はじめに
大学に入学し、「ガクチカ」という言葉を耳にすることが多くなったと感じる大学一年生は多いと思います。ガクチカになるものはたくさんありますが、企業に就職してからも活かせることをガクチカにできたらいいでしょう。
有限な時間を自由に使える大学生のうちから、就活や今後のことを見据えて資格取得に励む学生は多くいます。その中で人気なのが「簿記」という資格です。簿記を取得しておくことでどのくらい就職活動が有利になるのでしょうか。簿記について詳しく丁寧に説明し、企業に就職した後どのように活かせるのかを理解しましょう。この記事では、簿記を大学生のうちから取得しておく理由と併せて、就活における「簿記」の優位性などをご紹介します。
【簿記取得はガクチカになる?】簿記とは?
まず、簿記初心者の方向けに簿記について詳しく解説していきます。簿記とは、簡単に言うと「お金やものの出入りを記録するための方法」で、日々の取引を帳簿に記入し、最終的に決算書を作成するための一連の作業のことを言います。
簿記は基本とコツをしっかりおさえれば、スムーズに理解できるのが特徴です。簿記を学習すると、会社の利益の仕組みや会社の財産がどのくらいあるのかが理解できるようになります。その意味で就職後も活かせると言えるのです。
簿記の種類
簿記には、日商簿記・全経簿記・全商簿記の三種類が存在します。
日商簿記は、歴史があり三種類の中で最も知名度が高く受験者数も多いです。簿記というと一般的に日商簿記を指します。
全経簿記は、経理専門学生向けの資格です。難易度が日商簿記よりも低めに設定されていて、日商簿記の前の予行練習とする人も多い傾向にあります。
全商簿記は主に商業高校の生徒向けの資格です。経理や会計の入門的な内容が出題に設定されています。学校の授業で学んだ内容を確認することが側面としてあるため、難易度は日商簿記に比べると低めになっています。
この三種類の中で最も就活で役立つと言われているのは、日商簿記です。以下では日商簿記に絞って説明していきます。
簿記の難易度
続いて簿記取得の難易度について説明していきます。日商簿記には原価計算初級・簿記初級・三級・二級・一級の5種類の資格が存在します。履歴書にかけるのが三級からということで、この記事では簿記三級・二級・一級について解説します。
簿記三級は最も受けやすいと言われるように難易度は三つの中で最も低く独学で取得する人も多いです。合格率は約50%と比較的合格しやすい傾向にあります。
簿記二級は三級の範囲に比べて工業簿記・原価計算も範囲に加わるため、少し難易度も上がります。簿記二級の合格率は約30%であり、三級よりも難しいことが数値にも現れています。
簿記一級は三つの中で最も取得が難しい資格です。合格すると、税理士試験の受験資格を得ることができ、公認会計士や税理士の登竜門として有名です。合格率は、約10%とかなり低く大量の勉強時間を必要とします。
簿記取得の勉強時間
次に、簿記の資格を取得するための必要な勉強時間の目安を各資格ごとに説明します。
簿記三級取得のために必要な勉強時間の目安は50〜100時間以上とされており、一日に1時間〜2時間の勉強を継続してできれば、2ヶ月〜4ヶ月の期間で合格するレベルに達することができます。
簿記二級取得のために必要な勉強時間の目安は100〜200時間以上とされており、一日に1時間〜2時間の勉強を継続してできれば、3ヶ月〜6ヶ月の期間で合格するレベルにたっsることができます。
簿記一級取得のために必要な勉強時間の目安は500〜600時間とされており、一日に1時間〜2時間の勉強を継続してできれば、10ヶ月〜一年で合格するレベルに達することができます。
簿記取得までの流れ
簿記取得のために大前提なのは、勉強時間の確保です。たとえ簿記三級であっても簿記特有の知識が必要になるため、合格に十分すぎるほどの勉強時間を確保すべきです。独学でやる場合は知識の勘違いが起こる可能性があるため注意して勉強すべきです。場合によっては先輩や先生に質問すると良いでしょう。
次に受験するための情報を確認しましょう。自分がどこの会場で受験するのか、受験の仕方を何にするか、受験日程はいつかなどの必要事項を十分に確認した上で出願しましょう。簿記の試験方法は筆記試験とネット試験の2種類がありますが、どちらの受験方法にしても合格の価値は変わらないため、受けれる機会が多いネット試験をおすすめします。
【簿記はガクチカになる?】企業がガクチカで見ているポイント
就活で効果的にガクチカをアピールするためには、企業がどのようなポイントを重要視し、どのような就活生を求めているのか知っておく必要があります。
ポイントを抑えていないガクチカは、いくらテーマや活動の成果が大きくても、評価してもらうことができないと考えておきましょう。
ここでは、企業がガクチカを聞くうえで、評価しているポイントについて解説していきます。
企業がガクチカで見ているポイントを抑え、ガクチカを作成してみてください。
物事に取り組む姿勢
企業は、ガクチカを通して、その就活生に物事に取り組む意欲があるのかをまずは見ていきます。
学生時代に力を入れて取り組んだことを聞くことで、物事に対してどのようにアプローチをしたのか、どんな姿勢で取り組んだのかを知り、入社後の仕事に対する姿勢など様々なことが分かります。
真剣に物事に取り組むことができている学生は、仕事を始めてからも新しいことを学ぶ姿勢があり、社会人としての適正能力があると判断してもらえるのです。
人柄・強み
ガクチカでは自己PRと共通しているところもあり、学生自身の人柄や強みといった長所を見ることができます。
その就活生がどのように自分の強みを活かして物事に取り組んできたのか、何を得意としているのかを理解しようとしているのです。
さらに、就活生の能力を企業でどう活かすことができるのか、人柄が会社とマッチしているかを判断していきます。
ガクチカでは、必ず社会人として果たしたい役割や会社で活かしたい能力についても触れるようにしましょう。
自社とのマッチ度
ガクチカを見ると、就活生がその会社に合っているのか、合っていないのかということがよく分かります。
ガクチカのテーマ、内容、今後社会人としてやっていきたいことなどが会社に合っている場合、それだけでも高い評価をもらうことができます。
さらに、成果、強み、人柄などが社風に合っているのであれば、採用の可能性が広がるでしょう。
会社はグループで働く場合が多く、会社とのマッチ度は非常に重要です。
簿記をガクチカにした場合で考えると、簿記2級という資格をアピールするだけでは、会社にマッチしていると思ってもらえないため、工夫が必要となります。
【簿記取得はガクチカになる?】簿記はガクチカになるのか?
簿記はガクチカとして就活に活かせるのでしょうか。簿記がガクチカになるにはどうしたら良いかを踏まえて解説していきます。記事を読んで簿記を取得するかしないかの判断材料の一つとして役立ててください。
簿記取得までの過程がガクチカになる!
簿記の資格は上級であればあるほど、持っているというだけで企業からの評価は上がります。特に商社や金融系の企業、コンサルタントなどの簿記の知識をそのまま使える職業では即戦力として入社後も優遇されることもあります。
しかし、ほとんどの企業では簿記取得までの過程を重視して評価する傾向が強いです。簿記を取得するためにどのような勉強をしたか、自分オリジナルに工夫して勉強したか、勉強時間を作るために何を削ったかなどそこまでのプロセスの方が評価は高いです。
簿記取得の目的を明確にする!
なぜ簿記を取得したかを質問してくる企業も多いようです。どんな職種の企業でも目的や目標を持ってそれに向かって仕事に臨みます。そのため、この質問に対してなんとなくとってみたと言ったり曖昧な動機を話してしまったら、せっかく簿記を取得したのにかえって低い評価を得てしまうかもしれません。簿記を取得する目的を明確にした上で、勉強を始めましょう。また、就職した後にどのように活かしたいかまで見通しを持つべきでしょう。
仕事への活かし方を伝える
ガクチカは自己PRや履歴書の保持資格の記載とは異なり、簿記2級という資格を持っていることをアピールするだけでは意味がありません。
もちろん経理などの業種を志望していれば、その知識を入社後から即戦力として働くことができるという風に、スキルをアピールすることは可能です。
しかし、それ以外にも、簿記を取得するために行った勉強での工夫や、目標に向かって最後まで取り組む姿勢などをアピールすることが必要となってきます。
特に困難を乗り越えたエピソードは、必ず記載しましょう。
会社によっては、どんどんスキルアップできる人材や問題解決能力がある人材を求めています。
簿記の資格取得までの道のりを仕事に活かしていく姿勢を明確に述べていきましょう。
大手企業には簿記三級は通用しない!
日商簿記三級は最も難易度が低いため、取得している人は多いです。大学生にとっては就活で役立てるためといった目的が多いでしょう。
簿記3級を取得していることは、中小企業やベンチャー企業では十分ガクチカになります。
しかし、最近では大手企業は簿記3級に対してそこまで評価しないようです。大手企業への就職を目指すならば、簿記2級以上が必須になってきているのが現状です。
簿記3級を取得していること自体は珍しいことではないため、ガクチカとして簿記3級の資格取得経験をアピールすると、逆に企業から学生時代にそこまで頑張ってこなかったのかなと思われてしまう可能性があります。
大手企業に就職したいと考えている人は簿記2級以上の取得を目指しましょう。
【簿記はガクチカになる?】簿記2級を取得するメリット
上記にもあったように、就活で簿記の資格をガクチカとしてアピールする場合、当然簿記2級以上を取得しておく必要があります。
試験の勉強は大変ですし、時間もかかるため、「本当に就活に役立つのか知っておきたい」と思っている就活生は多いはずです。
また、すでに簿記の資格を持っていても、ガクチカのテーマとして採用するか迷っている人もいるでしょう。
ここでは、就活を成功させるために簿記2級を取得するメリットについて紹介していきます。
経理・財務職への就職に有利
「仕事で必要なスキルは会社に入ってから養えばいい」そんなふうに考えている人も多いかもしれませんが、簿記2級の資格があれば、経理や財務職での即戦力になることができます。
会社側も「どうせ経理や財務職で働いてもらうなら、すでに予備知識が高い方がいい」と考えるのも当然でしょう。
あらかじめ経理や財務職に就きたいと考えている人は、就活を成功させるためにも、簿記3級に留まらず2級を取得しておきましょう。
会社で働き始めてからも、会社の経営状況が理解できたり、決算書を読んだりすることができます。
また、上場企業で必要となる四半期に一度の財務諸表の提出も、簿記の知識があれば財務諸表を読む役割を与えてもらえることとなります。
参照元:https://www.tac-school.co.jp/kouza_boki/boki_sk_idx/merit_student.html
幅広いビジネスシーンで役立つ
簿記2級の資格は、経理や財務職につく場合に大きなメリットがありますが、それ以外の部署や分野で働く場合にも活かすことができる資格です。
例えば、会計事務所、税理士事務所、商社、営業職、販売職、コンサルタントのような職種においても、簿記を持っていると印象が良くなります。
簿記の資格を取得していることで、こなせる業務の幅が広がり、様々な業界において働くことができると考えておくといいでしょう。
また働き始めてからも、企業の財務諸表を読むことができるため、企業の経営状況の把握をすることが可能です。
自分が働く会社の現状を理解していることは、自分にとっても、他の社員にとっても良いことですし、ビジネスパーソンとしての役割を果たすことができるでしょう。
参照元:https://www.tac-school.co.jp/kouza_boki/boki_sk_idx/merit_student.html
企業の経営状況を把握できる
簿記2級を取得していると、就活で企業に応募書類を送る前に、企業の経営成績や財政状態について詳しく知っておくことができます。
自分が働く可能性がある会社だからこそ、経営状況が悪くないか、どれぐらい成長できそうかなどは知っておきたいですよね。
もしも、リスク管理を怠り、企業の経営状況を理解できず、倒産寸前の会社に入社してしまったら、大変なことになってしまうでしょう。
また、面接などの際に、企業側が経営状況について把握しているかを聞いてくることもあります。
就職活動中に簿記の知識を最大限利用することで、企業理解を深め、自分が入社後の自分の役割や、企業目標の達成のためにできることは何なのかを考えることができます。
【簿記取得はガクチカになる?】大学生のうちに簿記を取得すべき?
ここまで簿記とガクチカについて説明をしてきました。大学生のうちに簿記を取得すべきなのでしょうか。私は簿記を大学生のうちに取得しておくことを強くおすすめします。確かに、簿記には簿記専門の知識が必要になるため大学の授業とは別に勉強時間をさかなければなりません。
しかし、それ以上に簿記を取得することはメリットが大きいと考えます。なぜ私が大学生のうちに簿記を取得しておくことをすすめるかをこの後説明します。ぜひ最後まで目を通してみてください。
【簿記取得はガクチカになる?】大学生のうちに簿記を取得すべき理由
簿記を取得するのには前に述べたように勉強時間を必要としますが、簿記を取得することのメリットはとても大きいと言えます。大学生のうちに簿記を取得しておくメリットは、就活においてガクチカになるということだけではありません。そのほかの根拠についてこれから説明していきます。
コストが低く済む!
簿記取得のためのコストは他の就活に役立つ資格と比べて比較的低いと言えます。
たとえば簿記三級取得のためには、主にテキスト代・問題集・電卓・過去問題集・受験料が必要になります。これらを全て合わせたとしても、一万円前後の費用で取得できます。また、前に述べたように簿記三級の場合では、独学で合格するために必要な勉強時間の目安は50〜100時間とされています。この勉強時間は他の資格に比べても比較的少なく、一日一時間の勉強を続ければ3ヶ月前後で取得可能です。中には、2週間〜1ヶ月で合格する人もいるようです。コストの低さは大学生にとってとてもありがたい要素でしょう。
就職先選びに役立つ!
簿記の勉強をすると企業の経営状態や景気の良し悪しを知ることができます。就活をする上でまずは就職を希望する企業選びから始まります。
簿記を学習することで、企業の今の経営状態や景気の良し悪しを知ることができるのでそのような要素を加味した上で企業選びができるのです。財政難にある企業は避けて就活を進めていくことが大切です。これは簿記を勉強しているからこそのメリットであるため他の就活生との差をつけることが可能になるのです。
ほとんどの企業で簿記の知識が活かせる!
簿記取得で培った知識は主に経理や財務、金融関係の仕事で発揮されるというイメージを持っている方が多いですが、実はそれ以外の仕事でも大きな力を発揮します。
たとえば営業です。営業という仕事は会社に利益を生み出すことが目的です。もちろん企業や消費者相手に自社製品・サービスを売ればいいというわけではありません。売れるためにはどうすればいいのかを吟味し、さらに製品にかかるコストを考えなくてはいけません。
つまり簿記取得の勉強を進めていく中で、営業効率を考え出す力を身に着けることができます。簿記資格の勉強を進めていけば、自然と数字に強くなっていきます。数字は物事の結果を視覚的に証明するのに最適なものであり、説得力を持っています。このように、簿記の知識はあらゆる職業において役立つのです。
起業にも活かせる!
前に述べたように簿記の知識はあらゆる職業に活かすことができます。それは起業することにも役立ってきます。簿記は会計学に区分され、会社の財産がどのくらいあるか、あるいは会社の経営状態が良いのか悪いのかを判断するために使えます。
起業する際にはまだ資金はあまり集まっていない場合が多いでしょう。そのため、会計は自分自身でしなければなりません。自分だけで財務処理をするために簿記の知識は不可欠だと言えます。つまり、簿記の知識は起業にも役立つと言えるのです。
【簿記はガクチカになる?】簿記取得に関するガクチカ例文
簿記をガクチカのテーマにすると決めたら、採用担当者に効果的にアピールするために、早速構想を練っていきましょう。
ここでは、簿記取得に関するガクチカ例文をご紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
例文①
私が学生時代に最も力を注いだのが簿記2級の取得です。
私は、会社運営をより良くする経理の仕事に就きたいと思っており、学生のうちから経理への知識を深めたいと考え、資格取得を目指すようになりました。
簿記の勉強を始めた頃は、他の資格試験と同様にテキストを読んだり、問題集を解いたりすれば、簿記を理解できると思い続けていました。
しかし、過去問を解いてみても、到底合格できそうな気配はなく、勉強方法が間違っていることに気がつきました。
その後、専門用語の意味を書けるようになるまで覚え直し、取引の仕分けの練習を何度も繰り返しました。
大学がある日でも1日に2時間、週末は4時間ほど勉強に時間をとり、簿記2級を取得することができました。
この経験から、経理の職についてからも、問題解決に尽力し、会社を支える即戦力として日々努力していきたいと考えています。
例文②
私は大学時代に簿記2級の資格取得に向けて注力し、先日合格することができました。
大学で簿記の授業を受けた際、「簿記はパズルのようで面白い」そんなふうに思ったことがきっかけで、簿記3級を取得しました。
その後、簿記2級の取得も目指しましたが、思うように勉強時間が確保できず、一度は試験に失敗した経験もあります。
しかし、せっかく興味を持った簿記を諦めきれず、勉強時間の確保のため、生活リズムの改善やタイムスケジュールの管理を徹底しました。
改善の結果、毎日3時間ほど勉強時間を確保できるようになり、簿記2級の試験に合格することができました。
この経験で身につけた時間管理能力や継続力を仕事でも活かし、コツコツと事務業務をこなしていきたいと考えております。
まとめ
ここまで主に大学一年生向けに簿記という資格が就活の際にガクチカとして活かせるのかということについて論じてきました。疑問は解決されたでしょうか。私の個人的な意見としては、大学生のうちに簿記を取得しておくことをおすすめします。
理由としては、前にも述べましたが一番は簿記の勉強で得た知識は全ての職業において役立つからです。簿記の学習をすると専門的な会計も学べますが、何より数字に強くなることができます。全ての職業で役立つということは必然的にガクチカとして就活で企業にアピールできるということになります。これは、大きな強みとなるでしょう。また、簿記取得のためのコストが少ないことも大きな魅力です。みなさんもぜひ大学生のうちに簿記を取得してみてはいかがでしょうか。この記事が読者の皆様の力になれば幸いです。
明治大学院卒業後、就活メディア運営|自社メディア「就活市場」「Digmedia」「ベンチャー就活ナビ」などの運営を軸に、年間10万人の就活生の内定獲得をサポート