【理系から教職】はじめに
理系の学部に所属し、専門分野の研究に打ち込む中で、教職というキャリアに関心を持つ学生もいるのではないでしょうか。
子どもたちに科学の面白さを伝えたい、という思いはとても尊いものです。
この記事では、理系学生が教職を目指す道のりについて、教職課程の実態から教員採用試験、そして教員になった後のキャリアまでを網羅的に解説します。
理系ならではの強みと課題を理解し、将来の選択肢を広げましょう。
【理系から教職】理系学生が教職を履修する前に知っておくべきこと
理系の学生が教員の道を目指す第一歩は、多くの場合、大学の教職課程を履修することから始まります。
しかし、専門科目の勉強や研究と並行して教職課程を履修するのは、決して簡単なことではありません。
憧れだけで安易に選択すると、後で苦労することも。
ここでは、まず教職課程とは何か、そして教員になるために不可欠な教員免許の仕組みといった、基本的な知識について確認していきましょう。
そもそも教職課程って何?
教職課程とは、大学で教員免許状を取得するために設けられた教育プログラムのことです。
これは、学生が所属する学部や学科の専門科目に加えて、追加で履修する必要があります。
具体的には、教育の理念や歴史を学ぶ教育原理、子どもの発達段階や心理を学ぶ教育心理学、各教科の指導法を学ぶ教科教育法、そして実際に学校現場で体験する教育実習など、多岐にわたる科目で構成されています。
これらの科目は、文部科学省が定める基準に基づいており、定められた単位を全て修得することで、卒業時に教員免許状が授与される仕組みです。
理系の学生であれば、所属学部の専門知識を活かして、中学校や高等学校の理科、数学、技術、情報といった教科の免許取得を目指すのが一般的です。
卒業に必要な単位とは別に多くの科目を履修する必要があるため、計画的な履修計画が不可欠となります。
教員になるには教員免許が必要
日本で学校の教員になるためには、原則として、担当する学校の種類と教科に応じた教員免許状が必要です。
この免許状は、大学などの教職課程を修了し、必要な単位を修得することで取得できます。
例えば、中学校で理科を教えるためには中学校教諭一種免許状(理科)、高等学校で数学を教えるためには高等学校教諭一種免許状(数学)といった具合です。
免許状には、大学卒業で取得できる一種免許状のほか、大学院修了で取得できる専修免許状などがあります。
注意すべきは、教員免許状を取得しただけでは、自動的に教員になれるわけではないという点です。
免許状はあくまで教員になるための資格、いわばスタートラインに立つための切符です。
公立学校の教員になるには、さらに各都道府県や政令指定都市が実施する教員採用試験に合格する必要があります。
私立学校の場合は、各学校が独自に行う採用試験に合格しなければなりません。
【理系から教職】理系学生が教員免許を取得するメリット
専門科目の勉強や研究が忙しい理系学生にとって、教職課程の履修は大きな負担となり得ます。
しかし、その負担を乗り越えてでも教員免許を取得することには、多くのメリットが存在します。
将来のキャリアの選択肢を広げるだけでなく、自身の学びを深めることにも繋がります。
ここでは、理系学生が教員免許を取得することで得られる三つの大きなメリットについて具体的に解説します。
就職活動の選択肢が広がる
教員免許を取得する最大のメリットは、将来のキャリアにおける選択肢が格段に広がることです。
卒業後の進路として、民間企業への就職だけでなく、教員という安定した公務員の道も現実的な選択肢として加わります。
就職活動を進める中で、万が一、民間企業の選考がうまくいかなかった場合のセーフティーネットとしての役割も果たします。
また、企業によっては、教員免許を取得するために努力した計画性や継続性を評価してくれる場合もあります。
さらに、教育関連の企業、例えば塾や予備校の講師、教材開発、教育系出版社などを志望する際には、教員免許を持っていることが大きなアピールポイントになるでしょう。
一度社会に出てから、やはり教員の道に進みたいと考えた場合でも、免許があれば教員採用試験に挑戦することが可能です。
このように、教員免許は将来の多様なキャリアパスを拓くための強力な武器となり得るのです。
専門知識を深められる
教職課程、特に教科教育法の授業では、自分が専門とする理系科目を、生徒にどのように教えれば分かりやすく伝わるかを深く考えることになります。
普段、大学で学んでいる高度な専門知識を、中学生や高校生が理解できるレベルまで噛み砕き、論理的に再構築する作業は、自身の専門分野への理解を一層深める絶好の機会となります。
例えば、物理の法則を説明するために、身近な現象と結びつけて考えたり、生徒が興味を持つような実験を考案したりするプロセスは、知識を体系的に整理し、その本質を捉え直すことに繋がります。
この能力は、仮に教員にならなかったとしても、企業で研究内容を専門外の人に説明するプレゼンテーションの場面や、後輩に技術指導を行う場面など、社会のあらゆるシーンで役立つ汎用的なスキルと言えます。
専門知識を他者に伝える訓練を通じて、自身の学びをより確かなものにできるのです。
自分の適性を判断できる
教職課程を履修し、特に教育実習を経験する中で、自分が本当に教員という仕事に向いているのか、その適性を冷静に判断することができます。
人に何かを教えることが好きだという漠然とした憧れと、実際に教員として働くことの間には、大きなギャップが存在することもあります。
教育実習では、授業の準備や実施はもちろん、生徒とのコミュニケーション、学級運営、部活動の指導など、教員の多岐にわたる業務の一端を体験します。
子どもたちと向き合うことの喜びややりがいを感じる一方で、その大変さや難しさも実感するでしょう。
この実体験を通じて、自分は生徒の成長を支える仕事に情熱を注げるのか、それとも企業で研究開発に没頭する方が向いているのか、といった自己理解を深めることができます。
学生のうちに自分の適性を見極められることは、将来のキャリア選択におけるミスマッチを防ぐ上で非常に大きなメリットです。
【理系から教職】理系学生が教員免許を取得するデメリット
多くのメリットがある一方で、理系学生が教員免許を取得する際には、相応の覚悟が必要なデメリットも存在します。
専門科目や研究との両立は、時間的にも精神的にも大きな負担となる可能性があります。
安易に履修を始めると、学業全体が中途半端になってしまう危険性も。
ここでは、理系学生が教職課程を履修する上で直面しがちな三つのデメリットについて、具体的に解説していきます。
授業の負担が大きい
理系学生が教職課程を履修する上での最大のデメリットは、授業の負担が非常に大きいことです。
理系の学部は、もともと実験や演習、レポート作成などで時間割が過密になりがちです。
それに加えて、教職課程の科目を履修する必要があるため、文字通り空きコマがほとんどない時間割になることも珍しくありません。
特に、学年が上がるにつれて専門科目の難易度も増し、卒業研究も本格化してくるため、学業の負担は増大します。
放課後や休日も、実験の続きやレポート作成、そして教職科目の課題に追われることになり、自由な時間が大幅に制限されることを覚悟しなければなりません。
サークル活動やアルバイト、友人との交流など、学生時代にしかできない経験のいくつかを諦めなければならない可能性も出てきます。
経済的な負担がかかる
教職課程の履修は、経済的な負担増にも繋がります。
大学によって異なりますが、教職課程の履修自体に、通常の学費とは別の追加費用がかかる場合があります。
数万円から十数万円程度が一般的ですが、事前に大学の制度を確認しておくことが重要です。
また、教育実習期間中は、実習校が自宅から遠い場合、交通費や宿泊費が自己負担となることもあります。
さらに、教職課程の授業や教育実習の準備で忙しくなるため、これまでのようにアルバイトに時間を割くことが難しくなる可能性が高いです。
これにより収入が減少し、経済的に苦しくなる学生も少なくありません。
保護者からの支援を受けられるか、あるいは奨学金制度を利用するかなど、学業と両立できる資金計画をあらかじめ立てておくことが、安心して教職課程を続けるための鍵となります。
周囲とのギャップを感じやすい
理系の学部では、多くの学生が大学院への進学や、専門分野を活かした企業への就職を目指します。
そのような環境の中で教職課程を履修していると、周囲の友人たちとの間に進路に関する意識のギャップを感じ、孤独感を抱くことがあるかもしれません。
周りが専門分野の話題で盛り上がっている時に、自分だけが教育実習の準備に追われていたり、逆に自分が教職の話題をしても、なかなか共感を得られなかったりすることもあるでしょう。
また、研究室に所属すると、指導教員や先輩から、研究への集中を優先するように求められる雰囲気があるかもしれません。
もちろん、教職を目指す仲間を見つけることができれば心強いですが、理系の学部では少数派になりがちです。
周囲に流されず、自分の目標に向かって進む強い意志が求められます。
【理系から教職】理系学生が教員免許を取るのは大変?
理系学生の間では、教職課程の履修は非常に大変だというイメージが広く浸透しています。
実際に、専門科目と両立できずに途中で断念してしまう学生も少なくありません。
では、なぜ理系学生にとって教員免許の取得は特に難しいと言われるのでしょうか。
ここでは、その具体的な理由を三つの側面から掘り下げていきます。
課題を正しく理解することが、乗り越えるための第一歩です。
なぜ専門の授業と教職の両立は難しいと言われるのか
理系の専門科目と教職課程の両立が難しい最大の理由は、学問の性質と時間の制約が大きく異なる点にあります。
理系の学問は、一つのテーマを深く掘り下げ、実験や演習を通じて時間をかけて探求していくスタイルが中心です。
特に卒業研究が始まると、研究室に長時間滞在し、実験の進捗によっては昼夜を問わず対応する必要があります。
一方、教職課程は教育学や心理学など、幅広い分野の知識を多くの科目で学ぶ必要があり、定められた授業時間への出席が厳格に求められます。
急な実験の都合で授業を欠席することが難しく、両者のスケジュールを調整することが極めて困難になるのです。
また、思考の仕方も、論理と数式で答えを導く理系科目と、人の心や社会を対象とする人文学的なアプローチの教職科目とでは大きく異なり、頭の切り替えに苦労する学生も少なくありません。
教職科目は理系科目に比べて覚えることが多い
理系学生が教職課程で戸惑う点の一つに、学習スタイルの違いが挙げられます。
理系の科目は、公式や原理を理解し、それを用いて問題を解く論理的思考力が中心に求められます。
もちろん暗記すべき項目もありますが、基本的には理解が重視される学問です。
それに対して、教職課程で学ぶ教育史や教育法規といった科目は、人名や年代、法律の条文など、膨大な量の知識を正確に暗記することが求められる場面が多くあります。
普段、暗記よりも理解や思考を重視する学習に慣れている理系学生にとっては、この単純な暗記作業が苦痛に感じられることがあります。
レポートや試験も、実験レポートのように明確な結果を示すものとは異なり、自身の考えを論述する形式が多いため、戸惑うこともあるでしょう。
理系科目とは異なるアプローチでの学習が必要になることを認識しておく必要があります。
教育実習の負担は大きい
教職課程の最大の山場であり、最も負担が大きいのが教育実習です。
通常、3年生か4年生の時期に、数週間にわたって中学校や高等学校へ通い、教員としての実務を体験します。
この期間は、担当クラスの授業を行うだけでなく、教材研究や学習指導案の作成、生徒指導、学級日誌の記入、部活動の引率など、朝から晩まで休む暇もないほど多忙を極めます。
特に理系学生の場合、この教育実習の時期が、卒業研究の大事な時期と重なってしまうことが大きな問題となります。
数週間もの間、研究室での実験を完全にストップせざるを得ず、研究の進捗に遅れが生じることは避けられません。
指導教員や研究室のメンバーに理解を得て、実習前後に猛烈に追い上げるなどの工夫が必要になります。
精神的にも体力的にも、そして研究との両立においても、教育実習は極めて大きな負担となることを覚悟しておくべきです。
【理系から教職】理系が教職課程を両立させる方法
理系学生が教職課程を履修するのは大変ですが、決して不可能ではありません。
実際に、毎年多くの理系学生が専門科目と両立させ、教員免許を取得して卒業しています。
成功の鍵は、早期からの計画的な準備と、効率的な時間の使い方にあります。
ここでは、多忙な理系学生が教職課程を乗り切るための、具体的な三つの方法について解説します。
教職課程の履修計画の立て方
教職課程と専門科目を両立させるためには、大学入学後、できるだけ早い段階で緻密な履修計画を立てることが最も重要です。
まず、大学の履修要覧を熟読し、卒業までに必要な専門科目の単位と、教員免許取得に必要な教職科目の単位を全てリストアップします。
その上で、どの科目を何年生の時に履修するのか、4年間の大まかなスケジュールを組み立てましょう。
ポイントは、専門科目の負担が比較的軽い1、2年生のうちに、できるだけ多くの教職科目を履修しておくことです。
特に、教育実習や介護等体験といった学外での実習がいつ行われるのかを早期に把握し、その時期に専門科目の必修科目や実験が重ならないように、計画的に履修を進めることが不可欠です。
履修計画に不安がある場合は、大学の教職支援センターや、実際に教職課程を履修している先輩に相談し、アドバイスを求めるのが良いでしょう。
専門科目とのスケジュール調整
日々の学習において専門科目と教職課程を両立させるには、徹底したスケジュール管理が求められます。
理系の学生は、授業以外にも実験やレポート作成に多くの時間を要するため、隙間時間を有効活用する意識が重要です。
例えば、通学中の電車の中や、実験の待ち時間などを、教職科目の暗記やレポートの構成を考える時間に充てるなど、細切れの時間を積み重ねる工夫が効果的です。
また、実験レポートの提出期限や、教職科目の試験日、レポート課題などを一覧できるスケジュール帳やアプリを活用し、常に全体のタスク量を把握しておくことも大切です。
これにより、複数の課題が特定の時期に集中することを避け、計画的に学習を進めることができます。
大変な時は一人で抱え込まず、同じように教職を目指す友人や、研究室の仲間と協力し、情報交換をしながら乗り切ることも考えましょう。
教育実習を乗り切るための準備
教職課程最大の難関である教育実習を乗り切るためには、周到な事前準備が鍵となります。
まず、実習が始まるかなり前から、指導案の基本的な書き方や、授業の進め方について学習しておくことが重要です。
大学の授業で模擬授業の機会があれば、積極的に参加し、人前で話すことや板書の練習をしておきましょう。
また、実習校が決定したら、その学校で使われている教科書を取り寄せ、自分が担当する可能性のある単元の内容を予習しておくと、実習が始まってからの負担を大幅に軽減できます。
さらに、最も重要なのが研究室との連携です。
実習期間に入る前に、指導教員に実習の日程を正確に伝え、研究の進め方について相談しておきましょう。
自分の担当する実験を他のメンバーに引き継いでもらうなど、不在期間中の計画を立てておくことで、研究の遅れを最小限に食い止めることができ、安心して実習に臨むことができます。
【理系から教職】教職課程だけでは教員になれない!教員採用試験とは
大学で教職課程を修了し、晴れて教員免許状を取得したとしても、それはあくまでスタートラインに立ったに過ぎません。
特に公立学校の正規の教員として採用されるためには、各自治体が実施する教員採用試験という、もう一つの大きな関門を突破する必要があります。
この試験は、教員としての資質や能力を総合的に問うものであり、合格のためには十分な対策が不可欠です。
ここでは、教員採用試験の概要と、理系科目の状況について解説します。
教員採用試験とは
教員採用試験は、各都道府県や政令指定都市の教育委員会が、翌年度に採用する公立学校の教員を選考するために実施する試験です。
正式には教員採用候補者選考試験(検査)と呼ばれます。
この試験に合格すると、教員採用候補者名簿に登載され、その後、各学校の欠員状況などに応じて、正式に教員として採用されることになります。
試験は、おおむね大学4年生の夏頃に実施されるのが一般的です。
少子化の影響で一時期は採用数が減少していましたが、近年は団塊世代の教員の大量退職に伴い、多くの自治体で採用者数が増加傾向にあります。
ただし、自治体や校種、教科によって採用状況は大きく異なるため、自分が受験を希望する自治体の最新情報を、教育委員会のウェブサイトなどで常に確認しておくことが重要です。
教員採用試験の試験内容
教員採用試験の内容は自治体によって異なりますが、一般的には一次試験と二次試験に分かれています。
一次試験では、教職教養と一般教養を問う筆記試験、そして担当教科の専門知識を問う専門教養試験が課されることが多いです。
教職教養では、教育原理や教育法規など、教職課程で学んだ知識が問われます。
一般教養は、人文、社会、自然科学など幅広い分野からの出題です。
二次試験では、より実践的な能力を評価するために、個人面接や集団討論、模擬授業、場面指導などが実施されます。
近年は、教員としての人間性やコミュニケーション能力、生徒への対応力などを重視する傾向が強まっており、筆記試験の成績だけでなく、面接や模擬授業での評価が合否を大きく左右します。
理系学生にとっては、専門教養は得意分野ですが、教職教養や面接対策には十分な準備が必要です。
教員採用試験の倍率はどのくらい?
教員採用試験の倍率は、受験する自治体、校種(小学校・中学校・高等学校など)、教科によって大きく異なります。
文部科学省の調査によると、全国の公立学校教員採用試験の全体の競争率は、近年3倍から4倍程度で推移しています。
ただし、これはあくまで全体の平均値です。
一般的に、小学校の倍率は比較的低い傾向にあり、2倍台の自治体も少なくありません。
一方で、中学校や高等学校は教科によって倍率が大きく異なり、特に社会や保健体育といった教科は10倍を超える高い倍率になることもあります。
自分が目指す校種・教科の倍率がどの程度なのかを把握しておくことは、試験対策の計画を立てる上で重要です。
ただし、倍率の高さに気圧される必要はありません。
たとえ高倍率であっても、求められる資質を備え、十分な対策をすれば、合格のチャンスは十分にあります。
理系科目の教員採用試験の状況
理系学生が受験する主な教科である、理科や数学、情報といった科目の採用状況は、他の教科と比較してどうなのでしょうか。
一般的に、これらの理系科目は、社会や保健体育などの教科に比べて、教員採用試験の倍率が低い傾向にあります。
これは、理系学生の多くが民間企業や大学院に進学するため、教員採用試験の受験者数が相対的に少ないことが一因と考えられます。
特に近年では、GIGAスクール構想の推進に伴い、情報科の教員や、ICT活用指導力のある理系教員の需要が高まっています。
そのため、自治体によっては理科や数学、情報の採用枠を増やしているところもあります。
理系学生にとって、教員採用試験は比較的有利な状況にあると言えるかもしれません。
しかし、油断は禁物です。
専門知識はもちろんのこと、実験を安全に指導する能力や、生徒の探究心を引き出す授業を展開する力が求められるため、しっかりとした対策が必要です。
【理系から教職】理系学生が教員になるための具体的ステップ
教員免許の取得、そして教員採用試験の突破という二つの大きな関門を越えて、ようやく教員になる道が拓けます。
理系学生がこの目標を達成するためには、卒業後の進路選択から採用試験の対策まで、戦略的な計画を立てて実行することが不可欠です。
ここでは、理系学生が教員になるための具体的なステップを三段階に分けて解説します。
夢を実現するためのロードマップを描きましょう。
卒業後の進路選択:公立・私立・大学院進学
教員として働く場には、主に公立学校と私立学校があります。
公立学校の教員は地方公務員であり、身分が安定していることや、教育委員会による研修制度が充実している点が魅力です。
一方、私立学校は、独自の建学の精神に基づいた特色ある教育を実践できることや、学校によっては給与水準が高い場合がある点が特徴です。
採用プロセスも異なり、公立は教員採用試験、私立は各学校法人の採用試験を受験します。
また、理系学生の選択肢として、大学院に進学した後に教員を目指す道もあります。
大学院で研究を深めることで、より高度な専門性を持つ教員としてアピールできますし、上位の専修免許状を取得することも可能です。
学部卒業時に採用試験に合格できなかった場合の再挑戦の場としても考えられます。
自分の価値観やキャリアプランに合わせ、どの道を選ぶかを考えましょう。
教員採用試験の受験計画
教員採用試験に合格するためには、長期的な視点での受験計画が不可欠です。
多くの学生は、大学3年生の後半あたりから本格的な試験対策を始めます。
まずは、自分が受験したい自治体の過去問を分析し、出題傾向を把握することから始めましょう。
筆記試験対策としては、教職教養、一般教養、専門教養の各分野について、いつまでにどのレベルまで仕上げるのか、具体的な目標を設定します。
特に、理系学生が苦手としがちな教育法規や教育史といった暗記分野は、早期からコツコツと学習を進めることが重要です。
また、二次試験で課される面接や模擬授業の対策も、筆記試験と並行して進める必要があります。
大学のキャリアセンターや教職支援センターが実施する対策講座を積極的に活用し、実践的な練習を重ねることが合格への鍵となります。
教員採用試験の対策方法
教員採用試験の具体的な対策方法としては、まず筆記試験対策として、参考書や問題集を繰り返し解くことが基本です。
特に教職教養は出題範囲が広いため、一冊に絞って完璧に仕上げるのが効率的です。
専門教養である理科や数学については、大学入試レベルの問題から、指導要領の内容まで幅広く問われるため、基礎から応用までしっかりと復習しておく必要があります。
二次試験対策は、一人で行うのが難しいため、仲間を見つけて協力し合うのが最も効果的です。
友人同士で面接官役と受験者役を交代で務めたり、お互いの模擬授業を見てフィードバックを送り合ったりすることで、客観的な視点から自分の課題を発見できます。
また、自分の教育に対する考えや情熱を、自信を持って語れるように、自己分析を深めておくことも面接対策の重要な一環です。
【理系から教職】理科教員としてのキャリア
晴れて教員採用試験に合格し、理科教員として学校現場に立った後、どのようなキャリアが待っているのでしょうか。
教員という仕事は、単に授業で知識を教えるだけではありません。
理系出身ならではの強みを活かして、学校教育の様々な場面で貢献することができます。
ここでは、理科教員としてのやりがいや難しさ、そして教員以外の道も含めた長期的なキャリアパスについて考えていきます。
理系教員は学校でどんな活躍ができる?
理系教員は、教科指導においてその専門性を大いに発揮できます。
実験や観察を多く取り入れた探究的な授業を展開し、子どもたちの知的好奇心を引き出すことは、理科教員の大きな役割です。
大学で研究に取り組んだ経験を活かし、生徒たちに科学的な思考プロセスそのものを教えることができるでしょう。
また、近年重視されているSTEAM教育(科学・技術・工学・芸術・数学を統合した教育)の推進役としても期待されます。
プログラミングやデータ分析といったスキルを活かして、教科の枠を超えたプロジェクト型学習を企画・運営することも可能です。
さらに、学校全体のICT化を推進する情報担当の役割や、科学部などの部活動の顧問として、将来の科学者を育てる役割も担います。
論理的な思考力は、校務分掌や学校運営の課題解決においても強みとなります。
理系教員のやりがいと難しさ
理系教員の最大のやりがいは、子どもたちが科学の面白さに目覚め、目を輝かせる瞬間に立ち会えることです。
昨日までできなかった実験が成功した時の生徒の笑顔や、難しい問題が解けた時の達成感に満ちた表情は、何物にも代えがたい喜びです。
自分の授業がきっかけで、生徒が科学の道に進んでくれることもあり、人の成長に深く関われる実感を得られます。
一方で、難しさも存在します。
全ての生徒が科学に興味を持っているわけではなく、理科が苦手な生徒にどう関わっていくかは常に課題です。
また、実験の準備や片付け、安全管理には多くの時間と労力がかかりますし、多忙な校務の中で、授業の質を維持向上させるための教材研究の時間を確保するのも大変です。
生徒指導や保護者対応など、専門外の人間関係の構築に悩むこともあります。
教員以外のキャリアパス
一度教員になった後も、そのキャリアは一つではありません。
経験を積んだ後、教育委員会に異動し、地域の教育行政に携わる指導主事などの道もあります。
また、教員としての経験を活かして、教育系の民間企業に転職するキャリアパスも考えられます。
例えば、塾や予備校の人気講師になったり、教科書の編集者や教材開発者として、より多くの子どもたちの学びに貢献したりすることも可能です。
さらに、理系としての専門知識と教育現場での経験を掛け合わせることで、科学館や博物館の学芸員、サイエンスコミュニケーターといった、科学と社会を繋ぐユニークな専門職に就く道も拓けます。
教員という経験は、その後の人生においても、コミュニケーション能力やマネジメント能力といったポータブルなスキルとして、様々な分野で活かすことができるのです。
【理系から教職】まとめ
この記事では、理系学生が教職を目指す道のりについて、そのメリット・デメリットから、教職課程と専門科目を両立させる方法、そして教員採用試験の対策までを詳しく解説しました。
理系学生にとって、教職課程の履修は決して簡単な道ではありません。
しかし、計画的な準備と強い意志があれば、専門性を活かして子どもたちの未来を育む、やりがいに満ちた教員という仕事に就くことは十分に可能です。
教員免許は、就職活動の選択肢を広げ、自身の学びを深める上でも価値のある資格です。
まずは自分の適性やキャリアプランと向き合い、後悔のない選択をしてください。
この記事が、理系から教職というキャリアを目指すすべての学生にとって、確かな一歩を踏み出すための道しるべとなれば幸いです。
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