はじめに
経理職は、専門性が身につき、長く安定して働ける職種として、文系学生を中心に毎年非常に高い倍率となる人気職種です。
しかし、お金や数字を扱う正確性が求められる仕事であるため、「高学歴で頭が良い人しか採用されないのではないか」「商学部や経済学部の出身者以外は不利なのではないか」という学歴や専攻に関する不安を持つ学生も少なくありません。
確かに大手企業の総合職採用では学歴が重視される傾向にありますが、経理という職種自体は、学歴以上に「実務能力」や「資格」がものを言う実力主義の側面も持っています。
本記事では、経理職における学歴フィルターのリアルな実態と、学歴に自信がない学生が専門性を武器に内定を勝ち取るための戦略について詳しく解説します。
【経理 学歴】学歴フィルターの実態
経理職における学歴フィルターの有無は、「どの企業の、どのような採用枠を目指すか」によって大きく異なります。
総合商社や大手メーカーの「総合職」として入社し、その後の配属で経理を目指す場合、そこには明確に厳しい学歴フィルターが存在します。
これらの企業では、数万人の応募者から将来の幹部候補を選抜するため、旧帝大や早慶レベルの学生が内定者の大半を占めるのが現実です。
しかし、中堅企業やベンチャー企業、あるいは大手企業の子会社などが実施している「職種別採用」においては、話が全く変わってきます。
ここでは、偏差値の高さよりも「簿記の資格を持っているか」「経理としての適性があるか」が最優先で評価されます。
つまり、ポテンシャルだけで判断される総合職採用とは異なり、専門知識や実務への意欲があれば、学歴の壁を越えて採用されるチャンスが豊富にあるのが経理職の特徴です。
【経理 学歴】出身大学の傾向と特徴
経理職に就く学生の出身大学を見ると、学部に関しては商学部、経済学部、経営学部といった、会計や簿記を大学の講義で学ぶ機会がある学部の出身者が比較的多い傾向にあります。
しかし、法学部や文学部、あるいは理系学部出身で経理として活躍している人も決して珍しくありません。
大学のランクに関しては、大手上場企業の本社経理部門では難関大学出身者が目立ちますが、経理という仕事は日本中のあらゆる企業に存在するため、業界全体で見れば日東駒専や産近甲龍、地方私立大学など、非常に幅広い大学層から採用されているのが特徴です。
学歴そのものよりも、在学中に簿記会計の勉強にどれだけ打ち込んだかが、就職先を決定づける大きな要因となっています。
【経理 学歴】学歴が話題になる理由
事務系職種の中でも、なぜ経理職は特に「学歴」や「地頭の良さ」が必要だと言われることが多いのでしょうか。
それは、経理の業務が決して単純な計算作業だけではなく、経営判断に直結する高度な知的生産活動だからです。
企業側は、ミスが許されないプレッシャーの中で正確に業務を遂行し、数字から企業の未来を読み解く能力を求めています。
ここでは、採用担当者が経理職の選考において学歴を重視せざるを得ない、具体的な4つの背景について詳しく解説します。
数字に対する論理的思考力と正確性
経理の仕事は、日々発生する膨大な取引データを処理し、1円のズレもなく決算書を作成することです。
これには単なる計算能力だけでなく、数字の背景にある取引の実態を理解し、矛盾がないかを検証する論理的思考力が求められます。
受験勉強、特に数学や複雑な文章読解を通じて培われる論理的な処理能力や緻密さは、経理の実務適性と高い相関関係にあると考えられています。
企業は、入社後に数字の扱いでミスを連発されるリスクを避けるため、一定の基礎学力が担保されている高学歴層を採用することで、正確でスピーディーな業務遂行能力を期待しているのです。
将来のCFO(最高財務責任者)候補としての期待
特に大手企業における経理配属は、単なる事務担当者ではなく、将来的には財務戦略の立案や資金調達、M&Aなどを主導するCFO(最高財務責任者)や経営幹部になることが期待されています。
経営層に対して数字に基づいた提言を行ったり、銀行や投資家と高度な交渉を行ったりするためには、会計知識だけでなく、広い視野と高い知的水準が不可欠です。
そのため、採用時点から将来のリーダー候補としてのポテンシャルを見込み、経営的な視座を持てるだけの地頭の良さを測る指標として、学歴が重視される傾向があります。
継続的な学習習慣と向上心の証明
会計基準や税法は頻繁に改正されるため、経理担当者は入社後も常に新しい知識をアップデートし続けなければなりません。
また、業務と並行して簿記1級や税理士、公認会計士といった難関資格の取得を目指す社員も多くいます。
このような環境では、自ら目標を設定し、コツコツと勉強を続ける「学習習慣」が何よりも重要です。
難関大学への合格実績は、嫌な勉強から逃げずに長期間努力を継続できたことの客観的な証明となります。
企業は、変化の激しいビジネス環境において、自律的に学び成長し続けられる人材であるかを、学歴を通じて判断しようとしているのです。
事務系職種における圧倒的な高倍率
営業職などに比べて採用人数が少ない事務系職種(経理・人事・総務など)には、安定志向の学生からの応募が殺到し、倍率が数百倍になることも珍しくありません。
人事担当者は限られた時間で効率的に選考を行う必要があるため、足切りの基準として学歴や適性検査のスコアを利用することがあります。
特に人気の大手企業では、どれだけ熱意があっても、一定の学歴基準を満たしていないとエントリーシートすら読まれないというケースも存在します。
これは能力の否定ではなく、需給バランスの不均衡による構造的な問題として、ある程度割り切って対策を練る必要があります。
【経理 学歴】学歴より重要な評価ポイント
学歴フィルターが存在する一方で、経理職は「スキル」と「適性」が明確であれば、学歴を覆して採用される可能性が非常に高い職種でもあります。
現場の管理職クラスが面接で求めているのは、偏差値の高さよりも「安心して仕事を任せられるか」「チームに貢献できるか」という実務的な視点です。
ここでは、採用担当者がエントリーシートの大学名以上に注目している、経理職の内定を勝ち取るために不可欠な4つの資質について具体的に解説します。
日商簿記などの資格と会計知識
経理職の採用において、最もわかりやすく強力な武器となるのが「資格」です。
特に「日商簿記検定2級」は、企業の経理実務を行う上で必須レベルの知識とされており、持っているだけで「最低限の知識がある」「本気で経理を目指している」という証明になります。
新卒採用であっても、簿記の知識がゼロの学生と、すでに2級以上を持っている学生とでは、入社後の教育コストや即戦力性に雲泥の差があります。
面接官は、口先だけの志望動機よりも、資格取得という具体的な行動と結果によって示された熱意を高く評価します。
ミスなく業務を遂行する几帳面さと責任感
経理のミスは、決算の修正や税務申告の誤りにつながり、最悪の場合は企業の社会的信用を失墜させる可能性があります。
そのため、派手なパフォーマンスよりも、地味な作業をコツコツと正確に行い、自分の仕事に対して最後まで責任を持つ姿勢が極めて重要視されます。
面接では、これまでの経験の中で、細かい作業にいかに注意深く取り組んだか、あるいはチームの活動において裏方としてどのように組織を支えたかといったエピソードが見られます。
「この子になら金庫の鍵を預けられる」と思わせる誠実さこそが、経理担当者としての最大の才能です。
現場と連携するコミュニケーション能力
「経理は一日中パソコンに向かって黙々と作業をする仕事」というのは大きな誤解です。
実際には、経費精算の不備について営業担当者に確認したり、予算の進捗について各部署の責任者と調整したりと、社内のあらゆる部署とコミュニケーションを取る必要があります。
時には、相手にとって耳の痛いことを伝えたり、協力を仰いだりする場面もあるため、相手の立場を尊重しながら円滑に業務を進める調整力が求められます。
面接では、数字に強いだけでなく、周囲と協力関係を築ける対人スキルの高さもしっかりとチェックされています。
コンプライアンス意識と倫理観
会社の資金を管理する経理担当者にとって、高い倫理観とコンプライアンス(法令遵守)意識は絶対条件です。
不正や横領を防ぐ砦としての役割も担っているため、ルールを厳格に守り、公私混同をしない潔白な人間性が求められます。
面接の中で、過去の失敗をごまかさずに正直に話せるか、約束や期限を守れるかといった基本的な振る舞いを通じて、その人の倫理観が見定められています。
どれだけ能力が高くても、信頼性に欠ける言動が見られる学生は即座に不採用となるほど、経理における「信用」の重みは別格です。
【経理 学歴】学歴に不安がある人の対策
「有名大学ではないから大手企業の経理は無理だ」と諦める前に、戦略的に動くことで道は開けます。
経理は専門職としての側面が強いため、正しい努力とアピールを行えば、高学歴のライバルたちをごぼう抜きにすることも可能です。
重要なのは、自分が即戦力に近い人材であることを客観的な事実として突きつけることです。
ここでは、学歴に不安を抱える学生が、経理職の内定を確実なものにするための実践的な対策を4つ紹介します。
日商簿記1級を取得して専門性を証明する
学歴コンプレックスを一発で解消する最強の方法は、「日商簿記1級」の取得です。
1級は合格率10%前後の超難関資格であり、税理士や公認会計士への登竜門でもあります。
大学生のうちにこれを取得できれば、「会計に関する知識レベルは極めて高い」と客観的に証明され、学歴フィルターを飛び越えて評価されるケースが多々あります。
大手企業であっても、1級保有者は希少価値が高いため、人事担当者の目に留まりやすくなります。
2級で満足せず、圧倒的な専門知識を身につけることで、学歴の壁を実力で破壊しましょう。
経理の実務に近いインターンシップに参加する
座学だけでなく、実務経験を持っていることは大きなアドバンテージになります。
会計事務所や税理士法人、あるいは一般企業の経理部での長期インターンシップに参加し、伝票入力や仕訳作業、月次決算の補助などを経験してみましょう。
面接で「実際の会計ソフト(弥生会計やマネーフォワードなど)を使って業務をしていました」と語れるようになれば、採用担当者は入社後の活躍する姿を容易にイメージできます。
実務経験は、ポテンシャル採用における不安要素を払拭し、「育てなくても使える人材」としての評価を確立させます。
経理特化の採用枠やBtoB優良企業を狙う
「総合職」という大きな枠組みで応募すると、高学歴層との競争に巻き込まれがちです。
そこで、求人サイトなどで「経理職採用」「管理部門採用」と職種を限定して募集している企業を探しましょう。
また、学生への知名度は低くても、世界トップシェアを持つようなBtoBメーカーや専門商社などは、経営基盤が安定しており経理の待遇も良い隠れた優良企業です。
こうした企業は学歴よりも「本当に経理がやりたいか」「長く働いてくれるか」を重視するため、熱意と適性が正当に評価されやすいフィールドです。
PCスキル(Excel)を極めてアピールする
経理実務において、Excelスキルは簿記知識と同じくらい重要です。
単に入力ができるだけでなく、VLOOKUP関数やピボットテーブル、マクロ(VBA)などを使いこなし、業務効率化ができるレベルであることをアピールしましょう。
学生時代にExcelを使ってデータ分析を行ったり、サークルの会計管理ツールを自作したりしたエピソードがあれば効果的です。
多くの企業が経理業務の効率化に課題を抱えているため、「ITに強い経理担当者」というポジションを確立できれば、学歴に関係なく採用したいと思わせる強力な武器になります。
【経理 学歴】よくある質問
経理職を目指す就活生からは、学部や資格、そして将来性に関する質問が多く寄せられます。
特にAIの進化による影響は、これからキャリアをスタートさせる学生にとって気になるポイントでしょう。
ここでは、経理職志望者が抱きがちなよくある質問に対して、業界の現状と将来展望を踏まえた回答をまとめました。
これらを事前に理解し、迷いなく選考に進めるように準備しておきましょう。
商学部や経済学部以外でも経理になれますか?
全く問題ありません。
確かに商学部などは授業で簿記を学ぶため有利な面もありますが、企業の採用担当者は「出身学部」よりも「個人の適性と学習意欲」を見ています。
実際に、法学部出身でコンプライアンスに強い経理や、文学部出身で丁寧なコミュニケーションができる経理など、多様なバックグラウンドを持つ人が活躍しています。
重要なのは、学部に関係なく独学で簿記を勉強し、資格を取得しているかどうかです。
未経験分野であっても自ら学ぶ姿勢があれば、学部によるハンデは十分に埋められます。
日商簿記2級がないと採用されませんか?
新卒採用においては、必ずしも「必須」ではありません。
ポテンシャル採用であるため、入社までに取得することを条件に内定が出るケースも多くあります。
しかし、人気企業や経理職別採用においては、応募者の多くがすでに2級を持っています。
そのため、資格がない状態で選考に臨むと、比較された際に不利になる可能性が高いのは事実です。
もし取得が間に合わない場合は、「現在勉強中で、〇月の試験で取得予定です」と具体的に伝え、行動している姿勢をアピールすることが不可欠です。
AIによって経理の仕事はなくなりますか?
「単純な入力作業」や「集計業務」はAIやRPA(ロボットによる業務自動化)に代替されていくでしょう。
しかし、経理の仕事自体がなくなることはありません。
AIが出した数字が正しいかを判断したり、例外的な処理に対応したり、数字を分析して経営陣に説明したりする業務は、人間にしかできない高度な仕事です。
これからの経理には、作業者としてのスキルではなく、AIを使いこなして付加価値を生み出す分析力や提案力が求められます。
AIの導入は、単純作業から解放され、よりクリエイティブな業務に集中できるチャンスと捉えましょう。
未経験からCFOを目指すことは可能ですか?
新卒で経理配属されれば、もちろん可能です。
CFOを目指すのであれば、単に経理処理ができるだけでなく、財務(資金調達や運用)、税務、管理会計、そして経営戦略など、幅広い知識と経験を積む必要があります。
キャリアパスとしては、まずは現場で実務を完璧にこなし、徐々に決算業務、連結決算、財務戦略へと担当範囲を広げていくのが一般的です。
また、一社に留まらず、ベンチャー企業などで若いうちから責任あるポジションに挑戦して経験値を稼ぐことも、CFOへの近道となる有力な選択肢です。
まとめ
本記事では、経理職における学歴フィルターの実情と、内定を勝ち取るための具体的な対策について解説してきました。
大手企業の総合職採用など一部で学歴が壁になることはありますが、経理職は本質的に「専門スキル」と「実務能力」がものを言う職種です。
日商簿記などの資格取得、Excelスキルの向上、そして実務に近い経験を積むといった行動は、学歴の差を埋めるだけでなく、入社後のあなたのキャリアを支える一生の財産となります。
変えられない学歴を嘆くのではなく、誰にでもチャンスがある「専門性」という武器を磨き上げ、自信を持って経理職への扉を叩いてください。
明治大学院卒業後、就活メディア運営|自社メディア「就活市場」「Digmedia」「ベンチャー就活ナビ」などの運営を軸に、年間10万人の就活生の内定獲得をサポート











