エネルギー業界を取り巻く環境とは?仕事内容・業種・職種を詳しく解説

エネルギー業界を取り巻く環境とは?仕事内容・業種・職種を詳しく解説

「エネルギー業界ってどういうものなんだろう?」 「電力・ガス・石油それぞれのエネルギー業界を取り巻く環境は?」 「新しいエネルギーである水素の展望は?」 エネルギー業界への就職を考えている就活生には、このような疑問を持っている人もいるでしょう。

本記事では、電力・ガス・石油を中心にエネルギー業界の仕事内容や業界を取り巻く環境、主な業種や職種について解説しています。また、有名な企業や業界で役立つ専門用語も紹介しています。

この記事を読むことで、エネルギー業界への理解が深まるでしょう。さらに具体的な環境や業種、職種、企業などについて知ることができるため、自分に合った進路を選択することができるようになるでしょう。

エネルギー業界に関心のある人は、ぜひこの記事をチェックしてみてください。

エネルギー業界とは

インターネットに代表される通信手段や、自動車や鉄道などの交通機関が発達した現代社会の維持に、エネルギーは欠かすことのできない存在です。エネルギーは主に電力・ガス・石油の3つがあり、この供給により収益を上げる業界の総称がエネルギー業界です。

一方、世界的な脱炭素の流れを受け、水素やアンモニアといった脱炭素燃料も注目されています。

エネルギー業界の主な仕事内容

エネルギー業界を取り巻く環境を見ていく前に、業界の仕事内容を確認していきましょう。後発の水素などは除き、従来のエネルギー業界の3本柱である電力・ガス・石油にしぼって紹介します。

電力業界の仕事内容

政府による電力システム改革以前、東京電力など10社のみの独占状態だった電力業界の仕事は、発電・送配電・小売電気の3つの部門に大別されます。

発電は発電所で行い、その発電方法には火力や水力、太陽光や原子力などがあります。送配電は発電所から各消費者に電気を送る変電所や、送配電線などのネットワークを司るものです。

小売部門では料金設定や契約手続きを行い、各消費者と直接コミュニケーションを取ります。

ガス業界の仕事内容

ガス業界もかつての電力業界のように、地域ごとに司る企業がある特殊な業界ですが、例えば北海道だけでも北海道ガス・旭川ガス・釧路ガス・室蘭ガスなどより細やかに地域が分かれ、多数の企業が存在してきました。

これらの多くは民間ですが、仙台市ガス局のような地方公営企業もあります。

ガス会社の仕事は海外からの原料調達、ガスの生産や供給、営業、技術開発など多様にあります。ガス生産では工場を運営し、ガスの量や質の管理を行います。ガス管など供給網の設置やメンテナンスは供給部門の管轄です。

家庭で使用されているガスの多くは、都市ガスかLPガスです。都市ガスはガス管を設置して安価にガスを使うことができます。LPガスは都市ガスより高価ですが、ガス配管がない地域でも設備があれば使用できるなど、それぞれにメリット・デメリットがあります。

ガス会社はそれぞれに応じた業務を行います。

石油業界の仕事内容

石油会社は原油や石油製品の輸入、加工・販売を行います。中でも独自の給油所や灯油販売店などを持ち、石油製品の直売を行っている会社は石油元売会社と呼ばれ、自社で製油所を持つ元売兼業会社と販売専業である元売専業会社との区別があります。

エネルギー業界を取り巻く環境

日本のエネルギー業界を取り巻く環境を考える上で踏まえなくてはならないのは、近年実施された政府による電力システム改革、ガス小売自由化、及び世界的な脱炭素の流れです。電力・ガス・石油業界、及び水素業界について、それぞれ具体的に見ていきましょう。

電力業界の動向

以前は1地域ごとに1つの電力会社のみが電力事業を行うことができました。つまり、電力業界は北海道電力・東北電力・東京電力・北陸電力・中部電力・関西電力・中国電力・四国電力・九州電力・沖縄電力の10社のみの独占状態だったということです。

しかし、政府主導で電力システム改革がなされ、2016年からこの10社以外でも業界参入が可能になりました。それによって従来より安価で電気を供給する業者が現れ、顧客獲得を競うようになりました。安定した独占状態にあぐらをかいていられる状況ではなくなったということです。

出典:電力システム改革について|経済産業省資源エネルギー庁 参照:https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/system_reform.html

ガス業界の動向

ガス業界の動向としても、政府主導による自由化で競争が激化していることが挙げられます。また、災害へのBCB対策としてLPガスの特性を活かしたLP発電機の存在があります。

ガス自由化で競争が激化しつつある

電力システム改革の一端である2016年の電力自由化に続き、2017年より都市ガスの小売全面自由化も実施されました。これまで工場向けには自由化されていた都市ガスが、家庭向けでも自由化されたということです。

従来は地域により定められた都市ガス会社のみとの契約だった一般家庭が、自由に会社を選択することができるようになりました。多様な企業が業界参入するため、企業間の競争が激化しつつあります。

出典:ガス小売全面自由化|経済産業省資源エネルギー庁 参照:https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11612872/www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/gas/liberalization/

LP発電機が注目を集めている

LPガスは都市ガスより高価であるものの、ガス配管がなくても使用できるメリットがあります。また、経年劣化せず半永久的に使用することができるため、電気や都市ガスが止まってしまうような災害時や非常事態に強いといえるでしょう。

事業継続計画を表すBCP(Business Continuity Plan)という言葉があります。災害など困難な状況でも事業を継続できるようにするBCP対策として、LPガスを用いた発電機が注目を集めています。

石油業界の動向

石油は現代社会の主要エネルギー源ですが、世界的な潮流から需要は減少傾向にあります。これを受けて、石油業界の動向としては合併などの再編が加速していることや、再生可能エネルギーを石油からの転換として注視していることなどがあります。

業界再編が加速している

以前は十数社存在した石油元売は、2020年時点で5社までに再編されました。一例として昭和石油とシェル石油が1985年に合併し昭和シェル石油となり、この昭和シェル石油は2019年に出光興産に統合されています。

出典:日本の石油元売会社の再編動向(2020年7月現在)|ENEOS 参照:https://www.eneos.co.jp/binran/document/part01/chapter02/pdf/section07_02.pdf

再生可能エネルギーが注目を集めている

再生可能エネルギーは、太陽光や風力・水力・地熱、及び動植物由来の有機物(石油・石炭などを除く)であるバイオマスの他、永続的に利用可能なものを源とし作られたエネルギーを指します。

世界的な脱炭素の潮流から石油需要は低下していくことが予測され、各企業は石油に代わる再生可能エネルギーの推進を進めています。

水素業界の動向

水素は二酸化炭素を排出しないこと、多様な資源から生成することから、次世代のエネルギーとして高い期待を受けています。国や企業がさまざまな実証実験などを行っています。

エネルギー業界の第4の柱

現在のエネルギー業界の3本柱は電力・ガス・石油ですが、水素はこれに加わる第4の柱として注目されています。

水素は酸素と結びつけて発電させたり、燃焼により熱エネルギーを得たりすることができますが、二酸化炭素を排出しません。このため、脱炭素の世界的潮流に沿っています。

また、水素は水・石油・バイオマス・廃プラスチックなどさまざまな資源から生成することができるため、有限な資源である石油と異なり永続性のあるエネルギー源として期待されています。

水素社会の到来も予測されている

水素社会とは、水素がさまざまな社会活動のエネルギー源として一般的になった社会を示します。この実現には、水素の海外調達時の製造・貯蔵技術など課題は多くあります。

しかし、日本政府としても民間企業と協力し水素社会実現に向けた数々の取り組みを行っており、2017年には「水素基本戦略」が国家戦略として掲げられています。

出典:水素基本戦略|内閣官房 参照:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/saisei_energy/pdf/hydrogen_basic_strategy.pdf

エネルギー業界における主な業種

ここからは、エネルギー業界における主な業種について解説していきます。

エネルギー源が各消費者に届くまでには、開発・探鉱、輸送、加工・流通など、さまざまな課程があります。

エネルギー業界における主な業種についてご興味がある人は、参考にしてください。

開発・探鉱

油田などを発見し、エネルギー源である石油や天然ガスを得る開発・探鉱からエネルギー業界の仕事が始まるといえます。

探鉱では地質調査や物理探査などを行い、開発では施設に必要な設備や施設を設計・建設などを行います。

輸送

開発・探鉱で得られたエネルギー源は、加工地や消費地などに輸送されます。エネルギー源の性質や運送先により、パイプラインで送る、液化してから輸送するなど、いくつかの輸送方法があります。

加工・流通

開発・探鉱で得られたエネルギー源を、発電所や石油精製工場などで加工し販売します。

従来の電気や石油、ガスに加え、太陽光発電などの次世代エネルギーの利用推進が期待されています。

エネルギー業界における主な職種

エネルギー業界には多岐にわたる仕事がありますが、ここでは大きく3つの職種に分けて見ていきます。それぞれに特性があるため、自分にはどの職種が向いているかの参考にしてください。

技術開発職

エネルギー市場の動向を見定め、必要な技術の新規開発や改良などを行うのが技術開発職です。発電など既存のエネルギー生産技術を改良し効率を上げることや、水素など次世代エネルギーの研究もこのカテゴリーです。技術への専門的な知識が必要とされます。

営業職

営業職は、自社と顧客を繋ぐ存在といえるでしょう。自社の電力やガス、石油などのエネルギー関連商品・サービスを顧客に説明・紹介し、契約を受注し売り上げを立てます。

また、顧客のニーズを把握し、問い合わせに応じたり、サポートしたりするため幅広い見識と、高いコミュニケーション能力が必要とされます。

管理職

エネルギーを安全に、そして安定して供給するためには、さまざまな管理業務が求められます。業務内容は生産や輸送の体制管理、エネルギーやそれに関連するサービスや製品の品質管理など、多岐にわたります。

エネルギーは扱い方により大きな事故も起こり得るので、高い責任感や緻密さが必要です。

エネルギー業界の有名企業を紹介!

エネルギー業界の有名企業を5社紹介します。

エネルギー業界への就職を考えている人は今回紹介する有名企業を把握し、その上で自分に合う企業を調べてみてはいかがでしょうか。

東京電力ホールディングス株式会社

東京電力ホールディングス株式会社は、環境への積極的な取り組みや地域社会との共生などを行動憲章として掲げています。

また、産業・経済基盤の創造等を目指す福島事業では復興と廃炉の両立を、地域全体のレジリエンス向上を目指す経済事業ではカーボンニュートラルと防災への取り組みを行っています。

関西電力株式会社

関西電力株式会社は、原子力発電や火力発電といった発電事業以外にも海外コンサルティングなど幅広い事業展開をしています。

また、電力を安定供給できる技術開発や省エネに関する技術開発、イノベーション創出につながるような技術開発にも挑戦しています。

中部電力株式会社

中部電力は、広い分野にわたる事業を中部地方で展開しています。

例えば、株式会社インターネットイニシアティブと共に設立した合同会社ネコリコで、高齢者見守りサービスである「まもりこ」などを手がけています。

東京ガス株式会社

東京ガス株式会社は首都圏にガス供給をしています。

エネルギー・ソリューション事業ではCO2ネット・ゼロで世界のエネルギー企業をリードしている他、不動産開発などの都市ビジネス事業も展開しています。

出光興産株式会社

出光興産は石油業界で業績上位の会社です。出光グループは燃料油やアスファルト、石油・ガス開発、再生可能エネルギー、電子材料などの事業をグローバルに展開しています。

エネルギー業界で役立つ専門用語

エネルギーの分野では普段聞き慣れない言葉や、ニュースなどで聞き覚えはあっても具体的にどういうものを指しているのか分からない専門用語が多くあります。ここでは、その一部を解説していきます。

スマートグリッド

スマートグリッドは英語でsmart gridと表記され、smartはスマートフォンのスマートと同じで、賢い・高性能な・洗練されているなどの意味があります。gridは格子状のもので、この場合は電力網を指します。

次世代電力網とされるスマートグリッドは、新しい電力供給システムです。従来型の電力供給システムは、発電所から需要側に一方的に電力を送るだけでした。

対して、スマートグリッドは供給側と需要側どちらからも電力のコントロールを可能とします。両者のデータをもとに、一方通行でなく双方向で過剰生産や不足にならないよう発電・供給量をスマートに調整することができます。

スマートメーター

スマートメーターは、次世代電力網であるスマートグリッドで用いられる次世代電力計です。

スマートメーターが消費側の電力使用状況を測定し、電力供給側へそのデータを送信、供給量のコントロールも行います。このスマートメーターの働きにより、電力の過不足を調整することができます。

発送電分離

電力会社の事業には発電と送電があり、この2つの事業を分離することが発送電分離です。

経済産業省主導の電力システム改革には3段階あり、第1段階が「広域系統運用の拡大」で、第2段階が「小売及び発電の全面自由化」です。第3段階が「法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保」、つまり発送電分離を指します。

この電力システム改革以前は、1地域ごとに1つの電力会社が発電・送電・小売の3部門すべてを独占していました。

ガスコジェネレーション

コジェネレーションは英語でcogenerationまたはCo-Generationと表記されます。coには共同、generationにはエネルギー生成の意味があり、2つのエネルギーを生成することを指します。

ガスコジェネレーションは都市ガスを燃料として電気というエネルギーを作り、この時に発生する廃熱を熱エネルギーとして冷暖房や工場の熱源、給湯などに使用するシステムです。

シェールガス

シェールガスは天然ガスの一種で米国に多く存在しており、日本語で頁岩と呼ばれるシェール層から採取されます。

約2000mを越える深い地層に存在するシェールガスの採掘は、以前はコスト的に難しいものでした。しかし、近年の技術革新により安価な採掘が可能となり、米国の天然ガス輸入量は激減しました。これをシェール革命といい、エネルギー分野における21世紀最大の変革とされています。

超伝導送電

超伝導とは、非常な低温下で特定の物質の電気抵抗がゼロになる現象を表します。超伝導送電とは、この電気抵抗ゼロの状態で電気を送電する技術です。

超伝導状態にない常伝導体では電気抵抗があるため、熱として失われてしまう電力があります。一方、電気抵抗がゼロの超伝導体では熱による損失がなく、送られる電気は減りません。よって、超伝導体による超伝導送電は送電ロスの大幅カットで省エネにつながる技術です。

小型原子炉

小型原子炉は英語ではSmall Modular Reactorと表記され、SMRと略されます。日本語では小型モジュール炉とも表現されます。

全体をいくつかのモジュールに分け工場で製造し、現地で組み上げ完成させるモジュール工法により製造されます。従来型原発の約3分の1、電気出力300MW(e) 以下の原子炉です。

カーボンニュートラルとは温室効果ガスの排出量を抑え、かつ除去量などを増やし、そのプラスマイナスの合計をゼロ=ニュートラルに近づける施策です。この世界的な動きのために、温室効果ガスを排出せず柔軟性のある小型原子炉に期待が持たれています。

出典:What are Small Modular Reactors (SMRs)?|IAEA 参照:https://www.iaea.org/newscenter/news/what-are-small-modular-reactors-smrs

メタンハイドレート

メタンハイドレートは「燃える氷」とも呼ばれます。

メタンは天然ガスの主成分であり、都市ガスに使用されています。ハイドレートとは包接水和物のことです。これは水素結合によってかご状の構造になった水分子の中に、他の分子が取り込まれているものを示します。

よって、メタンハイドレートはメタン分子が閉じ込められたハイドレートを指します。氷のような見た目ながら、火をつけるとメタンが燃え上がるのです。

日本の近海に多く埋蔵されており、また二酸化炭素の排出量が石炭・石油よりも少ないことから次世代エネルギーとして注目されています。

スイッチング

スイッチングとは、一般家庭における電力・ガスの契約先の切り替えを指す言葉です。資源エネルギー庁のサイトには、電力小売全面自由化以降のさまざまな動きとして、スイッチング率が10%を超えていることが記されています。

出典:電力小売全面自由化で、何が変わったのか?|経済産業省資源エネルギー庁 参照:https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/denryokugaskaikaku/denryokujiyuka.html#topic02

デマンドレスポンス

従来は需要に合わせた電力を供給サイドが提供してきました。対してデマンドレスポンスでは、需要サイドが供給量に合わせて電力消費の調整を行います。

例えば、需要ピーク時に高料金を設定することで電力消費量の抑制を促すことは「電気料金型デマンドレスポンス」と呼ばれています。

エネルギー業界が求める人材とは

エネルギー業界が求める人材としては、社会貢献意識の高さや責任感の強さ・粘り強さ・柔軟性や適応力などがあげられます。

社会を支える根幹である一方、大事故も起こりえるエネルギーを安定供給する上で、社会貢献意識や責任感・粘り強さは必須です。また、社会の変化や天災などのイレギュラーな事態に臨機応変に対応できる、柔軟性や適応力も備えておくようにしましょう。

また、社内外の人間と連携を取るためのコミュニケーション能力、海外からの発電燃料を取引する上で必要となる英語力も高い方が良いでしょう。

エネルギー業界を正しく理解して就活に活かそう

エネルギー業界は現代社会を支える根幹であり、社会の変化と共にその在り方を変えていきます。そんな世界について見識を深め、業界を支える一端となることを考えてみてはいかがでしょうか。

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