「就職は金融関係を考えてるけど、保険業界ってどうなんだろう?」 「保険業界にはどんな職種があるの?」 「保険業界は給料が高いって聞いたけど本当?」 保険業界への就職を検討しているけど、実際の仕事内容がよくわからず二の足を踏んでいる人もいるでしょう。
この記事では、就活する上で気になる保険業界の市場動向、会社の種類、職種、魅力について紹介します。
実際に志望する際の注意点や保険業界向きの人の特徴も解説するため、この記事を読むことで保険業界に詳しくなり、志望している場合は努力目標がはっきりしてくるでしょう。
この記事を参考に、高収入・好待遇が魅力的な保険業界について、正しく理解して志望しましょう。
保険業界とは?
そもそも保険とは多くの人が保険料を支払い、事故が発生した際に生じた損害を補填するために保険金が受け取れる制度です。保険の対象となる事故には、交通事故、海難事故、火災、天災、病気、死亡などがあります。
これらを現代的に会社組織で行っているのが保険業界の各社です。保険業界には、損害保険会社、生命保険会社、保険代理店などがあります。
保険業界を取り巻く市場動向
かつての保険会社は、生命保険を扱う生命保険会社と、損害保険を扱う損害保険会社、医療保険やがん保険など第3分野の保険を扱う保険会社の3種類に明確に分かれていました。しかし、現在は政府による規制緩和が進み、3者の垣根はあいまいになっています。
また、銀行窓口や保険ショップでの保険商品販売が行われるようになり、インターネットや電話で加入できる商品も現れたため市場の多様化が進んでいます。
少子高齢化による影響
もともと日本の生命保険は、加入者の死亡時に保険金が遺族に支払われるものでした。しかし少子高齢化が進み、遺族に多額の保険金を支払うことが求められなくなってきています。
そのため、現在では加入者自身が長生きすることでの怪我や病気、介護などのリスクへの保険需要が高まってきました。医療保険、がん保険、介護ほけなどが該当し、これは、生命保険、傷害保険の両者の事業に関わります。
医療保険などの伸びにより特に生命保険では加入件数は増加傾向にあり、一方死亡時一時金がメインであったころの高額保険料の総額は減少傾向となりました。
国立社会保障・人口問題研究所が発表した将来人口推計によると、日本の人口は2045年に約1億642万人へと減少し、2053年には1億人を下回る約9,924万人にまで減少すると推計されています。しかも、2055年ころはずっと65歳以上の年齢層が約38%との推計です。
このため、各保険会社では少子高齢化社会を見越した事業設計を始めています。
出典:日本の将来推計人口(平成29年推計)|国立社会保障・人口問題研究所 参照:https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/db_zenkoku2017/s_tables/1-1.htm
海外市場の開拓
今後、国内では人口減少が予想されており、多くの日本人は既に保険に加入している状況が見込まれるため、各保険会社は海外への進出を計画・実行しています。
海外保険市場の中で躍進する可能性を有しているのは、アジア・中東・中南米・アフリカなどの新興国市場です。先進国の保険普及率は高い一方、新興国市場での保険普及率は低く、今後の市場成長が見込めると考えられています。
大手の生命保険会社は既に海外に出資したり、新興国の保険会社を傘下に納めたりしており、今後もその動きは活発に行われるでしょう。
保険会社の再編
損害保険業界では1996年の自由化以降、各社が合併・統合を推し進めました。その結果、東京海上グループ、MS&ADインシュアランス グループ、損保ジャパン日本興亜グループの3メガ損保グループと言われる現状の業界地図となっています。
損保ジャパン日本興亜グループとは、現在のSOMPOグループです。
さらに、2008年に株式会社かんぽ生命保険と日本生命保険相互会社が業務提携を始め、2009年には住友生命保険相互会社と三井生命保険株式会社が共同出資して子会社を設立しています。
このように、保険業界では再編の動きが活発化しています。
出典:日本の保険業界の動向と変遷|MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス株式会社 参照:https://www.ms-ad-hd.com/ja/basic_knowledge/changes.html
出典:株式会社かんぽ生命保険と日本生命保険相互会社との業務提携に関する合意について|株式会社かんぽ生命保険 参照:https://www.jp-life.japanpost.jp/information/press/2008/abt_prs_id000040.html
出典:生命保険会社の設立について|住友生命保険相互会社・三井生命保険株式会社 参照:https://www.sumitomolife.co.jp/about/newsrelease/pdf/2009/090522.pdf
商品・サービスの多様化
かつて生命保険と言えば、一家の稼ぎ手が死亡した際に一時金が支払われるものが主でした。しかし少子高齢化社会を迎え、そのタイプの保険は需要が減ってきています。
そこで、死亡リスクよりも長生きリスクに対応した多くの保険商品が売られるようになりました。医療保険、がん保険、働けなくなったときの収入保険などです。また、サイバー保険、ペット保険などもあります。
これらの保険は第3分野の保険と呼ばれ、生命保険会社でも損害保険会社でも扱うことができ、多様なニーズに対応しています。
販売チャネルの多様化
販売チャネルとは、企業の影響のもとで顧客の購買意欲を高める手段の一環です。販売方法と言い換えてもよいでしょう。
かつては、保険会社の営業職の活動による直販が販売のほとんどを占めていました。よく見られる生保レディによる職域販売もここに含まれます。
次にあげるのは保険代理店です。保険代理店は個人営業や自動車・不動産の販売会社が兼業しているケースが多かったのですが、最近では複数の保険会社と契約して顧客に提案する保険ショップも増えています。
金融自由化によって銀行の窓口でも販売できるようになりました。銀行での販売は代理店の一部とされています。
また、一部コンビニエンスストアでも保険の販売を始めており、インターネット販売も近年増加してきました。
このように、販売チャネルは多様化しています。
保険業界の種類・仕事内容
それでは、保険業界にはどのような種類の会社があるのでしょうか。
保険業界には大きく分けて損害保険会社、生命保険会社、保険代理店があります。ここからは、それぞれの法人がどのような特徴を持ち、またどのような仕事を担当しているかみていきます。
損害保険会社
偶然のリスクにより発生した損失や損害の補填を目的とするのが損害保険です。実際に発生した損害や損失に対する実損払いをします。この場合、保険をかけた顧客は損失を補填してもらえますが、利益を得ることはありません。
死亡により多額の一時金が顧客に支払われ、ケースによっては顧客が利益を得ることもある生命保険とは、この点が大きく異なります。
このことは損害保険では補償と呼び、生命保険では保障と示すという面でもわかります。
また、大きく分けて生命保険はヒトに関する保険、損害保険はモノに対する保険と言うことができるでしょう。
生命保険会社
生命保険会社は、ヒトに関する保険を扱います。いわゆる第1分野の命の保障が生命保険の起源です。
しかし、働き方の多様化や少子高齢化により、生命保険会社の扱う死亡時一時金を支払う保険の割合は減少してきました。現在では第3分野と言われる、がん保険などの医療保険や収入保障の保険など、多岐にわたる保険商品を扱っています。
また、生命保険会社は総資産がとても大きいため、資産を運用する部署も社内に持っており、貸付金としてだけではなく国内の低金利から外貨建ての証券などにも投資しています。
なお、もともと生命保険会社は保険契約者が社員となって相互扶助を行う相互会社として運営されていました。 しかし、このシステムはわかりやすい理念を持ちますが、スピード感のある経営判断ができない傾向があります。
そこで、大手生命保険会社の中には経営上の意思決定のスピードアップのために、株式会社へと組織変更したところもありました。
保険代理店
保険代理店の仕事は、生命保険会社や損害保険会社と代理店契約を結んで、保険契約者との契約業務を行うことです。
代理店にはそれぞれにいくつかの特徴があります。まず、1社の保険会社とのみ契約している専属代理店と複数の会社と契約している乗合代理店という形態があります。商店街やショッピングモールに出店している来店型代理店は後者のひとつです。
次に、専業代理店と兼業代理店という違いもあります。前者は保険業務のみを行っている業者で、後者は自動車販売店やハウスメーカーが兼業している形態です。また、異業種参入として銀行が窓口となり保険を扱うのも後者のケースです。
最後に、法人代理店と個人代理店という違いがあります。法人代理店は会社の形態をとっているのに対し、個人代理店は独立系フィナンシャルプランナーなどが個人で行っている形態です。
ここまでに挙げた、3つの要素が組み合わさって保険代理店は構成されています。就職先として考えていく上では、法人・専業の代理店が主になるでしょう。
保険業界における職種
飛び込み営業や生保レディのイメージが強い保険会社ですが、他の業界同様、社内には様々な仕事があります。
ここからは、保険業界における職種について紹介します。
営業職
保険会社にも多くの企業と同様、商品を売るための営業職が必要です。保険会社の場合、営業職は顧客の生涯設計を理解し、それに最適な保険商品を提案・販売することになります。営業方法は、電話・飛び込みによるアウトバウンドセールスが主流です。
営業職は保険商品を販売することがメインの仕事ですが、顧客のニーズを理解し社内の開発担当部署に伝える大事な役割もします。また、会社と顧客をつなぐパイプとしてコミュニケーション能力が必要不可欠です。
営業する顧客は、法人の場合もあれば個人の場合もあります。法人契約を担当とする場合、1件契約が取れれば大きな額になりますが、個人では1件当たりの単価が低いため多くの契約を取らなければなりません。
多くの保険会社では、新入社員を最初に営業職に就かせる傾向にあります。
事務職
保険会社における事務職は、他の企業で行われる事務に加えて商品についての契約確認や書類作成などもします。顧客への対応など、契約後のサービス支援も事務職の仕事です。さらに、保険料の領収管理など営業業務を担当することもあるでしょう。
事務職は入出金管理では責任感を持たなければならず、顧客の相談窓口となるためコミュニケーション能力も必要です。
さらに、保険会社では契約に携わる者として、専門的な保険知識も理解しておかなければなりません。保険に関係する専門用語や法律などの把握が必要で、就職後に学ばなければならないことも数多くあるでしょう。
なお、大きな保険会社では顧客が多くなり、作業量が多大になることがあります。処理の確実性だけでなく、スピーディーに事務処理をしなければならないこともあるでしょう。
商品開発・企画
保険の売り上げを上げるためには営業職の能力も大事ですが、ニーズがある保険商品を作ることも大切です。保険会社では以前からある商品を販売するだけでなく、常に新商品の開発や企画などが進行しています。
保険会社での商品開発・企画は、社会情勢や市場のトレンド、ライフスタイルの変化など種々な要素を検討し、新しい保険商品を作り出す仕事です。営業を通して顧客の声を汲む以外にも、市場の分析、国際情勢などを考慮し、保険商品を開発します。
開発・企画は市場や社会に常に敏感であることが求められ、新商品の開発とともに既存商品の改良も行います。視野の広い、時代の欲求に目を向けることのできるタイプの人に向いている職種と言えるでしょう。
この職に就くためには、アクチュアリーという資格を取っておくと有利です。就職活動前にこの資格を取っておくと、保険会社への就職が有利になる可能性があります。
保険業界の魅力・やりがい
それでは、保険業界に就職した場合の魅力・やりがいについて解説しましょう。どのような仕事でも、そこに就職するにあたってのメリットとデメリットがあり、保険会社も同様です。
人の役に立つ仕事である
生命保険会社であれば、生涯設計に適した保険商品を提示して、顧客の人生をより安心できるものにする手助けができます。損害保険会社であれば、顧客が自動車事故や火災・天災などで損失を受けた際、素早く対応することにより物心両面で安心を提供できるでしょう。
保険会社の仕事は他者に寄り添うために重責を担うことも多くありますが、だからこそ大きなやりがいを感じられ、人の役に立つ仕事でもあります。
顧客の悩みや不安に寄り添い解決する
保険会社に勤めることは、だれかの人生に寄り添うこととも言えるでしょう。
生命保険会社の場合は、顧客の生涯設計に合う保険商品を提供してサポートすることができます。顧客の悩みや不安に寄り添うことがやりがいになるでしょう。
また、損害保険会社の場合では顧客が事故や火災、天災などのアクシデントに遭遇した際、素早く的確に対応することで顧客に物心両面で安心してもらえます。全体の処理が無事に終了すれば顧客に感謝されることも多く、仕事をする上での喜びになるでしょう。
高収入・好待遇が期待できる
保険業界のやりがいとして、高収入が期待できるという点があります。令和3年に厚生労働省が公表した賃金構造基本統計調査で、50歳〜54歳男性の平均年収は金融業・保険業が最も高くなっています。
また、多くの保険会社では歩合制を併用しているため、営業職に就けば成立した保険契約の額に応じ給与に歩合が上乗せされるケースがあるでしょう。
出典:令和3年賃金構造基本統計調査の概況|厚生労働省 参照:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/dl/13.pdf
海外で自分の能力を発揮するチャンスがある
少子高齢化を受けて、大手保険会社は海外への進出を進めています。日本では保険の加入者率が高止まりである上、今後の人口減少によって契約数は減少すると予想されるからです。
そのため、保険会社に入社することによって海外で自分の能力を活かせるチャンスがあります。
自身の生活にも役立つスキルを得ることができる
生命保険や損害保険は、人生を歩む途中のトラブルに対応するものです。保険の知識を身につけることにより、自身の人生設計を確実にしていけるというメリットもあります。
保険業界を志望するときの注意点
どのような業界に就職したとしても、メリットとデメリットがあるのは否めません。ここからは、保険業界を志望する際に気をつけなければいけない点について解説していきましょう。
実力主義であり競争が激しい
保険業界ではすべてにおいて実力主義です。特に営業職はノルマが厳しく、激しい競争にさらされます。実力がなければ昇進も難しく、報酬も多くは期待できないでしょう。
業務はハードであり離職率も高い傾向にある
保険業界で働くということは待遇が良い反面、業務が非常にハードであるという側面があります。営業職であればノルマをこなし、必要とあれば1日に何件もの顧客を訪ねたり、顧客の都合に合わせて休日出勤したりすることも避けられません。
内勤であっても常にスピードが求められるため忙しいのは当然として、事故等は休日を避けてくれるわけではないため、土日返上ということもあるでしょう。
このような激務から、離職率も高い傾向にあります。
常に知識・スキルをアップデートする必要がある
保険に関する法律は改正されることがあります。そのため、忙しい業務の間を縫って知識をアップデートする必要があります。
また、業務内容によっては外国語やフィナンシャルプランナーの資格を取る必要もでてくるでしょう。
保険業界に向いている人の特徴
どのようなタイプの人が保険業界に向いているのでしょうか。ここでは、3つにしぼって説明しましょう。
まず、他人の人生をより安心できるように関わりたい心のある人です。顧客にとって最適な保険商品を提案するために必要な条件と言えるでしょう。
次に、金融に関して強い興味がある人です。保険業界は、業種としては金融業の中に位置します。顧客に商品を提案する際にも金融の知識は不可欠です。最初から興味があれば、楽しく勉強することができるでしょう。
最後に、向上心の強い人が挙げられます。保険業界では成果主義をとるケースが多く、実力さえあれば昇進の面でも給与の面でも反映されます。向上心の強い人には保険業界は理想的とも言えるでしょう。
保険業界の有名企業を紹介!
これまでは保険業界の概要を解説しましたが、ここからは保険業界の有名企業を紹介します。一口に保険会社と言っても、得意とする分野や望まれている人材は異なります。保険業界を志望するのであれば、多くの会社の特徴を理解しましょう。
明治安田生命保険相互会社
「確かな安心を、いつまでも」をコンセプトにしている相互会社です。明治14年の創業で、日本で歴史のある生命保険会社になります。女性の就業率が高く、日経WOMANが発表する女性が活躍する会社BEST100にも度々選ばれています。
また、地方創生にも強く力を入れており、その点も魅力と言えるでしょう。
出典:会社概要|明治安田生命保険相互会社 参照:https://www.meijiyasuda.co.jp/profile/corporate_info/about/
三井住友海上火災保険株式会社
3メガ損保の一角、MS&ADインシュアランスグループの子会社です。いくつもの損害保険会社が合併してできた会社で、中核の三井住友海上火災保険株式会社は戦前に創業されました。
「持続的成長と企業価値向上を追い続ける、世界トップ水準の保険・金融グループを創造します」というキャッチフレーズのもと、広くグローバルに営業を展開しています。
損害保険ジャパン株式会社
明治21年創業の損害保険ジャパン株式会社は、SOMPOグループの中核会社です。SOMPOグループは、東京海上HD、MS&ADインシュアランスグループとともに、3メガ損保グループと呼ばれます。
損害保険ジャパン株式会社は社風として、チャレンジ精神を重んじ、若いうちから重要な仕事を担当させるという特徴があります。
出典:会社概要|損害保険ジャパン株式会社 参照:https://www.sompo-japan.co.jp/company/outline/
東京海上日動火災保険株式会社
明治12年創業の東京海上保険会社をもとに、合併で現在の東京海上日動火災保険株式会社が生まれました。東京海上日動火災保険株式会社は東京海上HDの中核会社です。
女性社員が社員の約半数を占めており、女性が活躍できる企業です。地方創生にも力を入れています。
出典:会社概要|東京海上日動火災保険株式会社 参照:https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/company/about/outline/
日本生命保険相互会社
日本生命保険相互会社は明治22年創立の歴史ある生命保険会社です。海外にも多くの子会社を持ち、グローバルな活動をしています。
社内で女性が活躍しやすいための環境が整っているだけではなく、男性社員の育児支援にも力を入れている企業です。
出典:会社概要|日本生命保険相互会社 参照:https://www.nissay.co.jp/kaisha/annai/gaiyo/
保険業界の魅力・やりがいを正しく理解して志望しましょう
保険業界について解説してきました。この業界に漠然としたイメージしかなかった方も、かなり理解できたのではないでしょうか。
保険業界は人気の就職先ではありますが、仕事は実力・成果主義をとるところが多く、業務はハードです。そのため、志望するのであればインターン制度を利用して経験を積んだり、アクチュアリーやフィナンシャルプランナーの資格をとったりしてみてはいかがでしょう。
本記事を参考に、保険業界への就職を目指してみてください。
明治大学院卒業後、就活メディア運営|自社メディア「就活市場」「Digmedia」「ベンチャー就活ナビ」などの運営を軸に、年間10万人の就活生の内定獲得をサポート