はじめに
向上心といえば、一般的には「前向きで、何事にもチャレンジできるような良い性格の持ち主」いったイメージがあります。
しかし、ときに自己分析を進めるうちに「向上心があるからこそ空回りしている」などの、自分に気づくこともあるでしょう。
この記事では、自分の短所を「向上心があるところだ」と伝える際のポイントや、アピールの仕方について解説しています。
「短所を聞いているのに自分のアピールポイントを述べている」と面接官に誤解されてしまわないよう、ベストな伝え方を見ていきましょう。
【短所は向上心】企業が短所を聞く理由
企業が面接など、就職活動短所を聞く理由は主に3つです。
1つ目は、短所を聞くことで、学生が素直に受け答えできるかどうかを見ています。
2つ目は、その短所から学生が、自己分析をきちんとできているかどうかもチェックしています。
そして3つ目に、学生が短所をどのようにとらえ、普段の生活で実行している工夫から、会社でどのように活躍できるかをはかっているのです。
短所を聞かれる理由について整理することで、求められるベストな回答もおのずと見えてくるでしょう。
素直か
就活において、短所が聞かれる理由の1つに、素直かどうかを見られている場合があります。
仕事では上司や仲間に業務を教わる、連携して仕事をする、ミスをカバーし合うといった場面もあるでしょう。
つまり、誰かとの協働が前提となるのです。
ところが、年功序列にこだわらない会社であれば、上司が自分より年下である場合もあります。
また連帯責任を負う、自分が悪くなくとも相手によって、自分がミスを被る場面もあるでしょう。
こうした場面で問われるのが素直さです。
誰からのアドバイスであっても聞き入れる耳があるか、ミスが起こらないよう再発防止に努められるかは、すべて素直さにかかっています。
短所を聞くことで、面接官はこうした素直さがあるかどうかを見極めているのです。
自己分析ができているか
面接官は、短所を聞きながら学生がどの程度、自己分析ができているかを見ています。
短所は長所の裏返しでもあるように、その人の個性や性格的な特徴が見える部分です。
つまり面接官は、短所を通じて、学生のパーソナリティのより詳細な部分を見ているといえるでしょう。
就活における自己分析は非常に重要です。
自分に合った会社と出会える、天職が見つかるかどうかのカギとなります。
自己分析がきちんとできていないとミスマッチが起こり、その結果、せっかく就職した職場を離職してしまうといった、最悪のケースにつながりかねません。
学生のキャリアもいったんストップしてしまいますし、企業も採用コストが無駄になってしまいなす。
就活を成功に導くポイントとなる自己分析のためにも、長所と合わせて短所は今一度しっかりと向き合っておきましょう。
短所をどのようにとらえているのか
短所は、単純に自分の良くないところを述べるだけに留まってはいけません。
ポイントは、「自分にはこのような短所もありますが、それをきちんと乗り越える、出さないよう工夫している」ということを伝えなければならないのです。
誰にだって多かれ少なかれ、短所はあるでしょう。
良い面しかもち合わせておらず、欠点のない人間はいません。
しかし、社会人として会社の一員になるのであれば、短所があるならそれを出さないよう、工夫することを求められます。
たとえば向上心がある気質を短所とするのであれば、前向きでチャレンジ精神旺盛な反面、理想が高く、それを人に押し付けてしまう気質があるはずなのです。
長所と短所は表裏一体であることをヒントに、自分の良くないところをどう克服しているかは、必ずアピールしておきましょう。
【短所は向上心】向上心は短所としてアピールできるのか?
自分の短所を向上心にできるかどうかは、伝え方によるでしょう。
なぜなら、向上心があると聞くと人は「前向きで明るく行動力があるのではないか」と、人格的に良いのではないかと考えてしまうからです。
つまり、場合によっては面接官などに「短所を聞いているのに、自分の長所をアピールしている」と誤解を与えかねないでしょう。
重要なのは、向上心のある状態を言い換えることで、短所として的確に説明できているかどうかです。
向上心を短所として伝える際に使える、理想の高さと自己中心的という2つのバッドエッセンスについて解説します。
理想が高い
向上心が短所となるなら、短所として理想が高くなってします傾向にあるといえるでしょう。
なぜなら、自分自身の掲げる理想が高いために、現状や自分自身の置かれた状況などに、すぐ不満が溜まってしまうからです。
「問題解決に向けて課題設定能力が高い」ともいえますが、短所としては「すぐ愚痴をこぼす」「文句が多い」といったパーソナリティが想定できます。
この場合、「向上心ゆえに理想を高くもちすぎるところはあるが、冷静に現状を見極めたうえで最適な努力をしている」などとアピールする必要があるでしょう。
「物事に前向きであるが、なんでもすぐ課題を見つけて、どうにかしようとするところがたまにキズ」といった表現が適切です。
なんにでも意欲的で、理想を追求する姿を美化しすぎてしまうと、短所にならないので注意しましょう。
自己中心的になってしまう
向上心が短所となってしまう場合、自分の理想を追い求めるあまり、自己中心的なところがあるともいえるでしょう。
なぜなら、当たり前のレベルが高いせいで、周りにも同じように自分の理想を押し付け、結果的に自分本位な行動が目立つからです。
自己中心的な気質は、リーダーシップなど、物事を前に進める推進力を感じる部分ですが、それだけが短所にもなり得ます。
つまり、なぜ自己中心的ではなく、向上心のあることが短所になるのかどうか、うまく説明できる必要があるのです。
「向上心があるゆえに、自分の定めた理想を崩せない」というように、自己中心的というニュアンスは残しつつ、直接言葉にするのは避けた方が無難です。
心の中でエッセンスの1つとしてとらえておく程度に留めておきましょう。
【短所は向上心】短所を伝える最強の構成
向上心を短所として伝える際のポイントをふまえたうえで、自分の短所を「向上心があるところ」と伝える最強の構成について解説します。
構成は、結論、理由、向上心のある自分の気質をどうとらえているのか、そして結論という基本的な流れです。
ポイントは、一見長所としてとらえられやすい向上心のある気質を、どう短所として伝えられるかどうかです。
理由づけの部分に、しっかりとした内容が求められるでしょう。
構成を4つのセクションに分けて、詳細を解説します。
結論
冒頭、結論となる一文はシンプルに「私の短所は向上心のあるところです」と伝えましょう。
いくら説明や理由づけが必要だからといって、ここで詳細な説明をする必要はありません。
逆に、あれこれ文章を付け足してしまうことで結論がくもり、面接官にも「端的に結論を述べられない、論理性に欠ける」と思われてしまいます。
また文字数や受け答えの長さとしても、ウェイトを置くべきは、理由や短所をどのようにとらえているかの部分です。
ここでダラダラと説明をしても、無駄に文字数がかさみ、結論への道筋が遠のく一方です。
まずはストレートに自分の短所を伝えましょう。
あとに続く話を、面接官が聞きやすくするためにも、極力シンプルな文章表現に努めます。
理由
理由の部分についても、あれこれ語るのではなく、基本的には一問一答形式でシンプルに説明しておきましょう。
「自分の性格、気質が原因でこんな失敗をしました」「こんなトラブルがありました」の具体例を1つに絞って伝えるのです。
たとえば、以下のような説明では相手にポイントが伝わらないでしょう。
「自分の短所が向上心のあるところだと思う理由は、物事を良くしたいと考えるあまり、理想に走ってしまうことです。
そのため、周りとの歩調が合わないこともあるからです。」
失敗してしまったことで起こった弊害を伝えるのではなく、端的に、「ゼミ生との人間関係に亀裂が走った」などとまずはエピソードの結論を伝えます。
つまり結論が補えるような部分を作ったうえで、理由など、自分の反省点を述べるとスマートでしょう。
どうとらえているのか
自分の短所を「向上心のあるところ」と答えるのなら、その気質についてどうとらえているかもセットで伝えます。
よくある失敗は、自分の短所を悔いている、良く思っていないと伝えたいがあまり、自分の反省点を延々と伝えるだけで終わってしまうことです。
就活で聞かれる短所は、決して性格の良くない部分だけを聞いているのではありません。
自分の苦手分野や欠点をふまえたうえで、それをどのように解消しようとしているか、学生なりの創意工夫を企業は知りたがっています。
つまり、向上心が強いあまり人とぶつかってしまうことをふまえて、どういった工夫をしているのかを必ず伝える必要があります。
それが、人とコミュニケーションを頻繁に取ることなのか、冷静になるルールを自分で定めることなのかは人それぞれです。
大事なのは、何をやっているかではなく、欠点をそのまま放置していないかどうかです。
結論
まとめとして、再度必ず自分の欠点・短所は向上心のあるところだと伝えましょう。
何かとあれこれ説明したくなってしまいますが、最後にもってくる結論についても、あれこれ主張がぶれるのは望ましくありません。
たとえば、「~のため、向上心がありすぎるところはたまにキズです」というように文章をシンプルに完結させましょう。
ごくまれに、この結論が向上心ではなくエピソードにもとづいた内容(理想が高い、自己中心的)に差し替わってしまう場合があります。
話す側は、あれこれとエッセンスを入れたくなりますが、聞き手は思っている以上に簡潔な内容を求めています。
語っていきたい内容については、面接官との会話で自然に出すよう努め、自分が話すパートはすべてシンプルに内容をまとめるようにしましょう。
【短所は向上心】例文
短所を向上心があるところと主張する場合の例文を2つ紹介します。
1つ目は、長期インターンにおける経験談です。
自分のスタンスと、周りのスタンスを合わせるということを悟ったというエピソードです。
2つ目は、アルバイトにおいて失敗してしまったエピソードになります。
こちらも、向上心が災いして起こってしまった失敗をまとめています。
一見すると長所になってしまう向上心を短所として伝えるのは、かなりコツが必要でしょう。
例文を参考に、ポイントを見ていきましょう。
長期インターン
私は向上心が災いして、長期インターン中にほかのインターン生と亀裂が生まれてしまいました。
最初はなぜ自分だけがほかのインターン生と反りが合わないのか、考えても答えが見つかりませんでした。
たまりかねて、インターン先の社員に相談したところ「インターンに取り組む理由の違い」について説明されたのです。
向上心の高さゆえ、ほかのインターン生と合わない部分があるのではないかと指摘されました。
始めは「就活生ならば当然」とインターンに参加していましたが、自分がインターンとかなり向き合っていることに気づかされます。
そこで一度考えをリセットし、「自分以外の人が、同じような目的でインターンに参加しているわけではない」という認識に改め、理想を押し付けないよう、協働を意識しました。
結果、考え方の違うインターン生とも意見が衝突することはなくなりました。
理想を人に押し付けないよう、向上心の良い部分を伸ばしていこうと心に誓ったのです。
アルバイト
私は向上心があるゆえ、アルバイト中にこだわりすぎて、店長から注意された経験があります。
キッチンで盛り付けを任されていましたが、完成度にこだわるがあまり、料理の提供スピードが遅くなってしまっていたのです。
自分は良かれと思ってやっていたことですが、お客様や店長など、働くうえで何が求められているかについて、再度考えるようになりました。
「前向きに仕事と向き合っているのは良いことだが、オペレーション全体を見てほしい」と店長に言われたのは、特に印象的でした。
それから理想を掲げるのではなく、働くうえで、自分が何を求められているのかを考えるようになります。
向上心をもって業務には取り組みますが、まずは自分がどのような役回りをする必要があるか、何を最優先すべきかを俯瞰的に考えて仕事に励みます。
おわりに
自分の短所を向上心があるところと伝える際の、ポイントやコツ、そして例文についてみてきました。
一般的に、「向上心がある」と言えば、人の長所として使われるのが大半でしょう。
良くないところ、短所として向上心を伝えるのはあまり例がありません。
つまり、面接官も「この学生は変わった主張をするな」と注目してくれる可能性は高いといえます。
結論や理由づけ、さらには短所をどうとらえ、どのような工夫をしているかについて、しっかりと構成を考えておく必要があるでしょう。
就活における短所のアピールは、すべて長所のアピールに通じていると考えて問題ありません。
自分の悪いところを伝えるのは勇気も必要ですが、しっかりとフォローを交えながらパーソナリティをアピールしていきましょう。
明治大学院卒業後、就活メディア運営|自社メディア「就活市場」「Digmedia」「ベンチャー就活ナビ」などの運営を軸に、年間10万人の就活生の内定獲得をサポート