はじめに
理系学部への進学を考えているものの、具体的にどのような種類があり、何を学べるのか分からず悩んでいませんか。
大学の理系学部は、理学部や工学部をはじめ、農学部や薬学部など多岐にわたります。
この記事では、それぞれの学部の特色や学ぶ内容、卒業後のキャリアパスについて詳しく解説します。
自分に合った理系学部を見つけ、後悔のない進路選択をするための参考にしてください。
理系学部とは?文系との違い
理系学部とは、自然科学や数学といった分野を中心に、客観的な事実や法則を探求する学問を学ぶ学部です。
物事の仕組みを論理的に解明することに重きを置いています。
これに対して文系学部は、人間の文化や社会、歴史などを対象とし、多様な視点から物事を考察します。
ここでは、理系と文系の具体的な違いを3つの観点から見ていきましょう。
扱う対象が違う
理系と文系の最も大きな違いは、学問として扱う対象です。
理系学部では、自然界の現象や物質、数学的な法則といった、客観的に観察・測定できるものを研究対象とします。
例えば、物理学では物体の運動法則を、化学では物質の変化を、生物学では生命現象を扱います。
実験や観察を通じて、誰が検証しても同じ結果が得られる普遍的な真理を探求するのが特徴です。
一方、文系学部が扱うのは、人間の思想や文化、社会制度、歴史といった、人の手によって作られたものです。
これらは時代や文化によって解釈が異なり、絶対的な正解が存在しない場合も少なくありません。
文献を読み解いたり、社会調査を行ったりしながら、多様な視点から物事を深く考察していきます。
勉強の仕方が違う
扱う対象が異なるため、勉強の仕方も大きく異なります。
理系学部の学びは、実験、演習、実習が中心です。
講義で学んだ理論を、実際に手を動かして検証し、データを取り、分析することで理解を深めていきます。
数学や物理学などの基礎科目を積み上げて、その上に専門分野の知識を構築していくため、一度つまずくと先に進むのが難しくなるという特徴があります。
そのため、日々の予習復習と、論理的な思考の積み重ねが不可欠です。
一方、文系学部の勉強は、文献の講読やレポート作成、ディスカッションなどが中心となります。
膨大な資料を読み込み、自分なりの問いを立てて、多様な視点から物事を分析・考察する能力が求められます。
自分の考えを文章や言葉で的確に表現する力も重要になります。
将来のキャリアが違う
理系学部と文系学部では、卒業後のキャリアパスにも違いが見られます。
理系学部で身につけた専門知識や技術は、特定の職種に直結しやすいのが特徴です。
例えば、工学部であればエンジニアや開発職、薬学部であれば薬剤師や研究職といったように、大学での学びを直接活かせる専門職に進む学生が多くいます。
そのため、キャリアプランを具体的に描きやすいといえるでしょう。
一方、文系学部の卒業生は、特定の職種に限定されず、幅広い業界で活躍する傾向があります。
営業、マーケティング、企画、人事など、コミュニケーション能力や分析力、思考力を活かせる職種に進むことが多いです。
専門性よりも、汎用的なビジネススキルが求められるジェネラリストとしてのキャリアを歩む人が多いのが特徴です。
理系学部を選ぶメリット
理系学部を選ぶことには、多くのメリットが存在します。
専門的な知識やスキルが身につくため、将来のキャリアを描きやすいだけでなく、論理的思考力といった社会で広く役立つ能力も養われます。
また、専門職は景気の変動を受けにくく、安定したキャリアを築きやすいという点も大きな魅力です。
ここでは、理系学部を選ぶことの具体的なメリットを3つ紹介します。
専門性が高くキャリアパスが明確
理系学部で学ぶ内容は、その多くが特定の専門分野に深く関連しています。
例えば、機械工学や情報工学、薬学といった分野では、社会で直接的に必要とされる知識や技術を体系的に学びます。
この高い専門性のおかげで、卒業後のキャリアパスが非常に明確になります。
自分が大学で何を学び、どのようなスキルを持っているのかを企業に対して具体的にアピールしやすいため、就職活動を有利に進められることが多いです。
エンジニア、研究者、薬剤師、データサイエンティストなど、専門職としての需要は安定しており、自分の学びを社会でどう活かしたいかというビジョンを持っている人にとっては、非常に魅力的な環境だといえるでしょう。
論理的思考力と問題解決能力が身に付く
理系学部のカリキュラムは、論理的思考力と問題解決能力を養うように設計されています。
数学の証明問題、物理の法則の理解、化学の実験、プログラミングなど、全ての学習過程において、物事の因果関係を考え、筋道を立てて結論を導き出す訓練が繰り返されます。
実験や研究では、仮説を立て、それを検証し、得られたデータから考察するという科学的なプロセスを実践します。
このプロセスを通じて、複雑な問題に直面した際に、本質を見抜き、解決策を導き出す能力が自然と身につきます。
これらのスキルは、研究職や技術職はもちろんのこと、どのような業界や職種においても高く評価される普遍的な能力です。
不況に強い専門職に就ける
理系学部の卒業生が就くことの多い専門職は、社会のインフラや人々の生活に不可欠なものが多く、景気の動向に左右されにくいという強みがあります。
例えば、メーカーの技術者、ITエンジニア、医療従事者、インフラ系の技術者などは、経済がどのような状況であっても常に一定の需要があります。
AIやIoTといった新しい技術の発展も、理系人材の活躍の場をさらに広げています。
このように、専門的なスキルを持つ人材は代替が難しく、企業にとって貴重な存在です。
そのため、経済が不安定な時期でも比較的安定した雇用が期待でき、長期的な視点で安心してキャリアを築いていける可能性が高い点は、理系学部を選ぶ大きなメリットの一つです。
理系学部を選ぶデメリット
多くのメリットがある一方で、理系学部にはいくつかのデメリットも存在します。
学問の特性上、一度専攻を決めると変更が難しかったり、基礎科目の負担が大きかったりと、入学前に理解しておくべき点があります。
また、卒業に向けて研究や論文に多くの時間を費やす必要があることも、理系学部ならではの特徴です。
ここでは、そうしたデメリットについて具体的に見ていきましょう。
専攻分野の変更ができない
理系学部の学問は、基礎から専門へと段階的に知識を積み上げていく体系になっています。
そのため、一度入学した学科や専攻から、別の分野へ途中で変更することは非常に難しいのが実情です。
例えば、2年生から機械工学を学び始めた学生が、3年生から情報工学に移りたいと思っても、情報工学の専門科目を理解するために必要な基礎科目を履修していないため、現実的ではありません。
文系学部では比較的柔軟に専門分野を変更できる場合もありますが、理系学部では最初の選択がその後の大学生活とキャリアに大きく影響します。
入学前に自分の興味や適性を深く考え、慎重に学部学科を選ぶ必要がある点は、デメリットといえるかもしれません。
基礎科目の履修負担が大きい
理系学部では、専門分野を学ぶための土台として、1年次や2年次に数学、物理、化学、生物などの基礎科目を集中的に履修する必要があります。
これらの科目は、高校で学んだ内容よりもさらに高度で抽象的なものが多く、講義についていくだけでも多くの時間と努力が求められます。
実験や演習の授業も多く、レポートの提出に追われることも少なくありません。
この基礎固めの時期は、学業の負担が非常に大きく、大変だと感じる学生も多いです。
しかし、この基礎がなければ、その後の専門的な学びを深めることはできません。
専門分野への興味だけで進学すると、この基礎科目の多さに圧倒されてしまう可能性があるため注意が必要です。
研究や論文執筆に時間がかかる
理系学部の学生にとって、卒業研究は大学生活の集大成です。
多くの大学では、4年生になると研究室に配属され、1年間かけて特定のテーマについて研究を行います。
この研究活動は、朝から晩まで研究室にこもって実験を繰り返したり、膨大なデータと向き合ったりと、非常に多くの時間を要します。
指導教員とのディスカッションや研究の進捗報告も頻繁に行われ、精神的なプレッシャーも少なくありません。
最終的には、その研究成果を卒業論文としてまとめる必要があり、執筆にも多大な労力がかかります。
サークル活動やアルバイトなど、学業以外の活動に時間を割くのが難しくなることも多く、研究中心の生活になることは覚悟しておく必要があります。
理系学部の種類:理学部
理学部は、自然科学の基礎的な分野を探求する学部です。
数学、物理学、化学、生物学、地学といった学問を通じて、自然界に潜む普遍的な法則や原理を解明することを目指します。
工学部が科学技術の応用を目的とするのに対し、理学部は純粋な知的好奇心に基づき、真理を探究することに重きを置いています。
なぜそうなるのかという根本的な問いに挑みたい学生に適した学部です。
数学科
数学科では、数や図形、空間の性質などを扱う代数学、幾何学、解析学といった純粋数学と、それを社会の様々な問題に応用する応用数学を学びます。
具体的な物事を扱う他の理系学科とは異なり、数学科では論理的な思考力そのものを鍛えるのが特徴です。
授業は講義と演習が中心で、定義を理解し、定理を証明していくプロセスを繰り返します。
卒業生は、その高度な論理的思考力と抽象的な思考能力を活かし、IT業界でプログラマーやデータサイエンティストになったり、金融業界でアクチュアリーやクオンツとして活躍したりするほか、教員になる道も開かれています。
数学という言語で世界の真理を追求したい人向けの学科です。
物理学科
物理学科は、自然界のあらゆる現象の根底にある普遍的な法則を探求する学問です。
素粒子や原子核といったミクロの世界から、宇宙全体というマクロの世界まで、その研究対象は非常に広大です。
力学、電磁気学、熱力学、量子力学といった基礎的な理論を学んだ後、素粒子物理学、物性物理学、宇宙物理学などの専門分野の研究に進みます。
実験と理論の両面からアプローチするのが特徴で、高度な数学力も要求されます。
卒業後は、大学院に進学して研究者を目指す学生が多いほか、電気機器メーカーや精密機器メーカーで技術者として活躍したり、その分析能力を活かしてIT業界や金融業界に進んだりする人もいます。
化学科
化学科は、物質の構造、性質、そして物質同士の反応を原子や分子のレベルで解明する学問です。
高校で学ぶ有機化学、無機化学、物理化学をさらに深く掘り下げ、分析化学や高分子化学といった応用分野まで幅広く学びます。
理系学部の中でも特に実験が多いのが特徴で、学生は多くの時間を実験室で過ごし、実際に手を動かしながら化学の原理を体得していきます。
卒業生は、その専門知識を活かして化学メーカー、製薬会社、食品メーカー、化粧品会社など、幅広い業界で研究開発職や品質管理職として活躍します。
新しい物質を創り出すことに興味がある人に向いている学科です。
生物学科
生物学科では、分子や細胞のレベルから、個体、生態系に至るまで、あらゆる生命現象を研究対象とします。
遺伝子を扱う分子生物学や生化学、動植物の分類や生態を研究する分類学や生態学など、その研究分野は多岐にわたります。
授業では、講義に加えて顕微鏡を使った観察や解剖などの実験、野外でのフィールドワークなどが多く行われます。
生命の神秘を探求したいという純粋な好奇心が学びの原動力となるでしょう。
卒業後は、大学院に進学して研究を続ける人が多いですが、製薬会社や食品メーカーの研究開発職、環境系のコンサルタント、あるいは博物館の学芸員や教員など、多様なキャリアパスが開かれています。
地学科・地球科学科
地学科や地球科学科は、私たちが住む地球そのものを研究対象とする学問です。
地球の成り立ちや構造を研究する地質学、地震や火山活動を扱う地球物理学、気象や海洋を研究する大気海洋科学、さらには太陽系の惑星や宇宙空間まで、非常にスケールの大きな分野を扱います。
野外での地質調査や観測といったフィールドワークが重要な学習方法となるのが特徴です。
自然災害のメカニズム解明や、資源探査、環境問題の解決などに貢献することを目指します。
卒業生は、その専門性を活かして、建設コンサルタント、資源エネルギー関連企業、気象関連企業、あるいは国や地方自治体の職員として防災や環境保全の分野で活躍しています。
理系学部の種類:工学部
工学部は、理学部などで解明された科学的な原理や法則を応用し、私たちの生活を豊かにするための技術や製品を創り出すことを目的とした学部です。
いわば、科学と社会をつなぐ架け橋のような存在といえます。
機械、電気、建築、情報など、その分野は社会のニーズを反映して多岐にわたります。
ものづくりを通じて社会に貢献したいという強い意欲を持つ学生に適した学部です。
機械工学科
機械工学科は、工学部の中でも最も代表的な学科の一つであり、あらゆる産業の基盤となる機械について学びます。
材料力学、熱力学、流体力学、機械力学の四力学を基礎とし、機械の設計、製作、制御に関する知識と技術を体系的に習得します。
研究対象は、自動車や航空機、ロボット、医療機器、家電製品など、非常に幅広いです。
卒業生の活躍の場も多岐にわたり、自動車メーカー、重工業、電機メーカー、精密機器メーカーなど、あらゆる製造業で設計開発や生産技術のエンジニアとして求められています。
社会を支えるものづくりの中核を担いたい人にとって、魅力的な選択肢となるでしょう。
電気電子工学科
電気電子工学科は、電気エネルギーや電子、情報通信といった現代社会に不可欠な技術を扱う学問です。
その領域は、発電所から送電網に至る電力システムのような大規模なものから、スマートフォンに内蔵される半導体チップのような微細なものまで、非常に広範です。
電気回路、電磁気学、電子物性、情報理論などを基礎から学び、エネルギー、エレクトロニクス、情報通信の各分野の専門知識を深めていきます。
卒業生は、電力会社、電機メーカー、通信会社、自動車業界、IT業界など、社会のインフラを支える様々な分野で活躍しており、AIやIoTの発展に伴い、その需要はますます高まっています。
建築学科
建築学科は、人々が安全で快適に過ごせるための建物や空間を創造するための学問です。
建物の構造を支える構造力学や、快適な室内環境を実現する環境工学といった工学的な知識に加え、美しいデザインを生み出すための芸術的な感性も同時に求められるのが大きな特徴です。
歴史的な建造物から最先端の建築技術まで幅広く学び、製図や模型制作といった演習を通じて実践的なスキルを磨きます。
卒業後は、建築家やデザイナーとして設計事務所で働くほか、建設会社で施工管理に携わったり、デベロッパーとして都市開発に関わったりと、多様なキャリアが開かれています。
人々の暮らしの舞台を創りたいという情熱を持つ人に適しています。
情報工学科
情報工学科は、コンピュータの仕組みやソフトウェア、情報通信技術について専門的に学ぶ学科です。
プログラミング言語、アルゴリズム、データ構造といったソフトウェアの基礎から、コンピュータのハードウェア設計、ネットワーク技術、人工知能(AI)、データサイエンスまで、その教育・研究内容は多岐にわたります。
現代社会はあらゆるものが情報技術によって支えられているため、情報工学科の卒業生は引く手あまたです。
IT企業でシステムエンジニアやプログラマーとして活躍するほか、メーカー、金融、コンサルティングなど、あらゆる業界でDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する人材として期待されています。
応用化学科
応用化学科は、化学の知識を基盤として、社会に役立つ新しい物質や材料を創り出すことを目指す学問です。
理学部の化学科が基礎原理の探求に重点を置くのに対し、応用化学科は製品化や実用化を強く意識しているのが特徴です。
高機能なプラスチックや新しい医薬品、環境に優しいエネルギー材料の開発など、その研究テーマは現代社会の課題解決に直結しています。
卒業生は、化学メーカー、製薬会社、素材メーカーなどで研究開発職に就き、私たちの生活を豊かにする新製品の開発に貢献します。
化学の力でものづくりに挑戦したいという意欲のある学生に最適な学科です。
経営工学科
経営工学科は、工学的なアプローチを用いて、企業などの組織における生産や経営の効率を最大化することを目指す、少しユニークな学問分野です。
数学的な手法を用いて最適な生産計画を立てるオペレーションズリサーチ、製品の品質を管理する品質管理、人間が働きやすい環境を設計する人間工学などを学びます。
理系の論理的思考力と、経営学の視点を併せ持つ人材を育成するのが目的です。
卒業生は、製造業の生産管理部門や品質保証部門、IT企業のシステムコンサルタント、金融機関など、幅広い分野で活躍しています。
ものづくりの現場をより良くしたい、あるいはデータに基づいて合理的な意思決定を行いたいと考える人に適しています。
金融工学科
金融工学科は、高度な数学や統計学、コンピュータ技術を駆使して、金融市場の分析や金融商品の開発、リスク管理などを行う比較的新しい学問分野です。
デリバティブなどの複雑な金融商品の価格を理論的に算出したり、膨大な市場データから将来の価格変動を予測するモデルを構築したりします。
確率論や統計学、プログラミングなどの知識が不可欠であり、非常に高い数理的能力が求められます。
卒業生の多くは、投資銀行や証券会社、資産運用会社といった金融機関で、クオンツと呼ばれる専門職として活躍します。
数学やデータ分析を武器に、グローバルな金融の世界で挑戦したいという学生に向いている学科です。
理系学部の種類:農学部
農学部は、食料の生産、生命科学、環境保全といった、人類の生存に不可欠なテーマを扱う学部です。
かつての農業生産を中心とした学問から、バイオテクノロジーや環境科学など、その領域は大きく広がっています。
食料問題や環境問題といった地球規模の課題解決に貢献したいと考える学生にとって、多くの学びが得られる学部です。
農学科
農学科は、米や野菜、果物といった作物の安定的な生産と品質向上を目指す学問です。
植物の生理や遺伝、土壌の性質、病害虫からの防御、栽培技術などを科学的に学びます。
遺伝子組換え技術による品種改良や、環境負荷の少ない持続可能な農業システムの構築なども重要な研究テーマです。
理論だけでなく、大学の農場での実習を通じて実践的なスキルを身につける機会も多くあります。
卒業生は、食品メーカーや種苗会社、農業関連団体、あるいは公務員として農業技術の指導や研究に携わるなど、食料生産の最前線で活躍します。
植物を育て、食を支える仕事に興味がある人に向いています。
農芸化学科
農芸化学科は、化学と生物学の手法を用いて、農業や生命に関連する様々な現象を分子レベルで解明し、応用することを目指す学問です。
土壌中の化学物質の動きや、農薬・肥料の開発、食品の栄養成分や機能性の分析、微生物を利用した発酵食品の製造技術など、その研究対象は非常に広範です。
化学と生物学の両方に興味がある学生に適しています。
卒業生は、食品メーカー、飲料メーカー、製薬会社、化学メーカーなど、幅広い業界で研究開発職や技術職として活躍しています。
生命の仕組みを化学的に解き明かし、人々の暮らしに役立てたいと考える人におすすめの学科です。
応用生物学科
応用生物学科は、生物が持つ多様な機能を解明し、それを私たちの生活に役立つ技術に応用することを目指す学問で、バイオテクノロジーの中核を担います。
微生物や動植物、昆虫などを対象に、遺伝子工学や細胞工学といった最先端の技術を駆使して研究を行います。
医薬品や機能性食品の開発、環境浄化に役立つ微生物の利用など、その応用範囲は非常に広いです。
卒業後は、製薬会社、食品メーカー、化学メーカーなどの研究開発部門で、バイオ技術を活かした新製品開発に携わることが期待されます。
生命の可能性を追求し、新しい価値を創造したいという探究心旺盛な人に適しています。
畜産学科
畜産学科は、牛、豚、鶏といった家畜を対象に、その生産から加工、流通までを科学的に学ぶ学問です。
家畜の遺伝や育種、栄養、繁殖に関する知識を深め、より効率的で安全な食肉や牛乳、卵などの生産方法を探求します。
また、動物の健康を守るための飼養管理技術や、家畜の排泄物処理といった環境問題、動物の福祉(アニマルウェルフェア)についても学びます。
卒業生は、食品メーカー、飼料会社、牧場、農業関連団体などで、畜産業界の発展に貢献します。
動物が好きで、安全な食料の安定供給という社会的な使命に貢献したいと考える人に向いている学科です。
獣医学科
獣医学科は、動物の病気の診断、治療、予防を専門的に学ぶ学科です。
一般的に6年制の教育課程が組まれており、解剖学や生理学といった基礎的な学問から、内科学、外科学といった臨床的な学問まで、幅広く深く学びます。
対象となる動物も、犬や猫といった小動物から、牛や馬といった大動物、さらには水族館や動物園の動物まで多岐にわたります。
また、人獣共通感染症の研究や、食肉の安全性を確保する公衆衛生の分野も重要な役割です。
卒業し、獣医師国家試験に合格すると獣医師となり、動物病院や畜産現場、公務員、製薬会社など、様々な場所で動物と人の健康を守るために活躍します。
理系学部の種類:薬学部
薬学部は、医薬品に関する総合的な教育と研究を行う学部です。
薬がどのように体内で作用するのか、どのように新しい薬を創り出すのかといった科学的な探求から、薬の適正な使用を社会に普及させる役割までを担います。
人の健康に直接貢献したいという強い意志を持つ学生が集まる学部であり、主に6年制と4年制の2つの学科に分かれています。
薬学科(6年制)
6年制の薬学科は、薬剤師の養成を主な目的としています。
4年制の薬科学科よりも、医療現場で求められる実践的な知識や技能の習得に重点が置かれています。
病院や薬局での長期にわたる実務実習が必修となっており、患者さんとのコミュニケーションやチーム医療における薬剤師の役割を具体的に学びます。
卒業要件を満たし、薬剤師国家試験に合格することで薬剤師の資格を取得できます。
卒業後の進路は、病院や調剤薬局、ドラッグストアの薬剤師が中心ですが、製薬企業で医薬品の情報提供を行うMRや、公務員として薬事行政に携わる道もあります。
薬科学科(4年制)
4年制の薬科学科は、主に創薬研究者の育成を目的としています。
薬剤師の養成を目指す6年制課程とは異なり、医薬品開発の基礎となる科学的な探求に多くの時間が割かれます。
有機化学、物理化学、生物学といった基礎科学を土台に、新しい薬の候補となる化合物をどのように設計し、合成し、その効果を評価するのかを学びます。
卒業しても薬剤師国家試験の受験資格は得られませんが、卒業生の多くは大学院に進学し、より高度な研究能力を身につけます。
修了後は、製薬会社や化学メーカー、食品メーカー、化粧品会社などの研究開発職として、新薬や新素材の開発の最前線で活躍することが期待されます。
理系学部の種類:医学部・歯学部
医学部と歯学部は、人の生命と健康に直接関わる医療専門家を養成するための学部です。
人の命を預かるという重い責任を担うため、非常に高度な専門知識と技術、そして高い倫理観が求められます。
いずれも修業年限は6年で、卒業後には国家試験の合格が必要です。
医療を通じて社会に貢献したいという強い使命感を持つ学生のための学部といえます。
医学科
医学科は、医師を養成するための6年制の学科です。
最初の2年間で解剖学や生理学、生化学といった基礎医学を学び、その後、内科学や外科学などの臨床医学を学びます。
高学年になると、大学病院での臨床実習が始まり、指導医のもとで実際に患者さんの診察や治療に参加し、医師として必要な知識、技術、態度を身につけます。
卒業後、医師国家試験に合格すると医師免許が与えられ、その後2年間の初期臨床研修を経て、専門の診療科に進むのが一般的です。
臨床医として病院や診療所で働くほか、大学や研究機関で病気の原因解明や新しい治療法の開発に取り組む研究医の道もあります。
看護学科
看護学科は、主に看護師を養成するための4年制の学科です。
人体の構造や機能、病気の成り立ちといった医学的な知識に加え、患者さんの心に寄り添うためのコミュニケーション技術や、療養生活を支援するための看護技術を学びます。
講義だけでなく、病院や地域の保健施設など、様々な場所での臨地実習が多く組まれているのが特徴で、多様な健康状態にある人々へのケアを実践的に習得します。
卒業時に看護師国家試験の受験資格が得られ、合格すると看護師として病院やクリニックで働きます。
さらに、所定の課程を修了すれば、保健師や助産師の国家試験受験資格を得ることも可能です。
歯学科
歯学科は、歯科医師を養成するための6年制の学科です。
歯や口の中の病気の予防、診断、治療に関する専門知識と技術を学びます。
口腔は、食事や会話といった生活の根幹を支える重要な器官であり、その健康は全身の健康にも深く関わっています。
学生は、解剖学などの基礎医学から、虫歯の治療を行う保存修復学、歯周病を扱う歯周病学、歯並びを整える矯正歯科学、さらには口腔外科まで、幅広い専門分野を学びます。
高学年での臨床実習を経て、歯科医師国家試験に合格すると歯科医師免許を取得できます。
卒業後は、研修医を経て、歯科診療所を開業したり、病院の歯科口腔外科に勤務したりします。
理系学部選びで失敗しないためのポイント
理系学部は専門性が高く、一度選ぶと進路の変更が難しいため、学部選びは非常に重要です。
自分の興味や適性を深く見つめ直し、大学ごとの特色をしっかり調べ、将来のキャリア像を具体的に描くことが、後悔のない選択につながります。
ここでは、理系学部選びで失敗しないための3つの重要なポイントを解説します。
興味や適性を知る
理系学部の学問は、探究心がなければ続けるのが難しい分野です。
まずは自分が純粋に何に興味を持てるのかを自己分析することが最も重要です。
物理現象の原理を解明したいのか、新しい物質を創り出したいのか、生命の神秘に迫りたいのか、あるいはものづくりで社会に貢献したいのか。
高校までの科目で、どの分野の勉強が一番楽しいと感じたかを振り返ってみましょう。
また、実験やデータ分析といった地道な作業が好きか、論理的に物事を考えるのが得意かといった、自分の適性も考慮に入れる必要があります。
オープンキャンパスに参加して模擬授業を受けたり、大学の先生や学生に話を聞いたりするのも、自分の興味や適性を知る良い機会になります。
大学ごとの特色を調べる
同じ名前の学部や学科であっても、大学によって教育内容や研究の強みは大きく異なります。
例えば、同じ機械工学科でも、A大学はロボット研究に、B大学は航空宇宙工学に力を入れているといった違いがあります。
そのため、大学のウェブサイトやパンフレットを熟読し、どのような研究室があり、どんな教授が在籍しているのかを詳しく調べることが不可欠です。
特に、自分が興味を持つ分野で著名な研究者がいる大学は、より深く専門性を追求できる可能性があります。
また、カリキュラムの構成や、取得できる資格、就職実績なども重要な判断材料になります。
複数の大学を比較検討し、自分の学びたいことと最も合致する場所を見つけましょう。
将来のキャリアを考える
理系学部での学びは、将来の職業に直結することが多いため、大学卒業後のキャリアを具体的にイメージすることも大切です。
自分がどのような業界で、どのような職種に就きたいのかを考えてみましょう。
例えば、自動車メーカーでエンジニアになりたいのであれば、機械工学科や電気電子工学科が候補になります。
製薬会社で研究者になりたいなら、薬学部や理学部の化学科、生物学科、農学部の農芸化学科などが考えられます。
企業のウェブサイトで社員の出身学部を調べたり、大学が公表している就職先データを確認したりするのも有効です。
将来の目標が明確になることで、その実現のためにどの学部で何を学ぶべきかが見えてきて、より的確な学部選びができるようになります。
まとめ
理系学部と一言でいっても、その種類は理学部、工学部、農学部、薬学部、医学部など非常に多岐にわたり、それぞれに学問の特色と目指せるキャリアが異なります。
自分にとって最適な学部を選ぶためには、まず自分の興味や適性を深く理解することが不可欠です。
その上で、各大学の特色や研究内容を丁寧に調べ、将来のキャリアプランと照らし合わせながら、総合的に判断することが後悔しない進路選択につながります。
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