【コンサル業界】市場
日本におけるコンサル業界の市場は年々拡大傾向にあります。
業界動向Search.comによると、2018-2019年のコンサル業界の規模は、7,969億円ということでした。
この数字は業界の主要企業13社の売上高を合計した数字になりますが、2011年頃からコンサル業界の市場は徐々に成長し、堅調な推移を見せています。
コンサル業界の中でもとくに成長が著しいのは、デジタル分野です。
IDC Japanの調査では、2018年のデジタル分野での成長率は、前年比40.5%増(709億円)という数字が出ました。
コンサル業界の中でも55%のシェアを持つビジネスコンサルティング市場も、7.8%増(4,227億円)と、高い成長率を示しました。
また、海外に進出する企業へのコンサルティングの需要も増加傾向にあります。
2013年頃から国内企業の海外進出が相次ぎ、グローバル化に伴う人事の確保や事業展開について新たな課題が生じるようになりました。
そうした課題を解決するために、コンサルティング業務を展開するコンサル会社も増えています。
・コンサル業界の現状
コンサル業界は、企業が抱える問題や課題を解決するためにさまざまなサポートを行います。
従来コンサル業界では、課題の種類や外資系・シンクタンク系など、母体の種類によって業務が区分されていました。
分業体制で行うのが常でしたが、最近では課題が複雑化したことと、ビジネスモデルの多様化で区分が難しくなったことから、「戦略系コンサルティングファーム」「シンクタンク系コンサルティングファーム」「IT系コンサルティングファーム」など、それぞれ得意分野で分類される傾向にあります。
コンサル業界で目覚ましい成長を遂げているのが、デジタル分野でのコンサルティングサービスです。
成長の背景にはいくつかの要因がありますが、とくにデジタル技術を用いて課題を解決するデジタルトランスフォーメーションの需要が市場をけん引しており、AIシステムやクラウドサービスなどの導入に伴う、活用支援を行っています。
日本のコンサル業界市場は、アメリカのそれと比べると小規模なものですが、コンサルティングサービスが徐々に浸透し、コンサルティング会社も増えています。
コンサルティングファーム増加に伴い、コンサルタントを採用する機会も増加傾向にあります。
・コンサル業界の展望
コンサルティングの業務内容は拡大傾向にあり、今後も成長するとの見通しが強まっています。
新たなビジネスモデルが誕生し、テクノロジーが進化し続ける傾向から、コンサル業界の需要はますます高まると考えられます。
新しい波が常に押し寄せるビジネスの世界では、いち早い対応が求められますが、社内で即対応できる人材が少ないのが現状です。
企業は外部に即戦力を求めるようになりますが、それがコンサル業界の成長につながります。
【コンサル業界】シンクタンク系とは?
シンクタンク系コンサルティングは、主に官公庁に対し、必要な分野についてリサーチ(政策や経済情勢など)、課題を発見したり、課題に対する解決策を提案・実施したりします。
リサーチのほかに、マネジメントや経営に関するコンサルティングを展開するコンサルティングファームもあります。
よく知られているシンクタンク系コンサルティングファームは、「野村総合研究所」「日本総研(JRI)」「三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)」などです。
・仕事内容
シンクタンク系コンサルティングファームの仕事は、「経済調査」「ITコンサル」「マネジメントコンサル」「官公庁向けリサーチ」と、4つの部門に分かれています。
「経済調査」と「官公庁向けリサーチ」は、主に官公庁向けのサービスで、「ITコンサル」と「マネジメントコンサル」は、主に民間企業が対象になります。
シンクタンク系コンサルタントファームの仕事は、リサーチがメインになりますが、マネジメント業務など仕事の内容は多岐にわたります。
・職種
シンクタンク系コンサルは、「民間系コンサル」と「政治系コンサル」に大きく分けられます。
コンサルタントは部門ごとに採用されるため、職種は「ITコンサルタント」などと呼ばれます。
専門分野が細かく分かれている職種に就くため、シンク系コンサルタントは採用の際、該当する部門おいて、専門知識や職務経験が重視されます。
学歴が重要視されそうなシンクタンク系コンサルタントですが、大学院卒でなくともなれます。
実力や経験によっては中途採用もあり、学卒で採用されているコンサルタントも多くいます。
・特徴
シンクタンク系コンサルタントファームは、大手金融機関などの大企業が後ろ盾となり、コンサルティング業務に対する高度なノウハウや技術を所有している傾向があります。
大手企業のバックアップは、営業活動にも好影響を与え、行政機関や有名企業からの依頼が舞い込むことも少なくありません。
研究活動がメインのシンクタンク系コンサルファームには、さまざまなリサーチ案件があります。
中には興味のあるテーマが案件として上がってくることもあり、やりがいのある仕事と言えるでしょう。
コンサルティングファームの社風は、海外に進出している日本企業に似たものがあり、コンサルタントたちは比較的自由な環境のもと、業務に取り組みます。
【コンサル業界】シンクタンク系の1日
シンクタンク系コンサルに興味があると、実際に働いている人はどんな1日を過ごしているのか、気になるのではないでしょうか。
あるシンクタンク系コンサルファームに勤務しているコンサルタントの1日についてご紹介します。
午前
出社は9時30分ですが、3時間前に起床し、自宅でメールの確認をしたり、午前中に予定しているミーティングの資料に目を通したりします。
その後毎日の日課である新聞を読みます。
9時30分出社。
連絡事項はないかどうか、その日にやるべき業務は何かをチェックします。
その日にすべき業務を、TODOリストにまとめて、出社時にチェックするのを日課にしているコンサルタントもいます。
ここ近年メインに手がけているシンポジウム開催プロジェクトについての業務がほとんどで、今日もシンポジウムの出欠メールを整理、返信します。
シンポジウム開催の担当者とともに、ミーティングに必要な資料を確認します。
その後シンポジウムに参加する研究員を交えてのミーティング。
シンポジウムのテーマや流れ、構成などについて細部にわたって確認します。
シンポジウムに関連した会議用の資料が必要になったため、ミーティング後情報やデータを収集しながら作成していきます。
午後12時を少し回ったところで資料作成が終わりました。
午後
12時30分頃社内の食堂で昼食。
同僚とお互いのプロジェクトについて話し合ったり、仕事に関する相談に乗ってもらったりと、仕事の話で終わりました。
話をすることで気分をリフレッシュさせます。
担当している企業協議会の資料を作成します。
アーカイヴ資料を作成するため、過去の情報やデータをもとに、必要な情報を資料に反映させていきます。
気がついたら午後5時を回ってしまいました。
マネージャーに資料の内容をチェックしてもらい、数カ所を修正、OKが出たところで今日すべき業務を済ませたかどうか確認し、退社します。
夕方
何もなければまっすぐ家に帰りますが、プロジェクトについて話し合うために同僚と夕食をともにすることもあります。
夜
明日の業務について、何をすべきか考えたり、メールをチェックしたり過ごします。
シンポジウムのテーマに関連した本を読み、就寝。
シンクタンク系コンサルは、クライアントありきの仕事ですので、クライアントの状況に行動を合わせることが求められます。
定時に出社して社内で業務をすることもあれば、プレゼンのため、クライアントの会社を訪問することあります。
時間内に業務が終われば問題ありませんが、予想以上にサーチに時間がかかり、予定どおりに終わらないということも少なくありません。
資料作成など、担当者や上司に確認を取りながら行う業務もあり、その確認が夕方や夜になるという場合もあります。
時間内に仕事が終わり、定時に退社できる日は、自分の好きなことをしてリラックスしますが、仕事のスキルや知見を広げるため、本を読んだり勉強したりするというコンサルタントもいます。
【コンサル業界】シンクタンク系で身につくスキル
リサーチ業務の多いシンクタンク系コンサルの仕事をしていると、リサーチ力が必然的についてきます。
リサーチ力が上がると、調査結果をもとに課題を発見したり、問題の原因を突き止めたりするスキルも向上することが期待できます。
さらに発見した課題を解決するための対策を提案、それを資料にまとめてクライアントを前に説明するため、コミュニケーション能力やExcelやパワーポイントを使った資料作成スキルも自然に身についていくでしょう。
シンクタンク系コンサルは、特定の分野についてコンサルティング業務を展開しています。
言うまでもなく仕事を続けていると、その分野について知識を深められ、知見が広がります。
外資系のコンサルティングファームでシンクタンク系コンサルタントとして活動すると、語学力のほかに、交渉力や異国の人に対応する柔軟性も身についていくでしょう。
論理的思考能力
シンクタンク系コンサルに関わらず、コンサルタントは理論的に考えて物事を進めるため、思考は必然的に論理的になります。
とくにリサーチや研究活動に似た仕事が多いシンクタンク系コンサルは、その傾向が強くなると言えます。
クライアントが抱える問題や課題の解決策について、コンサルタントは論理的に提案することが求められるため、経験を重ねていくうちに論理的に課題解決策をクライアントに提案できるようになります。
論理的思考能力は、リサーチ力にも関連しています。
適切な調査や研究が行われていなければ、問題や課題の本質に迫ることはできず、論理的思考能力があっても、クライアントを納得させるだけの解決策を提案できません。
リサーチ力と論理的思考能力は連動していて、自分のリサーチ力を把握することは、論理的思考能力がどのくらいあるかの目安になります。
問題解決力
クライアントは自社で解決できない問題が発生するからこそ、コンサルティングファームに仕事を依頼します。
難題に取り組み、問題解決に導くという経験を積むことで、シンクタンク系コンサルタントは、問題解決能力を上げていきます。
問題解決能力を上げるには、問題の本質や原因を知るために実施するリサーチ力が必要となり、さらに収集した情報やデータを正確に分析する力も求められます。
問題解決能力を向上させていくと同時に、こうしたリサーチ力や分析力を育てていくことも可能です。
プレゼン力
問題や課題を発見し、それ解決するための戦略や対策は、資料にまとめてクライアントに説明する必要があります。
シンクタンク系コンサルタントは、必要に応じてプレゼンをするので、プレゼン力がつきます。
プレゼンするクライアントは経営層が多く、年齢的に言うとシニア層です。
クライアントを納得させるためにどう説明するか、考えながら資料を作成していきますが、相手にあわせて説得力のある説明ができるようになれば、プレゼン力のほかに交渉術やコミュニケーション能力のアップも期待できます。
【コンサル業界】シンクタンク系で役に立つ資格
シンクタンク系コンサルティングファームに就職する場合、必須の資格はあるのでしょうか。
結論から言いますと、必須資格はありません。
シンクタンク系コンサルティングは専門的知識やスキルを必要としますが、それは経験を積みながら得られるものばかりです。
シンクタンク系コンサルティングがカバーする業務はあらゆる業界にわたり、その能力を決定的に示す資格というのは、皆無に等しいと言えるでしょう。
ですが、シンクタンク系コンサルティングを志望するなら、取得しておくと有利になる資格もあります。
MBA(経営学修士)
MBAは経営学に関する学位の1つで、国内では大学院の修士課程などを修めることで取得できます。
MBAを取得していると、企業経営や法務に関して専門的知識を持っていると見なされますので、就職で有利になることもあります。
コンサルタント求人の中には、MBAを取得しているかどうか採用の基準に入れている企業もありますので、取得していると就職の幅が広がります。
資格は必須ではない!
コンサル業界で重要視されるのは、資格よりも経験で、どの分野に対して強みを持ち、実務経験を積んできたかというのが一番大事になります。
資格は確かにあった方が有利になりますが、結果や実績の方が優先順位として高くなります。
資格は時間に余裕ができたときや必然性を感じたときに、取得について検討すると良いでしょう。
【コンサル業界】シンクタンク系に向いている人
シンクタンク系コンサルタントには高度なリサーチ力や分析能力、収集した情報やデータを処理する情報処理能力などが求められます。
加えて担当する業界の事情や業務内容などについて知見があり、課題の解決策として論理的に提案・実施できるスキルも必要です。
また、クライアントありきの仕事になりますので、クライアントやプロジェクト関係者らとスムーズに連絡を取り合えるコミュニケーション能力や、プロジェクトをわかりやすく説明するプレゼン力、説得力などさまざまなスキルが必要です。
シンクタンク系コンサルタントに向いている人の主な特徴は「リサーチ力のある人」「分析力のある人」「コミュニケーション能力の高い人」です。
リサーチ力のある人
シンクタンク系コンサルティングの仕事は、リサーチがメインになるため、経験を重ねていくうちにリサーチ力は身についていきます。
ですが即戦力になることを考えたら、ある程度のリサーチ力は必要です。
調査したり、情報をふるい分けたりなど、根気のいる作業が好きでない人は、シンクタンク系コンサルタントには向いていないでしょう。
大量の情報を処理するのが好きで、どんなことも調べることで理解を深めるのが好きという人は、シンクタンク系コンサルタントに向いていると言えます。
分析力のある人
シンクタンク系コンサルタントは、リサーチによって収集した情報やデータを整理し、資料にまとめる業務も多くあります。
大きなプロジェクトになると、収集した情報は膨大な量となり、中には関連性のない情報もたくさん出てきます。
情報をふるい分け、必要なものを選択するには、高い分析能力が必要です。
物事の本質を追究したり、情報やデータを収集して原因を見つけたりするのが好きだという人は、シンクタンク系コンサルタントに向いています。
コミュニケーション能力が高い人
シンクタンク系コンサルタントの仕事は、クライアントが問題や課題を解決するのをサポートすることです。
クライアントとビジネス上スムーズにやり取りするには、ビジネスマナーに加えて、コミュニケーション能力が必要です。
このコミュニケーション能力には、対応が良いと言うだけでなく、クライアントが望んでいる結果を素早く察知し、それを課題解決に盛り込んだりできる能力も含まれます。
シンクタンク系コンサルタント単独でプロジェクトに取り組むということはまずなく、プロジェクトには必ず複数の人間が関わります。
連絡をスムーズに取り合う、進捗状況について報告し合うなど、常にコミュニケーションを取る必要がありますが、こうした作業が苦手な人は、シンクタンク系コンサルタントには向いていません。
人と協力するのが好き、人が抱える悩みを解決したい、他人とコミュニケーションを取ることは嫌いというよりむしろ好きだという人は、シンクタンク系コンサルタント向きと言えます。
【コンサル業界】シンクタンク系の会社
日本には、複数のシンクタンク系コンサルティングファームがあります。
それぞれ会社の規模や歴史、強みとしている分野、業務内容などは異なりますが、シンクタンク系コンサルティングファームとして知名度のある企業について調べると、シンクタンク系コンサルティングファームとはどんな会社かが見えてきます。
ここでは日本を代表するシンクタンク系コンサルティングファーム3社についてご紹介します。
富士通総研
富士通総研は、富士通グループのシンクタンクで、総合的なコンサルティングを展開しています。
富士通グループが所有する独自の情報通信システムを武器に、シンクタンクとしての実績を伸ばし、富士通総研が手がける事業には一定の評価があります。
流行を敏感にキャッチし、ICTなど最新のIT技術を導入、研究開発に力を入れています。
コンサルティング事業では、各業界の動向を注意深く分析し、さまざまな分野の企業に対し、課題を発見、解決策の提言・実践に取り組んでいます。
政策提言では、経済動向や社会動向を考慮し、将来性を踏まえた視点で行っています。
富士通総研が展開しているシンクタンク系コンサルティングは、独自に開発したノウハウによるものが多く、この点で他のコンサルティングファームと一線を画します。
野村総合研究所
日本のシンクタンク系コンサルティングファームと言えば、名前が挙がるほどよく知られているのが、野村総合研究所です。
国内シンクタンクの草分け的存在で、官公庁や大手優良企業など、多くのクライアントを抱えています。
コンサルティング業務ではリサーチからSIまで幅広く展開、「Research-based Consulting」をコンセプトに、徹底したリサーチに定評があります。
これまで行政改革に伴う支援や提言、戦略の策定などに関わり、政治系シンクタンクとしても多くの実績を残しています。
民間系コンサルティングファームとしての地位も確立していて、その仕事ぶりは「外資系戦略ファームと並ぶ」と評されるほどです。
「コンサルティング」は、野村総合研究所が設置している4事業のうちの1つで、幅広い実績と経験、知識をもとに、経済からIT・不動産・物流・ヘルスケア・金融など、幅広い分野でコンサルティング業務を展開しています。
日本総合研究所
「新たな顧客価値の共創」を理念に、「インテグレーション」「シンクタンク」「コンサルティング」という3つの事業を展開するコンサルティングファームです。
シンクタンク事業では、「次世代の国づくり」を目指し、官公庁から企業まで、都市づくりや経営戦略、技術戦略などさまざまなテーマでの対策策定や課題提案などを行っています。
金融調査やマクロ経済調査など、経済・社会・金融に関連したリサーチを展開、国内のみならず、海外での現地調査にも強みを持ちます。
日本総合研究所は、きめ細やかなコンサルティングサービスを提供するため、案件に合わせて細く事業部を設定、およそ200名の社員が、コンサルティング事業に取り組んでいます。
明治大学院卒業後、就活メディア運営|自社メディア「就活市場」「Digmedia」「ベンチャー就活ナビ」などの運営を軸に、年間10万人の就活生の内定獲得をサポート