はじめに
就職の面接で、企業の採用担当者から選考状況について質問されることは珍しくありません。
自分の手の内を見られているようで、恥ずかしいと感じたり、どう答えたらいいのか悩んだりと、選考状況の質問を、厄介に感じている人も多いのではないでしょうか。
失敗しない面接の選考状況について回答を考えるのに必要なのは、質問の意図を理解することです。
ここでは面接で選考状況についての答え方などについて、事例を交えて解説します。
面接で選考状況を聞かれる3つの理由
面接官が志望者に選考状況を聞くのは、ただ質問しているというのではありません。
質問を通して合否を決定するのに必要なことを知るためだということを、忘れないようにしましょう。
質問する理由はいくつかありますが、主なものは、「自社の志望度を把握するため」「就活の軸を把握するため」「今後の採用に活かすため」の3つです。
各理由について詳しく説明します。
自社の志望度を把握するため
企業の採用担当者が面接で選考状況について志望者に質問するのは、自社の志望度の高さをチェックするためです。
企業にとって志望者の本気度はどのくらいあるのか把握するのは、採用を決めるうえでとても重要になります。
なぜなら、志望度が高ければ高いほど、内定を受け入れてくれる確率が高くなるからです。
志望者のほとんどは、複数の会社に応募していて、必ずと言って良いほど優先順位をつけています。
複数の会社から採用の合格通知を受け取れば、優先順位の高い企業を選ぶ確率がかなり高くなります。
そして、ほとんどの場合、優先順位は志望度で決まるのです。
企業にとって人材を見つけて採用するまでに、多大な労力と費用がかかります。
もし採用した人材が入社することなく内定を辞退したり、入社してすぐ辞めてしまったりすると、無駄なコストがかかってしまいます。
企業としてはできるだけ内定を受け入れてくれる人を選びたいと考えているのです。
企業にとって、志望度は採否を決めるうえで重要なバロメーターで、選考状況はそれを知るための手段になります。
就活の軸を把握するため
就活の軸とは、一貫性に通じ企業は選考状況についての質問を通して、志望者が就活に一貫性を持っているかどうか把握します。
たとえば不動産業界に興味を持ち、その分野で就職したいと考えている場合、志望先の企業は自然と不動産業界に関連した会社になるでしょう。
これが一貫性を持った就職活動になります。
就活に軸があると、面接で選考状況について聞かれても、「私は都市開発を通して地域活性化に貢献したいと考えており、不動産会社を中心に受けております。
現在3社の選考が進んでいます」という風に、選考状況を伝えるとともに、その業界で活躍したいという本気度も伝えられます。
反対に、業種の異なる会社ばかり応募していた場合はどうでしょうか。
選考状況を聞いた人事担当者は、「熱意が感じられない」として、選考で落としてしまうかもしれません。
ほかにどんな会社に応募しているのかを知ることは、企業にとって入社してくれる確率を把握できるというメリットがあります。
就活に軸を持ち、一貫性のある志望者にとっては、志望度をアピールする機会ができるというメリットになるでしょう。
今後の採用に活かすため
企業にとって選考状況を聞く重要な理由として、今後の採用に活かすということも挙げられます。
企業はより良い人材を採用したいと考えていて、そのためにはできるだけたくさんの学生に応募してもらうことを望んでいます。
特に目標採用数を設定している企業は、必要な人材数を確保するために毎年工夫を凝らしているというのが現状です。
選考状況を質問することで、志望者の興味や傾向を把握します。
そして自社のアピールする部分を決めたり、採用活動の方向性を検討したりしていきます。
面接で選考状況を聞かれたときの4つのポイント
面接官から選考状況について質問されたとき、ドキッとしてしまうかもしれません。
しかし、事前にどう答えたら良いかを知っておくと、当日頭が真っ白になってパニックに陥ってしまう、という事態を避けられます。
選考状況を聞かれたときの4つのポイントとして「就活の軸に一貫性を持たせる」「志望度については正直に話す」「すべての選考状況を伝える必要はなし」「選考中の企業のみ伝える」が挙げられます。
就活の軸に一貫性を持たせる
面接官は、志望者が一貫性を持って就職活動を行っているかどうか知りたいと考えています。
事前に自分の就活の軸を明確にしておくことが大切です。
そして、面接の場で質問されたときは、一貫性を持った就活を展開しているということを示すことが、回答のポイントになります。
具体的には、就活の軸に基づき、企業選びに一貫性を持たせていることを伝えるのです。
同業界や同職種でまとめると、伝わりやすくなります。
またプログラミングのスキルを活かして新規事業に取り組む企業を応援したいなど、やりたいことを軸にするというのも良いでしょう。
志望度については正直に話す
選考状況はどこまで伝えたらいいのか迷う人も少なくありませんが、正直に話すことが得策です。
中にはライバル企業を受けていないので、面接で不利になるとして、嘘をついたほうがいいと考える人もいるかもしれません。
しかし、企業は競合会社などの選考スケジュールなどを把握している可能性が高く、嘘をついても簡単にバレてしまうこともありますので、避けるのが賢明です。
それよりも正直に話して誠意を見せたほうが、志望者にとってはメリットになるでしょう。
すべての選考状況を伝える必要はなし
正直になったほうが良いからといって、選考状況について事細かに説明する必要はありません。
ほかの業界や異なる職種を複数受けいる学生も多く、一貫性を説明するのが難しい場合もあります。
その場合、一貫性がありそうな企業だけをピックアップして伝えるようにしましょう。
たとえば不動産業会社の面接では、不動産業界に関連した会社について伝えるだけでも問題ありません。
そうすることで一貫性を持っていることを面接官に示せますし、面接官の方も状況を把握しやすくなります。
選考中の企業のみ伝える
選考状況の質問では、選考中の企業のみ伝えることがポイントです。
すでに落ちてしまった企業や選考が終わってしまったものに関しては、言う必要はありません。
落ちてしまったり、結果が思わしくなかったりしたことを伝えると、面接官にマイナスな印象を与えてしまう、というのが理由です。
落ちてしまった企業の数が多いと、面接官は志望者に対して「マイナス面があるのでは」と、偏見を持たれる可能性が出てきてしまいます。
聞かれたら正直に答える必要はありますが、そうでなければ、自分から言うことは控えましょう。
面接で選考状況を聞かれたときの回答例
面接官から選考状況を聞かれたとき、どう答えて良いのかわからない、ということにならないためにも、事前に回答例を把握しておくことはとても大切です。
回答例はそのまま使わず、あくまでも参考程度にとどめ、自分の言葉で伝えるようにすることがポイントになります。
ここでは面接で選考状況を聞かれたときの回答例を4つご紹介します。
例文①
現在、プログラミングのスキルを活かしたいと、御社のほかにゲーム業界で7社ほど受けております。
そのうちの2社は最終選考の結果待ちで、4社は2次選考の結果待ちです。
御社はビジュアルのクオリティが高く、ゲームの内容もほかの会社にはない独特のビジョンがあります。
上下関係にこだわらず、自由にアイディアを出す雰囲気やプロジェクトを進めるにあたり3人ほどの小さなチームで取り組んでおられます。
これらの点に興味を持っており、御社を第一志望とする理由です。
例文②
私は清潔で快適な毎日を人々に提供できる仕事を志望し、トイレタリー業界を中心に就職活動をしております。
これまで化粧品メーカー3社と、トイレタリー会社2社で選考が進んでいるという状況です。
トイレタリー製品だけでなく、化粧品をはじめ洗剤など、女性を美しくしたり、生活を快適にしたりする商品を提供している点に、強く心を惹かれております。
また御社では積極的に地域活性化など社会貢献に取り組んでおり、その姿に感動いたしました。
これらの理由から、御社が第一志望です。
例文③
大学時代に身につけたマーケティングの知識を活かして、商品開発や既存商品の改良を手掛ける仕事に就きたいと、就職活動を展開しております。
現在5社の選考を受けました。
5社のうち2社は最終面接を終えて結果待ち、残りの3社はこれから2次面接を控えております。
私は子供の頃から新しいものやことを考えることが大好きで、成人してからはそれを商品開発や改良に活かしたいと考えるようになりました。
具体的にどの業界でどんな商品を手掛けたいのかというのは、検討中の段階で明確ではありません。
しかし、御社は長年大ヒット商品を数多く世に送り出し、ネーミングやクオリティでも高い評価を得ておられます。
アイディアを形にするという経営理念にも深く共感しておりまして、商品開発に理想的な環境が整っているという点に魅力を感じております。
面接で選考状況を聞かれたときの失敗例
選考状況について質問されたとき、答え方に失敗してしまった、という人も少なくありません。
ここでは失敗例3つのパターン「就活の軸に一貫性がない」「すべての志望度を同一にしている」「選考中のすべての企業の情報を話す」について、例文と失敗ポイント、それから改善案をご紹介します。
成功例とともに失敗例を知っておくことで、不利な言い回しを避けることが可能になります。
ぜひ参考にしてください。
例文①:就活の軸に一貫性がない
自分の可能性を活かしたいと、幅広く就職活動を展開しております。
現在受けている会社は自動車業界、証券業界、トイレタリー業界、メディア業界と、4つの業界が中心です。
合計で6社の選考が進んでおりますが、4社は最終選考が終わり、残りの2社は1次試験の選考待ちという状態です。
最終的にどの業界でどんな職種に就きたいか、現段階ではハッキリと決めてはいません。
もしほかにも挑戦できる企業があれば、志望してみるつもりです。
失敗ポイントと改善案
就職活動を幅広く展開しているということがアピールポイントとなっているため、就活の軸が不鮮明です。
本人はマルチで活躍できることを面接官に知ってもらいたいと考えているかもしれませんが、一貫性を示すことができず、面接ではデメリットとなってしまいます。
将来のことについても言及していますが、面接官は現在の選考状況が知りたいと考えていますので、現在の状況にフォーカスして答えるようにしましょう。
あまり余計なことを言うとメッセージが不鮮明になるばかりでなく、マイナスのイメージを植え付ける原因にもなる恐れがあります。
「就活の軸を示す」「問われたことに簡潔に答える」という2点に気を付けて、回答しましょう。
まずは「就活の軸を示すこと」を、アピールポイントとして、どのように回答するか考えましょう。
選考状況を伝えるときは、面接先の企業と関連のある企業のみにすることがポイントになります。
関連性を考えるときは、業界または業種がわかりやすいでしょう。
業界と業種に関連性が見られないという場合は、たとえばモノづくりなど、やりたいことで共通しているかどうか考えてみます。
「一流企業だから」「ボーナスが多いから」といったくくりはあまり意味がありませんので、避けたほうが良いでしょう。
例文②:すべての志望度を同一にしている
現在営業職で選考が進んでいる企業は5社です。
私は人とのコミュニケーションが得意で、この特技を活かした活動ができる営業職を志望しております。
どの企業も選考最終選考が終わり、結果を待つという状態です。
私が志望する企業は御社も含め皆営業がのびのびとできる社風があり、魅力を感じております。
どの企業から内定をいただけるかはわかりませんが、採用されましたら、持ち前のコミュニケーション能力を活かして、会社の売上に貢献していきたいと思います。
失敗ポイントと改善案
すべての企業に対して、志望度が同じということは、「どこでも良い」という意味になります。
企業の採用担当者は、「自社でなくてもいいと考えている」とみなし、採用には慎重になるでしょう。
募集が多ければ不合格になる可能性も高くなります。
企業が選考状況を質問する大きな理由として、志望者の本気度を把握するということが挙げられるのです。
企業は内定を承諾し、長年勤めてくれる人材を求めています。
すべての志望度を同一にすることは、企業が求めている人材とは反しますので、第一志望であることを伝えましょう。
逆にほかの会社に高い志望度があることをアピールすることも避けるのが無難です。
企業がほかの会社に取られたくないと思うほど優秀な人材とみなされれば、早めに内定を出すというケースも考えられますが、すべての会社がそうとは限りません。
そうした駆け引きをする人材を敬遠するところもありますので、一つひとつの企業に対し、誠意を持って接することが大切になります。
理想としては、どの企業に対しても、第一志望であるという気持ちで面接に臨むことです。
例文③:選考中のすべての企業の情報を話す
これまで不動産業界を中心に就職活動を展開しまして、6社受けました。
受けた会社の名前はA社、B社、C社、D社、E社、F社の6社です。
A社・D社・E社は、最終選考まで行きましたが、落とされてしまいました。
B社は第2次面接試験が終わり、結果を待っているところです。
F社からは内定をいただきました。
C社では書類選考の時点で落とされてしまいました。
F社に入社を決めるかどうかは決めていません。
就職は不動産業界と考えていましたが、もしかしたら自分に合う業界はほかにもあるかもしれない、と考えるようになりました。
御社を受けたら、金融業界やIT業界での就職も視野に入れています。
失敗ポイントと改善案
例文は極端かもしれませんが、選考状況についてすべて話そうとすると、話す内容が多すぎて、本当に知りたい情報が見つからなくなってしまいます。
選考状況は嘘をつかず正直に言うことがポイントです。
しかし、正直に話すことと、すべてを話すことは、同じではありません。
限られた時間の中で、できるだけ正確に伝えるには、必要な情報と、そうでない情報を振り分け、必要と思われるものだけを伝えるようにしましょう。
例文では、不動産会社での面接になりますので、不動産業界に就職の軸を置きます。
つまり、「不動産業界以外の業界も検討している」という部分は不要です。
不動産会社での選考状況ですので、結果が出た会社については伝える必要はありません。
選考中の企業についてのみ答えるのが賢明です。
また例文では、具体的な企業名を挙げていますが、向こうから聞かれない限り、原則として答える必要はありませんので、「不動産会社」「ハウスメーカー」「工務店」など、ざっくりとした分類で伝えるようにすることも、改善のポイントになります。
まとめ
面接で選考状況について質問されたときの対処法を解説しました。
企業にとって選考状況の質問は、志望者の本気度を把握したり、次の採用につなげたりするなど、大事な役割を担っています。
志望する側も、質問について適切に答えることでこちらの本気度を伝えることで、内定を獲得する可能性を高めることにつながります。
面接官の意図を把握し、有利な方向へ持っていけるよう回答していきましょう。
そのために一番大切なのは、誠実な態度で取り組むという態度です。
紹介したポイントを参考にして面接に臨み、内定を勝ち取りましょう。