運送業界の動向はどうなっている?業界の課題や今後について紹介

運送業界の動向はどうなっている?業界の課題や今後について紹介

「運送業界への就職を志望しているけれど、業界の基本情報を知りたい」 「運送業界の動向や課題はどのようになっているの?」 「今後の運送業界の展望を把握して就活の参考にしたい」 このように運送業界に就活を考えている方は、現在の運送業界の動向や課題、今後の展望など知りたいことがたくさんあるのではないでしょうか。

この記事では、運送業界の基本的な情報に加え、運送業界の最近の動向や直面している課題、運送業界を担う有名企業を紹介しています。

この記事を読むことで、運送業界の基本的な情報などがわかるうえ、運送業界の実情や今後の課題に対する取り組み内容が理解できます。運送業界の状況を詳しく知ることで、運送業界への就活の参考にできるでしょう。

運送業界への就活を考えて、運送業界のしくみや課題などをもっと知りたい方は、ぜひチェックしてみてください。

運送業界の基本的な情報について

運送業界は、運輸業界の営業収入約38兆円のうち、約24兆円を占める巨大な産業です。

労働就業者についても、運輸業界全体で約333万人のうち、運送業界で約258万人となっています。全産業就業者数が約6681万人と言われているため、約4%を運送業界の労働就業者が占めていることになります。

貨物輸送量においては国内貨物輸送量で横ばい、国際貨物輸送量は減少傾向で推移しています。

上記のことから、運送業界は営業収入面や労働就業者数からも日本の経済に影響を及ぼす大きなマーケットと言えるでしょう。

出典:物流事業の概況について(1)|国土交通省 参照:https://www.mlit.go.jp/common/001354692.pdf

運送業界の動向について

近年、運送業界は需要が拡大し、業績も右肩上がりとなっています。その成長を支えるものがインターネット通販の拡大です。また、業務拡大などに伴い運送業界への新規参入も増加し、業界企業のM&Aも活発になっています。

ここからは、業界成長の要因となっている事柄について詳しく紹介して行きます。ぜひ参考にしてください。

インターネット通販市場の拡大

近年インターネット通販市場は拡大傾向を見せ、2018年では約18兆円規模、物販系分野では約9.3兆円まで拡大しています。また、利用端末もPCだけではなく、スマートフォンの割合も増加し、市場の拡大に拍車をかけている状況です。

このようなインターネット通販市場の拡大に相まって、宅配便の取扱件数も2018年までの5年間で約6.7億個に増加しています。この宅配便の取扱件数の増加が、運送業界の業績を押し上げている要因と言えるでしょう。

出典:電子商取引(EC)市場の成長と宅配便の増加|国土交通省 参照:https://www.mlit.go.jp/common/001354692.pdf

出典:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました|経済産業省 参照:https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/H30fy_kohyoyoshiryo.pdf

出典:置き配の現状と実施に向けたポイント|経済産業省・国土交通省 参照:https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200331004/20200330004-1.pdf

運送業界への新規参入が多い

運送業界の中において、営業収入や従業員数などの規模で大きな割合を占めるものがトラック運送事業です。

近年、トラック運送事業の新規参入者は増加傾向にあります。その要因としては、平成2年に施行された貨物自動車運送事業法による規制緩和と、ECサイトの拡大による運送需要の増加などが挙げられるでしょう。

比較的少ない投資額でできるトラック運送事業は、新規参入者にとってはビジネスチャンスともなり得ます。

このような新規参入者の多さは、トラック運送事業の特徴のひとつとも言えるでしょう。

出典:貨物自動車運送のあり方|国土交通省 参照:https://www.mlit.go.jp/common/001085123.pdf

運送業界のM&A

上述の新規参入増加の他、運送業界のM&Aも特徴的な事柄でしょう。運送業界では、宅配便の増加などにより業績が伸び続けています。

一方で、運送業界は慢性的な人手不足や同業者間の競争に伴うコスト削減など、多くの課題に直面しています。

そんな先行きの不透明感や、競争による生き残りをかけて行われるものがM&Aです。M&Aは、 企業の合併買収のことで事業領域の拡大などを目指すために行われます。新規参入者の増加と相まって運送業界のM&Aも活発化しています。

運送業界の課題とは?

日本の物流を支える運送業界は、その規模や労働就業者数から、今や一大産業になったと言えるでしょう。また、ECサイトによる市場の拡大に伴う需要の増加も見込まれ、業績も拡大傾向にあります。

一方で、運送業界にはさまざまな課題があるのも事実です。特に顕著なものとしては、労働就業者の問題が挙げられます。

ここでは、運送業界を担う労働就業者に焦点を当て、高齢化などに伴う労働力不足や配送効率、賃金の問題について見て行きましょう。

ドライバーや作業員の不足や配送効率

人手不足は、運送業界に限らず全産業に共通した課題ですが、その中でも、運送業界における人手不足は深刻な問題です。

特に、運送業界を担うドライバーや作業員の不足は、業務を進めるうえで大きな問題となっています。

人手不足を解消するためには、労働条件の改善が重要です。また、長時間労働の要因のひとつともなっている配送の効率化は、早急に解決すべき問題と言えるでしょう。

運送事業者の同一労働同一賃金に関する取り組み

人手不足を解消するためには、就業者の労働条件改善が必要不可欠です。この問題は、運送業界に限らず、全産業に共通することと言えるでしょう。

運送業界では、労働条件改善対策として同一労働同一賃金に関する取り組みを行っています。

同一労働同一賃金は、働き方改革関連法の成立によって実現しました。この取り組みでは、雇用形態にかかわらず、同じ内容の労働に対して、労働者が納得できる待遇が受けられるようになっています。

運送業界においてもこの取り組みが進められているため、今後は多様な働き方が選べるでしょう。

出典:パートタイム・有期雇用労働法に対応したトラック運送事業者のための同一労働同一賃金の手引き|公益社団法人 全日本トラック協会 参照:https://jta.or.jp/wp-content/uploads/2021/05/same_text.pdf

運送業界の今後について

運送業界は、インターネット通販市場の拡大による需要の増加、新規参入者の増加やM&Aによる業界の再編など、巨大産業としての地位を確立し、伸びを示しています。

一方で、人手不足に伴う労働力の不足や、それに呼応する労働条件の改善など課題解決が急務です。

ここからは、運送業界の今後について3つの視点から詳しく見て行きましょう。

海外での事業展開

近年、日本企業ではアジア諸国への事業が拡大していますが、それに伴う貨物量の増大により、物流事業者の海外展開も増えている状況です。

今後、アジア諸国を中心とした海外展開の取り組みを促進するためには、ハードとソフトの両面からの環境整備が必要となってきます。

具体的には、各国との経済連携協定を活用した物流に関する協議や現地での人材育成、物流関連のインフラ整備など、官民が連携して取り組んでいくことが必要となるでしょう。

業務のさまざまな自動化

運送業界では、ドライバーの不足や高齢化、配送効率の低下などが円滑な業務を阻害する要因となっています。

これらの課題を解決するためには、AI、IoT、ロボット等のテクノロジーを活用した業務の自動化が必要です。

国においても、業界と連携して業務工程の動きを可視化し、業務の効率化を図るスマート物流サービスの取り組みを始めています。

また、配送の効率化を図るため、ドローンの活用や物流拠点となる倉庫業務へのロボット導入など、業務のさまざまな自動化試行や実施を推進しています。

働き方の改革

業務の効率化を図るためには自動化も重要ですが、就業者の労働環境の改善も合わせて取り組む必要があります。

中でも、運送業務を担うトラックドライバーの労働条件の改善は急務です。トラックドライバーの低賃金、長時間労働は人手不足の原因ともなっています。

長時間労働の解消に向けては荷主企業と運送事業者が連携し、荷待ち時間の削減など荷役作業の効率化に努めています。

一方、国も働き方改革に取り組むために関係省庁連絡会議を設置し、制度や支援措置を策定・推進しながら、働き方改革の実現を図っているところです。

運送業界を発展させるためには?

現在の運送業界では、インターネット通販市場の拡大やアジア諸国などに向けた海外展開による需要の増加に対応するため、課題解決が急務となっています。

この課題解決なしには、将来に向かっての展望もありません。

業務効率化を推進するための業務工程の見直しや自動化、労働力の不足に対応する労働条件の改善は、運送業界の発展に欠くことがきない要素と言えるでしょう。

運送業界の有名企業を紹介!

就活前に運送業界の有名企業を把握しておきましょう。有名企業はその業界をリードする企業ばかりです。

たとえ有名企業志望でなくても、有名企業を知ることで運送業界の動向などが把握できれば、志望動機の作成にも役立ちます。

ここでは、運送業界の有名企業5社を紹介するため、しっかりと押さえておきましょう。

日本通運株式会社

日本通運株式会社は、2021年12月期の売上高が1兆7632億円の運送業界の大手企業です。自動車事業や海運事業、倉庫・保管事業など幅広く事業展開しています。

海外事業ではアジアから欧米までグローバルネットワークを拡大し、世界レベルの物流ニーズに対応しています。設立以来、日本の運送業界を牽引する企業です。

出典:連結財務ハイライト|日本通運株式会社 参照:https://www.nipponexpress-holdings.com/ja/ir/finance/highlights/

株式会社 日立物流

株式会社日立物流は、国内物流から海外物流まで手掛ける大手企業です。2022年3月期の売上高は7436億円で、サード・パーティー・ロジスティクス(3PL)の先駆者としてシステム物流に取り組み、重量品を輸送し移設しています。

海外展開としては、欧州やアジアを中心に物流ネットワークを構築しています。株式会社日立製作所の業務移管を受けて業務を開始しました。

出典:会社概要|株式会社 日立物流 参照:https://www.hitachi-transportsystem.com/jp/profile/information/outline/

日本郵船株式会社

日本郵船株式会社は、定期船事業(一般消費財の輸送)や不定期専用船事業(原油やLPGなどのエネルギーの輸送)を展開する企業です。2022年3月期における日本郵船株式会社の売上高は2兆2807億円です。

現在、安定的な運賃収入の確保に向け、成長促進事業と重点投資事業の強化を図っている企業です。

出典:2022年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)|日本郵船株式会社 参照:https://www.nyk.com/ir/library/highlights/2021/__icsFiles/afieldfile/2022/05/06/220509_tanshin_jp.pdf

ヤマトホールディングス株式会社

ヤマトホールディングス株式会社は、宅配便サービスで高い国内シェアを誇る運送会社です。「クロネコヤマトの宅急便」で知られるなど高い知名度があり、全国に約110箇所の営業倉庫拠点があります。

インターネット通販市場の拡大により宅配便の取り扱い数が年間約21億個となるなど、2022年3月時点の売上高が1兆7936億円の大手企業です。

出典:数字で見るヤマトホールディングス|ヤマトホールディングス株式会社 参照:https://www.yamato-hd.co.jp/

出典:業績ハイライト|ヤマトホールディングス株式会社 参照:https://www.yamato-hd.co.jp/investors/financials/highlight/

SGホールディングス株式会社

宅配便の取り扱いを中心とするSGホールディングス株式会社は、「佐川急便」の名前で知られる運送業界の大手企業です。宅配便取り扱い数約14億個で、ヤマトホールディングス株式会社と並んで業界を担っています。

2022年3月時点の売上高は1兆5883億円で、海外にグローバルネットワークを組んで事業を展開しています。

出典:会社案内|SGホールディングス株式会社 参照:https://www.sg-hldgs.co.jp/company/outline/pdf/companyinfo_sg_Jp.pdf

出典:業績ハイライト|SGホールディングス株式会社 参照:https://www.sg-hldgs.co.jp/ir/financial/highlight/

就活前に運送業界について学び動向などを把握しよう

運送業界を志望する就活生にとって、就活前に自分が志望する企業や職種について把握することは大切なことです。

業界の基本情報や特徴などを把握して具体的な志望理由をつくれば、実際に仕事をするイメージが湧いてきます。本記事で、運送業界について学んだことを、ぜひ就活の参考にしてください。

柴田貴司
監修者

明治大学院卒業後、就活メディア運営|自社メディア「就活市場」「Digmedia」「ベンチャー就活ナビ」などの運営を軸に、年間10万人の就活生の内定獲得をサポート

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