アパレル業界に就職したいと考えている人にとって、将来性について考えることは非常に重要です。
景気が悪く、ファッションにお金をかけられない人も少なくない現代において、アパレル業界の将来性はどのようなものになっているのでしょうか。
就活を成功させ、長く働くためにも、ぜひアパレル業界が今後どのように進んでいくのか一緒に確認してみましょう。
アパレル業界とは
まず、アパレル業界の概要についても理解しておきましょう。
アパレル業界とは、皆さんご存知の通り、衣料品をデザイン、製造、販売する業界のことです。
業界規模は8兆5,160円となっています。
売上高ランキング
続いて、売上高ランキングについても確認してみましょう。
順位 | 企業名(売上高) |
---|---|
1位 | ファーストリテイリング(2兆7665億円) |
2位 | しまむら(6264億円) |
3位 | アダストリア(2755億円) |
4位 | 良品計画(2225億円) |
5位 | ワールド(2023億円) |
6位 | 青山商事(1936億円) |
7位 | パルグループホールディングス(1925億円) |
8位 | オンワードホールディングス(1896億円) |
9位 | ワコールホールディングス(1872億円) |
ファーストリテイリングが圧倒的に2位以下に差をつけており、売上高は2兆7665億円となっています。
ファーストリテイリングと聞くと何のブランドか思い浮かばない人も多いかもしれませんが、ユニクロやGUなどのブランドを運営している企業です。
2位以下にはしまむらなど、比較的廉価な商品を提供している企業が上位を占めており、安く購入できる商品の多い企業が人気が高いと言えるでしょう。
アパレル業界の動向
続いて、アパレル業界の動向についても紹介します。
今後どのような動向があるのかについて理解しておけば、面接で業界理解について尋ねられた際にもスムーズに回答できるようになります。
市場が縮小傾向にある
アパレル業界は少子高齢化やファストファッションの普及、ECサイトの増加といった原因により、市場規模が年々縮小する傾向にあります。
特に若年層の消費が減少していることが大きな影響を与えており、購買力の高い層が減少することで、アパレル市場全体の需要が低下しています。
また、オンラインショッピングの普及により、消費者は様々なブランドの商品を手軽に比較できるようになり、より低価格で高品質な商品を求めるようになっていることも見逃せません。
このような変化により、従来の店舗販売を中心としたビジネスモデルからの転換が必要となり、ブランドや店舗も独自の付加価値を打ち出すことが求められています。
デジタル化の加速
アパレル業界では市場の縮小傾向の一方で、デジタル化の波が加速しています。
特に新型コロナウイルスの流行をきっかけに、ECサイトを中心としたデジタルチャネルが急速に拡大し、オンライン上での販売やサービス提供が増加しました。
さらに、AIを活用したパーソナライズ商品提案や、VR・AR技術を用いたバーチャル試着といった新たな顧客体験の提供も進化しています。
これにより、消費者は自宅にいながら試着や商品体験が可能となり、オンラインショッピングの利便性が向上しています。
環境問題への配慮
「SDGs」という単語を耳にしない日はないほど、環境問題への配慮が声高に叫ばれている昨今において、アパレル業界も環境問題への配慮が求められています。
オーガニックコットンやリサイクル素材の利用、生産過程での環境負荷低減などがトレンドの1つです。
ファッション業界は従来、環境負荷が高い産業とみなされてきましたが、消費者からのサステナビリティへの要望が増加する中で、企業は環境配慮型の素材や生産方式を導入し、ブランドイメージの向上に努めています。
また、サプライチェーンの透明性を確保し、倫理的な生産体制を唱える企業が増えているのも特徴です。
インバウンド需要の回復
新型コロナウイルスの流行によってインバウンド需要は大幅に低下していましたが、現在では外国人旅行客が増加し、インバウンド需要が回復しています。
観光客が非常に多いため、国内のアパレル店舗への訪問も増加し、特に観光地やショッピングエリアに位置する店舗で売り上げが回復しつつあります。
外国からの観光客は日本製品やブランドに対する興味が高いだけでなく、円安の影響もあり大量に商品を購入することが多いのです。
そのため、アパレル企業はインバウンド需要を取り込むために、外国語対応や免税サービスの充実、観光客向けのキャンペーンを展開しています。
アパレル業界の将来性
続いて、アパレル業界の将来性についても考えてみましょう。
将来性について考えるにあたっては、以下の3つの要素に着目することが大切です。
デジタル技術の革新
アパレル業界の成長において、デジタル技術の革新が鍵となっています。
特にEC市場の拡大はアパレル業界にとって非常に重要であり、消費者がオンラインで購入する際に製品を仮想的に体験できる仕組みが注目されています。
例えば、ライブコマースの導入により、リアルタイムで商品の紹介や着用イメージを提供し、消費者と直接コミュニケーションを図ることが可能です。
また、バーチャル試着技術の発展により、消費者が自宅にいながらも試着体験ができ、オンラインでの購買体験がより充実しています。
技術の活用により、アパレル業界ではオンラインでも顧客体験を高め、売上を向上させる新たな戦略が可能となっているのです。
環境問題への対応
近年、消費者の環境意識が高まっていることを受け、アパレル業界においても環境負荷の軽減が重要視されています。
リサイクル素材の活用や製造プロセスの見直しは、環境保護に貢献するだけでなく、ブランド価値を向上させる手段としても有効です。
オーガニック素材の利用や、リサイクル素材を取り入れることで、環境に優しい選択肢を提供することが重要視されています。
また、循環型経済を目指す動きが進んでおり、リユースやリサイクルのシステム構築、レンタルビジネスの展開が活発化しています。
これにより、廃棄物削減や資源の有効活用が進み、消費者に対して「持続可能」な選択肢を提供することで、企業イメージを向上させることが可能です。
SPAアパレル出店の拡大
アパレル業界におけるSPAの出店拡大は、業界の成長を支える大きな要素の1つです。
SPAは商品企画から生産管理、流通、販売までを一貫して行うビジネスモデルであり、これにより中間マージンを削減し、コスト効率を高めることが可能です。
従来のサプライチェーンにおいては複数の外部業者が関与していますが、SPAモデルではその数が減少し、迅速な市場投入と競争力を実現しています。
国内ではファーストリテイリングやワールドといった代表的なSPA企業が出店を拡大し、店舗戦略の多様化を図っています。
このような体制により、迅速なトレンド対応が可能となり、消費者に即した商品を提供できるのです。
アパレル業界の課題
続いて、アパレル業界の課題についても紹介します。
以下の3つの課題を乗り越えることができなければ、今後の企業としての発展は難しいため、以下の3つにしっかりと取り組んでいるかを検討した上で志望企業を絞り込みましょう。
在庫管理と廃棄問題
アパレル業界においては在庫管理と廃棄問題は環境と経済の両面で深刻な課題となっています。
ファッションのトレンドは短期間で変化するため、企業は需要を予測しづらく、過剰生産や在庫過多に陥りやすい状況になります。
これにより、多くの衣料品が廃棄処分され、環境負荷が増加するばかりでなく、企業に大きなコストの負担を招いてしまいます。
アパレル業界では在庫の削減や効率的な廃棄方法の考案が急務となっており、廃棄削減に向けた取り組みが注目されています。
例えば、デジタル技術を活用した需要予測やリアルタイムの在庫管理システムの導入によって、生産と供給の調整を図る動きが進んでいるのです。
また、サステナブルなブランドイメージを追求する企業では、リサイクルやアップサイクルの活用も重要視されています。
在庫管理を改善することで、企業はコスト削減と環境への貢献を両立させ、持続可能な運営体制を確立することが期待されています。
コスト上昇
コスト上昇も様々な要因により企業運営に圧迫を加えているものの1つです。
特に円安による原材料の輸入コストの増加や物流費の高騰、人件費の上昇は製品価格に影響を及ぼしています。
綿花や羊毛などの天然素材の価格上昇や合成繊維の原料である石油製品の値上がりなども原因として挙げられます。
また、原油価格の高騰に伴い運賃も増加し、最低賃金の引き上げによる製造や小売現場の人件費が上昇していることも原因の1つです。
これらのコスト上昇に対し、アパレル企業は生産効率の向上やECサイトの強化など運営コストを抑制するための工夫を進めています。
しかし、競争の激化が進む中でコスト削減に偏りすぎると品質やブランドの価値が損なわれるリスクがあるため、適切なバランスが求められます。
価格競争
アパレル業界では海外のファストファッションブランドの台頭による価格競争が課題となっています。
ZARAやH&Mといった海外大手の影響で、低価格を求める消費者ニーズが高まり、国内のアパレル企業も低価格競争に巻き込まれ、利益率の低下が顕著になっています。
しかし、コスト削減を追求する一方で品質やブランド価値が低下してしまうと、顧客からの信頼を失うリスクも高いです。
そこで、低価格と品質のバランスを保つことが急務となっています。
例えば、サプライチェーンの効率化や物流コストの削減、ECサイトを活用した販売チャネルの拡大によって収益性を確保させる取り組みが進んでいます。
企業はただコストを削減するだけでなく、ブランドの価値をキープしつつ効率的な運営体制を確立することで、価格競争の中でも消費者に選ばれようと日々工夫を凝らしています。
アパレル業界に求められる人材像
続いて、今後のアパレル業界に求められるであろう人材像についても紹介します。
これまでのアパレル業界で働くにあたって必要でなかった能力が求められることも多くなってきているため、しっかりと確認しておいてください。
ITスキルがある人材
デジタルマーケティングの重要性が増しているため、ITスキルを持つ人材の需要が非常に高まっています。
特にECサイトの運営やSNSを活用したマーケティングは、消費者の購買行動を左右する重要な要素の1つであり、デジタルツールの活用とデータ分析を駆使して顧客のニーズを的確に把握し、ターゲット層に最適な情報を届ける能力が求められています。
ITスキルがある人材はWebサイトの最適化やデータ解析を行い、消費者が求める商品を効率的に提供することでブランドの成長に貢献する役割を担えるでしょう。
さらに、デジタル広告やコンテンツ制作の知識を用い、データに基づいたマーケティング戦略を立案することでブランド価値を高めることも可能です。
アパレル企業にとって、消費者と直接つながるデジタル分野でのスキルを持つ人材は、今後ますます重要な存在となることでしょう。
多様性を理解する人材
現在のアパレル業界では、消費者の多様化が進み、性別や体型、人種など幅広いニーズに応えられる多様性を理解する人材が求められています。
「ボディポジティブ」や「ジェンダーレス」といった概念に対応するため、単に服を作り販売するだけでなく、すべての消費者が自分らしさを表現できる商品やサービスを提案する視点が重要です。
そのため、文化的背景や価値観の異なる顧客に寄り添い、多様な視点を提供できる柔軟な思考が求められます。
多様性に関する理解を持つ人は、消費者の感情に共鳴し、幅広い層にアピールできる戦略を立案できるだけでなく、SNSや広告において甚大な影響を及ぼす「炎上」を未然に防ぐこともできるため、今後のアパレル業界において非常に重要視される能力の1つであると言えるでしょう。
アパレル業界の業界研究で差をつけるために押さえるべき点
アパレル業界の業界研究をしていくうえではどのような点をおさえていくことが必要なのでしょうか。
もちろん、どの企業の売上が高い等も必要ですが、特にマーケティング的な視点で企業を見比べていくことで特徴を掴み志望動機作成やその後の活動に生かすことができるでしょう。
具体的には、下記のような観点を意識して業界研究を進めていきましょう。
価格帯、目指しているビジネスモデルはどんなモデルか
具体的には、
- 高い製品を少数に人に売っていくビジネスモデルなのか
- 安い製品を多くの人に売っていくモデルなのか
- 両方なのか
など、どのビジネスモデルに当てはまるかを押さえておきましょう。
なぜなら、上記のどれに該当するかで目指していくモデルは異なりますし、近年の環境変化の影響をどこまで考慮すれば良いのかも異なってくるためです。
たとえば、高い製品を少数の人に売っていくモデルであればブランドが大事になってくる可能性が高いと考えられるので、フリマアプリの台頭はそこまで影響が考えられないでしょう。
そう考える背景としては、店舗も含んだブランディング、接客なども価格が高い背景にはあるため、新品を買う人はこだわりをもった人がある程度いることが考えられるためです。
一方、安い製品を多くの人に売っていくモデルの場合は話が異なる可能性があります。
なぜなら、安ければ安い方がよいという低価格思考の消費者は一定数いると考えられるため「フリマアプリやオンラインのチャネルで安く服を買えればそちらに切り替える」という方がある程度現れるからです。
こちらの記事ではさらに詳しく解説しているので是非参考にしてください。
同じ価格帯で、目指している/提供しているファッションは何が違うか
アパレル業界では、顧客のペルソナを具体的に定義することで、自社の対象顧客を明確にしていることが考えられます。
ペルソナとは、特定の人物、仮想人物を決めることを通じてマーケティングをしやすくすることです。
たとえば、同価格帯の女性向けのアパレル企業でも、全く対象が違うことがありえます。
消費者として見ると、可愛い系統の服を扱う2店舗があった時にその2店舗は何が違うのでしょうか。
1社は「就職活動をはじめた少し大人な女性をイメージした可愛い系」かもしれませんし、もう1社は「進学したばかりの大学生をイメージした可愛い系」かもしれません。
女性を対象にしたアパレル企業は、女性向けのファッション誌が大量にあることと同様にそれだけ細かなニーズに対応するために細分化されていることが多いのです。
そのため
- 同じ価格帯の企業はどこで、どんなモデルを目指しているのか
- 同じ価格帯で、目指している/提供しているファッションは何が違うのか
この2点を押さえることは業界研究をスムーズに進めるうえで必須でしょう。
アパレル業界の業界研究を通じた志望動機イメージ
アパレル業界の業界研究を通じた志望動機イメージは下記の通りです。
一例として下記の○○等の言葉を自分の言葉で補うことでそのまま使えるテンプレートを用意したのでご活用ください。
志望動機
私が○○社を志望した理由を話すにあたって、大きく2つの段階で話させてください。
まず1つは、なぜアパレル業界なのかです。
アパレル業界を志望する理由は✖✖だからです。
なぜなら、私はこれまでの経験か○○な業界で働くことを志望しているためです。
次に、2つ目になぜ御社なのかです。
御社を志望する理由は○○です。
なぜなら、御社はアパレル業界の中でも○○を目指していること、他社と違い○○なサービスを提供していると考えることからです。
それらが重要だと考える理由は、今後はアパレル業界は○○が差別要素になると考えているからです。
自分の経験から○○なサービスに携わりたいと考えたためです。
まとめ
アパレル業界は業界規模が5兆円以上の業界で市場規模は大きいですが、収益性は高くない業界です。
業界研究をしていくうえでは、
- 同じ価格帯の企業はどこで、どんなモデルを目指しているのか
- 同じ価格帯で、目指している/提供しているファッションは何が違うのか
の2点を押さえて、周囲と差別化を行い、アパレル業界の内定を獲得しましょう。
明治大学院卒業後、就活メディア運営|自社メディア「就活市場」「Digmedia」「ベンチャー就活ナビ」などの運営を軸に、年間10万人の就活生の内定獲得をサポート