はじめに
就職活動で必ず聞かれる自己PRですが、「アピールできる特別な経験がない」、「アルバイトくらいしか頑張ったことがない……」という人もいるのではないでしょうか。
アルバイトはたしかに珍しい経験ではありません。
アルバイトをネタに自己PRをする学生は多いので差別化を図ることも必要です。
しかし、アルバイト経験から学ぶことは多く、就職後に役立つこともたくさんあります。
ここでは、アルバイトをもとに自己PRを作る場合のコツを紹介します。
自己PRとガクチカの違いとは
自己PRについて考える前に、よく混同されがちな自己PRとガクチカとの違いについて、まず理解しておきましょう。
今回は自己PRに焦点を当てて解説していきますが、求められる問いに対してより適切な回答をするためには、両者の相違点を知っておく必要があります。
ポイントとしては、面接官が「何を知りたいか」ということです。
自己PRとガクチカ、それぞれの質問の意図を汲み取ることができれば、自ずと話すべき内容が見えてきます。
自己PRでアピールすべき内容
企業が自己PRを求めるのは、その学生がどのような人柄なのかを知るためです。
その人の性格や気質をもとに、自社とマッチするかどうかを判断したいと考えています。
企業風土や雰囲気に適した人材であれば職場に馴染みやすく、業務にスムーズに携われるためです。
長く働ける人材となるには、企業とのマッチングは欠かせません。
入社後にミスマッチが生じるのを避けるためにも、自己PRを通して人柄や価値観を見極めようとしています。
また、入社後に活かせるようなスキルを持っているか否かを判断するという意図もあります。
つまり自己PRでは、自分がどんな人柄でどんな能力があるのか、そしていかに企業の求める人材像にマッチしているかをアピールすることが必要です。
ガクチカでアピールすべき内容
今どんな人なのかを知りたいのが自己PR、これまでに何を経験してきたのかを知りたいのがガクチカ、といったように分けて考えることができます。
ガクチカでは、学生時代にどのような経験をしたのか、どういった思いで取り組んできたのかなど、物事への向き合い方が重要視されます。
さらに、その経験から何を学んだのかを知るというのも、ガクチカを問う目的の一つです。
そのため、ガクチカでは、取り組み方と成長の過程をアピールする必要があります。
そう考えると、自己PRを話す時にも経験や学びを話すことは必要であり、その点ではガクチカと近い部分も多いと言えます。
ただし自己PRでは、そういった経験と学びを通じて自分がどのような人物であるのか、それを就職後どう活かせるのかに重点を置いてアピールすることが重要です。
志望する企業はアルバイト経験が歓迎される業界かどうか?
アルバイト経験を自己PRのエピソードとして話すと、「バイトに明け暮れていた」というネガティブな印象を持たれないかと心配する声も聞こえてきそうですが、実際にアルバイトの経験が就職活動で不利になることはあまり考えられません。
ただし、業界や職種によって、歓迎する場合とあまり重要視しない場合に分かれます。
アルバイトの職種で多い接客業、サービス業などの経験を自己PRのエピソードとして話す場合、BtoCのサービスを行う企業は関心を示す傾向が強いかもしれません。
例えば、旅行業界、飲食業界、小売業界、保険、証券などの金融業界の個人営業など、消費者に直接サービスを届ける業界です。
逆に、BtoBのサービスが主体の企業、総合商社やコンサルティング、投資会社や製薬会社などの場合は、あまり重視しない可能性もあります。
とはいえ、どんな組織で働く場合でも重要なリーダーシップやコミュニケーション能力などはアルバイト経験から培われます。
「アルバイトしかない」という人は、伝えたいポイントをおさえてアピールする必要があります。
アルバイトのネタは他の学生と被りやすい
自己PRでアルバイトの経験を話す学生は多いので、企業の採用担当者はある程度聞き飽きています。
何度も聞いた内容だと、「またこれか」と聞く意欲がなくなってしまう恐れもあるでしょう。
企業が知りたいのは、どんなアルバイトをしてきたかではなく、その経験を通してどのような学びがあり、それを今後社会人になってどのように活かせるかという点です。
アルバイトは誰でもできることですが、業務を通して学びを得ることはその人の個人的な体験談となります。
他の学生と差別化できる自己PRが重要ですが、だからといって必ずしも「売上を倍にした」など素晴らしい業績が必要というわけではありません。
当たり前のことや小さなことでも、どう自分なりに考えて工夫したか、どのような行動をしてそこから何を学んだかが重要です。
アルバイト経験をほかの学生と差別化する方法
アルバイトでのエピソードを自己PRに取り上げる学生はたくさんいるため、本質的な内容で差別化をはかる必要があります。
アルバイトでは「責任感」「調整力」「コミュニケーション能力」「自己成長」「継続力」といった部分をアピールすることになりますが、ここに強い説得力をもたせることで差別化をはかるのがおすすめです。
まず、アルバイトでのエピソードを簡潔に説明したあとに、そこにどのような課題があったのか、そしてそれをどのように克服したのかといった自己分析を深く展開してください。
差別化をはかりたいならば「アルバイトでは責任感をもってやり遂げた」といった単調なエピソードではなく、就職後に活かせるような深い考察と、それに対するアクションを説明しなければなりません。
肝心な部分であなたにしかない魅力を提示できれば、ありがちなエピソードであっても、面接官には目新しく感じられるでしょう。
アルバイト経験を自己PRで話す時、人事はなにを見てる?
勤めていたアルバイト先と全く同じ業種でない限り、就職希望者が学生時代に何を行っていたか、その業務内容について人事は知りたいと思っていません。
多くの場合において、そこから何を得たのか、またはその人がどのような思考を持っていて仕事に取り組んでいたのかを見極める意図がアルバイトの質問にはあります。
アルバイトの質問を受けた場合、どのようなことを行っていたかの説明は簡潔に述べるだけに留めるとよいでしょう。
その代わり、アルバイトにてどのようなことを経験し、そこで学んだことを就職後にどう活かそうと考えているかを面接官に伝えます。
その際も「お釣りの渡し方」や「ビニール袋へ商品を綺麗に詰める方法」といったような限定的な業務内容を学んだことは避けるのが無難です。
もしその業務内容が就職先ではまったく活用できないものであった場合、いくらアピールしても面接官にはプラスに働きません。
それどころか、自社にとって必要なスキルは身に付けていないのかとマイナスに捉えられてしまう危険性もあります。
そのため、アルバイトの経験から得たこととしては思考方法や心構えなど、さまざまな業種に応用できる内容を挙げるのが得策です。
質問へ的確に返答できれば、この人は会社に利益をもたらせてくれると面接官に印象づけることができます。
一方で、アルバイトで担っていた仕事と就職先が同じである場合、自分がどのように売上へ協力したかについて具体的に述べたほうがよいでしょう。
たとえばアルバイトとして新聞社で働いていて卒業後も記者として働きたい方は、学生時代にどの会社で働き、どういった記事を執筆していたかをしっかりと面接官に伝えます。
面接官も業界のプロフェッショナルであるため、専門用語を交えて語ったとしても理解してくれます。
アルバイト先と就活先が異なる場合は、なぜ元々働いていたところを選ばなかったのかについても伝えておきましょう。
アルバイトの質問に限らず、面接の場では相手がどのようなことを狙って聞いているのかを想像することが求められます。
立派な内容を述べるのではなく、相手の意図にしっかりと気付き、それに沿った返答を行うことこそが重要です。
相手が要求する者を察してそれを提供する能力は面接だけでなく、就職してからもあらゆる場面にて求められます。
多くの学生が間違った返答をしてしまうアルバイトの質問は、自分は要求を察する能力があると面接官にアピールする格好の機会ともいえるでしょう。
アルバイト経験から自己PRできる内容
アルバイト経験から自己PRすることにはさまざまなメリットがあります。
アルバイト経験とは、あなたがどのように仕事に向き合ってきたのかというものであると同時に、あなたの人柄についてもある程度知ることができます。
企業としては、あなたとの面接やESからあなたが入社後どういった活躍をしてくれるのかについて知りたいと考えているため、実際に働いていた時にあなたがどういった考えでどのように働いていたのかを知ることでなんとなくイメージを持つことができます。
また、仕事とは楽しいことだけではないため、アルバイト経験によってそうした苦労するということまで理解できている就活生の方が採用後のギャップが少なくミスマッチが起きにくいと考える企業もあります。
継続力
1つのアルバイトを長期間継続したことのある方なら継続力をアピールすることができるでしょう。
また、長くアルバイトを継続していることからアピールできるエピソードや強みとなったエピソードも多くあるでしょう。
学生の中には、何か嫌なことがあったり仕事に飽きてしまったらすぐにアルバイトを変えるといった方もいます。
1つのアルバイトを長期間にわたって継続したことのあるという経験は十分アピールできる魅力的な自己PRです。
また、継続力をアピールする際にはなぜあなたはそのアルバイトを長期間にわたって継続することができたのかという理由についても説明できると良いでしょう。
企業としても、そうしたあなたの理由に納得できたり、企業の社風などでマッチしていると感じたら入社後にも辞めずに仕事に対して向き合ってくれると評価してくれることでしょう。
臨機応変な対応力
アルバイトであったとしても、マニュアル通りの対応をしているだけで仕事がうまく回るわけではありません。
接客業であればお客様によって求めるものが違ったりするため、そのお客様に合わせた対応が求められます。
また、ピーク時などの忙しい時間帯には通常では起こらないような問題が発生することもあり、そうした問題に対応するために臨機応変な対応力が求められることもあります。
そうした臨機応変な対応力は就活の場でも十分アピールできる内容であり、企業としても言われたことしかできない人材は求めていないため、入社後の仕事にも活かすことができるだろうと判断されれば選考の通過率は大幅にアップすることでしょう。
臨機応変な対応力といっても、何か特別な経験をアピールする必要があるわけではありません。
ピーク時に業務効率化のために行ったことなどの小さなことでも十分アピールすることができるため、一度アルバイト経験を振り返ってみることをおすすめします。
ホスピタリティ
アルバイトを通じて、あなたがお客様のために行ったことによって感謝されたという経験がある場合にはそれをあなたのホスピタリティとしてアピールすることができます。
また、ホスピタリティは接客業だけで発揮されるような能力ではありません。
職場の人のために行動したようなことであってもホスピタリティとしてアピールすることができます。
ホスピタリティはどのような業種であっても必要な能力であり、社内の円滑なコミュニケーションにもつながってきます。
あなたの人柄をアピールするには十分なアピール内容であるため、アルバイト経験を振り返ってホスピタリティを発揮した経験をぜひ探してみてください。
【自己PRでアルバイト経験を話す】自己PRを作る際の構成
自己PRにおいてアルバイトで得た経験をアピールしたい場合、どのように話せば、あなたの魅力や強みを伝えられるのでしょうか。
この点、単に同じ業界や志望する企業の店舗でアルバイトしていたのがPRになるわけではありません。
経験そのものではなく、アルバイトで何を得たかがポイントになります。
アルバイトで得た能力や、あなたがこれから仕事をしていく上で強みとして発揮できるものをアピールする必要があります。
そのためには、どのような構成を踏めば良いのでしょうか。
面接官にあなたの魅力や強みを印象付けられる構成をご紹介します。
結論:私の自己PRは〇〇があることです(アピールポイント)
自己PRを話す際は、まずは結論から始めましょう。
自分の一番のアピールポイントは何かを一言で明確にすることが必要です。
気を付けたいのは、自己PRはアルバイトした経験ではないことです。
たとえば、飲食業を志望している方が、「私の自己PRは飲食店で高校時代からアルバイトを6年してきたことです」とアピールすることやコンビニ本部への就職を希望している方が、「私の自己PRは御社のコンビニでアルバイトをした経験です」などと、アルバイトした経験そのものをアピールポイントにしてはいけません。
同業種やその企業でのアルバイト経験は、なんの自慢にもなりませんし、面接官にとっても、あなたを採用したい理由にはなりません。
志望している業種でのアルバイト経験がある方は山ほどいますし、アルバイトしたことがきっかけで就職を志望する人も山ほどおり、なんの差別化ポイントにもなりません。
同業種や志望企業でのアルバイト経験で、他の応募者と差をつけることはできないのです。
アピールすべきはアルバイト経験ではなく、アルバイトをしたことで何を得たか、どんな活躍をしたのかです。
アルバイトを通じて得た能力やノウハウなどを、アピールポイントに挙げましょう。
理由:なぜならば、アルバイトで〇〇ということがあったからです
次に自分の一番のアピールポイントを選んだ理由を説明しましょう。
アピールしたいポイントが発揮された場合や強みとなったポイントを獲得できた経験や出来事について伝えます。
アピールポイントがPRできる、アルバイトで起きた経験や出来事を〇〇に当てはめて簡潔かつ具体的に紹介しましょう。
エピソード:私は〇〇でアルバイトをしていました
自己PRの構成の3ステップ目で、ようやく、どんなアルバイトをしていたかを紹介します。
「飲食店でホールスタッフのアルバイトをしていました」「居酒屋で調理スタッフのアルバイトをしていました」「家庭教師のアルバイトをしていました」などです。
問題:その経験で〇〇という問題に直面しました
次にアルバイト先で直面した問題について説明しましょう。
なんらかの問題に直面し、それをあなたの行動や活躍で解決できた、乗り越えることができたといった内容が求められます。
何度もいいますが、ただアルバイトをしたことがアピールになるわけではありません。
アルバイトをして社会人経験を積んだ、大学の4年間、ずっと同じアルバイトを続けてこられたことがアピールポイントになるわけではないのです。
企業は求める人材として、なんらかの問題に直面した際にどのような行動を取り、どんな結果が残せる人なのか、ビジネスパーソンとしての適性や成長可能性があるかを知りたいのです。
その点を十分に理解した上で、直面した問題についてわかりやすく状況説明しましょう。
面接官はあなたの話を初めて聞くわけですし、あなたのアルバイト先の状況をまったく知りません。
初めて聞く話でも、状況や問題点がわかるように、うまく要約して説明を行うことが大切です。
行動:私は〇〇と考え、〇〇を行いました
直面した問題に対して、あなたがどのようなことを考え、どういう行動に出たのかを具体的に説明しましょう。
この行動こそ、あなたが最初の結論でアピールポイントに挙げた点を発揮できた行動になります。
たとえば、アピールポイントをリーダーシップ力とPRしたなら、リーダーシップを発揮した行動を紹介するということです。
結果:その結果、〇〇となり、〇〇に大きく貢献しました
行動に出たことで終わるのではなく、行動の結果まで、しっかりと伝えましょう。
結果が出せなければ、本当にあなたにその能力が備わっているとはいえないからです。
たとえば、自分ではリーダーシップを発揮したつもりでも、仲間がついてこない、問題に何も進展がないのでは発揮したことにはなりません。
あなたが行動に出た結果、生じていた問題がどうなったのか、具体的に改善されたポイントなどを示してアピールしましょう。
結論:その経験を活かして貴社では〇〇で貢献していきたいと考えております
あなたのアピールポイントが発揮されたエピソードを紹介し終えたら、最後のまとめとして、自分を売り込むための結論で結びます。
エピソードで紹介した問題を解決したという経験を活かし、志望する企業でどのような貢献ができるかを具体的に伝えましょう。
志望している企業と同じ業界でのアルバイト経験があるから、活躍できるといった単純な内容ではなく、その企業ならではの事業内容や仕事のやり方などに着目し、アピールポイントをどう活かせるかをPRしましょう。
アルバイト経験で自己PRする際のエピソードの選び方
アルバイト経験を自己PRしようとすると、多くのエピソードがあってどのエピソードを選んでアピールすればいいのかわからなくなるという方も多いでしょう。
アルバイト経験からは多くのことが学べ、あなたの良さを発揮した場面も多くあることから複数のエピソードからアピールしようとする就活生もいますが、就活の場では一つのアピールに対して一つのエピソードにするべきだと言われています。
これは、複数のエピソードによってあなたのアピールポイントがブレてしまうことのないようにするためです。
ここでは、アルバイト経験で自己PRする際のエピソードの選び方について詳しく解説していくのでぜひ参考にしてみてください。
苦労した経験
アルバイトを続けていると苦労した経験も多くあることでしょう。
多くの方は苦労した経験と一緒にそれを乗り越えた経験もあると思います。
自ら動いて問題を解決した方もいればそれを耐えてやり過ごしたという方もいると思います。
自己PRではあなたの強みなどが伝わるようにアピールすれば良いので、そうした苦労した経験を乗り越えた経験は非常にアピールしやすい経験でしょう。
また、アルバイト先の売り上げを何%向上させたといったアピールをする方もいますが、企業は何もそこまでの経験を就活生に求めているわけではありません。
もともと新卒採用はポテンシャル採用であり、企業に入社後に活躍してもらえるように育成することまで見越して採用しているからです。
そのため、インパクトの多いエピソードではないとしてもあなたの人柄や強みが伝わるようなものであれば小さなエピソードでもぜひ深掘りしてアピールしてみましょう。
印象に残っている経験
あなたの印象に残っている経験とは、あなたが力を入れて取り組んでいたことやあなたなりの考えがあったことなどである場合が多いです。
そのため、印象に残っている経験にはどうしてもあなたの人柄や考え方などが現れることが多いです。
そうした経験をアピールすることによって企業に対してあなたがどういった人材なのかということがアピールできます。
アルバイトを通じて成果を上げたものでなかったとしても、アルバイトを通じてあなたが学んだことをアピールすることができれば自己PRになるため、そうしたポイントがあるのであれば積極的に深掘りしてみましょう。
仕事にどう向き合っていたのかわかるエピソード
アルバイトだとしてもあなたが仕事に対してどのように考えてどのように向き合ってきたのかを企業にアピールすることによって企業はあなたが入社後どのように働いてくれるのかをイメージすることができるようになります。
また、アルバイトという立場での仕事は基本的に単純作業の連続であったり、社員の方に頼まれた仕事をすることが多いです。
そうした仕事に対してのあなたの向き合い方を企業は知りたいと思っているのです。
言われたことだけをしているのか、自分で考えてアルバイト先や社員の方のために自発的に動くことができるのかといったポイントを意識することによってあなたが入社後どのように仕事をしてくれるのかということを想像することができます。
それが企業の求める人物像にマッチしていると判断されれば選考の通過率は非常に高くなることでしょう。
【自己PRでアルバイト経験を話す】アルバイト経験を話す際の5つのポイント
自己PRでアルバイト経験を話す際に気を付けたいことや押さえておくべきポイントをご紹介します。
自己PRの構成を練る際の、各構成の内容を考える際に、以下の3つのポイントを踏まえて構成しましょう。
アピールしたいことは1つに絞る
アピールポイントは1つだけに絞りましょう。
アルバイトの経験で得たこと、学んだことがたくさんあるからと、全部アピールしても、一つひとつが薄まってしまいます。
「私のアピールポイントはリーダーシップができて、協調性もあって、お客様に思いやりを持って接することができることです。」などと2つも3つもアピールポイントを並べるのはNGです。
一番の強みをアピールし、それについて面接官に説得力ある説明をしなければなりません。
どれをアピールポイントにすべきか迷ったときやわからないときには、自分が一番印象に残っているエピソードを振り返ってください。
自己PRの構成で紹介するエピソードで直面した問題を解決するために出た行動こそ、あなたがアピールすべきポイントです。
アピールしたいたくさんのポイントの中から1つに絞る際は、紹介したいエピソードで自分が何をしたのかを基準に考えましょう。
アルバイトで何を考え、どう行動したのかを書く
アルバイトの経験そのものがアピールポイントになるわけではありません。
志望している飲食チェーンで、「週に3回3年間アルバイトを続けてきました」というのがアピールポイントになるわけではないのです。
そこで、どんな活躍ができたのかが重要です。
極端に言えば、アルバイト先はどこでも良いといえます。
志望している企業とはまったくの異業種であったとしても、そこで考えたことや行った行動が、志望する企業の事業や仕事においても役立ち、貢献できる内容であればアピールポイントになります。
結果は数字で伝えられるのが良い
直面した問題に対して、あなたが出た行動の結果を伝える際には、より具体的に問題が生じていた時点と行動に出た後の違いを説明しましょう。
ただ単に「問題が改善しました」だけの結果を述べるのでは足りません。
具体性がないと本当に問題が改善したのか疑問が残ってしまいます。
また、「問題が改善し、店長に喜ばれました」など主観的な評価を伝えるのでもアピールとしては弱いです。
成果が見える化できる数字などのデータを示し、客観的な指標で伝えられるとベストです。
たとえば、自分が行動に出た結果、「1日の売上が30万円から60万円と2倍になりました」や「1日の集客が50人から80人と1.5倍程度に増えました」などビフォー、アフターの違いがわかりやすいように伝えます。
仕事のやり方について提案した結果、「10分かかっていた作業が5分で済むようになり、業務効率が上がりました」や「1時間で30個しか作れなかったのが、1時間で50個作れるようになりました」「これまで3人がかりだった作業が2人でできるようになり、人材不足を解消できました。」といった形です。
エコや省エネに貢献したなら、あなたのアイディアで「レジ袋が1日200枚出ていたのが、90枚まで削減できました」や「コピー用紙の裏紙を使い、デジタル化を進めることで、コピー用紙代が1ヶ月で5万円節約できるようになりました」など、数字という客観性のある指標を用いて、具体的な結果をアピールしましょう。
もっとも、数字を出す際には根拠ある正確なデータを示す必要があります。
適当に作り出すことや評価を得たいと過大な数字を並べ立ててはいけません。
相手はビジネスのプロですから、すぐにバレてしまいます。
アルバイト経験から自己PRする際の注意点
アルバイト経験を自己PRで取り上げる学生は多く、就活における鉄板の話題ともいえます。
しかし、アルバイト経験のエピソードであれば、なんでも良いというわけではありません。
思いついたままを面接官に話してしまうと、逆にマイナスポイントとなるケースもあるのです。
アルバイト経験を取り上げると決めたならば、エピソード探しの際には注意点があります。
ここからは「アルバイト先の企業秘密漏えい」「エピソードを絞る」といった点について、くわしく見てみましょう。
アルバイト先の企業秘密を漏らさない
アルバイトで働いていると、アルバイト先の企業秘密に触れる機会もあるかもしれません。
しかし、その部分を就活の際に自己PRで取り上げてしまうと「社会人として信頼できない人材だ」と判断されてしまいます。
飲食店や小売店でアルバイトをしていると、利益をあげるための工夫を教わることもありますが、それは他社へ漏らしてはならない企業秘密です。
「応募先企業にとって有用な情報だから企業秘密にあたるエピソードを入れたい」と思っても、リテラシーの欠如やコンプライアンス違反ととらえられるため、控えてください。
たとえ短期のアルバイトであっても、企業秘密を守れる人材や情報漏えいの重大さを理解している人材でなければ、正社員として迎え入れたいと考える企業はないでしょう。
エピソードは1つに絞る
長くアルバイトを続けていたり、たくさんのアルバイト経験をもっていたりすると、自己PRで取り上げたいエピソードが複数出てきます。
しかし、魅力的なエピソードであってもたくさんの話題を盛り込むと、面接官の印象に残りにくくなってしまうのです。
そのため、自分のアピールしたい部分がより強く打ち出せるエピソードを1つだけ選ぶのがおすすめです。
一つひとつのエピソードのインパクトが弱いからといって、いくつものエピソードを羅列してしまうと、何をアピールしたいのかがぶれてしまい、全体の印象が薄くなってしまいます。
エピソード自体にインパクトはなくても、その内容から得た学びや教訓などを深掘りすれば、面接官に十分アピールが可能です。
アピールするエピソードは、1つとしてください。
自己PR アルバイト経験の例文
面接対策として、あらかじめ質問内容を予測し、それへの回答を用意しておくことは非常に有効です。
アルバイトの質問は聞かれる頻度が高いため、もし尋ねられたらこのように答えるというテンプレートを作っておくと良いでしょう。
しかし面接の時は緊張している可能性があり、せっかく用意しておいた内容がうまく出てこないという事態も起こりかねません。
そのようなことにならないよう面接の練習を重ね、落ち着いて述べられるようにしましょう。
以下に例文を載せておきます。
例文
私の強みは提案力があることです。
自宅と大学との道中にあるカフェの店員として私は1年生の頃から働きました。
昼休みを利用して来店している会社員の方の場合、マニュアル通りの丁寧な対応がかえって嫌がられるということをアルバイト中に知りました。
限られた昼休みの時間を少しでも無駄にしないことが会社員の方への接客には求められます。
私は急いでいる方向けの接客マニュアルを提案し、同僚と共ともにそれを実践しました。
提案力とはつまり問題に気付き、その是正方法を考え、実行する一定のプロセスを遂行するための総合的な能力です。
カフェでの経験で培った提案力を御社でも活かし、潜在的な問題をいち早く気付き改善していく役割を担いたいと考えています。
例文
はじめて取り組むことに対して感じる不安に負けず、まずはやってみることの大切さを私はテレビ中継のアルバイトで学びました。
私は中継の映像をその場で操作し、スロー再生を行う業務を担いました。
未経験で、かつその操作が全国に流れる業務に怖じ気付きそうになったものの、不安を押しのけてチャレンジしたため、なんとか為し遂げられました。
就職してからもはじめてのことを数多く経験するでしょうが、それらに対しても果敢にトライしていきたいと考えています。
例文
私は大学生の4年間、塾講師として働きました。
担当した子供たちの成績をどう伸ばせば良いか、それを日々試行錯誤しながら仕事を務めました。
結果としてわかったことは、事前の念入りな準備ほどに重要なものはないということです。
慌てて準備したときは子供たちの反応は悪く、一方で時間を掛けて挑んだ際は子供たちも真剣に学んでくれて、成績も上がりました。
子供たちの家へ向かう前に問題集を丁寧に作ったよう、就職後も仕事の準備をしっかりと行おうと決めています。
アルバイトを自己PRで話すことについての疑問集
かつてはアルバイト経験は社会人として働くための第一歩として、就活でアピール材料になると言われてきました。
ですが、近年では企業の人事担当者がアルバイト経験は重視していない、との発言をするケースも増えており、自己PRにはならないのではと不安を持つ方もいるのではないでしょうか。
そこで、就活においてアルバイト経験を自己PRとして挙げて良いのか、どのような内容ならアピール材料になるのかを検討していきましょう。
アルバイトエピソードを話す学生が多そうだけど問題なし?
学生を卒業し、社会人として活躍できる人物であることをアピールする材料としては働いた経験があることが不可欠と考え、アルバイトとして働いた経験をアピール材料にする方は少なくありません。
特に志望する業界や志望する企業が運営するお店などでのアルバイト経験があると、自分はその業界を知っている、企業の即戦力として活躍できるとアピールしたくなるものです。
もっとも、人事担当者の中にはアルバイト経験は選考材料にはならないとする方が少なくありません。
アルバイトで働いたことがあるといっても、社会人として働くこととは意義も内容も異なり、入社後の活躍には必ずしも結び付かないと考えているためです。
また、ほとんどの学生が行っており差がつかないとの意見もあります。
逆に言えば、ほかの学生と差がつくような、志望企業での貢献が期待できるアルバイトとしての活躍をアピールできれば、自己PR材料になるといえます。
役職や実績などがないけど大丈夫?
学生アルバイトであっても、仕事ができるとアルバイトメンバーをまとめるバイトリーダーを任せられる場合や能力を認められると店長補助といった役職を与えられるケースも少なくありません。
また、営業などで成果を上げ、具体的な契約実績をアピールすることができる、社内表彰を受けたといった方もいますし、学生アルバイトでも業務改善などを提案して実践し、社長賞を貰ったといった経験を持つ方もいます。
そうした学生もいる中で、役職もなく、特段の実績もないのにアルバイトを自己PRにすることに躊躇されるかもしれません。
確かに、ただアルバイトをしました、頑張りましたではPR材料にはなりません。
なんらかの問題に直面し、それを自らの考えと行動で解決して成果が出せたエピソードが挙げられれば、役職や特別な実績がなくても自己PRとなります。
アルバイトの概要はどれくらい伝えると良い?
アルバイトの概要については、一文に納まる程度で簡潔に伝えましょう。
特別に珍しいアルバイトなら別として、学生が行うアルバイトなら、志望する企業と業界が違っても、業種や職種などを示し、極簡単に仕事内容を伝えれば、面接官に伝わります。
どんなアルバイトをしていたかという概要よりも、その経験の中で、あなたが何を得たのかを話すほうが重要です。
概要については簡潔に触れる程度にし、具体的なエピソードからあなたがアルバイトを通じて学んだことや身につけたことなどを伝えましょう。
その際には直面した課題やトラブルなどを挙げ、自分の力でどう解決したかといった具体的なエピソードを挙げるようにしましょう。
複数取り組んだアルバイトすべてを話すべき?
アルバイトをアピールしようとすると、あれもこれもと挙げてしまう方が少なくありません。
複数のアルバイトをPR材料にしようとする方は、こんなにたくさんの仕事を経験してきたから、入社後もどんな仕事でもできる人間だ、即戦力として役立つに違いない、何事もチャレンジできる人間だとアピールしたい意図があります。
ですが、複数取り組んだアルバイトすべて話すのは面接では良くありません。
自己PRでアルバイトをアピールしたいなら、一番、自分の強みをアピールできる1つだけに絞りましょう。
自己PRでアピールすべきはアルバイト経験ではなく、そこで何を学び、何を身につけ、それを入社後にどう活かせるかです。
数を挙げれば評価されるのではなく、志望する企業で活躍できるかをポイントに的を絞ることが大切です。
途中で辞めてしまったアルバイトのことも話して良い?
途中で辞めてしまったアルバイトでも、それが、あなたの強みや人物像をアピールするのに役立つエピソードであるならば話しても問題はありません。
一方、自己PR材料がほかにまったく思いつかず、アピールできそうなことがアルバイトくらいしかなく、しかも、アルバイトはみんな途中で投げ出しているなど、ネタに困って選ぶのは賢明ではありません。
ほかにないから仕方なくではなく、自分のことをPRするにあたり、途中で辞めてしまったアルバイトでの経験やそこから学んだこと、辞めてしまったことから得たものがあるなら、PR材料になります。
辞めてしまったことで自分の性格やその後の行動に大きな変化が起こり、それが強みになった、入社後はそれをバネにしっかりと活躍できるといった話にまとまるなら、ありです。
入社後のイメージがわく自己PRかどうかが重要!
このように、自己PRがアルバイトしかないという人でも、工夫次第で魅力的な自己PRを作ることができます。
志望する企業がどんな人材を求めているかを明確に理解し、自分の経験が入社後どのように活かせるのかを説明できるようにしましょう。