客観的にとらえることができる力、いわば情報収集力のことです。
一方、洞察力は物事を観察することで今までとの違いや本質を見抜く力であり、推察力やコミュニケーション能力と関連が深いといえます。
そして、観察力と洞察力はセットで身につけてこそ力を発揮できるものです。
例えば、サークルで2つの派閥ができてしまい、幹事長として再びひとつにまとめ上げる使命が課されたとします。
それぞれ派閥はどんなメンバーで、どんな行動をとっているのか情報収集をしたうえで(観察力)、なぜ対立しているのか隠れた原因を推察、見抜く力(洞察力)が求められます。
観察力をアピールすることは、同時に洞察力も身につけていることをエピソードで示せるようにしましょう。
視野が広く変化に気付ける
観察力がある人は小さな変化にも気づくことができます。
観察力があるという自己PRは、「視野の広さ」とも読み替えられるでしょう。
視野広く持ち、いろいろなことに目を向けられる人は、企業に入社後もその能力を役立てることができます。
社会や企業内のコミュニティーにおける変化に目を向けられる人は重宝されます。
観察力を視野が広いことに言い換えてアピールしてもいいかもしれませんね。
先を見通して行動できる
観察力のある人は、観察によって気が付いたことや予測できることに基づいて、見通しを持った行動ができるでしょう。
先を見通した行動は企業の一員となってからとても重要になります。
仕事においては、何に関してもリスク管理能力が重要なのです。
観察力を以て様々な可能性を見通した行動がとれる人はその分失敗もしにくいと考えられます。
先を見通した行動はリスク管理として評価されます。
ただ観察力があることをアピールするだけでなく、発展させて企業に活きる能力を伝えましょう。
気が使える
上記二つのイメージは、要は「気が使える」ということなのです。
気が付くことの多い人は、その発見に基づいて先駆的に行動を起こせます。
それが人のためになるケースも少なくないでしょう。
「今○○さんは~をしているから多分これから――が必要になるな。」
など、率先して人のために動くことができるかもしれません。
ここまで完璧に立ち振る舞う必要はないですが、企業に役に立つ「観察力」とはこのように人のためになることです。
自己PRで観察力を話す際のポイント
自己PRで観察力をアピールしたいときには、どのような点に気をつければいいのでしょうか。
観察するというのは静止的な行為であるとともに、観察したことをどう活かすのかは主観が入り込む場合も多いです。
うまく伝えないと、仕事にどう活かせるのかが不明確になってしまうので、PRする際のポイントをしっかりと押さえて話しましょう。
ポイントは最初に明示
自己PRのポイント、今回の場合は「観察力があること」を最初に明確にしましょう。
最初にアピールする要点・結論を伝えておくのです。
そうすることにより、聞き手は話の道筋が想像できるようになります。
道筋が立つとあなたがこれからエピソードで何をアピールしたいのかも予想できますね。
道筋を示して、軸のある自己PRを作成するためにはポイントを最初に明示してしまうことが大切なのです。
自分が伝えたいことを最初に示して、あなたの話をはじめて聞く人にも印象に残りやすくなる工夫をしましょう。
自分らしさに結び付けた具体的なエピソード
自己PRに用いるエピソードは量より質です。
就活ではいかに効率的に企業に自分の人柄を印象付けるかが気もとなります。
そのためエピソードを絞り込んで深堀することにこそ意味があるのです。
エピソードを掘り下げると自分の価値観や感情、考え方にたどり着きます。
自分の能力をアピールすることに加えて自分の価値観的な部分にも触れることを心がけてください。
エピソードはかぶってしまう可能性がありますが、価値観や考え方は人それぞれ違います。
自分らしさを伝えることを意識してください。
観察力がどう仕事に活かせるのかを伝える
持ち前の観察力を、エントリーした企業の仕事にどう活かせるのかをアピールしなくてはなりません。
たとえば、コツコツこなすだけの事務作業で観察力をアピールされても、どんな風に役立つのかを明確にしないことには、志望している事務職との関係性が選考担当者に伝わりません。
仕事への活かし方が自分でもわからないなら、観察力はその企業での自己PR材料には適さないのです。
たとえば、「営業職で相手の観察を通じて相手の心理を読み取れ、営業手法やトークを変えるのに役立つ」「日々の通勤や街歩きから市場ニーズを観察し、製品開発や企画、広告活動に活かせる」など、具体的につながるかを考えましょう。
自己PRをする際には、ただ自分の一番の強みや得意なことをアピールするのではなく、エントリーした企業や志望している職種や仕事に役立てることでなくてはなりません。
どのように観察力を身につけたか、いつ観察力を発揮したかを話す
観察力を身につけたキッカケや経緯、観察力を発揮できた事例を紹介しましょう。
たとえば、子どもの頃の自由研究や実験に興味を持ったことが発端だったなどとキッカケを話します。
観察力を発揮した事例は、より直近のものがいいかもしれません。
その際はただ観察しただけにとどまらず、観察力を通じて何を学び、何を理解して、どういうことに活かせたのか、観察力を用いて解決した事例や、観察力を有効活用できた事例を伝えるようにしましょう。
自己PRで観察力をアピールする際の注意点
観察力をアピールするうえでは、裏目に出たり、企業が求めている人物像とは違うと思われたり、志望している職種にとっては必要ない能力だと思われないようにすることが大切です。
そのために、どのような点に注意すればいいのでしょうか。
抽象的な伝え方は控える
ただ「観察力がある」というアピール内容では抽象的です。
どうしてそう思うのか、どんな点において企業に活かせるのかなどが不足しています。
観察力がある、とは具体的にどのようなことを指すのか自分の言葉で言い換えてみましょう。
そこで例として活かせるのが、企業目線です。
企業はどのような人材を欲しているのか、どんな人材に魅力を感じるのか考えてみましょう。
また、エピソードの数を絞るというのもポイントです。
エピソードが多いとその分、広く浅く説明する必要があります。
これでは自分らしさが十分に伝わりません。
一つのエピソードを掘り下げて説明することを意識しましょう。
完璧主義だと思われないようにする
人をじっくり観察して状況をうかがったり、状況を時間をかけて観察してから行動に移ったりするような人は、慎重で良いと思われるケースもあれば、完璧主義と取られる場合もあります。
完璧主義はメリットに思えますが、多様な人が集まる組織を円滑に回していくためや、仕事を効率よく遂行していくうえでは足かせになることも多いです。
企業が求める人物像や職種の適性に合っていないと、望ましくない強みと思われてしまうので、伝え方には注意が必要です。
観察力にも種類があることを念頭に入れる
観察力と言っても、その態様はさまざまです。
じっと他人や状況を見守るのが好きな人、周囲の状況を外野として見るだけで、そこで起きている問題やトラブルの解決にはタッチしようとせず、どう解決されるのかを見ているだけといった、行動力もなく、問題解決力もない人もいるかもしれません。
ですが、企業で評価される観察力は、その観察を通じて状況の分析を行ったり、目の前で起きている現象やトラブルをどう解決すればいいかを客観的に考えて解決、実行できたりする力です。
ただ、飽きずにじっと観察できることが自分の強みだとアピールするのではなく、観察力を活かして問題の解決ができたり、主観的ではなく、客観的な分析や解決策の提示につなげられたりすることなどをアピールできることがポイントです。
人間観察のアピールは悪印象をもたれることも
面接などでの自己PRで「私は対面する人のことを分析するのが大好きです」というように、人の性格や個性を観察してきた人間観察の経験をアピールする志望者も見られます。しかし、人間観察をアピールするのはリスクがあります。なぜなら、人間観察は「他人の行動を細かくチェックする」という批判的な要素もあり、良いイメージを抱いていない人もいるからです。
仮に、面接で「人間観察力」をアピールした場合、面接官が「私を観察してみてどう思いますか」と質問されたら、とっさに答えるのは難しいでしょう。本当に人間観察が好きだとしても、わざわざ自ら不利になるようなアピールをするのは、面接の戦略上好ましくないことを頭に入れておいてください。
自己PRで「観察力」をアピールする際の例文
では早速、自己PRで「観察力」をアピールする際の例文をいくつかご紹介しましょう。
例文①
「私は常に自分をよく観察し、そのときの状態を理解するよう努めています。
さらに自分の状態を正確に把握することでコントロールし、行動できることも私の能力の一つです。
専門学校時代、地元のレストランでアルバイトをしていたことがあります。
職場はとても忙しく、その中でお客様に笑顔で接しなければなりませんでした。
忙しくなるとともに笑顔が消え、知らない間に無愛想になってしまうことに気づき、これではいけないと考えました。
「お客様はお金を出しておいしい食事を楽しみにしている」というように、考え方を改めたところ、前よりイライラすることが減り、「少しでも気持ちよく食べていただこう」という気持ちが接客態度に反映されるようになりました。
与えられた仕事をそのままこなしていると、効率が悪いうえ、自分への負担が大きくなります。
何も考えず作業してきた行動を改め、優先順位を決めて処理するようにしました。
どうしても手が回らないときは、手が空いている同僚にお願いしたこともあります。
その結果、以前より作業がスムーズになったばかりでなく、職場のチームワークが強くなり、協力し合う環境が生まれました。」
例文②
「私は周囲の状況を観察し、その中で何が必要で、そのためにはどうしたらいいのかを的確に判断して行動するようにしています。
ショッピングモールでアルバイトをしていましたが、荷物をたくさん抱え、何か探しているようにあたりを見渡しているお客様を発見しました。
私は、「お客様はタクシーを呼びたいけれど電話がなく、受付を探しているのでは?」と察し、「タクシーをお呼びしましょうか」と声をかけました。
お客様は、「電話をかけてタクシーを呼びたかったところだ」と答えられたため、受付にご案内して、受付のスタッフに事情を説明しました。
無事にタクシー会社に電話をかけ、タクシーでお客様をお送りできました。」
例文③
私は自分の置かれている立場をよく理解し、問題や課題に対して適切に取り組むために、必要な情報を収集できます。
学生時代サークルのまとめ役についたことがあります。
メンバーと部長の中間に位置するような役割で、サークルを円滑に活動させることが私の役割でした。
サークル活動を続けていく中で、参加率が落ち、メンバーの表情にやる気のなさが浮かんでいることに気づくようになりました。
「もしかしたらサークルに対して不満があるのでは?」と察したため、一人ひとりから事情を聞くことにしました。
「サークルをよりよいものにしたいから本音を聞かせてほしい」と言うと、ほとんどのメンバーは、サークルに対する不満や正直な気持ちを話してくれました。
メンバーの声を持って部長に会い、今後の活動について話し合いを重ね、メンバーのフォローとコミュニケーションを意識した活動を目標に、幹部たちが協力し合っていくという結果に達しました。
メンバーを個別にフォローし、コミュニケーションを蜜に行っていくことで、メンバーの表情に活気が戻り、活動も徐々に盛り上がりを見せていきました。
退会したメンバーは一人もおらず、逆にメンバーが増え、サークルを立ち上げてから過去最大の人数に達しました。
観察力をアピールしたNG例
私の強みは観察力です。
週に1回程度は1人でカフェに足を運び、2時間くらいかけて周囲の顧客の様子や、窓から見える人の流れや様子を観察しています。
ファッションやヘアスタイルから今どきのトレンドが理解できたり、若い人の流行り言葉や、世代ごとに話の中心となるテーマが違うことが理解できたりするのがメリットです。
観察力を通じて今どきの流行をキャッチアップでき、世代間の違いなどを学べる成果が得られました。
職場にはさまざまな世代の人や価値観の人がいると思うので、観察力を活かして職場の空気を読んでいきたいです。
観察力のエピソードや、それを通じて得られたことを踏まえていますが、最後の仕事への結びつきが弱いです。
職場の人間関係や、職場でうまくいくように観察力を使いたいと見て取れますが、それでは、その企業にとって特別に役立つとは言えません。
どの職場でも汎用性があるようなアピールの仕方ではなく、流行をキャッチアップでき、世代間の違いを理解できる観察力を活かして、新商品の開発や企画に活かしたいなど、より具体的に仕事に貢献できるアピールの仕方をすることが大切です。
自己PRは第三者に見てもらおう
観察力を証明するため、短い文章の中で自己PR文を考えるのは大変です。一方、アピールを練りすぎて相手に伝わらないこともあります。
相手の心に届くアピールとなっているかどうか、第三者に見せるなど客観的な目で判断してもらうとより説得力が出てくるでしょう。