はじめに
エントリーシートの中で、志望動機は特に多くの企業が注目し、採用の合否にも直結する重要な項目です。
しかしいざ志望動機を書く段階になって「志望企業や職種は決まっているのに、志望動機がまとまらない」「伝えたいことを言葉にするのが難しい」など、うまく書けずにお困りの方も多いかもしれません。
今回は「建設業界への就職を希望しているものの志望動機が書けない」とお悩みの方に向けて、志望動機の書き方や例文をご紹介します。
【建設建設業界の志望動機】建設業界とは
建設業界とは、住宅やビルの建設を始めとした、道路やダムのインフラ整備を担当する業界です。
さらに建設業界は大きく建築と土木の2つに分類できます。
建築は住宅やビル、商業施設を建設します。一方土木は道路やダム、橋などです。
建設業界の業種
建設業界の業種を4つ解説します。
建設業界は、自社の得意分野を持ち寄ることで建物を建設します。
それぞれの業種が密接に関わっていることを理解しておきましょう。
- 総合建設業(ゼネコン)
- 専門工事業(サブコン)
- 設計・コンサル会社
- 資材・設備メーカー
総合建設業(ゼネコン)
建設業界の業種の1つ目は総合建設業(ゼネコン)です。
ゼネコンとはゼネラルコンダクターの略称で、全体的な請負者といった意味があります。
ゼネコンの役割は、設計から施工までを一貫して管理することです。
たとえば工事のスケジュールや予算、作業員の健康管理などが担当です。
そのため、ゼネコン自体は工事せず、別の企業の仕事になります。
専門工事業(サブコン)
建設業界の業種の2つ目は専門工事業(サブコン)です。
サブコンとはサブコントラクターの略称で、下請け者といった意味があります。ゼネコンからの依頼を受けて専門的な工事を担当します。
主に電気や空調、消防設備などが挙げられます。
建設業界は、ゼネコンからサブコンへ仕事の依頼が降りる構造です。
ゼネコンとサブコンは密接に関係していることを理解しておきましょう。
設計・コンサル会社
建設業界の業種の3つ目は設計・コンサル会社です。
発注者に対して企画から設計、管理までを担当します。たとえば企画書の立案や施工方法のアドバイスなどです。
ほかにも工事前の調査や資金調達も含まれます。
ゼネコンやサブコンとも関わりますが、主に発注者のサポートがメインです。
設計・コンサル会社は、発注者に客観的な意見を述べる位置にいます。
資材・設備メーカー
建設業界の業種の4つ目は資材・設備メーカーです。
資材・設備メーカーは工事に必要な資材や設備を供給する役割です。ほかにも安全性の高い資材を開発したり、製造したりします。
建設する建物によって使用する資材は大きく異なります。
目的に合ったものを提案することが重要です。
また、資材・設備メーカーはサステナブルが求められています。
持続可能な社会を実現するためです。
環境問題に対しても積極的に関わっていることを知っておきましょう。
建設業界の職種
続いて、建設業界の職種を解説します。
一般的な企業にある職種から建設業界特有の職種があります。
建設業界を志望する就活生は、どういった職種に配属される可能性があるのか、あらかじめ把握しておきましょう。
- 営業
- 設計
- 施工管理
- 技術職
- 事務
営業
建設業界の職種の1つ目は営業です。
営業は一般的な企業の営業と変わりません。工事を考えている企業や団体に対して、自社で契約するようにプレゼンするのが仕事です。
プレゼン先は公共事業を発注する官庁営業と一般企業を対象にした民間営業の2つに分かれます。
ほかにも土地を持つ人に対して、マンションや商業施設の建設を提案することがあります。
営業職は成果主義を採用しており、契約が成立すれば給与がアップするでしょう。
設計
建設業界の職種の2つ目は設計です。
設計職は、建築物やインフラなどの設計図を作成する仕事です。
大きく分けて「意匠設計」「構造設計」「設備設計」の3つに分類されます。
意匠設計は、建物の外観や内装、間取りをデザインする仕事です。
構造設計は、建物の安全性や耐久性を確保するための構造を計算します。
設備設計は、建物内の電気設備、空調設備、給排水設備などを設計する仕事です。
施工管理
建設業界の職種の3つ目は施工管理です。
主に建設工事全体のスケジュールを把握し、各工程の期日や作業内容を詳細に落とし込んだ工程表を作成します。
次に作成した工程表を参考に工事の進捗状況を定期的に確認します。
遅延や問題が発生した場合には、適切な対策を講じます。
ほかにも作業員、協力業者、設計者など、工事に関わる様々な関係者と密に連携し、円滑なコミュニケーションを図りながら、工事を進めます。
技術職
建設業界の職種の4つ目は技術職です。技術職は主に職人と技術開発に分かれます。
職人は、建設現場で実際に作業する人です。
たとえば高所に足場を組み、作業するとび職が挙げられます。安全面に配慮しつつ、効率良く作業する力が必要です。
一方で技術開発は現場で使用する資材や工事技術の開発が担当です。
環境への配慮やコストカットなど、工事現場を縁の下から支えます。
どちらも工事現場を支える欠かせない職種です。
事務
建設業界の職種の5つ目は事務です。
一般企業に当てはまる事務作業と建設業界特有の業務に分類されます。
まずは、一般企業に当てはまる事務作業を解説します。
書類作成や電話対応、データ入力などを担当します。ほかにも経理や人事、総務など幅広く対応するでしょう。
建設業界特有の業務は、工事書類の作成や図面作成、工事に必要な許可申請作業です。
実際に現場で仕事をする機会はほとんどありませんが、スムーズに工事を進めるためには欠かせません。
建設業界への就活で役立つ資格
次に建設業界への就活で役立つ資格を紹介します。
もちろん資格なしでも、採用されますが、資格を持っておくことで専門性や熱量をアピールすることができます。
ぜひ参考にしてみてください。
資格名 | 主な対象職種 | 取得メリット | 取得のしやすさ |
---|---|---|---|
2級建築士 | 建築設計・施工管理 | 設計業務に役立つ、就職時のアピールに | ★★☆(指定学科卒業が必要) |
2級建築施工管理技士(学科試験合格) | 施工管理 | 入社後の資格取得がスムーズになる | ★★★(学科試験のみなら可能) |
2級土木施工管理技士(学科試験合格) | 土木施工管理 | 施工管理職での評価UP | ★★★(学科試験のみなら可能) |
測量士補 | 測量・施工管理 | 土木系職種で評価される | ★★★(大学の指定科目履修でOK) |
宅地建物取引士(宅建) | 建設営業・不動産 | 用地仕入れや不動産関連業務で有利 | ★★☆(独学でも合格可能) |
建設業経理士(2級) | 経理・総務 | 建設業の経理・財務に役立つ | ★★☆(簿記の知識があれば有利) |
危険物取扱者(乙種4類) | 設備管理・電気工事 | 現場の安全管理や施工に役立つ | ★★★(比較的取得しやすい) |
電気工事士(第二種) | 設備工事・電気系 | 建設設備の電気工事が可能に | ★☆☆(実技試験がある) |
【建設業界の志望動機】建設業界の動向
建設業界の動向として本章で解説する7項目は、アンテナを張って情報収集しておきましょう。
将来の建設業界を左右し、面接でも質問される可能性が高いからです。
入社意欲をアピールするためにも本章を参考にしてください。
- 脱炭素化の拡大
- リフォーム分野の成長
- 海外展開の強化
- 大工不足への対応
- 女性活躍の推進
- デジタル化・IT技術の導入
- ゼロエネルギー建物の推進
脱炭素化の拡大
建設業界は、環境に与える影響の大きさから、脱炭素化に向けた取り組みを加速させています。
なぜなら建設業界は、資材の製造、建設工事、建物の運用など、ライフサイクル全体で多くの二酸化炭素を排出しているからです。
その結果、脱炭素化への意識が高まり、新しい技術の開発、企業の取り組みが進んでいます。
脱炭素化を推進するためには、技術開発の加速、政策支援の強化、流通全体の連携、意識改革が重要です。
また、建設業界ではLCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)がキーワードになっています。
建設から解体の一生を通じて、二酸化炭素の排出をマイナスにする取り組みです。
建設業界は脱炭素に向けて行動していることを覚えておきましょう。
リフォーム分野の成長
現在、リフォーム分野の需要は伸びています。
働き方の変化による在宅ワークの増加、高齢化による在宅介護の必要性が高まったことなどが要因です。
ほかにも、耐震や防火など自然災害から身を守ることを意識したリフォームが注目されています。
リフォーム分野が成長する一方で、職人の人材不足や資材の高騰が問題視されています。
人材不足は職人の成長に時間がかかるからです。
さらに、資材を輸入するコストや運送費が積み重なり、リフォーム費用に転嫁されています。
リフォームは大きな金額が動くため、企業と政府が連携して対応することが重要です。
リフォーム分野は需要があり成長していますが、課題が残っています。
海外展開の強化
建設業界は国内市場の成熟化を受け、海外展開を強化しています。
新興国のインフラ需要が拡大しているからです。
日本の建設企業は、高品質の技術があるため海外市場で有利な場所に位置しています。
しかし、海外展開には課題が多く残っています。
主に文化や制度の違い、人材不足、リスク管理などです。
成功のためには、現地パートナーとの連携や人材育成、リスク管理体制構築といった戦略が欠かせません。
また、企業間連携や現地法人設立も増加傾向にあります。
海外展開は建設業界にとって大きな成長の機会です。
課題を克服し戦略的に進めることで、新しい市場で活躍できるでしょう。
大工不足への対応
建設業界は深刻な人材不足に直面しています。
ほかの業界と比較して新入社員の減少が深刻です。
人手不足の背景には、建設業界の労働環境に対する悪いイメージがあります。主に長時間労働や短い納期などです。
人材不足が慢性化すると、工期遅延や品質低下などの問題を引き起こします。
上記を防ぐには労働環境の改善、給与水準の向上が必要です。
さらに、人手不足の改善としてDX化が浸透しています。
DX化とはデジタル技術を活用し、業務効率を改善することです。
少子高齢化が進む日本では、今後も人材不足が続くことが予想されます。デジタル機器を導入し、より魅力的な職場環境の整備、多様な人材を確保・育成していく必要があるでしょう。
女性活躍の推進
建設業界は女性活躍の推進が重要な課題です。
就業者に占める女性の割合は依然として低水準です。
しかし、人手不足解消や多様性確保の観点から、女性が活躍する重要性は増しています。
女性が活躍できない理由に、建設業界の労働環境や固定観念、子育て支援の不足、キャリアパスの不明確さなどがあります。
対策として女性用施設の設置や育児休業制度の充実、経営層の意識改革、女性管理職の育成などが挙げられます。
女性活躍推進は建設業界の活性化に不可欠です。
課題を克服し、女性が働きやすい環境を整備することで、より多様で魅力的な産業へと発展できるでしょう。
デジタル化・IT技術の導入
建設業界では、人手不足解消や生産性向上を目指し、IT技術の活用が加速しています。
今まで活用されてきたCADに加え、近年ではAIやIoT、ドローンなどの最新技術導入が進んでいます。
CADとはComputer Aided Designの略で、パソコン上で設計図や図面を作成する技術です。
デジタル化・IT技術の導入にはコストや人材育成、セキュリティといった課題も存在します。
政府は補助金制度などで支援し、企業も積極的に投資しています。
今後、AIの精度が向上することでさらに業務効率が良くなるでしょう。
その結果、職人でしか対応できない業務に注力できるようになります。
デジタル化とIT技術の導入は、建設業界の発展には欠かせない存在です。
ゼロエネルギー建物の推進
建設業界は、脱炭素化に向けた取り組みが加速しており、その中でもZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)が注目されています。
ZEBは、建物のエネルギー消費量を大幅に削減し、再生可能エネルギーによって年間のエネルギー消費量をゼロにすることを目指した建物です。
背景には、地球温暖化対策やエネルギーコスト削減が挙げられます。
ZEBの普及は進んでいますが、建設コストや技術、設計・施工体制の構築などが課題として残っています。
普及を促進するためには、資源エネルギー庁を始めとする官民の連携が重要です。
また、ZEBは脱炭素社会実現の鍵となります。
普及が進むことで建築物におけるエネルギー消費量が削減され、地球温暖化対策に大きく貢献するでしょう。
【建設業界の志望動機】どうして建設業界を志望した?
志望動機を書く際に重要なポイントの1つが、なぜ建設業界を志望したのかを明確にすることです。
ここで「人の役に立ちたい」など漠然とした動機をあげてしまうと、企業側に「業界や仕事に対する関心が薄い」「業界研究ができていない」と判断され、評価を下げられてしまうため、注意しましょう。
そうした事態を避けるためには、より具体的に、建設業界ならではの動機をあげる必要があります。
ここでは志望動機の例を3つご紹介するので、志望動機を書く際の参考にしてください。
人々の安心や安全に携わりたい
建設業界の志望動機として多くあげられるのが「人々の安心や安全に携わりたい」というものです。
特に東日本大震災の際、地震や津波によって家屋が損壊してそこで暮らす人に被害が及んだ事例を目にしたり、自分や家族が実際に被害を受けたりしたことがきっかけで、建設業界に関心をもった方も多いでしょう。
企業方針として安全・安心を掲げる建設会社や、人々の暮らしや生活を守ることを目標として建設業界で働いている方も多く、共感を得やすい志望動機であると言えます。
「耐震性の高い住宅を作ることで人々の安心や安全を守りたい」「より耐火性の高い住宅を開発して住宅火災による被害者を減らしたい」など、建設物を通して人々の安全に貢献したいという動機は、建設業界を志望するうえで強いアピールになります。
建設を通して豊かな生活を提供したい
「建設を通して豊かな生活を提供したい」は、特に海外で日本の建設会社が活躍する場面を見た方があげることの多い志望動機です。
日本の建設会社は発展途上国での社会インフラ整備や、海峡をまたぐトンネルの建設など、建設技術によって多くの人々の豊かな生活に貢献しています。
「海外ボランティアに行った際、農村の学校や病院を貴社が建設したと知り、自分も建設分野で社会に貢献したいと考えた」「国際的な大規模プロジェクトで、多くの人が利用でき、経済発展につながる建設物を作りたい」など、社会貢献を軸に志望動機を組み立てると良いでしょう。
夢や理想論に終始しないよう、過去の実績なども意識して取り入れることで、より現実味のある志望動機になります。
都市開発に関心がある
「都市開発に関心がある」も、建設業界の志望動機における代表例の1つです。
街や地域ごと開発するディベロッパーの醍醐味は、1つのコンセプトにもとづいて秩序のある都市を作り上げられることです。
「大学で都市開発について学び、職住近接の暮らしやすい街を作りたいと考えて志望した」など、一つひとつの建物ではなく、より広い範囲の開発を志望していとアピールしましょう。
また「祖父を介護した経験から福祉に関心があり、地域全体をバリアフリーにして誰にとっても暮らしやすい都市をつくりたい」「大学で社会学に触れ、人口が減っていっても地域のコミュニティが維持できるようなコンパクトシティを設計したいと考えた」など、建設に直接関係のない始点から、志望動機を組み立てることもできます。
【建設業界の志望動機】志望動機の構成はPREP法で作ろう!
志望動機を書く際には構成を意識して書くことで論理的で分かりやす文章を作ることができます。
具体的にはPREP法を使うとよいでしょう。これはビジネスの場でも用いられる手法であり、ESや履歴書だけでなく、面接で話すときにも意識しましょう。
「Point(結論)」→「Reason(理由)」→「Example(具体的なエピソード)」→「Point(結論)」の順で構成する手法。
この順番で話すと自然に論理構造が意識できている文章がつくれる。
Point(結論)
まずは「なぜその企業を志望するのか」を簡潔に書きましょう。
ESや履歴書などのでは最初の1行目が最も重要とされているため、できるだけわかりやすく、伝えたい内容をしっかり伝えられるようにしましょう。
この結論の部分をおろそかにすると、応募数の多い会社では最後まで志望動機を見てくれない場合もあるので気を付けましょう。読み手が理解しやすい書き出しを意識することで、企業の目に留まり、しっかりとアピールできるでしょう。
- 「〇〇という企業理念に共感し、志望しました。」
- 「△△という事業に興味があり、志望しました。」
- 「〇〇というスキルを活かしたいと思い、志望しました。」
- 「〇〇を実現したいため志望しました。」
Reason(理由)
結論を書いたら、必ずそれに対する理由や根拠を書きましょう。
書き出しでグッと興味を掴むワンフレーズは、インパクトこそ絶大ですが抽象的です。そのため、結論に説得力を持たせるため、詳しい根拠を書く必要があります。
- 「貴社の〇〇というサービスを利用した際に感動しました。」
- 「アルバイトで〇〇の必要性を感じ、それに力を入れている貴社に興味を持ちました。」
- 「大学で〇〇の分野に興味を持っており、将来はその分野を広げる仕事がしたいと思うようになりました。」
Example(具体的なエピソード)
結論と理由を述べたら、それにいたった具体的なエピソードや実体験を述べましょう。
その志望動機を考えるに至った自分のこれまでの経験があるはずです。それを述べることで、志望動機に根拠を持たせることができ、説得力の高い志望動機を作成することができます。
また、志望動機が同じような学生は多く存在しますが、根拠となるエピソードによって自分の志望動機にオリジナリティーが埋めれるため、差別化をしやすくなります。
- 「学生時代のアルバイトの経験で〇〇に疑問を持つようになり、これを解決したいと考えた。」
- 「長期インターンの経験で〇〇の面白さを感じ、将来は〇〇を突き詰めていきたいと考えるようになった。」
Point(結論)
最後に結論を述べていきます。最初に述べた結論とは異なり、「入社後に成し遂げたい事」や「貢献したい事」といった入社への意気込みを重点的に述べましょう。
この部分は志望動機の最後の締めになるため、意気込みや志望度の高さを採用側に伝えるように意識しましょう。
- 「このような経験から御社(貴社)を強く志望し、入社後は〇〇に挑戦したいです。」
- 「この経験から〇〇の部分で貢献していきたいです。」
【建設業界の志望動機】志望動機のポイント
志望動機を書く際に重要なポイントは、なぜに注目すること・企業の独自性を大切にすることの2点です。
この2点は志望動機を、読む際に企業の採用担当者がチェックするポイントであり、これを押さえて書くことで、より好印象の志望動機にできます。
また「そもそも志望動機に何を書けば良いのかわからない」という方も、この2点を念頭に置くと、志望動機がまとまりやすくなるでしょう。
なぜこの2点を採用担当者がチェックするのか、具体的にどのように記述すれば良いのかを合わせて解説します。
「なぜ」に注目する
企業が志望動機の中で注目するのは「建設業界(あるいはその企業)の何に魅力を感じたか」ではなく「なぜ魅力を感じたか」です。
「なぜ」の中には、その人の価値観やその価値観に至った経歴が反映されています。
価値観や経歴は仕事のモチベーションにも直結するため、企業は「何に」よりも「なぜ」を重視するのです。
そのため、志望動機を書く際も「何に」より「なぜ」に文字数を割き、強調しましょう。
たとえば、その企業を志望した理由として「免震技術に魅力を感じた」とあげるだけでは不十分です。
「免震技術によって地震での被害が少なかった住宅を見て、住人の命だけでなく思い出や生きる活力をも守れると感じた」など、より具体的な理由やエピソードを挿入すると良いでしょう。
企業の独自性を大切にする
企業独自の技術や特徴的な企業方針など、企業の独自性を大切にした志望動機を書きましょう。
志望動機を読んだ相手に「それなら同業他社でも良いのでは」「この動機は企業方針に沿わない」と感じさせてしまうと、志望度が低い印象を与えてしまいます。
これを避けるためには、業界研究・企業研究が重要です。
その企業が建設業界の中でどのような立ち位置にあるのか、どのような独自技術を持っているのか、今後の活動・経営方針などを調べ、研究結果を志望動機にも織り込みましょう。
「建設業界の中でも特に震災からの復興事業に注力している点に感銘を受けた」「独自の免震技術で多くの命を救ってきた実績に惹かれた」など、その企業の独自性を大切にした志望動機であれば、相手に好印象を残せます。
【建設業界の志望動機】建設業界で評価される強み
業界ごとに求められる素質は異なります。
そのため、志望動機で入社後に成し遂げたいことを記述する際に「自分の強みは〇〇で、それを活かして●●をしたい」と自分の強みをアピールする場合は、建設業界ではどのような強みが高い評価を得られるのか把握しておかなければなりません。
建設業界で評価される強みとして以下のものがあるので、ぜひ参考にしてください。
- リーダーシップがある
- 計画性がある
- 危機管理能力が高い
- 学ぶ意欲がある
リーダーシップがある
建設には企画・設計段階から施工・販売まで多くの人が関わります。
そうした組織で業務を円滑に進めるためには、プロジェクトの旗振り役としてリーダーシップを発揮できる人材が不可欠です。
なかでも、建設現場で技術者に指示を出す施工管理にはリーダーシップが欠かせません。
学生時代にリーダーとして組織の管理をした経験があれば、ぜひアピールしましょう。
「大学の学園祭で実行委員長を務めた経験から、プロジェクトを完遂する楽しさと同時にリーダーシップの重要性を感じた。
このとき身につけたリーダーシップを活かして、建設現場を円滑に運営する施工管理者として働きたいと考えた。」
このように、リーダーシップを実際に発揮したエピソードや、仕事での活かし方を具体的に記述すると良いでしょう。
計画性がある
建設には多くの工程があり、多くの人が関わるため、1人の仕事が遅れると多くの関係者に迷惑をかけてしまいます。
そのため、納期までに仕事を納められる計画性が重要です。
特に設計など上流工程で仕事が滞ると影響が大きくなるため、自分やプロジェクトチームの力量を正確に把握して無理のない計画を立てる能力と、計画通りに仕事を進められる能力の両方が求められます。
「大学でチームメイトと共同で住宅模型を作成する課題があった。
締め切りはとてもきびしかったが、各人の得意な作業を分担して作業計画を練り、締め切りまでに提出できた。
このとき計画を立ててそれを実行に移す力を身につけ、仕事でも活かしたい。」
このように、計画を立てる能力とそれを実行する能力がアピールできるエピソードを挿入しましょう。
危機管理能力が高い
建設現場では、一歩間違うと命を落とすこともあります。
そのため、施工管理や現場監督として建設現場に立つ場合は、そうした危険を察知し未然に事故やトラブルを防ぐ危機管理能力が求められます。
危機管理能力を構成する要素は、見通しをもって作業を進めるための洞察力・計画性、小さなトラブルを大きなトラブルに発展させないように解決策を提示する分析力などです。
こうした要素があることをアピールできれば、建設業界で高い評価を得られるでしょう。
「大学で平屋住宅を建てる実習の際、台風が近づいていた。
大事を取って建設の中断をしたところ、予想以上の強風になり、中断の判断は正しかったと安堵したことがある。
この危機管理能力を活かし、入社後も安全に建設を進められる現場監督になりたい。」
こういった危機管理能力を活かして成功したエピソードが盛り込めると良いでしょう。
学ぶ意欲がある
建設業界には学ぶ意欲が欠かせません。新しい技術が開発されたり、法律が変わったりするからです。
一度学んだ知識がいつまでも最新とは限りません。
業務効率を上げたり、人件費を削減するには知識がないと改善案が思いつかないでしょう。
働きながら学習するのは非常に困難です。
しかし、ほかの従業員との差別化になります。建設業界を志す就活生は、学ぶ意欲をアピールしましょう。
【建設業界の志望動機】建設業界の志望動機の例文
ここまで、建設業界の志望動機の構成や記述する際のポイント、建設業界で評価される強みなどを解説しました。
最後に、ここまでの内容をふまえて記述した志望動機の例文として、施工管理を志望しているケースと設計士を志望しているケースについてご紹介します。
構成要素ごとの文量や論理展開などを参考にしてください。
なお、これらはあくまでも例文です。
実際に志望動機を書く際は、自分の経験したエピソードをもとに、自分の言葉で記述しましょう。
施工管理の志望動機の例文
私は海外の生活インフラを整備して、多くの人々が豊かな生活を送れるようにしたいと考え、貴社を志望しました。
複数の新興国をめぐった際に利用した地下鉄で、多くの日本企業が地下鉄建設を通して現地の発展に寄与していることを知ったのです。
なかでも貴社が中心となって整備した○○の地下鉄は、地下水の流入など多くの困難を独自の技術で克服して開通したとうかがい、大変感銘を受けました。
帰国後、海外の生活インフラ整備のために私にできることは何かと考え、現在は私の強みである危機管理能力が活かせる施工管理を目指して、土木技術研究室で研鑽を積んでいます。
私は施工管理として、貴社が進める新興国のインフラ整備プロジェクトの現場で働く人々の安全を守りたいと考えています。
設計士の志望動機の例文
私は大きな災害にも耐えられる住宅を多くの方に届けたいと考え、貴社を志望しました。
私はかつて実家が大地震で倒壊し、避難所で生活したことがあります。
我が家以外にも、多くの方が避難所で長期間の生活が強いられているのを目の当たりにし、日本には災害に強い住宅と早期の仮設住宅整備が不可欠だと感じました。
そのあと、貴社がいち早く仮設住宅を建設していたことや、震災をきっかけに免震・耐震構造の研究により力を注いでいると知り、大変感銘を受けました。
私は仮設住宅を提供するノウハウのある貴社で、より早く建設でき、暮らしやすく2次災害のおそれもない仮設住宅の設計をしたいと考えています。
また、ゆくゆくは災害に強い住宅をより広く普及させて、災害にあっても住み慣れた我が家を離れなくて良い社会にしていきたいです。
おわりに
建設業界への就職を希望しているものの、志望動機が書けないとお悩みの方に向けて、志望動機の書き方や例文をご紹介しました。
志望動機を書く際は、自分がなぜ建設業界を志望しているのか、動機を明確にすることが重要です。
そのうえで、文章の構成やアピールすべきポイントを意識し、相手に熱意が伝わる志望動機にしましょう。
建設業界で評価される強みを織り込めば、さらなる高評価も期待できます。
ご紹介した例文も参考に、自分らしい志望動機を書き上げてください。
明治大学院卒業後、就活メディア運営|自社メディア「就活市場」「Digmedia」「ベンチャー就活ナビ」などの運営を軸に、年間10万人の就活生の内定獲得をサポート