近年の採用活動では、多様な働き方や価値観に対応する必要性が高まっています。
その中で注目を集めるのが「パーソナライズ採用」という採用手法です。先日日立製作所も力を入れることを発表したため話題ですね。
本記事では、パーソナライズ採用の特徴や他の採用方式との違い、メリット・デメリット、そして内定を獲得するためのポイントを新卒就活生向けに詳しく解説します。
そもそも「パーソナライズ採用」とは?
「パーソナライズ」とは、英語の「personalize(個人に合わせる)」のことで、商品、サービス、プロセスを個々のニーズや特性に最適化することを指します。
たとえばInstagramやTikTokを開けば、自分の趣味や嗜好に合った広告や投稿が表示されますよね。
また個人の嗜好に合わせたプレイリストを音楽ストリーミングサービスが自動的に作成してくれる、なんてこともその一例です。
「パーソナライズ採用」は、この「パーソナライズ」の考え方を採用活動に取り入れたものです。
候補者の性格、スキル、経験、価値観、志向性に基づいて、採用プロセスを設計・調整する方法がパーソナライズ採用の採用手法になります。
ジョブ型採用・メンバーシップ型との違い
ジョブ型採用は、事前に定義された業務内容やポジションに基づいて採用活動を行う形式です。
「ある一定の資格を持っていること」「〜億円以上のプロジェクトに参加した経験を持っていること」などというように、仕事(ジョブ)に必要な能力を採用基準として採用を行います。
一方で、パーソナライズ採用はジョブ型を基盤としつつ、候補者ごとの特性や可能性に応じて採用基準を調整します。
- ジョブ型採用では「プログラミング経験」「基本情報技術者の取得」を採用基準とする。
- パーソナライズ採用では、スキルだけでなく、将来的な成長性や適応能力も重視する(プログラミング経験はないが熱意があって必要な地頭がある、など)。
メンバーシップ型採用は、企業全体での長期的な人材育成を重視し、入社後に適した職種や部門を決める形式です。
新卒総合職の採用に多く見られる採用方式ですが、パーソナライズ採用とは、まず採用してから職種を考えるか、入り口から職種を絞るか、という点で異なります。
パーソナライズ採用のメリットとデメリット
パーソナライズ採用を導入することには、企業にとっても学生にとっても、メリットとデメリットが存在します。
ここでは就活生にとって関係が深いメリット、デメリットをそれぞれ2つずつ解説します。
メリット
- 適所適材が実現できる
- 離職率の低下が見込まれる
一つ目のメリットは「適所適材が実現できる」ことです。
「適材適所」に対して仕事が先に来る採用手法であることから、日立製作所はあえて逆にした「適所適材」という言葉を使用しています。
パーソナライズ採用では、必要なスキルを持つ人材を必要な職務に配置できるため、業務効率や成果が向上するのです。
また、自分の強みを最大限発揮できる環境で働けるため、入社後の業務に対するミスマッチが少なくなり、入社後の満足度が向上します。
これにより、離職率の低下が見込まれるのも大きなメリットです。
デメリット
- 選考期間が長期化する
- 公平性に懸念の声がある
パーソナライズ採用では、就活生ごとに異なる選考フローを設計することになります。
結果として、採用フローが確立されているわけではないので、エントリーから採用にいたるまでの期間が伸びる可能性があります。
また、個人ごとに選考フローが異なるということは、選考内容や基準が候補者によって異なるということになります。
これに対して基準が統一されておらず「不公平だ」と感じる就活生も出てきてしまうでしょう。
これはパーソナライズ採用を導入するデメリットであり、この採用手法自体の大きな課題でもあります。
パーソナライズ採用で内定を獲得するためのポイント
- やりたい仕事への理解を深める
- 必要なスキルを極める
パーソナライズ採用を実施する企業は今後ますます増えていくと予想されます。
ここでは、今後パーソナライズ採用の実施企業にエントリーした際に、どのようなポイントをおさえることで内定に近づくのかを徹底解説します。
自分に向いている仕事を知っておく
パーソナライズ採用は、企業が求める職種を限定して応募できるため、どの職種に応募するか、という点が鍵になっていきます。
ここで自分の特性を理解していないと「やりたい」という理由だけで自分に向いていない職種にエントリーしていくことになってしまい、適性がないと判断され選考を通過できません。
事前に自己分析や適職診断を通して、自分に向いている仕事を必ず確認しておきましょう。
やりたい仕事への理解を深める
自分が希望する職種や事業の業務内容を深く理解し、その職種に求められるスキルや適性を明確にしましょう。
パーソナライズ採用では、前提として、企業に必要な職種の募集がされています。
つまり、その職種にふさわしい人材であることをアピールできれば、企業に必要な人材である、と判断される可能性が高くなるのです。
業務理解を深められたら、求められる人物像から効果的なアピールポイントや経験を逆算して、それらを具体的なエピソードや実績からアピールすることが重要です。
必要なスキルを極める
パーソナライズ採用では、職種ごとの専門性が求められる場合も少なくありません。
そのため、選考に進む前にその分野のスキルを徹底的に磨きましょう。
たとえば、エンジニア職ならプログラミングスキル、営業職ならコミュニケーション能力を具体例を交えてアピールすることで、高評価を受けることが可能です。
パーソナライズ採用を実施している企業は、事業理解、職種理解が深い学生にエントリーしてほしいと考えています。そのためジョブ型インターンシップ(職種を指定して参加するインターンシップ)を実施している場合も少なくありません。
インターンシップを開催している場合は積極的に参加して、業務内容を理解し、必要なスキルや経験を吸収できるようにしておきましょう。
今後予想されるパーソナライズ採用の動き
- 大手企業に広がっていく
- AI技術のさらなる活用
最後に、今後予想されるパーソナライズ採用に関する動きを解説します。
パーソナライズ採用はまだ近年普及し始めたばかりであり、課題も多く残る採用方式です。
課題解決のためにどのような動きが広まっていくのか、ぜひ参考にしてください。
大手企業に広がっていく
現時点では、文化形成を重視するスタートアップやベンチャー企業での導入が中心ですが、今後は多くのポジションを抱える大手企業での導入が進むと予想されます。
パーソナライズ採用の本質は求職者、就活生が求める職種にエントリーできるところにあります。
そのため、事業内容が広がる段階にない中小企業では、そのメリットを活かしきれていないのです。
しかし先日日立が導入、深化に踏み切ったことでハードルが下がり、他の大手企業も推進していくこととなる可能性があります。
特に、個別対応が必要な専門職やエグゼクティブ採用での活用が期待されます。
AI技術のさらなる活用
選考プロセスの透明性や公平性を向上させるために、AIを活用した選考ツールの導入が進むと考えられます。
例えば、AIが候補者の履歴書や性格診断結果を分析し、採用担当者に客観的なデータを提供する仕組みが普及していくのではないでしょうか。
数年前からWebテストや適性検査を導入する企業が増えているように、統一化されたデータによって応募者の特性を測ろうとする動きはすでにみられています。
ここに進化し続けているAI技術が取り入れられ、さらに活用されていくと予想されます。
まとめ
パーソナライズ採用は、企業と候補者双方にとって大きな可能性を秘めた採用手法です。
今後の就活では、自分の希望やスキルを明確にし、企業との相互理解を深める努力が求められます。
不安がある場合は、専門サービスを活用し、適切な準備を進めましょう。
明治大学院卒業後、就活メディア運営|自社メディア「就活市場」「Digmedia」「ベンチャー就活ナビ」などの運営を軸に、年間10万人の就活生の内定獲得をサポート
柴田貴司
(就活市場監修者/新卒エージェント本部幹部)
柴田貴司
(就活市場監修者)
パーソナライズ採用では、企業が自社の事業や成長に必要な職種を設定して募集をかけ、その職種に応募したい就活生のエントリーを受け付ける、という採用手法をとります。
つまり、欲しいところに行きたい人が来る、というわけなので、企業と就活生双方にとって最適なマッチングを目指すことができるのです。