企業において重視されるのが人材の見極めです。ですが、応募者の多い企業ほど1人1人をじっくり見る時間が少なくなってしまいます。筆記試験から面接までフルで全員チェックしようとすると、大変な時間と労力がかかってしまうのです。
そこで広く導入されるようになったのが適性検査です。出題によって応募者の行動特徴や意欲などを測れる適性検査は、よりよい人材を見つけるのに一役買っています。
一方で、応募者は最終的な選考に残るために、適性検査をクリアすることが大きな課題となってくるでしょう。適性検査で気をつけるべき点はどこなのでしょうか。適性検査通過のコツと具体例を紹介します。
SPIとは?
SPIはリクルートキャリアが開発した企業採用に特化した適性検査です。
ビジネスパーソンとして求められる基本的な素養や能力をはじめ、業務遂行力や事務処理能力、論理力や責任感などがあるか、ストレス耐性はあるか、どんな職種に適性があるかを判断できるテストとなっています。
様々な観点からビジネスパーソンとしての適性や能力の高さをチェックするために能力検査と性格検査から構成され、能力検査はさらに国語や英語などの語彙力や読解力などを確認する言語問題と数学的な内容を出題する非言語問題に分かれています。
採用にあたってすべての企業が実施するわけではありませんが、利用企業は年間13,200社ほどに及び、202万人もの受験者がいるのが現状です。
大手企業だけでなく、利用企業の約42%は従業員数が300人未満、約26%は50人未満の企業となっており、中小企業の採用でも活用されています。
大学受験時のセンター試験のように、多くの企業が集まって画一的に実施されるわけではありません。
それぞれの企業が個別に実施する方式となっています。
そのため、複数の企業にエントリーした場合、何度もSPIを受けることになります。
同じ試験なら、あとから受ける企業ほど良いスコアが出ると思われるかもしれませんが、問題も同じではありません。
企業ごとに業種や希望などに応じて、SPIの内容をカスタマイズできる他、同じ傾向の出題であっても、数値や組み合わせ、選択肢などが変わるので、まったく同じ問題は出てきません。
とはいえ、出題傾向は同じですので、何度も受けているうちにコツを掴むことはよりスムーズに回答できるようになる可能性は十分にあります。
もっとも、SPIはセンター試験のように高い得点を取れば採用されるといった性質の試験ではありません。
企業によってどんな能力が高い人物が欲しいかは異なりますし、採用する人材の全体のバランスを見ながら採用したいので、正解率が高いから即採用というものではないのです。
能力検査だけでなく、性格検査もあることからも、それはわかるはずです。
性格も良い、悪いで判断されるわけではありませんし、企業がどんな人物を求めているかは違います。
単に採用するか否かの判断材料にするのではなく、面接の内容を充実させるために面接の参考材料として使う企業もありますし、採用後の人材配置に活用する企業もあります。
その人の人柄や職種や仕事への適性、どんな組織になじみやすいのかを総合的に判断するものであり、SPIがうまくいかないからと採用されないといったわけではありません。
ただし、仕事に向けた意欲や業務遂行能力や事務処理能力の高さ、各職種や業務に求められる能力の高さやレベルがSPIでわかります。
そのため、能力が高いほど採用したい人材になるのは確かといえるでしょう。
SPIの能力検査は事前に問題集などを使って対策をしておけば、すぐに問題が解けるようになり、解くスピードも速くすることが可能です。
事前対策をしておけば、自分の能力を発揮させることができますので、問題集などを1冊はクリアすることが大切です。
性格検査については、ありのままを答えることが大切で、自分を良く見せるような対策はしないほうが良いでしょう。
SPIの対策をはじめる時期は?
SPIを行う時期も企業によって違いがあります。
大学3年生の3月に就活が始まり、会社説明会などが始まる頃に行うところもあれば、応募者が多数いるためにふるいにかける目的で行う企業やSPIの情報を面接の際の参考資料にするために、エントリー後、一次面接の選考を行う前に実施する企業も多いです。
また、コストなどの問題から一次面接を通過した人だけに行うケースもありますし、配属先を決めるための参考材料にしたいと、最終段階で実施する企業もあります。
いつから対策を始めるべきかは、エントリーする企業がいつSPIを実施するかにもよりますが、複数の企業にエントリーする場合にはその実施時期もまちまちです。
いつの段階で行われても、焦らずに受験ができるよう、就活が始まる3月までの段階には一通り、問題を解いて備えている必要があります。
そうなると大学3年時の年末年始頃から、1、2ヶ月かけて隙間時間を使って行っておけると安心です。
就活で忙しくなると、エントリーシートの作成や情報収集、面接の練習などでSPI対策どころではなくなるので、自分の時間のゆとりがある時期に行っておきましょう。
年末年始は1月に行われる大学の試験勉強で時間が取れないなら、入試のために長期休暇や春休みに入る2月でも間に合います。
大学受験の勉強のように何時間も集中的にやるような勉強ではなく、移動中やバイトの休憩時間などを使って、問題を見ていきましょう。
何度か繰り返して一通り問題の傾向や解き方を掴んだら、まとまった時間を作り、実際の試験時間を計って、制限時間内で速く解けるように練習するのがオススメです。
SPI適性検査のコツとは?落ちる人の共通点
2次選考、3次選考などに進むための選考として広く採用されるようになったのが適性検査です。つまり、適性検査を通過することがまず重要となります。
ですが、適性検査を毎回通過できずに悩んでいる人もいるはずです。なぜ適正検査に落ちてしまうのでしょうか。落ちやすい人の共通点から適性検査に通過するコツをみていきましょう。
■回答に矛盾がある
よく思われたいがために、企業の求める人物像を考えながら適性検査を受けるのはおすすめしません。理由は、回答に矛盾が出てきてしまうためです。
適性検査の質問は、同じような内容が繰り返し出てきます。はじめに企業目線で回答していても、偽って答えているために、後のほうになるとどのように回答したかわからなくなってしまうことがあります。
「忍耐強い」と答えたのにもかかわらず、「諦めが早い」と答えてしまうなど、どちらが本当かわからない回答となってしまうのです。採用担当者目線では、偽って回答している可能性があるということで、適性検査に落ちやすいです。
■極端な回答が多い
「よくあてはまる」「まったくあてはまらない」と、5段階評価でいう1や5の回答が多いと極端な人間だと思われることがあります。質問の内容にもよりますが、極端で柔軟性がないと判断されて適性検査に落ちやすくなります。
■「どちらでもない」ばかりの回答にも要注意
「よくあてはまる」や「まったくあてはまらない」など、極端すぎる回答が多いのはよくないですが、反対に「どちらでもない」という中立の意見ばかりは、マイナスに捉えられやすいです。理由は、曖昧な回答で優柔不断な人間と思われてしまうため。とりあえず「どちらでもない」で回答しておけばよいと考えるのはやめましょう。
このように極端な回答、または曖昧な回答が多すぎるのは適性検査ではよくない結果を生みます。適性検査を無事通過するには、偏った回答をせずに満遍なく答えるのがポイントです。
もちろん偽りなく正しく答えることも大切ですが、全体を見直して回答が極端な方向に偏っていないか、「どちらでもよい」と曖昧な回答が多くないかは確認しましょう。
SPI適性検査のコツ!出題傾向
適性検査に落ちやすい人の特徴がわかったところで、どのように対策を打つのが正解なのでしょう。適性検査の出題傾向から、適性検査を攻略するコツを紹介します。
■行動の特徴を測る「行動特性」
行動特性とは、個人の行動にどのような特徴があるかを測るものです。採用担当者は、ある場面においてどのような行動をとるかを行動特性の出題から確認します。
例えば、内向的または外向的のどちらか、人に意見を述べることが多いかあるいは人の意見を聞くことのほうが多いかなどです。
短時間の判断において、本人のPRだけでは実際に実力を測るのは難しいもの。行動特性は、実際の実力や評価がわからない場合も、ある程度の予測をつけて本人の特徴を知ることに役立ちます。
■ものごとに対する「意欲」
適性検査の出題傾向としては、意欲に関する部分も多いです。計画を立ててから実行に移すか、新しいことにチャレンジする意欲があるかなどを確認します。
応募者本人の特徴を測るような行動特性とは異なり、仕事に関するウエイトが重く、仕事に対してどのくらい前向きに取り組んでくれそうかの判断材料となるものです。ただし意欲が高いからよいとは限らず、職種によっては意欲が高すぎないほうがよい場合もあります。
このように、適性検査では行動特性、意欲に関して総合的に判断できるような出題傾向となっています。
■断定表現を用いた出題が多い
意欲や行動特性など、出題内容に関して把握しておくことも大切ですが、出題傾向についてもう1つ気をつけなければならないことがあります。「必ず」「一度も」のような断定表現が多いことです。例えば、「友達との約束の時間は必ず守りますか」のような出題です。
なぜ「必ず」などの断定表現が多用されるのでしょう。実際に出題を目にすると、他の出題と比べて断定表現が用いられている出題は語彙が強く感じるのではないでしょうか。実は、適性検査の出題で多用される断定表現は、偽りのない回答か念を押す意味で使われています。
自分をよく見せようとしている学生を揺さぶることで、回答に嘘がないか確認しているのです。
■何度も繰り返される質問
適性検査を受けると「さっきも同じような内容では?」と感じることもあるかもしれません。実際、適性検査は、問い方を変えて何度も同じような質問をする傾向にあります。
同じような質問が繰り返されるのは、断定表現が使われる理由と同じように偽って回答していないか確認するためです。そのため、質問への回答はぶれないことが重要。1つの適性検査内で矛盾が生まれないように気をつけましょう。
SPI適性検査のコツを掴もう!具体例を紹介!
ここまで適性検査で落ちるポイントや出題のコツを解説してきましたが、適性検査といってもさまざまな種類があります。適性検査の種類によって出題内容は異なるので、全体的な出題傾向に合わせて、個別の適性検査の出題傾向についても知っておくと安心です。
適性検査の具体例と、テスト形態について確認してみましょう。
■適性検査のテスト形態
適性検査には、紙受験の他、Web上で実施されるWeb受験、指定の施設にて集団で実施するセンター受験があります。日時の問題もあるので、受験前にどのようなテスト形態か確認してみましょう。ちなみに、紙受験とセンター受験は指定の施設などでの受験となりますが、Web受験は自宅にいながら受験可能です。
それでは、実施の適性検査にはどのようなものがあるのでしょうか。適性検査の具体例5つを紹介します。
■大手就職サポート企業の提供する「SPI3」
大企業だけでなく、中小企業でも広く用いられている適性検査です。豊富なコメント数で人材をしっかり見極められるのが人気の秘密。就活中であれば、目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。適性検査の中でもメジャーな検査です。
出題からは性格や能力、組織適応力などが総合的に判断されます。断定的表現を多用するライスケールが多用されているので矛盾点のないよう注意しましょう。
■英語の受験に対応した「GAB/CAB」
マークシートとWeb受験に対応している適性検査です。測定内容は、言語理解などの知的能力やチームワーク、マネージメント特性など。性格や意欲だけでなく、簡単な計算や言語能力も範囲に含まれています。職務適正まで診断できる検査です。英語で受験できるのもGAB/CABの特徴。
■出題傾向の高い「玉手箱III」
出題されることの多いWeb適性検査です。就活中はSPI3と並んで出くわすことも多いテストなので、しっかり対策できるようにしておくとよいでしょう。知的能力のほか、性格やチームワークに関する出題があります。
■豊富な臨床データから作られた「V-CAT」
1,000万人超の豊富な臨床データをもとに作られた適性検査です。50年以上の経験と専門科目線の解析が特徴。独自の目線から、対象者の持ち味、そしてストレス耐性を測ります。
一般的な適性検査は、知的能力のほか行動特性や意欲を測るものが多い中、メンタルヘルスを重視しているのがポイントです。
■Webテストで活用される「PET II」
15のタイプ分けで診断ができる適性検査です。知的能力の診断はなく、人物像にウエイトを置いた診断で、メンタル診断の他、管理者適正、組織文化適合を測ります。Web受験のみで実施されている適性検査です。
まとめ:SPI適性検査のコツ
どこを重視するかは企業や職業によって異なるため適性検査に正解があるわけではありませんが、落ちやすい人、受かりやすい人は存在します。先に紹介したように、差は適性検査の出題傾向やポイントをよく理解しているかどうかです。
適性検査に悩んだら、まずどのような種類の適性検査があって、それぞれ何を測るものなのか。回答に偏りや矛盾がないか振り返ることをおすすめします。
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