就活においては「あなたが大切にしている価値観とその原体験は何ですか」と聞いてくる面接官がいます。
これは一体どのような質問なのか、何を知りたいと思っているのか、またどのように回答すれば良い印象を与えられるのかについて解説します。
あらかじめ対策しておき、いざ聞かれた時にスムーズに回答できるよう準備を進めましょう。
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【大切にしている価値観と原体験】「大切にしている価値観と原体験」とは?
「大切にしている価値観と原体験」とは何なのかということですが、まずは文字通りの意味です。
具体的にはあなたが何を大切にしているのか、その価値観を抱くに至った理由について説明する内容となります。
例えば、小学校の先生から夢の大切さを教えられたことで「人の夢を絶対に応援する」ことを大切にしている、母親から「悪口を言う人を遠ざけ、良いことを話す人になりなさい」と教わったことで「常に人の良いところを見つける」ことを大切にしているなど、具体的なエピソードを基に話すと良いでしょう。
【大切にしている価値観と原体験】聞かれる理由
では企業は「大切にしている価値観とその原体験」について何を知りたくてこの質問をしてくるのでしょうか。
この質問にはどのような企業にも共通する以下の3つの理由が考えられます。
どのような人柄や性格なのかを知りたいから
この質問をされる理由として、あなたの人柄や性格を知りたいという意図が考えられます。
価値観はその人の考え方や行動の軸となる部分です。誠実さ、挑戦する姿勢、周囲との協調など、その人が何を重視して行動しているのかがわかれば、企業はその人の強みや特徴を把握しやすくなるのです。
採用担当者はエピソードを通じて、価値観を述べるだけでなく、その価値観に基づいて行動した経験を話せる人に魅力を抱く傾向が強いです。
例えば「人の役に立つことを大切にしている」と語る場合「どのような状況でその考えを持ち、どのように行動したのか」を具体的に説明することが求められます。
企業がESを求める理由は、企業が求める人物像にそぐわない応募者を面接前に絞り込むためです。そのため、ESの回答から人柄や性格を知ろうとしています。大切にしている価値観と原体験に関する質問は、その際たるものともいえますね。
社員との相性が知りたいから
「大切にしている価値観と原体験」について聞き、社員と応募者の相性を知りたいと考える担当者も多いです。企業で働くメンバーは価値観や目標を共有しながら仕事を進めていくため、共通の価値観を持つ人材が求められます。
特にチームで仕事を進める場合、価値観が大きく異なっていると、人間関係のトラブルやコミュニケーションの行き違いが発生しやすくなります。
そのため、応募者の価値観が自社の風土や働くメンバーの考え方と合っているかを確認することが重要です。
例えば、社員が「挑戦すること」を重視する価値観を共有している企業では、応募者が現状に満足せず、新しいことに取り組む意識を持っているかどうかを知りたいと考えています。
この質問に答える際は企業の理念や方針、社員のインタビュー記事などを参考にして、自分の価値観と企業の文化がどのように重なるかを意識することが大切です。
目指しているゴールが企業と離れていないか知りたいから
応募者が目指すゴールや将来のビジョンが企業の方向性と一致しているかを確認することも、この質問の目的として挙げられます。企業は将来のビジョンや目標を共有できる人材を採用することで、長期的に活躍してもらいたいと考えています。
例えば、企業が「社会に新しい価値を提供する」ことを理念として掲げている場合、その企業で働くためには応募者自身も「新しいことに挑戦し、社会に貢献したい」といった目標を持っている必要があります。
目指すゴールが企業の方向性と一致していれば、入社後も方針に納得しながら業務に取り掛かれるため、企業側も安心して採用を決定できるでしょう。
価値観やビジョンが大きく異なっている場合、入社後のミスマッチが発生しやすくなってしまいます。たとえ自分がやりたいことができる企業であっても、目指すところが異なれば、仕事がしにくくなってしまいます。やりづらい環境で仕事を続けられはしませんよね。早期離職につながってしまうことは、企業にとっても就活生にとってもリスクとなります。
【大切にしている価値観と原体験】ない場合の見つけ方
では大切にしている価値観や原体験が全く思いつかないという方はどのような対策をすればよいのでしょうか。
以下の3つの対策に取り組んでみれば見つかる可能性が高いため、ぜひ取り組んでみてください。
学生時代の印象に残っている経験を書き出す
まず学生時代の印象に残っている経験を書き出すことから始めてみましょう。経験には大小かかわらず意味があり、振り返ることで自分が大切にしている考え方や行動の軸が見えてくることがあります。
学業や部活動、アルバイト、ボランティア活動、友人や家族との関わり、さらには日常の些細な出来事まで、印象に残っていることをできるだけ多く挙げてみてください。この際、結果だけでなく、その経験がなぜ印象に残っているのか、その時に何を感じたのかまで詳しく書き出すことで、価値観を見つけるヒントが得られます。
日常の中にある些細なエピソードでも、自分の心が動いた瞬間には何らかの価値が現れています。
例えば、誰かを助けた経験や計画を立てて物事を達成した経験、周囲の人と協力して何かを成し遂げた経験などが挙げられるでしょう。
- アルバイト先で業務の効率化を提案し、売り上げ向上につながった経験
- 部活動で新しい練習方法を導入し、チームの成績が改善した経験
- クラスで意見が分かれた時にリーダーシップを発揮し、まとめ役を務めた経験
- 留学中に異文化理解を深め、現地の学生と協力してプロジェクトを成功させた経験
- ボランティア活動で地域社会に貢献し、人とのつながりの大切さを感じた経験
その中から何かを判断した経験を探す
書き出したエピソードの中から何かを判断した経験を探してみるのも良い方法です。判断の過程には自分の価値観や考え方が現れるものであるため、エピソードを振り返ることで自分が大切にしているものが浮かび上がります。
例えば「Aという選択肢もあったが、Bを選んだ」という経験の場合、複数の選択肢の中から自分の意思で決断を下した理由について考えてみましょう。「友人との遊びよりも、部活動の大会の準備を優先した」「より困難なインターンシップに挑戦する道を選んだ」など、選択を迫られた時の自分の考えや行動を言語化することがポイントです。
どのような基準でその判断をしたのか明確にすることで、自分の中にある軸や価値観を知るきっかけになるでしょう。
- 学生団体で、利益よりも社会的価値を重視した選択を行った経験
- 部活動の試合直前に、遊びの誘いを断って練習を優先した経験
- 就活イベントで多くの企業の中から、自分の興味がある分野に絞り込んだ経験
- インターン先で失敗のリスクを承知で、新しい提案を行った経験
- 学業とアルバイトの両立において、学業を優先する選択をした経験
共通する判断軸を言語化してみる
書き出した経験や選択の理由について振り返ってみて、そこに共通する判断軸を言語化することも重要です。複数のエピソードに共通する考えや行動基準を見つけることで、自分が本当に大切にしている価値観が明確になります。
例えば、人の役に立つことを選ぶ場面が多い、困難でも挑戦を重視している、チームで物事を進めることを優先している、といった傾向が見えてきます。
言語化する際には自分の判断基準がなぜ生まれるのかについても考えてみてください。原体験に遡ることで、価値観に深みが出てエピソードに説得力が生まれます。
また、判断軸が言語化できていれば、それは仕事やキャリアにどう活かしたいのかも整理でき、企業に対して伝える際の軸としても使えます。
価値観を明確にすることで、自分の意思や行動に一貫性が生まれ、面接でも説得力のあるアピールが可能になるでしょう。
- 自分の成長につながる道を優先する価値観
- 困難でも挑戦を選び、達成感を重視する価値観
- チーム全体の利益を最優先し、協力することを大切にする考え
- 周囲の人々に貢献し、感謝されることを喜びとする価値観
- 計画性や継続力を大切にし、結果を出すまで努力する考え方
【大切にしている価値観と原体験】通過する書き方のポイント
続いて、大切にしている価値観と原体験について書く際に意識しておけば選考を通過できる可能性が高まるポイントについて紹介します。
以下のポイントを踏まえた上で作成すれば、さらに質の高い回答が出来上がり、採用担当者もあなたを迎え入れたいと思うことでしょう。
大切にしている価値観は端的に書く
大切にしている価値観を伝える際は内容を端的にまとめることがポイントです。価値観は抽象的になりやすいため、採用担当者にとって分かりやすく、一言で伝わる形にしましょう。
例えば「挑戦を大切にしている」「人との信頼関係を重視している」「成長し続ける姿勢を持つ」など、簡潔で明確な言葉を選びましょう。難しい表現や抽象的なフレーズを使ってしまうと、企業側があなたの言いたいことを理解しにくくなってしまいます。
また、端的に伝えた後にその価値観を象徴する具体的なエピソードや行動を補足することで、説得力が増します。採用担当者は短時間で多くのエントリーシートを読まなければならないため、最初に価値観をシンプルに伝えて、何を言いたいのかを明確にしておきましょう。
原体験はできるだけ具体的に書く
その価値観が形成された原体験をできるだけ具体的に書くことが不可欠です。
採用担当者はあなたの価値観を知りたいだけでなく、その価値観がどのように生まれたのか信頼できる根拠を知りたいと考えています。
原体験を伝える際には「いつ」「どこで」「どのような状況で」その価値観が生まれたのかを明確にし、その時の自分の考えや行動、感情を盛り込むことで、具体的な内容を作成しましょう。
例えば、部活動やアルバイト、ボランティア活動で困難な状況に直面して、その経験を通じて仲間と協力する大切さを学んだとすれば、その過程や努力を具体的に書くことが大切です。
抽象的な内容ではなく、具体的に数字や状況、成果、周りの評価などを加えると説得力が増します。
本記事の最初でもお伝えしましたが、「大切にしている価値観」とだけ聞かれることが多いこの質問にわざわざ「原体験」まで求められているという点で、その質の高さが求められていると考えましょう。そして質が高いESとは、内容が具体的で伝わりやすく、またインパクトのあるエピソードを伝えられているESです。よく理解した上で、数字などを用いて具体的に書けるようにしておきましょう。
大切にしている価値観がどのように人生に影響しているか伝える
大切にしている価値観を述べるだけでなく、その価値観が現在の人生にどのような影響を与えているのかを伝えることも重要です。価値観はその後の行動や意思決定に大きな影響を与えるため、具体的な成功体験や良い結果を伴うエピソードを交えると説得力が増します。
例えば「挑戦を大切にしている」という価値観がある場合、困難なプロジェクトに積極的に取り組み、結果としてチーム全体の成績向上に貢献したエピソードなどが良いでしょう。価値観が自分の行動や結果につながっていることを示すことで、価値観がただの考えの指針ではなく、自分自身の行動基準になっていることを伝えられます。
また、価値観が自分の選択や目標にどのように影響を与えたのかについて話すことで、一貫性のある人物像を印象づけることが可能です。
大切にしている価値観を今後どのように活かすか書く
大切にしている価値観が過去の行動や成果に影響したことを伝えた後は、その価値観を今後どのように活かしていきたいのかを述べることが必要です。企業は価値観が入社後の業務やキャリア形成にどのように反映されるのかを知りたいと考えています。
例えば「人との信頼関係を重視する」という価値観がある場合、入社後はチームメンバーとの信頼を築き、協力しながらプロジェクトを進め成果を出すことを目指すといった内容を伝えましょう。
また「挑戦を大切にしている」と話すのであれば、新しい業務やプロジェクトに積極的に取り組み、自分自身の成長とともに会社の発展に貢献したいと述べることで、企業側から見ても魅力的な人物に映るはずです。
【大切にしている価値観と原体験】ESの回答例
ここまで紹介してきた内容を踏まえた上で、エントリーシートでのおすすめ回答例を紹介します。
例文を確認した後、例文のポイントについてもチェックしてみてください。
本記事のおさらいになるはずです。
私が大切にしている価値観は協調性を重んじることです。
高校時代、私はサッカー部で主将を務めていましたが県大会の1回戦でいきなり優勝常連校と当たってしまいました。
そこで1ヶ月間、協調性を持って戦術練習に取り組むことを全員に徹底した結果、3対0と勝利を収めることができました。
この経験から学んだ協調性の大切さを活かして、大学時代も協調性を持って取り組むことでサークルのイベントやゼミの研究も成功させてきました。
貴社に入社した際には、全員が協調性を持って取り組めるような雰囲気づくりを心がけ、数年後にはプロジェクトリーダーとして全員のモチベーションを常に高く保てる人物を目指したいと考えています。
まず、結論でどのような価値観を大切にしているかについて説明し、その後原体験についての説明もスムーズに進んでいます。
どのような工夫と取り組みをして、最終的にどのような結果について得られたのかについての説明も分かりやすいです。
また、高校のエピソードを話しているため、その後大学でどのような話をしたのかについても触れている点もポイントです。高校の話だけで終わらせてしまうと大学で何もしなかったのではないかと思われてしまいますので、大学生活にどう活かしたのかも触れましょう。
そして最後の「入社後にどのような貢献をするか」についての説明も非常にわかりやすいため、良い印象を与えられることでしょう。
【大切にしている価値観と原体験】ESのNG回答例
一方、このような回答をしてしまってはマイナスな印象を与える可能性が高いというNGの回答例についても紹介します。
なぜNGなのかについても詳しく紹介するため参考にしてください。
給与の高さ
私が大切にしていることは給与の高さです。
現代は特に不景気であり、給与が高くなければ生活をすることができません。
私は幼少期家庭が非常に貧乏で、中学時代から新聞配達のアルバイトで家計を支えてきました。
当時から「自分の子供には絶対に貧しい思いをさせない」と固く決意しており、高校では毎年103万円ギリギリまで稼ぎ、大学では起業をして毎年300万円から500万円稼ぎ、現在までに1,000万円以上貯金することができました。
貴社は業界内でもトップの地位を確立しており、給与も非常に高く、安定した生活を送れることに魅力を感じました。
貴社に入社した暁には常に全力で業務に取り組み、1日でも早く、1つでも上のポジションに昇進することで給与をさらに上げ、お金に悩まされることのない人生を送りたいと考えています。
まず「給与の高さ」という題材自体がストレートすぎるため、せめて「やりがいを持って働ける環境」などと言い換えた方が良いでしょう。
また「家が貧乏で」というエピソードもやや重すぎるため、相手が反応に困る可能性があります。
そして何より「大学時代に起業をして、現在もかなり稼いでいる」というエピソードが引っかかります。
「それなら、そのまま経営者として働けば良いのでは?」と思われてしまいますし「入社後、自分の会社が忙しい時は業務に支障が出るのでは?」と思われるでしょう。
この部分をカバーできたとしても「給与が上がらなければすぐにやめてしまう」もしくは「より給与が高い企業が見つかったら、すぐに転職してしまう」と思われてしまいます。
したがって、結論の段階でアウトですし、エピソードもあまり良くありません。
【大切にしている価値観と原体験】具体的に回答してESを通過しよう!
今回はESにおいて「大切にしている価値観と原体験」について聞かれた際の回答のポイントや、なぜそのような質問をしてくるのかについての理由を紹介しました。
必ずしも聞かれるわけではない項目ですが、しっかりと対策をしておかないと、いざ聞かれた際にスムーズに回答を作成できません。
ぜひ本記事の内容を参考に、回答の雛形を作っておきましょう。
明治大学院卒業後、就活メディア運営|自社メディア「就活市場」「Digmedia」「ベンチャー就活ナビ」などの運営を軸に、年間10万人の就活生の内定獲得をサポート
柴田貴司
(就活市場監修者/新卒エージェント本部幹部)
柴田貴司
(就活市場監修者)
ESで頻出の質問は「大切にしている価値観」ですが、日本M&Aセンターなどでは「原体験」まで含めて求められます。ですが、そもそも「大切にしている価値観」をESで求められた際にはその原体験まで書くのが通過のポイントとなるため、ある意味丁寧に聞いてくれているだけ、とも言えますね。ただし、原体験を求められている以上、その質の高さも併せて求められていると思っておきましょう。ぜひ本記事を読んで、質の高いES回答を作成してみてください。