はじめに
就職活動では、必ず自分の長所と短所を聞かれます。
自分の性格の傾向をつかむために、自己分析が大切なことは、就活生であれば誰もが知っているでしょう。
しかし、自己分析で把握できた自分の短所は長所と異なり、採用選考にマイナスになってしまわないか心配で、エントリーシートなどの書類にどう書いたら良いのか悩む人は少なくありません。
ここでは例として、自己分析した結果、短所が「妥協できない」ことだった人を取り上げ、短所の書き方を解説しましょう。
妥協とは?
自分の短所が「妥協できない」ところだと確認できたら、まず言葉のチョイスはそれで良いのかどうかを確認してみましょう。
「妥協」とは、対立した事柄を双方が主張の一部を譲り合うことで歩み寄り、折り合いをつけて合意形成を行うことです。
つまり「妥協ができない」人とは、対立した相手と折り合いをつけるために、自分の主張を譲れない人ということになります。
自己分析により、把握できた自分の傾向をこの言葉であらわすことにしっくり来るかどうか、もう一度確認してみましょう。
「妥協できない」の類語
「妥協できない」とは譲歩をしない、主張を曲げないということです。
以下5つの言葉も同じ意味で使われます。
・我を通す
・自説を曲げない
・譲れない
・一歩も
・頑固
また、妥協できない相手が自分自身であることもあります。
その場合には「完璧主義」という言い方をすることもできるでしょう。
しっかりと意見をもち、周囲に影響されないことは芯が強い・ぶれない・信念があるなどプラスの言葉になります。
妥協できないは、ときと場合によって与える印象が変わるとわかります。
なぜ妥協できないのか?
短所について効果的に書くためには、自己分析の作業の中で、その原因を追及してみることも大切です。
短所を客観的につかめているのならば、その短所はそのままにせず、克服のために努力する姿勢が求められます。
原因がわからなければ、克服するための努力はできません。
自分が妥協できなかったことで失敗した場面を一つひとつ分析して、その原因の傾向もつきとめてみましょう。
ここでは「妥協できない」原因として、代表的に考えられる傾向を大まかに2つあげて解説します。
自分に自信がある
妥協できない人の特徴は、自分の言うことや行動がすべて正しいと思い込む傾向にあることです。
そのため、対立したときに相手は間違っていると決めつけ、妥協することができないのです。
自分の主張が間違っていないという自信がある人は、その自信を裏付けるための論理的な理由をもっています。
また、自分自身に対しても妥協を許さない「完璧主義」の人は、自分の主張に完璧な理論づけができているため、それと異なる意見ついて譲れないことも多いのです。
しかし、それが本当に正しいかどうかは、相手の主張もくわしく聞いてみなければわかりません。
自分の裏付けした理論を、相手に理解されるように説明し、同じように相手の意見にも丁寧に耳を傾けてみることです。
お互いの主張に納得し、どちらも正しいことがわかれば妥協できるようになるでしょう。
プライドが高い
プライドが高いことで、勝ち負けにこだわるあまり、妥協できないこともあります。
プライドが高く、何に対しても対抗心を燃やすため、自分より他人が評価されることを許せず、どのような場面においても妥協ができない人も存在します。
妥協することは、相手の主張に自分の主張が打ち負かされることと捉え、歩み寄って着地点を見つけられないのです。
プライドが高く、自分が間違っているとわかっても、ただただ「負けず嫌い」で自分の主張を曲げられない場合は、社会人として協調性の面で問題があります。
しかし、プライドがあることは、必ずしも悪いことではありません。
プライドが高いゆえの競争心は、仕事でもより高いパフォーマンスを追求したり、自分を成長させたりすることのモチベーションにつながります。
社会人として、何を「勝ち」とし、何を「負け」とするか、勝ち負けの基準を設定し直せば、プライドの高さをプラスに使うことができるでしょう。
企業はなぜ短所を聞く?
就職活動では、エントリーシートや履歴書に必ず長所や短所を書く欄が存在します。
面接においても志望動機や自己PRと並んで聞かれることの多い項目です。
企業が応募者の短所を聞くには理由があります。
短所を答えさせることで、その人の人柄を知ろうとしていることはもちろんですが、しっかりと自己分析ができたうえで応募しているかどうかも見ています。
なぜなら自分自身を十分に把握できていないままの就職活動は、ミスマッチの可能性があり、早期退職につながってしまう危険があるからです。
自己分析ができているかを評価
自分の強みや弱みについて深く分析をすることなく、思いつきで答えてしまっていないかどうかは、長所よりもむしろ短所を聞くことで判断できます。
企業は、長所だけでなく短所を正確に認識できているかをはかり、客観視できているかどうかを確認しています。
本当の自分のことは、自分でもよくわからないものです。
自分を客観視するためには自己分析の作業が役に立ちます。
今までのさまざまな経験を書き出し、自分がその時々で、どのような気持ちでどのような行動をしたのかを書き出してみることで、自分の価値観や考え方の傾向を客観的につかめるのです。
特に短所を見つける場合は、失敗した経験やつらかった経験に注目しましょう。
自己分析した結果その短所を確認したのであれば、その過程を伝えることで自己分析をしっかり行ったうえでの応募であることが伝わります。
短所をどのように理解し、向き合っているか
自分の短所を捉えていたとしても「自分にはこの短所があるから仕方ない」開き直ってそのままにしていては、企業から評価されることはないでしょう。
また、その短所があることで「自分はだめな人間なのだ」と卑下することも好ましくありません。
人の性格がさまざまであるのと同じく、長所や短所は、誰にでもあるものです。
その長所短所をどのように捉え、これから社会人となる心構えとして、その短所にどのように向き合うのかという姿勢を見ています。
短所として認めたのならば、それをどのように扱うかが企業の関心点です。
自身の短所を課題として捉え、課題解決のために向き合っているかどうかを見て、企業はその人の課題解決能力を評価します。
業界や企業にマッチしているか
企業が応募者の人物像を知ることができる資料は限られています。
まず、書類選考の段階では、それに書かれた限られた情報の中で想像し得る人物像を評価するしかありません。
書かれている短所があまりにも社会人としてふさわしくなく、入社後に障害になるものである場合、もちろん企業は採用しようと思いません。
それでなくとも、営業職であるのに「人見知り」であるとか、チームで仕事をすることがわかっているのに「協調性がない」とか、コツコツと細かい作業を必要とする職種であるのに、「飽きっぽい」とか「大雑把」というような短所がある場合であれば明らかにミスマッチです。
書かれている短所が、業界や企業にあまりにもマッチしていない場合は、適性がないと判断されます。
ESや自己PRで短所を書くときのポイント
エントリーシートや自己PRで短所を書くときは、企業の求めるものがわかりやすく伝わるように書くことが重要です。
担当者は、多くの書類を選考しなければならないため、読み始めてわかりにくいものは、丁寧に読んでもらうことは期待できません。
また、ほかの人と同じようなものになってしまうと、企業の興味を引くことはできません。
エントリーシートや自己PRは、独自性のある具体的なものであるほど説得力を増します。
ここでは、説得力をもってわかりやすく短所を書くためのポイントを紹介しましょう。
具体例で説得力を高める
エントリーシートや自己PRに短所を書かせることで、企業はその人の人柄を見ようとしています。
そのため、短所を伝えるときには、自分の人柄がわかりやすく伝わるように書くことが必要です。
同じような短所をもっている人は、たくさんいるでしょう。
しかし、同じ短所をもった人が、みな同じ性格であるわけではありません。
抽象的な話だけでなく、短所に関わる学生時代のエピソードなどを具体例として交えて説明しましょう。
具体的なエピソードを交えることで、自分の人柄について説得力をもってわかりやすく伝えられます。
自己分析の作業で書き出した経験の中から、自分の短所を把握できたきっかけとなったエピソードを選び、短所として把握できた過程を説明できると良いでしょう。
短所を補うための工夫を入れる
短所を把握できたら、それをそのままにするのではなく、課題として捉えていることが企業へ伝わるように書きましょう。
どこの企業でも必要になる課題解決能力をアピールするため、その課題に対してどう考え、どのような工夫をし、また克服のためにどのような努力をしているかを書きましょう。
また、短所はどんな状況であっても、必ずしも克服すべき「弱み」となるわけではないことがほとんどです。
短所として働く場合には克服すべきですが、短所も場合によっては、自身の「強み」となることもあるでしょう。
自分の弱みを長所として活かす視点をもっていることは大切です。
短所を全面的に否定するのではなく、ときとして長所となることも鑑みて、短所は「補う」という視点が大切です。
「妥協できない」を短所にしたESの例文
ここでは「妥協できない」ことを短所としたエントリーシートの例文を2つ紹介します。
どのような経験から、自分の短所を「妥協できない」ことであると考えたのか、例文①は大学時代レポートを書いた経験について、例文②は長期インターンでの仕事の経験をエピソードとしてあげています。
面接でも取り上げられることの多い項目であるため、質問されることを想定してくわしい部分については、付け加えて話を膨らませて話せるようにしておきましょう。
例文①
妥協を許さず、完璧を目指すあまり、大学のレポートを執筆する際に非常に苦労しました。
大学で課されるすべてのレポートで完全性に固執してしまい、自分の納得のできるものにするために睡眠時間や食事の時間を削って提出期間間際まで取り組むなど、自身を追い込んでいました。
その結果、余裕がなくなり家族に注意されるほどの弊害が生まれてしまったのです。
これは自分の克服すべき短所だと考え、このような場合は、まずは時間制限を設けることにしたのです。
時間制限を設けることにより、時間内に作業を終わらせるという意識がつくようになり、作業効率が格段に上がりました。
また、残った時間で細部までこだわり、途中のプロセスで行き詰まるということがなくなりました。
現在も大学のレポートだけでなくさまざまな作業に時間制限を設けることで「制限時間内では妥協をしない」という思考を心がけています。
例文②
長期インターンに参加した際、任された業務を完璧にこなそうと考えるあまり、1つのことに時間をかけ過ぎてしまった結果、全体の計画に狂いを生じさせてしまいました。
そこで妥協できない性格を改善し、このような失敗をしないための方策として考えたのが「まず全体像を捉えるくせをつける」というものです。
プロジェクトの目的や全容を紙に書き出してみるなどの工夫をし、目の前のことだけではなく全体を俯瞰するようにしました。
最終的なゴールを意識するようになった結果、時間をかけてでもミスをしてはいけないところと、もしミスがあってものちの行程の担当者に任せても良いところなど、どこに力を入れるべきかがわかるようになったのです。
その結果、それまで全行程において妥協したくないと思っていた気持ちを克服することができました。
現在では紙に書き出さなくとも、頭の中で整理して考え、力の入れどころを識別できるようになっています。
おわりに
就職活動では、自分の性格を企業に伝える場面は何度となくやってきます。
その最初の段階がエントリーシートや自己PR文の作成時となるでしょう。
特に短所を伝えるときには、まずは自己分析によって客観的に自分の短所を捉えていること、その短所ときちんと向き合っていること、そしてその姿勢を通して自分の人柄が企業へわかりやすく伝わるように書くことです。
そして、そのエントリーシートや自己PRからイメージする人物像が、企業が求めている人物像と一致するように書きましょう。
明治大学院卒業後、就活メディア運営|自社メディア「就活市場」「Digmedia」「ベンチャー就活ナビ」などの運営を軸に、年間10万人の就活生の内定獲得をサポート