はじめに
これから就活に挑もうとしている学生の中には、志望動機として成長について書こうとしている人もいるでしょう。
そのために参考となる例文を探しているときなどに、そもそもどんなことを書いて自分をアピールすれば良いのか疑問に思うことがあるかもしれません。
そんな悩みを抱えている学生のために、ライバルと少しでも差がつくような内容に仕上げるコツや主張するべきポイント、担当者の目に留まりやすい構成などについても合わせてみていくことにしましょう。
志望動機で「成長したい」は企業ごとに受け止め方が異なる
成長という単語そのものには前向きな印象がありますが、それを動機として打ち出そうとする場合には十分に注意を払わなければなりません。
なぜならば、それについての受け止めは人により大きく異なり、場合によってはネガティブなイメージにつながりかねないからです。
例えば、これからまったく新しい分野に取り組もうとしているベンチャー気質なところであれば、自ら道を切り開いていく気概がありそうだと高評価が得られることもあるでしょう。
あるいは起業してから間もないスタートアップなどにおいても同様で、安定志向よりも野心的な上昇志向があることによって、好印象につながるかもしれません。
その一方で、業務と絡めた内容が書かれていなければ、あまり企業研究をしていないのではと疑念を抱かれてしまうこともあるでしょう。
成長したい意思を志望動機にする際のポイント
今より自分の力を伸ばしたいことを前面に出した内容は、好意的に受け止められて一定の評価が得られる反面、どのように貢献できるのかを知りたい相手にはマイナスな印象をもたれてしまいます。
そのようなリスクを避けるためにも、企業研究を進めるうえでは、採用にあたってどのようなことを重要視しているのか把握しておかなければなりません。
それらをしっかりと見極めておきつつ、しっかりと自分の熱意が伝わる書き方や、どのようなことを念頭におくべきなのかを確認していきましょう。
なぜ成長したいかを明確にする
簡潔に自分の強みをアピールして熱意を伝えるために大切なのは、どんなことがきっかけで魅力を感じて心が引きつけられるようになったのか、そこに至るまでのプロセスを明確にすることです。
なんとなく関心を持っただけでは高評価が得られるはずもなく、それと同じく社会に出て羽ばたきたいという向上心をいくら強調しても好印象は抱かれません。
さらに、経営理念や社風など思考プロセスや業務内容と自分の意欲を照らし合わせ、どんな躍進を思い描いているのかを伝える必要があるでしょう。
例えば独創的な発想力を磨いていきたいというようなことを書いても、チャレンジを後押しするような風土があれば評価されても、個人の裁量が限られていて業務内容が細分化されているような組織であれば的外れだからです。
成長の定義を明確にする
一口に成長といっても受け止められ方はさまざまで、人によって定義が曖昧で異なることを踏まえておかなければなりません。
何らかの試験を突破したり資格を取得したりするなど、誰にでも判断しやすい能力を育むものもあれば、自分だけしか実感できないような精神的に成熟するといった側面もあるからです。
そこで、自分が思い描いている将来的なビジョンを相手にしっかり伝えるためには、あらかじめ定義をしっかり示したうえで、どのような面において飛躍したいのかを書き始めましょう。
そうすることにより、相手が内容を具体的にイメージしやすくなり、食い違いがなくなります。
さらに、内容によっては将来のビジョンまで伝わりやすくなり、説得力があると思われて高い評価につながりやすくなるでしょう。
主体性を出す
定義を明確にしたうえで具体的に理由を伝えるとともに、さらに注意しなければならないのは内容に主体性を出すことです。
主体性とは、どうしてもこれがしたいという目標を自分自身の意思により定めて、自発的な思考や行動によりそれを達成しようとする積極的な姿勢です。
つまり、誰かの判断に従って他人からの指示により行動する、いわゆる指示待ちの態度には主体性があまり感じられません。
ですから、どんなに研修制度が整っているからといって、そんな環境に魅力を感じたことを伝えただけでは高い評価は得られないのです。
育成に力を入れていて、教育のためのプログラムやトレーニング制度などがしっかりしている環境があっても、自分から積極的にスキルや知識を身につけたいという姿勢を示さなければなりません。
企業にどう貢献できるか考える
主体性のある意欲をうまく表現できたところで、それだけでライバルと大きな差がついて有利に働くというわけではありません。
なぜならば、担当者は大勢から提出される書類をもとに判断するにあたって、将来的にどのような任務を果たせそうかを見ているからです。
自分がどうなりたいかをどれほど強くアピールしても、それが直接何かの利益につながるわけではなく、メリットが感じられません。
入社後にどのような工夫をして行動し、どのような活躍をイメージしているのかが伝わらなければ好印象をもたれないでしょう。
自身をアップデートさせることによりどのような還元があるのか、明確なビジョンをしっかり固めたうえで、どのような力を身につけて力を尽くしたいと思っているのかわかりやすくまとめましょう。
成長を志望動機にして好印象を獲得するコツ
成長について志望動機を作成して企業から好印象を獲得するコツについてお話します。
これまで、成長を題材にして志望動機を作成する基本的なポイントについてお話してきました。
ここからは、志望動機を作成する際に、さらにクオリティーを高めるコツについてお話していきます。
志望動機を作成する際には、以下のポイントを意識して、企業への伝わりやすさを向上しましょう。
結論を最初に示す
まず、重要なのは、結論を最初に示すことです。
最初に話の要点を伝えてしまうことで話の道筋が立ちやすくなります。
企業側に話を覚えてもらいやすい・理解してもらいやすい上、自分も話がぶれにくくなります。
結論を最初に伝えておいて損はないです。
論理性が高い印象も獲得できますので、ぜひ意識しましょう。
企業頼りに聞こえない伝え方
成長したい意思は、伝え方によっては企業の環境や制度に寄りかかっている印象を与えます。
企業頼りに聞こえない伝え方を工夫しましょう。
「企業の教育制度を活用して、“自主的に”活躍できる人材にないたい」など、自分の主体性や自主性を併せてアピールしてください。
企業にばかり頼りきって自分は受動的な態度、というのでは企業に貢献できません。
志望動機でアピールする「成長したい」の種類
志望動機で成長したい意思をアピールする場合、具体的に何でどのように成長したいのか考えてみましょう。
企業の教育制度
企業の教育制度を利用して、自身の成長につなげたい学生は結構多いのではないでしょうか。
企業の教育が手厚いと、入社後に安心して仕事に取り組むことができます。
また、基礎が身につくのでそれ以降、仕事で結果を残すこともできます。
しかし、先述のとおり、企業の教育制度を頼りすぎることなく、自分から学びに行く姿勢やそれを実践する行動力についてもきちんとアピールしましょう。
企業の方向性への共感
成長したいという動機の中には、企業の目指す方向性や姿勢に共感できるケースもあります。
同じ業界でも企業の特徴は全く異なりますから、その中で自分が納得できる社風の企業を選ぶとモチベーションも向上します。
商材への納得性や企業との方向性のマッチ度が高いことが自信のやりがいにつながって、自身の成長に結びつく、など自分なりに説明できるようにしましょう。
社員への尊敬
社員への尊敬やあこがれの気持ちを成長したい動機にすることもできます。
インターンシップや説明会に参加すると、かならず社員との関わりを持つ機会が生まれます。
その際、社員に魅力を感じたり、社員から聞いた話をきっかけに企業に興味をもつこともあるのです。
実際に社員との関わりがあってこそ活用できる志望動機のエピソードとなりますので、伝え方によって志望度の高い印象を獲得できます。
成長を志望動機とする際の注意点
選考の初期段階においてほかと差をつけ高い評価を得るためには、躍進したいという意欲をアピールするだけではなかなか通用しません。
自分自身が進化することによって利益にどうつながるのか、技術を習得するなどすると業績や売り上げの向上にどのような手柄を立ててくれるのか、そのあたりが曖昧なままでは採用にいたることもないでしょう。
そこでここからは、社会人としての進歩するとはどのようなものなのかを確認しつつ、改めてその点をアピールする際の注意点を見ていきましょう。
成長は目的ではない
そもそもステップアップしたいことを志望動機に掲げることで、肯定されることもあれば予想していなかったほど否定的な見方をされるなど、受け止めが異なるのはなぜなのでしょうか。
それは、進化することは目標を達成するまでの過程であって、あくまでも目的ではないからにほかなりません。
自分自身の能力を向上させることだけを目的にする人にとっては、頭の中に思い描く目的とそれを果たすまでの過程がチグハグになってしまいがちです。
極端な話ではあるものの、社会人となればとくに目標を持っていなかったとしても何らかの能力は育まれていきます。
そこで自身が躍進したいという意欲をアピールするのであれば、自分の目標をしっかりと立てたうえで、どう役立つのかをはっきり示すべきでしょう。
意欲だけを押し出さない
目標とそれを達成するまでの過程をきちんと区別できていたとしても、ただただ意欲だけを前面に出すのはいかがなものでしょうか。
もちろん中には、将来いつかは起業したいという目標や大企業で出世したいという夢があって、スキルアップを図れそうな先を志望することもあるでしょう。
しかしながら、企業はそれらを後押しするような場ではなく、利益を出すために汗を流してもらわなければならないのです。
新卒ならば、入社する前後に研修を受けて現場に配属されるケースもありますが、必ずしも人の能力や才能を育むための教育の場ではないことを理解しておけば、意欲だけをアピールすることもなくなるでしょう。
利益のためにステップアップを促すところもあるでしょうから、企業研究を怠ってはなりません。
どの企業でも成長できる
先述のように、社会に出ればこれまでに経験したことがないことの連続で、どこに入ったとしても学生時代と比べて行動や思考まで少なからず変化することは間違いありません。
人見知りのためコミュニケーションが苦手で口下手だったのが、人前で話す機会が多くなったことでコンプレックスを克服できたことも進歩の一つです。
学生の頃は知らなかった業界用語を覚えることなど、あとから振り返ればなんでもないようなことも同様です。
それでも能力を身につけ進歩したいことをアピールするのであれば、なぜそこで成長しなければならないのか、ほかであってはならない理由を明確にしなければなりません。
ほかを批判することは避けつつ差別化をし、志望する先において何を成し遂げたいと思ったのか、あるいはどう進化できそうだと感じたのかをはっきりと明記しましょう。
仕事に直結しない成長は使わない
意欲ややる気があること自体は悪いものではなく、人によってはそれが働くモチベーションの向上にもつながるでしょう。
自分の能力を追求し成長していくことで、他者にも目を向けられる余裕も生まれて、援助したりすることにより組織に多かれ少なかれ寄与できるかもしれません。
しかし自己実現への欲求が強くても、それが仕事とあまりにかけ離れてしまっては評価につながりにくいでしょう。
人間的に大きくなりたいというような漠然とした思いであれば、それを深掘りしてどうにか仕事と絡められるかもしれません。
ところが、理想の夫や父親になるためにひと回り大きくなりたいというような、あまりにプライベートに偏った内容になってしまうと、それのどこが志望動機なのかと疑念を抱かせてしまうでしょう。
成長を主題に志望動機を作成する際には書き出しを工夫しよう
自分が成長することによって業績を残せるという内容であっても、有益であることをより強くアピールするためには、文章の構成を工夫しなければなりません。
とくに人気のある企業などでは担当者が無数の提出物に目を通すわけですから、冒頭でできるだけ強いインパクトを残すことが重要です。
これまで見てきたように「環境が整っていて成長できそうだと思ったから貴社を志望した」というものでは不十分で、それでは環境が整っていなければ何も変わらないのかと思われてしまいます。
もっと具体的に「営業力やマーケティング力も身につけて、既存顧客だけでなく新規顧客とも広く関わりながら成長したいため志望しました」などとすることで、担当者の目に留まりやすくなるでしょう。
言い換え表現
多くの応募者の中から、興味をひいて面白そうな人材だと思わせるためには、表現を工夫することも意識すると良いでしょう。
なぜならば、入社後にレベルアップしていきたいことを理由に志望するライバルは、けして少なくはないと容易に想像できるからです。
そこを勝ち抜いていくためには少しでも差別化しなければならず、ありきたりな印象を与えないように「成長したい」と言い換えることが有効です。
例えば、上記の例のように「営業力をつけたい」とするだけで、より具体的なイメージができるでしょう。
あるいは「進歩したい」や「躍進したい」としたり、「憧れに近づきたい」と表現を変化させたりすることで、かりに同じような内容の志望動機があったとしても一歩でも差をつけられるかもしれません。
成長を主題に志望動機を作成する際のオススメの構成
内容は仕事に絡めたもので、なおかつ成果を上げて期待に応えたいという意欲がはっきり伝わるようなものであれば、成長したいことを志望動機にするのは間違っていないことをここまで見てきました。
さらに、書き出しを工夫することや表現を少しでもアレンジすることで、ライバルに競り負けないことも理解できたことでしょう。
それではここから先は具体的な文章構成について、成長について魅力的に伝える方法を知りたかった学生にもわかりやすいように確認していきましょう。
結論
書き出しには結論を持ってくることが基本で、具体的な理由から先に述べるように心がけましょう。
繰り返しになりますが、採用担当者は数多くの書類に目を通して、その中から選考に進むものを選ばなければなりません。
前置きがあまりにも長くまわりくどい文章からはじめてしまうと、一目で億劫な気持ちになり最後まで読んでもらえないこともあるでしょう。
結論から書き始めることは、人間としてレベルアップしたいという内容を書く場合に限ったことではありません。
そのほかの意欲をアピールする場合でも同様で、さらには文字数制限のあるエントリーシートなどにも共通する書き方です。
これから繰り返し目にするであろう書くコツですから、選考を通過しやすくするものとして今のうちに頭に叩きこんでおきましょう。
理由(具体的経験)
結論に続けて書くべきことは、仕事を通じて進化したいと思った理由で、向上心のアピールにつながります。
どうして志望動機に成長を選んだのか、曖昧なものではなく読み手が納得するような理由を書かなければなりません。
そのためにはこれまでの経験を振り返りながら、具体的なエピソードを交えると説得力が増して高評価につながります。
リーダーシップを発揮できるようになって企業のために役立ちたいというだけでは、なかなか意欲が伝わりません。
その際には学生時代に部活でキャプテンとして組織をまとめたことなど、自らの経験をもとに成長したいことを書くと筋が通りやすくなります。
あるいは、技術を磨いてはやく一人前になりたいのであれば、これまでにどんなことを学んできたのかを具体的に書くべきでしょう。
企業にどう貢献するか
なぜ成長したいことが志望動機になったのか、結論と具体的な経験をもとにした理由を書いたあとは、企業にどう貢献しようとしているのかを書かなければなりません。
結論によって興味をひいて、理由によって説得力がある印象をもたれたとしても、貢献についてのアピールがなければ元も子もありません。
自分が飛躍を遂げることにより企業にとってどのような利益が生じるのか、そこを明確に伝えられるかどうかが選考のカギを握るといっても良いでしょう。
先のリーダーシップを例にすれば、優秀なリーダーとなって組織を成長させたいという意欲を伝えるのです。
それによって、組織の変革や強化に前向きに取り組んでいる企業、あるいは業務の拡大を見込んでいる企業から高い評価が得られるに違いありません。
成長したい意思を志望動機として伝える例文
ここまでで成長を志望動機に絡める際に注意すべきこと、企業にどのように貢献しようとしているのかを書かなければならないことは理解できたでしょうか。
自分を成長させたいという理由が志望動機になるのかどうか、うまく書けるかどうか不安だった学生も少しは自信がついてきたはずです。
そこでここから先は、人間的なことと技術的なことを書こうとする場合について、結論から先に書くなど文章の構成を踏まえつつ、具体的な例文を見ていくことにしましょう。
人間的成長を目的にした例文
私は人間的に成長して、誰からも憧れられる人材になりたいと考えて貴社を志望しました。
そう考えるきっかけになったのは、幼い頃から憧れ続けているイチローの存在です。
私は小学生になってから野球をはじめ、大学生になってもずっと続けてきました。
なかなか思うような結果が出せないときにも、怪我をして練習が厳しいと感じたときにも続けて来られたのは、彼のような選手になりたいという思いがあったからです。
就職活動を通じて自分のこれまでを振り返ってみたとき、改めて彼への憧れがあったからこそ頑張ってこられたことに気づいたのです。
それは野球だけに限ったことではなく、受験勉強でくじけそうになったときもそうでした。
そんな経験から、社会人になったら自分も後輩から憧れられて頼りにされるほど大きくなりたいと思うようになりました。
私のあとに続く後輩の手本となるような行動力も身につけることで、会社全体の底上げに貢献するとともに、少しでも憧れに近づきたいと考えています。
技術的成長を目的にした例文
私は営業力を身につけて、実績を残せるようになりたいと考え貴社を志望しました。
そう強く思うようになったきっかけは、学園祭の実行委員として得た成功体験です。
私が入学した初年度はコロナ禍の影響もあり、楽しみにしていた学園祭の中止を余儀なくされました。
残念でならなかった私は、実行委員に立候補して開催への道を探り始めたのです。
サークル間同士で話し合いの場を設け、ときには教職員に相談するなどを重ねた結果、翌年にはオンライン形式とはいえどうにか開催にこぎつけました。
学年の垣根を越えた調整の難しさなどはあったものの、無事に成功を収められた喜びは大きいものでした。
そんな経験によって身につけた行動力を、これからは社会人としてさらに伸ばしていきたいと考えています。
貴社は幅広い分野の企業と取引があるため、顧客の種類が多く視野を広げられるのではないかと思いました。
そこで経験を積むことにより、情報収集力や課題発見力も磨いていって、売り上げに貢献できる存在を目指します。
まとめ
企業からの高評価につながりやすい文章の書き方から、意欲をアピールするための例文まで見てきましたが、自分にも書けそうなイメージがわいてきたでしょうか。
何を書けば良いかわからなかった人でも、具体的な内容を考えるきっかけにはなったはずです。
将来どんな人物になりたいか、思うところはそれぞれでしょうが、志望動機に書く際は仕事に絡めなければなりません。
そのことを踏まえて、自分なりの志望動機を考えてライバルとの差を広げましょう。