就活生の人気が高い食品業界。
その食品業界は、近年少子化や食に対する価値観の多様化、人手不足、環境問題への対応などさまざまな課題を抱えています。
本記事では、最新の食品業界の課題について解説していきます。
業界の課題を理解することは、業界の全体像の理解につながったり、面接対策、志望動機の強化などにつながります。
食品業界を志望する方や、食品業界に興味を持っている方はぜひ参考にしてみてください。
目次[目次を全て表示する]
食品業界が抱える課題
食品業界には非常に多くの課題があります。
業界の動向・将来性などを知るうえで、課題について理解を深めることは重要なため、一つひとつの問題点をチェックしていきましょう。
おもな課題は、以下の6つです。
- 人口減少と高齢化
- 労働力不足
- 環境問題への対応
- 品質管理
- 競争の激化
- 原材料費・人件費・物流費の高騰
食品業界を目指す際は、業界研究の一環として以上の課題を理解したうえで、自分のアピール内容などに活かしていく必要があります。
なお、食品業界の具体的な仕事内容についてはこちらの記事でまとめているため、あわせてチェックしてみてください。
人口減少と高齢化
日本では、近年人口減少と高齢化が著しく進んでおり、多くの業界に影響を与えています。
食品業界もその例に漏れず、人口減少・高齢化に伴って、解決しなければならない課題は山積している状態です。
まず、高齢化に伴う若年層の人口減少は看過できない状態にあり、若年層の購買力・ニーズは縮小しています。
子どもが喜ぶようなお菓子やジャンクフードなどは昔と比べて消費が少なくなり、代わりに高齢者向けの健康志向の食品が人気を集めています。
機能性食品は年齢を重ねた世代からの支持が厚く、高齢化に伴い、今後はメインのニーズとして注目されていくと考えられます。
したがって、これまでと同じターゲット市場で競争することは難しく、多くの企業が主力商品やメインターゲットの再検討を余儀なくされているのです。
労働力不足
食品業界が直面している課題といえば、労働力不足の問題が挙げられます。
労働力不足を引き起こしているのは、こちらも同様に少子高齢化の影響であり、働き手の減少はどこの企業においても解決すべき課題となっています。
また、季節労働者・外国人労働者に依存している企業も、働き手の確保に悩んでいる状況です。
現在は各国の経済成長が進み、日本ばかりが出稼ぎ先として選ばれるわけではなくなった点も、外国人労働者の確保が難しい原因の一つといえるでしょう。
なお、労働力不足の解決策には、IT活用による業務の自動化やAI技術の応用が挙げられます。
しかし技術の普及にはまだまだ時間がかかっているのが実情で、現状、人が職に困るほど自動化・AI活用が進んでいるわけではありません。
環境問題への対応
食品業界にとって環境問題への対応も、解決しなければならない課題の一つです。
食品廃棄物やプラスチック包装の使用量削減は、社会的に大きく求められていることといえます。
特に食材のロスをなくすためのフードロス削減や、サステナビリティに優れた生産方法への転換は、どの食品系企業も直面している課題といえます。
これらの環境配慮の施策は、会社の取り組みとして掲げることは簡単でも、実際に行うことは簡単ではありません。
環境に配慮した包装材への切り替えも、持続可能な生産方法の導入も、多くの業務フロー変更を余儀なくされることは間違いありません。
よって、そのほかにも取り組むべき課題がある中で、なかなか環境問題への対応に取り組めずにいる企業は少なくないでしょう。
品質管理
食品業界が抱える課題を考える中で、品質管理の問題は避けて通れないでしょう。
市場競争の激化や消費者の健康志向が高まる状況下で、近年は、同時に食の安全性・高品質であることへの関心が強まっています。
低品質の商品を消費者に提供すれば、企業の信頼性低下は避けられないため、従業員への教育は非常に重要となります。
また、食品の品質管理・トレーサビリティ(=生産から消費までの詳細を追跡できること)も重視されており、トラブルが起きた際にいかに早期解決できるかが大事になってきます。
しかし以上のことに応えるには、徹底した品質管理システムを全体に取り入れる必要があります。
導入には相当なコストがかかるため、品質を維持したうえでコストをいかに抑えるかが鍵といえるでしょう。
また、大規模なシステムを導入すれば現場の混乱を招きやすくなる点も、一つの課題といえます。
競争の激化
食品業界における大きな課題の一つには、競争の激化も挙げられます。
消費者の購買力低下が近年の大きな動きとして見られるため、これに伴い市場が縮小し、競争激化につながっていると考えられます。
ほかには、海外から食品輸入の増加も、競争激化を引き起こす要因の一つといえるでしょう。
そのため多くの企業は、課題解決を目指してコスト削減や自社ブランドの開発などに力を入れています。
コスト削減にはさまざまなアプローチがあり、わかりやすい例でいえば、ITシステムの導入による業務効率化・ペーパーレス化などが挙げられます。
また、グローバル市場での競争力をキープするためには、高品質化や付加価値の提供が求められるのが現状です。
これまで以上に食品の輸出を促すうえでは、国際基準への適応・マーケティング戦略の見直しなどが欠かせません。
原材料費・人件費・物流費の高騰
食品業界は、原材料費や人件費、物流費の高騰問題に直面しています。
近年は円安などの影響から各種コストが従来より高くつくようになっており、多くの企業が各商品・サービスの値上げを余儀なくされています。
原材料の高騰には異常気象・災害が引き起こす不作も関係しており、災害大国である日本は、ただでさえ災害によって農業に影響が出やすいことが特徴です。
人件費の高騰には、そもそも労働人口が減少していること、働き方改革、最低賃金の見直しなども影響しています。
物流費については、ドライバー不足・ガソリン代の高騰などが原因として挙げられるでしょう。
市場競争が激化している中で商品の値上げを実施すれば、顧客離れにつながり、競合他社に顧客を奪われるきっかけになってしまいます。
かといって価格を据え置いたままではあらゆるコストの負担が増えるため、各企業は、このジレンマをどう解決するか悩まされている状況にあります。
食品メーカーの業種ごとの課題
食品メーカーを目指して就職する際は、業種ごとにどのような課題があるのかもチェックしておきましょう。
食品メーカーと一口にいってもその業種はさまざまあり、業種ごとに抱えている課題も異なることが特徴です。
今回課題を紹介する食品メーカーの業種は、以下のとおりです。
- 加工食品
- 食材
- 飲料・乳業
- 酒類
- 食肉
- たばこ
自分が目指す業種が現状どのような状況にあるのか知るためにも、課題は業界研究の一環としてチェックしておきましょう。
では、詳細を順に解説していきます。
加工食品
加工食品業界は、2022年以降は原材料高に苦しんでおり、価格改定が繰り返し行われているのが現状です。
帝国データバンクの調査によれば、2023年は主要食品メーカー195社の値上げが32,396品目でした。
対して、2024年は5月時点で10,000品目を下回る予想となっていましたが、結果的に10月時点では10,000品目を上回る状態になっています。
また、将来的な人口減少に備える対策を考え、商品のグローバル展開に注力する企業も少なくありません。
国内では今後市場が狭まってしまうため、市場拡大が見込まれる海外に目を向けることでリスク分散する狙いです。
明治ホールディングスのように、ヘルスケア商品など食品以外で利益を生み出し始めている企業も、近年は多くみられます。
食材
食材メーカーでは、近年はウクライナ戦争の影響を受け価格高騰が大きな課題となっていますが、実は業績自体はそこまで悪くありません。
そんな中でより問題となっているのは、地球温暖化に伴う気候変動の影響です。
気候変動が起これば各地で異常気象をもたらす結果になり、各作物の価格には大きく影響を与えることになります。
以前と比べると猛暑の多さや集中豪雨などの異常気象は明らかに増えており、作物の生産をコントロールしにくい状況が続いています。
飲料・乳業
飲料・乳業業界も、原料高や円安などの煽りを受け、2022年以降は値上げが続いている状態です。
しかし大手企業は、値上げにより販売量は減ったものの、価格転嫁・猛暑の影響で黒字に落ち着きました。
これまでの飲料・乳業業界は、消費者庁への届け出のみで効果をPRできる機能性表示食品の販売に注力していましたが、先日起こった小林製薬の「紅麴問題」は一つの転換点になりました。
というのも、問題発生をきっかけとして、国は機能性表示食品制度の見直しに着手するようになったためです。
したがって当該業界は、さまざまな商品戦略の練り直しを余儀なくされているのが現状です。
酒類
酒類業界では、2023年の酒税改正に伴い、ビールの消費が勢いを取り戻しつつあるのが特徴です。
各社ともビール製造に力を入れており、シェア争いが現時点の課題となります。
しかし、健康志向への関心の高まりや人口減少に伴うそもそもの購買力低下などの要因により、2024年時点の国内の酒類市場は縮小の一途をたどっています。
これにより、国内だけでなく海外市場に目を向け、国外にターゲットを絞り始めている企業も多くみられます。
食肉
食肉市場では、値上げによる打撃は決して小さくはないものの、インバウンド回復の効果が近年見られます。
このため、レストランや居酒屋などの外食向けの食肉の売れ行きは好調です。
しかしその一方で、家庭用食肉の需要はそこまで高くなく、外食向けの商品と比べると売上はまずますといったところです。
なお、食肉業界もコスト削減や業務効率化の課題を常に抱えており、昨今は製造ラインの見直し・自動化システムの導入などが重要視されています。
たばこ
たばこ業界では、健康志向の高まりにより、紙たばこの国内需要縮小が課題となっています。
喫煙者の多くは、近年紙たばこから加熱式たばこに移行しており、それに伴って加熱式たばこの販売状況は勢いを増している状況です。
高齢化に伴って健康志向はますます高まると考えられ、今後も選ばれるのは、加熱式たばこのほうが多くなると予想されます。
そのためたばこ業界では、成長の鍵は加熱式たばこにあるといえるでしょう。
ほかには、たばこ製造・販売以外の事業に力を入れ始めている企業も少なくありません。
まとめ
食品業界には多くの課題があるため、食品メーカーなどに就職したい場合は、事前に業界が持つ課題に目を向けておく必要があります。
特に時代の変化・流れに伴う食品ニーズの変化は重要な課題であり、前もって勉強しておけば、今後食品系企業がどう変化していくのかがわかってきます。
それらを理解したうえで志望動機や自己PRなどを作成すると、業界の動向を踏まえたアピールができる場合があり、深みのある文章になるでしょう。
採用担当者から「よく調べてきている」と評価されるきっかけになるため、食品業界について研究を進める際は、業界が現在抱えている課題をチェックしてみてください。
明治大学院卒業後、就活メディア運営|自社メディア「就活市場」「Digmedia」「ベンチャー就活ナビ」などの運営を軸に、年間10万人の就活生の内定獲得をサポート