不動産業界はどんな仕事?現状と市場動向や課題・将来展望について解説

不動産業界はどんな仕事?現状と市場動向や課題・将来展望について解説

はじめに

「不動産業界ってどんな業界?」 「不動産業界の今後の展望や将来性はあるの?」 不動産業界といっても幅広いため、どんな業界なのかや業界の課題、将来の展望など詳しいことはよく分からないという人も多いのではないでしょうか。

本記事では不動産業界の種類や仕事内容、不動産業界の現状や抱えている課題、今後の動向やなどについて紹介します。また、不動産業界の平均年収についても紹介しています。

この記事を読むことで不動産業界とはどういう業界なのか、不動産業界の問題点や今後の展望などについて知ることができます。不動産業界の平均年収についても把握できるため、就活の検討材料にもなるでしょう。

不動産業界への就活を考えている方は、ぜひこの記事をチェックしてみてください。

不動産業界とは

「不動産業界」は、土地や建物といった不動産に関する業務全般を取り扱う業界のことです。

「民法 第86条」によって、土地及びその定着物が「不動産」と定義されています。つまり、土地とその上に立つ建物のことです。そして、不動産以外の物については、「民法 第86条の2」により全て「動産」となります。

出典:民法|e-Gov法令検索サイト

不動産業界の種類と仕事内容

不動産業界は土地や不動産に関する業務全般に関わることから、主に6つの仕事に分けられます。ここではそれぞれがどのような仕事をしているのか詳しく解説していきますので、参考にしてください。

デベロッパー・ハウスメーカー

デベロッパーは都市再生や都市整備、街づくり、マンションや戸建ての開発などを担当し、ハウスメーカーは注文住宅や賃貸住宅、分譲住宅などの事業に携わる仕事をしています。デベロッパーには大企業が多いという特徴もあります。

分譲住宅や注文住宅といった戸建ての販売に関わりたい人は、ハウスメーカーへの就活が向いています。逆に戸建ての販売に興味がなく、都市環境の整備や開発に興味がある場合はデベロッパーを目指すと良いでしょう。

不動産売買・賃貸仲介業

不動産売買・賃貸仲介業はその名前の通り不動産の売買や賃貸、それらの仲介をする事業のことです。不動産業界といわれて一番に思い浮かべるのは、この業種ではないでしょうか。

不動産売買は土地や建物の売買だけでなく、適切な不動産価格で販売するための管理も業務に含まれます。賃貸仲介業は不動産の賃貸物件を管理し、貸し主と借り主の間に立って仲介をする仕事です。賃貸物件の貸し出しや借り主への対応を行います。

ビル・マンションなどの不動産管理業

不動産管理業はビルやマンションなどのオーナーから不動産の管理を委託され、その管理を専門に行っています。

不動産管理業の管理の対象となるのは、主に賃貸住宅用のマンションやアパート、商業施設、ホテルや病院などです。学校の管理が委託されることもあります。不動産管理業は、比較的大きな規模の建物の管理を任されることが多いのが特徴でしょう。

不動産管理業は建物の清掃や修繕などの維持管理と、入居者への対応といった運営管理の2つに分けられます。

不動産投資・運用業

不動産投資に関する業務を行っているのが不動産投資業で、不動産投資で運用益を出す業務を行うのが運用業です。

不動産を購入している人の中には、居住用ではなく投資用不動産として購入している人もいます。不動産の値上がりを見越して購入する、または節税や相続税対策で不動産を購入することが、これにあたります。

運用業では「不動産ファンド」がよく知られており、投資家から資金を集めて不動産を運用することによって利益を出すことが目的です。

不動産鑑定業

不動産鑑定業は、土地や建物といった不動産の価値がどの程度なのかを有償で鑑定・評価する事業です。

土地や建物があってもその土地や建物が実際にどの程度の価格で売れるのか、専門的な知識がないと分からない場合が多いでしょう。その際、不動産鑑定士に依頼し、土地や建物の価値を正確に算出します。こういった不動産の鑑定業務を専門で行っているのが不動産鑑定業です。

不動産金融業

不動産金融業というのは、不動産と金融業を組み合わせた業種です。たとえば、資産価値の高い土地や建物を証券化し資金調達する「不動産証券化」や、「ノンリコースローン」などが不動産金融業に当てはまります。

ノンリコースローンというのは、ローン返済の責任範囲を限定し、万が一ローンの支払いが滞ったとしても、他に影響を拡大しないローンのことです。対象は不動産に限りませんが、不動産業界でよく使われているローンです。

不動産業界の現状(市場規模・会社数)

不動産業界は人々の生活スタイルの変化に影響を受け、トレンドが変化する業界です。

国土交通省の「不動産業ビジョン2030 参考資料集」によると、2017年度の不動産法人数は約32.9万社となっています。不動産法人数は1997年に大きく落ち込みましたが、その後回復傾向に移り、2017年まで年々増加し続けているのが現状です。

では市場規模はどうでしょうか。以下では、不動産業界市場規模について解説します。

出典:不動産業ビジョン2030 参考資料集|国土交通省

不動産業界の市場規模は約66兆円(2020年)

内閣府公表の「2020年度国民経済計算」によると、不動産業のGDPは約66兆円(名目・実質)となっています。このGDPは、GDP総額の12%~13%を占めます。

1994年時点でのGDPが約51兆円であったことから、年を追うごとに年々GDPが成長してきたことがうかがえるでしょう。なお、約66兆円の不動産業のGDPのうち、住宅賃貸業が約54兆円、その他の不動産業が約11兆円となっています。

その他の不動産業は1994年時点で約8.5兆円であることから、住宅賃貸業の伸びが大きいことも分かるでしょう。

出典:2020年度国民経済計算(2015年基準・2008SNA)|内閣府

不動産業界の市場動向は2021年以降活発化傾向で推移

不動産業のGDPが増加してきていることに表れているように、不動産業界の市場動向は2021年以降も土地取引、新築マンション販売や住宅着工などが活発化してきています。

公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会不動産総合研究所の「不動産市場動向データ集」によると、土地所有権移転登記件数が前年を上回っています。

また、新築マンションは首都圏も近畿圏も初月契約数が増加しており、新設着工総数は30ヶ月連続で前年を上回り続けていることが分かります。

出典:不動産市場動向データ集 (公社)全国宅地建物取引業協会連合会 不動産総合研究所 2022年1月|公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会不動産総合研究所

不動産業界の動向に影響している要因

不動産業界は、人々の生活スタイルや考え方の変化によって影響を受けます。とくに近年では世界的に流行している新型コロナ(COVID-19)によって起こった影響も見逃せないでしょう。

現在不動産業界がどのような状況になっているのか、動向に影響している要因を3つ解説します。どんなことが不動産業界の動向に影響を与えたのか知るためにも、これらの要因について知っておきましょう。

新型コロナによる巣ごもり需要とテレワークの普及

新型コロナ(COVID-19)は、不動産業界にも大きな影響を与えました。これまでは仕事で忙しい社会人は、家には寝に帰るだけであまり長くいないため、それほど住宅の広さにこだわらない傾向にありました。

しかし、新型コロナの流行によりテレワークが普及して在宅勤務が増えると家にいる時間が長くなるため、広い間取りを求めるというニーズの変化が起こっています。

中古マンションのリノベーション需要

かつては中古マンションというと、新築マンションと比べてあまり人気がない物件が多くありました。現在は新築マンションの価格高騰の影響もあり、中古マンションのリノベーションに注目が集まっています。

中古マンションでもリノベーションすることで、最新の設備を備えた新築同然のマンションに生まれ変わらせることができます。中古マンションの価値を高められることと、新築マンションほどの価格にはならないことから、今後も需要増が見込まれています。

オフィスの賃貸需要は変化の兆し

一方で、オフィスの賃貸需要に関しては変化の兆しがあり、不透明感が増してきています。こちらもまた、新型コロナ(COVID-19)による影響です。

新型コロナの流行によりテレワークが普及しましたが、流行がおさまってもそのままテレワークを継続する企業が出てきています。テレワークを主体にするのであれば、多くの社員を出社させるためのオフィスは必要ありません。

今後のオフィスの賃貸需要がどうなるのかは、現状不透明です。

不動産業界の課題

ここからは、不動産業界の抱える課題について解説していきます。

不動産業界はこれまでGDPが成長してきていると順調な状況にありましたが、課題がない訳ではありません。これから紹介する課題を知っておきましょう。

人手不足

国内の多くの業界に人手不足の問題がありますが、不動産業界でも人手不足は大きな課題となっています。

国土交通省の「不動産業ビジョン2030 参考資料集」によると、2015年時点で不動産業の従業員数は減少傾向の約133.7万人であり、そのうち半数程度が60歳以上です。

高齢化も問題ですが、年数が進むとさらなる人手不足に陥る可能性があります。不動産業界における人手不足、高齢化の課題は深刻といえるでしょう。

出典:不動産業ビジョン2030 参考資料集|国土交通省

IT化の遅れ

現在多くの業界でIT化が進められていますが、不動産業界はIT化の遅れが目立つ業界の1つとなっています。総務省の「我が国産業界におけるICT投資・利活用の現状」によると、不動産業のICT化は5.6ポイント、建設業(6.7)や金融・保険業(7.6)よりもかなり低めです。

ただ、国土交通省は不動産市場整備のために不動産IDのルール整備を検討しているため、徐々にIT化が進んでいくでしょう。

出典:我が国産業界におけるICT投資・利活用の現状|総務省

空き家や所有者不明土地の増加

都市部への人口の集中による過疎化や少子高齢化といった問題により、日本国内では空き家や所有者不明の土地が増えています。

空き家や所有者不明の土地は、放置すれば良いというわけではありません。建物が崩れたり、第三者が不法投棄に土地を利用したりといった問題が起こるためです。

空き家問題に取り組む自治体も増えていますが、依然として解消されていません。ただ所有者不明土地の課題については、2022年に施工された「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」によって解消していける可能性があります。

出典:所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法|e-Gov法令検索サイト

囲い込みとレインズの活用

不動産業界、とくに不動産仲介は他社に客付けさせない囲い込みの課題があります。囲い込みというのは、たとえば売り主から専属専任媒介契約により売却依頼された物件を、他の不動産会社が購入したいと申し出ても断り、自社で保有し続けることです。

囲い込みの課題に対しては、「宅地建物取引業法 第三十四条の二の5」によって定められた期間内に当該専任媒介契約の情報をレインズ(指定流通機構)へ登録することが義務づけられました。レインズの活用で、囲い込みの解消が期待されています。

出典:宅地建物取引業法|e-Gov法令検索サイト

2022年問題から2023年問題へ

不動産業界では、2022年問題と2023年問題が起こる可能性があると懸念されています。

2022年問題というのは、「生産緑地法」が30年の期限を迎えることに起因します。農地扱いで建物を建てられないといった様々な制約がありつつも、税制面で優遇されてきた生産緑地が期限を迎えることで、土地を売る人が増え供給過多になるという懸念です。

2023年問題は、日本の世帯総数が2023年をピークに減少していくという問題です。また、世帯の割合も単身や夫婦のみの世帯、親と子ひとりの世帯が増え、平均世帯人数も減っていくことが予想されています。

出典:生産緑地法|e-Gov法令検索サイト

不動産業界をめぐる最近の話題

ここからは、不動産業界をめぐる最近の話題について解説していきます。不動産業界への就活を検討している人は、将来の展望だけでなく、現在の話題についても押さえておくことが大切です。

旧耐震基準マンションの動向や2025年の万博開催、またコロナ禍に関する話題と近年注目されていることばかりなのでしっかりチェックしておきましょう。

築40年を超える旧耐震基準マンションの動向

日本は地震の多い国であるため、世界でも類を見ないほど厳格な耐震基準が設けられていますが、現在建っている古いマンションの中には1981年に施工された新耐震基準を満たしていないマンションが多数あります。

とくに築40年を超えるマンションはその傾向が強く、大きな地震がきた際には耐えられない可能性や、現在あるいは近い将来に建て替えが必要になる可能性があります。

出典:建築基準法|e-Gov法令検索サイト

2025年万博の開催に向けた大阪駅周辺の再開発

2021年に東京オリンピックが開催される際は東京で建設ラッシュが起こり、建設作業員が不足しているという話を聞いたことがある人もいるでしょう。現在、2025年の万博開催を控えた大阪駅周辺の再開発でも同じことが起こっています。

とくに過熱しているのは、大阪駅周辺のインフラ整備および宿泊設備の建設です。とくに大阪駅周辺では、ホテルの開業ラッシュが起こっている状態です。

ただ、これらは海外からの観光客を見越してのものであることから、開催までに新型コロナ(COVID-19)による影響が解消されるか懸念が残っています。

物流施設の省人化・自動化などの新たな需要

物流施設というのは、ECや小売りといった物流を行うための施設のことです。大手のECであれば自社で物流施設も倉庫施設も持っているところが多いですが、不動産業界の中には物流施設・倉庫施設を建設して倉庫・物流センターとして賃貸借契約を結んでいるところもあります。

そういった物流施設の省人化や自動化を進めることで人手不足の問題を解消し、新たなビジネスチャンスを得ようとしている企業が出てきています。

コロナ禍で海外進出は遅延

新型コロナ(COVID-19)の影響は、国内にとどまりません。コロナ禍により海外への渡航が制限されたことにより、不動産業界の海外進出は遅延しているのが現在の状況です。

また、海外に不動産を所有している場合、コロナ禍により入居者が失職するといった影響を受け、賃料の値下げを求められるといった事例も起こっています。

職種で異なる不動産業界の平均年収

政府統計ポータルサイト、e-Statの「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、不動産業界・物品賃貸業の平均年収は約530万円となっています。

ただ不動産業界・物品賃貸業といっても幅広く、年収は職種や所属している企業規模によっても異なるため、必ずしもこの年収になるという訳ではないということに注意しましょう。

出典:令和3年賃金構造基本統計調査|e-Stat

不動産業界の今後の展望と将来性

不動産業界の今後は、どうなっていくのでしょうか。実際は不透明な部分が多いものの、人が暮らす上で住まいは必要なため、いきなり不動産業界が廃れてしまうといったことは起こりにくいでしょう。

ただ、2022年問題や2023年問題といった問題があるため、土地の供給過多による土地価格の低下や世帯数の減少・世帯数の変化によるニーズの移り変わりは避けられない可能性があります。

環境への取り組み

不動産業界はSDGsに取り組みやすい業界と言われており、今後の活動が注目されています。たとえば、中古のマンションは通常新築に比べて人気がありませんが、リノベーションすることによって新築のような人気を獲得できることから、既存住宅の活用が活発になっています。

また、二酸化炭素の排出を抑えた低炭素住宅を開発・建設していくことにより、SDGsについても積極的に取り組んでいけるでしょう。

IT化とDXの一層の進展

不動産業界はIT化が遅れていると言われていますが、言い換えてみればまだまだ伸びしろがたくさんあるということでもあります。

不動産とテクノロジーを組み合わせた言葉である「不動産テック」の取り組みでは、ITを使った物件の紹介やVRやARを用いたより立体的な内見に人気があります。

DXを推進していくことで、ネットを介した不動産契約等も可能になるでしょう。ITやDX面では、これからより一層進展していくことが期待される業界でもあるのです。

不動産業界への就職を検討してみよう

今回は不動産業界について詳しく解説しました。不動産業界と言っても、デベロッパーやハウスメーカー、不動産売買・仲介業、不動産管理業や投資・運用業などその種類は多岐に渡ります。

不動産業界でも他の業界のように新型コロナ(COVID-19)の影響を大きく受けたことで不透明になっている部分は多くありますが、ITやDXの促進によって環境や働き方が変わることが期待されています。

この記事を参考に、不動産業界への就活を検討してみてはいかがでしょうか。

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