はじめに
旅行業界は、「形のない思い出」を商品として扱い、人々に感動を提供する仕事として、文系学生を中心に長年トップクラスの人気を誇っています。
JTBやHIS、近畿日本ツーリストといった大手企業は知名度も抜群であり、毎年数万人の学生がエントリーするため、「高学歴でないと内定は難しいのではないか」と不安を感じる学生も多いでしょう。
確かに、人気企業ゆえの高倍率は避けられませんが、旅行業界は他の業界に比べて「人物重視」の傾向が強いという特徴もあります。
お客様と直接接し、信頼関係を築くことがビジネスの根幹であるため、偏差値の高さだけでは測れない「人間力」や「ホスピタリティ」が極めて重要視されるからです。
本記事では、旅行業界における学歴フィルターの現状を冷静に分析し、学歴に左右されずに内定を勝ち取るための具体的な戦略と、企業が真に求めている人材像について詳しく解説します。
【旅行業界 学歴】学歴フィルターの実態
旅行業界における学歴フィルターについて、結論から述べると「大手総合職には存在するが、絶対的な壁ではない」というのが実情です。
業界最大手のグループや総合旅行会社の「総合職」においては、採用予定数に対して応募者数が膨大になるため、初期選考の段階で一定の大学名によるスクリーニングが行われる傾向があります。
しかし、これはあくまで事務処理能力や基礎学力の担保を目的とした効率化の一環です。
旅行業界の業務は多岐にわたり、カウンターセールスや添乗業務、法人営業など、現場での対人スキルが何よりも求められるため、学歴が高くても対人適性が低いと判断されれば容赦なく不採用となります。
逆に、中堅大学や地方大学出身であっても、高いコミュニケーション能力や語学力、そして何より「旅行を通じて課題を解決したい」という熱意を持つ学生は積極的に採用されており、学歴だけで合否が決まる業界ではありません。
【旅行業界 学歴】出身大学の傾向と特徴
旅行業界の出身大学は非常にバラエティに富んでいます。
大手旅行会社の総合職では、早慶上智、MARCH（明治・青山・立教・中央・法政）、関関同立といった難関私立大学や、国公立大学の出身者が多く見られます。
これは、複雑な旅行約款の理解や、法人顧客への論理的な提案力が求められるためです。
一方で、観光学部や外国語学部を持つ大学からの採用も非常に多く、日東駒専や産近甲龍、女子大学、そして観光・ホスピタリティ系の専門学校など、幅広い層から人材が輩出されています。
特に近年は、インバウンド需要の増加に伴い、語学力に長けた外国語大学や、地域活性化に強い地方大学の出身者が評価されるケースも増えています。
特定の大学に偏る「学閥」の影響は比較的薄く、文系学部全般から多様なバックグラウンドを持つ学生が集まっているのが、この業界の大きな特徴と言えます。
【旅行業界 学歴】学歴が話題になる理由
「好きなことを仕事にしたい」という純粋な動機で志望する学生が多い一方で、旅行業界の就職活動では学歴の壁を感じる場面も少なくありません。
なぜ、ホスピタリティ産業である旅行業界において、学力指標である学歴が話題となるのでしょうか。
その背景には、人気業界ならではの構造的な問題や、業務の裏にある緻密な実務能力への要求が存在します。
漠然とした不安を解消するためには、企業側が学歴を気にせざるを得ない理由を理解することが重要です。
ここでは、旅行業界で学歴が話題になる主な要因を4つの視点から具体的に解説していきます。
圧倒的な人気による高倍率と選考の効率化
旅行業界、特に大手旅行代理店は、航空会社や広告代理店と並んで就職人気ランキングの常連です。
採用枠数百名に対して数万人のエントリーが集まることも珍しくなく、倍率は数百倍に達するケースもあります。
人事担当者が限られた期間内で全ての応募書類に目を通し、面接を行うことは物理的に不可能です。
そのため、選考プロセスの初期段階において、一定の基礎能力を保証する指標として学歴を用いたフィルタリングを行うことは、企業が採用活動を回すための現実的な手段となっています。
この「足切り」の存在が、学生の間で「学歴がないとエントリーシートすら通らない」という噂となり、学歴重視のイメージを強化させています。
しかし、これは人気企業ゆえの宿命であり、業界全体が学歴偏重というわけではありません。
複雑な行程作成や手配に必要な事務処理能力
旅行の仕事は、華やかな企画や添乗だけでなく、膨大な事務作業によって支えられています。
航空機やホテルの空席照会、複雑な運賃計算、約款に基づいた契約手続き、分単位のスケジュール調整など、ミスが許されない緻密な作業が日常的に発生します。
こうした業務を正確かつスピーディにこなすためには、高い事務処理能力と論理的思考力が不可欠であり、難関大学の入試を突破してきた学生の「情報処理能力」や「几帳面さ」が評価される傾向にあります。
特に総合職は、将来的に経営管理や大規模プロジェクトの進行管理を任される可能性があるため、数字に強く、論理的に物事を組み立てられる地頭の良さが期待され、それが学歴というフィルターに反映されることがあります。
法人営業におけるクライアントとの折衝能力
旅行会社の収益の柱の一つは、修学旅行や企業の報奨旅行、MICE（国際会議・展示会など）を取り扱う法人営業です。
ここでは、学校の先生や企業の役員、行政の担当者など、社会的地位の高い相手に対してプレゼンテーションを行い、大型契約を勝ち取る必要があります。
クライアントと対等に渡り合い、信頼を勝ち取るためには、一般的なビジネスマナーはもちろん、幅広い教養や知的な会話力が求められます。
高学歴であることは、一定の教養レベルを担保する証明書として機能し、クライアントに安心感を与える要素の一つとなり得ます。
企業側は、営業の最前線で「会社の顔」として恥ずかしくない人材を求めており、その判断基準の一つとして学歴が見られている側面があります。
グローバル展開に対応できる語学力と学習意欲
旅行業界は当然ながら世界を舞台にするビジネスであり、海外のホテルや現地手配会社とのやり取りが日常的に発生します。
英語はもちろん、中国語やスペイン語など、多様な言語スキルが求められる場面も多々あります。
また、各国の歴史、文化、宗教、政治情勢など、常に新しい情報を学び続ける姿勢が不可欠です。
難関大学や外国語大学の学生は、在学中に高度な語学教育を受けている確率が高く、また異文化理解や学習に対する意欲も高いと期待されます。
単に「英語が話せる」だけでなく、未知の分野に対して自ら学び、適応していける「学習習慣」が身についているかどうかが重視され、その指標として学歴（学習歴）が参考にされるのです。
【旅行業界 学歴】学歴より重要な評価ポイント
学歴は選考の一つの要素に過ぎず、旅行業界において最も重要なのは「お客様に選ばれる人間かどうか」です。
旅行商品は形がないため、お客様は「あなたにお願いしたい」という信頼感で購入を決定します。
そのため、面接では偏差値よりも人間性や対人スキルが徹底的にチェックされます。
学歴が高くてもコミュニケーションが一方的であったり、気配りができなかったりすれば内定は遠のきます。
ここでは、旅行業界が学歴以上に重視して評価している具体的なポイントを詳しく解説します。
これらをアピールできれば、学歴の壁を越えて採用担当者の心を掴むことができます。
お客様の期待を超えるホスピタリティと人柄
旅行業界の核となるのは「おもてなしの心」です。
お客様の要望をただ聞くだけでなく、言葉にされない潜在的なニーズを汲み取り、「そこまでしてくれるのか」という感動を与える提案ができるかどうかが問われます。
面接では、これまでのアルバイトやサークル活動などで、どのように他者に貢献し、相手を喜ばせたかというエピソードが重視されます。
自然と出る笑顔、相手の話を聞く姿勢、柔らかい物腰といった「人柄」の良さは、お客様との信頼関係を築くための最強の武器です。
「この人と一緒に旅行に行きたい」「この人に任せれば安心だ」と思わせるような親しみやすさと誠実さは、どんな高学歴よりも現場で価値を発揮する資質です。
トラブル発生時に冷静に対処できる対応力
旅行にトラブルは付き物です。
悪天候による飛行機の欠航、現地での病気や怪我、ホテルのオーバーブッキングなど、予期せぬ事態が次々と起こります。
そんな時、パニックにならずに状況を把握し、お客様の安全を確保しながら代替案を提示できる「冷静な対応力」と「判断力」が求められます。
企業は、ストレスのかかる状況下でも感情的にならず、粘り強く解決策を模索できるタフな精神力を持った人材を求めています。
学生時代に困難な状況に直面し、それをどう乗り越えたかという経験談は、トラブル耐性の証明になります。
マニュアル通りに動く優等生よりも、現場の状況に合わせて柔軟に動ける機転の利く学生が高く評価されます。
ゼロから価値を生み出す企画力と提案力
旅行会社の仕事は、既存のパッケージツアーを売るだけではありません。
お客様の目的や予算に合わせて、オリジナルのプランを作成したり、地域の魅力を発掘して新しいツアーを企画したりする創造性が求められます。
「なぜそのプランなのか」「それがお客様にどんな価値をもたらすのか」を論理的かつ情熱的に伝えられる企画提案力は、学歴とは別次元の能力です。
面接やグループディスカッションでは、独自の視点を持っているか、ありきたりなアイデアに留まらずプラスアルファの価値を付加できるかが見られます。
自分の趣味や特技を活かしたユニークな旅行プランを語れるなど、自分なりの「引き出し」を多く持っている学生は魅力的です。
チームで目標を達成する協調性と調整力
一つの旅行を催行するためには、営業、手配、カウンター、添乗員、そして航空会社や宿泊施設など、多くの関係者が連携する必要があります。
自分勝手な行動はチームの輪を乱し、最終的にお客様へのサービス低下を招きます。
そのため、周囲と円滑にコミュニケーションを取り、調整を図りながらプロジェクトを進める「協調性」が不可欠です。
自分が前に出るだけでなく、裏方としてチームを支えたり、意見の対立を調整したりした経験は高く評価されます。
特に旅行業界は女性比率が高い職場も多く、細やかな気配りやチームワークを大切にする姿勢は、組織に馴染む上で重要な要素となります。
俺が俺がと主張するタイプよりも、周囲を巻き込んでゴールを目指せるバランサーとしての能力が好まれます。
【旅行業界 学歴】学歴に不安がある人の対策
学歴に自信がないからといって、旅行業界への道を諦める必要はありません。
大手企業の総合職は狭き門かもしれませんが、適切な準備と戦略を行えば、内定を獲得するチャンスは十分にあります。
他の学生と同じアピールをするのではなく、旅行業界の仕事に直結するスキルや経験を提示し、「即戦力としての可能性」を感じさせることが重要です。
ここでは、学歴に不安を感じている学生が、旅行業界で勝ち抜くために実践すべき具体的な対策を4つ紹介します。
「旅行業務取扱管理者」などの資格を取得する
旅行業界唯一の国家資格である「旅行業務取扱管理者（国内・総合）」を在学中に取得することは、最強のアピールになります。
通常は入社後に取得を推奨される資格ですが、学生のうちに取得しておくことで、基礎知識があることの証明になるだけでなく、「本気で旅行業界を目指している」という強い熱意を客観的に示すことができます。
特に、難易度の高い「総合旅行業務取扱管理者」を持っていれば、書類選考や面接で一目置かれることは間違いありません。
また、「世界遺産検定」や「旅行地理検定」なども、知識の深さをアピールする良い材料になります。
学歴という過去の指標に対抗するには、資格という現在の努力の結果を提示するのが効果的です。
語学力のスコアを上げて実務能力を示す
グローバル化が進む旅行業界において、語学力は明確な武器になります。
学歴にハンデがあっても、TOEICのスコアが高ければ（目安として730点以上、できれば800点以上）、基礎能力の高さと努力できる姿勢を証明できます。
英語だけでなく、中国語や韓国語などのアジア圏の言語ができることも大きな強みです。
単に「旅行が好き」という学生はごまんといますが、「英語で業務がこなせます」と言える学生は貴重です。
語学力は客観的な数値で示せるスキルであるため、採用担当者にとっても評価しやすいポイントです。
留学経験がある場合は、単に楽しかった話ではなく、現地でどのような困難があり、どう乗り越えたかというエピソードとセットでアピールしましょう。
インターンシップやアルバイトで接客経験を積む
座学の成績よりも、現場での実務経験をアピールする戦略です。
ホテルや飲食店、テーマパークなどでの接客アルバイトを通じて、「お客様に喜ばれた経験」や「クレーム対応の経験」を具体的に語れるようにしておきましょう。
また、旅行会社のインターンシップに参加し、実際の業務フローや職場の雰囲気を肌で感じることも重要です。
「現場を知っている」「対人業務の厳しさとやりがいを理解している」という実績は、採用後のミスマッチを防ぎたい企業にとって非常に魅力的です。
カウンター業務のロールプレイングなどが選考に含まれる場合、こうした経験がそのまま活き、学歴に関係なく高い評価を得ることができます。
業界研究を深めWeb系旅行会社（OTA）も視野に入れる
JTBやKNTなどの伝統的な旅行会社だけでなく、楽天トラベル、Booking.com、エクスペディアなどのOTA（Online Travel Agent）や、訪日旅行（インバウンド）専門の旅行会社、特定の地域やテーマに特化した専門旅行会社など、業界には多様なプレイヤーが存在します。
特にOTAやベンチャー気質の旅行会社は、学歴よりもITリテラシーや行動力を重視する傾向があり、採用の門戸が広くなっています。
「旅行業界＝大手代理店」という固定観念を捨て、成長著しい分野やニッチな分野に目を向けることで、内定の確率は格段に上がります。
徹底的な業界研究を行い、各社の強みや今後の展望を語れるようになれば、熱意の面で高学歴層を凌駕することができます。
【旅行業界 学歴】よくある質問
旅行業界への就職を目指す学生から、学歴やスキルに関して多くの質問が寄せられます。
「観光学部でないと不利か」「英語ができないとダメか」など、気になる点は尽きないでしょう。
情報が溢れる中で、正しい知識を持つことは不安を解消し、自信を持って選考に臨むために不可欠です。
ここでは、就活アドバイザーとして現場でよく耳にする質問に対し、建前なしの本音で回答します。
噂に惑わされず、事実に基づいた準備を進めるための参考にしてください。
観光学部や外国語学部以外でも採用されますか？
全く問題ありません。
法学部、経済学部、文学部、社会学部など、あらゆる学部から採用実績があります。
旅行業界は、法律（約款）、経済（価格設定）、歴史・文化（観光資源）、心理（顧客心理）など、様々な学問領域と接点があるため、どんな専攻であっても活かせる場面があります。
重要なのは「何を学んだか」よりも、その学びを「どう旅行業に活かせるか」を語れるかどうかです。
例えば、法学部ならコンプライアンスや契約の知識、社会学部ならトレンド分析の視点など、自分の専攻を強みとして変換してアピールすれば、学部による有利不利はほとんどありません。
英語が話せないと旅行業界への就職は無理ですか？
無理ではありません。
国内旅行をメインに扱う部署や、管理部門、国内専門の旅行会社であれば、高い英語力が求められないケースも多々あります。
しかし、入社後のキャリアの幅を広げるためや、昇進の条件として一定の語学力が求められることは一般的です。
また、選考においては「現時点で話せるか」だけでなく、「英語に対するアレルギーがないか」「入社後に学ぶ意欲があるか」が見られます。
英語が苦手であっても、「現在勉強中で、入社までにTOEIC〇〇点を目指しています」という前向きな姿勢を示すことが重要です。
もちろん、話せるに越したことはないので、少しでもスコアを上げておく努力はすべきです。
旅行経験が少ないと不利になりますか？
旅行経験の多さは、それほど重要ではありません。
もちろん、多くの国や地域に行った経験があれば話のネタにはなりますが、企業が求めているのは「旅行評論家」ではなく「旅行販売のプロ」です。
いくら旅行経験が豊富でも、それをビジネスとして捉えられなければ意味がありません。
逆に、旅行経験が少なくても、「なぜ旅行が人を惹きつけるのか」「初めて旅行に行く人の不安は何か」といった顧客視点を想像できる人の方が評価されます。
経験の数よりも、一つの旅行から何を感じ、何を学んだかという感受性の豊かさや、お客様の旅行を最高のものにしたいというホスピタリティの方が遥かに重要です。
「顔採用」はあるというのは本当ですか？
「美男美女であるだけで採用される」という意味での顔採用はありませんが、「第一印象」が極めて重要な業界であることは事実です。
カウンターでお客様を迎える際や、添乗員としてグループを引率する際、暗い表情や清潔感のない身だしなみは致命的です。
その意味で、明るい笑顔、ハキハキとした話し方、清潔感のある服装といった「好感度」は厳しくチェックされます。
これを顔採用と捉える人もいますが、正確には「接客適性」の評価です。
鏡を見て笑顔の練習をする、身だしなみを整えるといった努力は、筆記試験の勉強と同じくらい重要な選考対策となります。
まとめ
旅行業界において、大手企業を中心に一定の学歴フィルターが存在することは否定できませんが、それはあくまで採用効率化のための手段であり、絶対的な基準ではありません。
この業界の本質は「人」であり、学歴以上にホスピタリティ、コミュニケーション能力、バイタリティ、そして旅行への熱意が評価される実力主義の側面が強いのが特徴です。
資格取得や語学力の向上、実務経験のアピールなど、具体的な行動を起こすことで、学歴の壁は十分に突破可能です。
自身の強みを磨き、お客様に感動を届けるプロフェッショナルとしての一歩を踏み出してください。
明治大学院卒業後、就活メディア運営｜自社メディア「就活市場」「Digmedia」「ベンチャー就活ナビ」などの運営を軸に、年間10万人の就活生の内定獲得をサポート
