物流業界の動向は?事業領域や主な職種・働くメリットデメリットも併せて紹介

物流業界の動向は?事業領域や主な職種・働くメリットデメリットも併せて紹介

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はじめに

「物流業界の今後が知りたい!」 「どんなスキルを持った人材が求められているの?」 「物流にはどんな仕事があるんだろう?」 市場の拡大が続き、ますますその重要性が見直されている物流業界ですが、将来性や働く上で必要なスキルなどについて興味がある人は多いでしょう。

近年では新型コロナウィルスによる自粛ムードの影響もあり、インターネットショッピングなどの配送需要の高まりから、物流に対する需要はさらに加速すると予想されています。

この記事では物流業界の基礎的な知識や今後の見通し、人材に求められるスキルなどを、働く上でのメリットデメリットとあわせて紹介します。物流業界へ就職するための基本がわかる内容になっているため、面接やエントリーシートの記入の際の参考になるでしょう。

人手不足が課題となっている物流業界ですが、今後はITテクノロジーを活用するなど、働き方も大きく変わりはじめています。社会全体のインフラを支える大切な仕事ですので、関心のある人は物流業界にぜひチャレンジしてみてください。

物流業界とは

商品(生産物)を、企業などの生産者からエンドユーザーである消費者に引き渡すまでの一連の流れを物流といいます。ただ商品を運搬するだけではなく、保管や梱包などの工程も物流に含まれます。

これら全般に関わるのが物流業界で、企業から企業への運搬や企業から消費者、消費者から消費者へと、さまざまな物の流れに携わっています。

物流業界のビジネスモデル

荷主から預った荷物を運んで運送料をもらうことが、物流業界におけるもっともシンプルなビジネスモデルです。ただ、実際の物流では職能ごとに多様な業種が関わってくるので、それらを分けて考えた方がビジネスモデルを理解しやすいでしょう。

物流業界の業務内容は輸送・保管・荷役・包装・流通加工・情報管理の6つです。

輸送はトラックや列車などの各種輸送機器で運ぶことを指しますが、センターなどの物流拠点まで運ぶことを狭義の輸送、センターから消費者や企業といった目的地まで運ぶことを配送といいます。

保管は預った荷物を出荷時期まで倉庫で保管する業務、荷役は各種輸送機器への積み込みと積み下ろしをする業務、包装は梱包材で荷物を包む業務、流通加工はラベル貼りや値札付けなどの加工業務を指します。

物流に関する情報の記録や管理を行う業務が情報管理です。

物流業界の事業領域

物流は国内に限ったことではなく海外との取引も含まれるので、業界の事業領域は陸・海・空の3つに分けて考える必要があります。中でも陸に関しては、トラックなどを利用する陸運と貨物列車などの鉄道、荷物の管理を行う倉庫に分かれます。

空運は飛行機を使った航空輸送、海運は主に船舶を使った海上輸送を指します。

陸運

トラックなどを利用し、陸路で輸送するのが陸運です。トラック運送業と宅配便業が中心で、扱う荷物の幅広さが特徴です。

ネット通販大手のAmazonの商品が主に陸運によって配送されていることなどから考えると、今後も物流業界の中心的な存在といえるでしょう。

海運

四方を海に囲まれた日本は、海外からの輸入品の多くが船舶によって運ばれてきます。

スーパーに並ぶ輸入食品や家具、家電、雑貨などはもちろん、石油や石炭といった資源のほとんどは海運を利用して日本にやってきます。

他の各種輸送機器にくらべ、重量と距離で換算した輸送コストが安いので、現在でも海外との輸出入において主力となっています。

空運

航空機による輸送が空運です。重量のある荷物や大量の輸送には向きませんが、早く運べるので軽量なものや付加価値の高いものを輸送するのに有効です。

短い時間で運べるというのは大きなメリットですが、料金が高くなってしまうと海運に替えられることもあるので、景気に左右されやすい輸送方法といえます。

鉄道

主に貨物列車を使った輸送が鉄道です。輸送効率が高いこと、線路上を移動しているので渋滞のリスクがないことが特徴ですが、貨物ターミナルまでのコンテナ輸送が中心なので、配送の目的地までダイレクトに荷物を運ぶのは不向きです。

このため全盛期にくらべ需要が減少していますが、輸送による環境負荷を軽減するためのモーダルシフトの視点から、CO₂排出量の少ない鉄道輸送に再び注目が集まっています。

倉庫

荷主から預った商品を、品質維持を含めて管理するのが倉庫です。検品や入庫、保管、流通加工、ピッキング、仕分け、出庫など業務内容は多岐に渡ります。

必要な時期に必要な量の商品を出庫するため正確な管理体制が整備され、ITを活用した作業のオートメーション化も進みつつあります。

また、ネット通販の需要の拡大などにともない物流量も増加しており、倉庫への需要は年々高まっているといえます。

物流業界の主な職種

ここまで説明してきた通り、物流は段階ごとにさまざまな工程が存在するため、そこに関わってくる職種もたくさんあります。

物流の受発注に関わる営業職や実際に物を運ぶドライバー、倉庫での入出荷などの管理業務、ITを活用した情報管理業務、専門的な知識が必要とされる物流コンサルタントなどが主な職種です。

ここではそれぞれの職種について説明しているので、自分にあうものがあるか参考にしてみてください。

ドライバー

受注した荷物を消費者に届ける職種で、物流の中で核となる業務を担当します。

陸・海・空のどの業種にも必要な業務ですが、陸運におけるトラックドライバーを指すことが多いです。センターから消費者への配送では自転車や台車など、小回りの利く輸送機器を使うケースも増えてきました。

ECサイトなどの利用が増えたこともあり、ドライバーの人手不足が深刻化しています。

物流営業

物流業界における営業職で、法人を相手に自社の物流サービスを販売する職種です。物流を外部委託したいクライアントから要望をヒアリングし、プレゼン資料や見積書の作成、管理倉庫の調整など、契約に至るまでの各種交渉を担当します。

クライアントの要望に沿った最適なプランを提案するため、自社の物流サービスを熟知することはもちろん、パソコンのスキルやコミュニケーション能力も評価のポイントです。

倉庫管理

倉庫や配送センターで、検品や保管、流通加工、ピッキング、仕分け、出庫準備などを行う職種です。業務内容が多岐に渡るため部署ごとに作業することが多く、作業する内容によって必要なスキルは異なります。

物流を効率的に行うため、作業の指示や配車の手配を合理化し、輸送にかかる費用を定期的に見直すのも倉庫管理の業務の1つです。

物流コンサルタント

物流を専門的に扱うコンサルタントを、物流コンサルタントと呼びます。物流の知識と経験が必要で、自身のノウハウを活かしてクライアントが抱える問題点を見つけ、対応策を提案・実行する職種です。

クライアントの要望は業務効率の最適化やコストダウンのケースが多いため、物量や各種費用を数字として可視化させ、具体的な改善案を提示しなければなりません。

物流で扱う荷物はさまざまであるため、たとえばアパレル専門や家電専門など、それぞれのジャンルに特化した物流コンサルタントが存在します。

情報システム

物流を分析し、管理システムの構築を行う職種です。システムの設計や開発、保守など情報システム全般を管理するケースが多く、IT関連のスキルが必須になります。

情報システムを活用することによって、倉庫・配送・運行などの管理業務が効率化します。宅配便で荷物の配送状況が可視化できるようになったのは、情報システムの活用の好例といえるでしょう。

物流業界の課題と同行

通販事業の加速度的な人気の高まりは、物流業界のマーケット拡大をもたらしました。近年は新型コロナウィルスの影響で、個人宅への配送サービス需要がさらに大きくなっています。

当然、市場規模は拡大傾向にあり、将来性のある業界であることは間違いありませんが、一方で人手不足という慢性的な課題を抱えていることもよく知られています。

物流は経済を支える重要なインフラの1つなので、この問題を解決するため、企業はいくつかの取り組みをはじめています。

ここでは物流業界が抱える課題と、それに対する企業の取り組みを紹介します。

人手不足の深刻化

物流業界の人手不足は今にはじまったことではありませんが、前述したように通販利用の増加などから、この課題は深刻化しているといえます。

バックグラウンドとしては日本の少子高齢化という社会問題があげられます。就業人口の減少にともない、ドライバーなどの物流の担い手が少なくなりました。しかし、少子高齢化の日本であっても、就業希望者が後を絶たない人気の職種はいくらでもあります。

市場規模が拡大傾向にある物流業界で就業希望者が増えない理由は、賃金や労働環境に不満を感じる人が多いからです。

参入企業の増加による過当競争で運賃の相場が下がったことも、トラックドライバーの賃金が下がった原因の1つです。また、力仕事の負担や比較的長いといわれる労働時間などの問題が、他の業界に労働力を奪われるという結果を招きました。

労働環境や待遇の改善が急がれている

物流業界では2024年4月1日より、ドライバーの働き方に関する遵守事項の法適用がはじまります。

働き方改革関連法の適用が根拠となっており、時間外労働の上限規制や割増賃金の引き上げ、フレックスタイム制の普及、同一労働同一賃金、有給休暇取得の義務化などが実施される見通しです。

安定して働くことができ、また多様な働き方にも柔軟に対応している内容ですが、一方で勤務時間内での労働密度が著しく上がってしまったり、賃金の低下を招いてしまうという懸念があったりと、「2024年問題」という呼び名で問題視する向きもあります。

いずれにしろ、政府主導による労働環境の改善策が、人手不足の解消や生産性を上げる上で何らかの変革点となることは間違いないでしょう。

出典:自動車運送事業の働き方改革について|国土交通省

ITテクノロジーの活用を模索している

物流業界の労働環境を改善するために注目されているのが、ITテクノロジーの活用です。物流テックという呼び方をすることもあります。

ITやAI技術を使い物流をオートメーション化するのが目的で、大幅な作業効率の上昇が期待できます。

倉庫管理においては、AIによる需要予測をもとに在庫と発送の管理の最適化が可能です。また、ドローンによる配送も人手不足の解消に大いに役立つでしょう。ドローン配送は日本ではまだ実現していないので、今後の法整備に期待したいところです。

3PLを活用している

3PL(サードパーティー・ロジスティクス)は、物流業務を第三者企業(サードパーティー)にアウトソーシングする物流システムです。物流全体の最適化を目的とし、第三者企業は主に物流業者が担当します。

3PLにおけるファーストパーティーはメーカーなどの企業で、セカンドパーティーは問屋や小売業です。

サードパーティーである物流業者が生産から販売にいたるまでの物流をトータルで管理する(ロジスティクス)ことで、自社物流にくらべコストの低減や配送品質の向上が見込めます。

3PLにはサードパーティーが自社で倉庫やトラック、情報システムを保有しているアセット型と、それらは保有していないもののノウハウなどの知識を提供するノンアセット型があります。

海外で新たに事業展開をする企業の増加

荷主企業のグローバル化に対応して、物流企業も国外で新たに物流事業を展開するケースが増えています。海外進出する企業にとって、日本国内と同等の物流サービスを国外で利用できることは大きなメリットです。

時間に正確で誤配が少ない日本の物流サービスは、世界でも高く評価されています。こうした強みもあり、アジアや中南米など製造業者が積極的に進出している地域では、物流企業も活発に拠点展開しています。

国外においても物流のアウトソーシング化は顕著であり、3PLの需要は今後さらに高まると予想されています。

物流企業で必要な能力は?

物流企業と一口にいっても、職種によって業務内容はさまざまです。そのため、どの職種で働きたいかによって求められる能力もおのずと変わっていきます。

物流企業も一般の企業と同様に、管理部門と現業部門に分かれています。管理部門は総務・人事・経理・財務などを担当し、現業部門は利益を追求するための直接的な営業行為を担当する部署を指します。

ここでは、現業部門を担当する部署に配属された際に必要となる能力を中心に説明していきます。

PCスキル

事務系の職種を希望している場合はもちろん、現業部門の職種でもWordやExcelなどの基礎的なPCスキルは必須です。

また、3PLの需要が急速に高まっており、システムの管理レベルも高度化しています。3PL関連業務に就きたいのであれば、ExcelならVLOOKUP関数やIF関数などが使えた方が有利です。

物流営業を希望する場合は、プレゼン資料を作成するためExcelやWordだけではなく、PowerPointも使える方が良いでしょう。

冷静に対応する力

物流の職種に限らず、業務において冷静さを保つことは社会人としての基本的な素養です。ただ、各種輸送機器を手配しトラブルなく輸送が完遂するよう調整する運行管理の職種には、何か想定外のことが起こったときに的確かつ冷静に対応する力が特に必要になります。

英語力

物流のクライアントは国内だけではなく、輸出入に関する業務も近年は増えてきました。そういった国際物流を扱う物流企業では、英語が使えることは高く評価されるでしょう。

荷主と輸送業者をつなぎ、貿易に関する事務や輸送機器の手配などをフォローするフォワーディングという業務など、英語を含めた高い語学力が必須の職種もあります。

体力

倉庫で荷物の積み込みや積み下ろしを行う荷役や運転が長時間に及ぶケースがあるドライバーなど、物流に関する業務には体力が必要なものも多いです。

倉庫内の作業で考えても、重量のある荷物の上げ下げや移動などは体力がない人には続けられないでしょう。自分の適性にあわせて、継続可能な職種を選ぶことも重要です。

マネジメント能力

さまざまな業種の人が関わってくる物流業界では、日程の調整や各種輸送機器の手配など、仕事の流れを把握しながら調整するマネジメント能力が求められます。

また、クライアントの対応から商品・輸送管理の調整まで一括して対応する物流マネジメントという職種では、全体の最適化やコストダウンなどを達成するため、より高いマネジメント能力が必要です。

コミュニケーション能力

物流業界においても、さまざまなフェーズでコミュニケーション能力が必要となります。荷主からの受注対応やドライバーへの指示や連絡、倉庫の作業スタッフとの連携など、年齢や立場などの異なるたくさんの人とコミュニケーションを取らなければなりません。

特に物流サービスを提供する側とサービスを受ける側の担当者レベルでのコミュニケーションは、効率的な流れを作る上で非常に重要です。ミスコミュニケーションによるトラブルで無駄なコストが発生した場合、それはそのまま会社の損益になります。

物流業界に内定するためのポイント

物流業界は人手不足が課題ということは前述した通りですが、就職志願者が少ないということではなく、それを上回ってマーケットが拡大していることが原因の1つです。希望の職種で内定をもらうためには事前の準備と正しいスケジューリングが必要となります。

ここでは、絶対におさえておきたい2つのポイントを説明します。

会社を選んだ理由の明確化

物流企業に就職することを希望するにあたり、次の2つを明確化しなければなりません。

1つめは「なぜ物流業界で働きたいのか」です。物流にはさまざまな業務があるので、その中でどういう働き方をしたいのかを具体的に説明する必要があります。物流業界でなければならない理由を志望動機の中にしっかり織り込みましょう。

もう1つは数ある物流企業の中から「なぜその会社を選んだのか」です。事前準備として就職を希望する会社の業務内容や社風、力を入れている分野などを調べておかなければなりません。それらの特徴を踏まえ、だからこの会社に入りたいという構成で志望動機を組み立てましょう。

就活スケジュールの把握

経団連に所属している物流企業は、経団連の定めた日程に沿って採用活動を行います。

経団連は2021年春入社以降の学生に対し、既存の就活ルールを廃止し、政府主導の新ルールに移行すると決めました。しかし、新型コロナウィルスの影響などもあり、2021・2022年春入社組に関しては既存ルールが適用されています。

急激なルール変更は学生の混乱を招くという考えから、2023年春入社組も既存ルールを踏襲する見通しです。広報活動の開始は卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降、採用選考活動開始は卒業・修了年度の6月1日以降、正式な内定日は卒業・修了年度の10月1日以降と定められました。

企業側は今後、選考時期を前に持ってくるのではなく、通年採用やインターンシップの活用など、さまざまなやり方で学生の早期確保に動くと予想されています。各企業の採用情報を随時確認しておくことが重要です。

出典:2023(令和5)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請について|一般社団法人 日本経済団体連合会 

物流業界で働くメリットは?

仕事をする上で大切なのは、この職種で働くことでどういったものが得られるかということです。メリットを感じずに仕事をしても意欲は上がらず、就労が長く続かないという事態を招いてしまうでしょう。

ここでは、物流業界で働くことのメリットを2つ説明します。

今後の需要が見込める

物流のマーケットは拡大し続けています。運ぶ荷物があれば仕事があるので、今後も荷物量の増加が予想されている物流業界は、日本でも指折りの成長産業といえます。

物流業界の成長にはEC市場の活性化が大きく関わっています。中でも企業間取引のBtoBや企業が商品やサービスを消費者に直接提供するBtoCは増加の一途をたどっており、物流業界の将来性を担保する存在といえるでしょう。

日本をインフラで支えることができる

新型コロナウィルスの蔓延により、日本を含め世界中の人々の生活が一変しました。

外出自粛中は、生活を営む上で必要不可欠な仕事を担う労働者がエッセンシャルワーカーと呼ばれ、注目を集めたことも記憶に新しいでしょう。物流の最前線で働くトラックドライバーや配送員もエッセンシャルワーカーとして敬意を払われました。

この時期、普段は何気なく利用している物流サービスが、実は日本経済の根幹を支える大切なインフラであると実感した人も多いのではないでしょうか。

物流がなければ社会は動きません。物流の仕事を通して日本をインフラで支えられるというのも、仕事を続ける上での大きなモチベーションとなりえます。

物流業界で働くデメリットは?

どんな仕事を選んでも「これはちょっと…」と思ってしまうデメリットはあるものです。物流は職種によっては力仕事も多いため、体力的にハードなイメージを持っている人も多いでしょう。それをマイナスに捉えればデメリットの1つといえます。

物流業界にはたくさんのメリットがありますが、他の業種と同様にデメリットも存在します。それらを事前に知っておくために、ここでは物流業界で働きたいと思っている人が気をつけなければならないデメリットを2つ紹介します。

計画通りにすすまないことが多い

荷物が荷主から消費者まで届く流れには、たくさんの工程があります。その工程のどこかでトラブルが生じ、予定の変更を強いられることは少なくありません。

輸送・配送なら渋滞や自然災害、事故などのトラブルが考えられます。また、物品の不足や商品の汚損など、商品管理上のトラブルも多々あるでしょう。1つの配達スケジュールの遅延により、それ以降のスケジュールに影響が出る場合もあります。

仕事が計画通りに進まないのは誰にとってもストレスになります。それが自然災害など予測の難しい事象が原因の場合、そもそも問題解決の方法がないのもやっかいなことです。

時間やノルマが厳しい

会社によっては、ノルマや作業目標が厳しく設定されているケースがあります。

物流業界はどの工程においても、消費者やクライアント企業にいち早く荷物を届けることが優先されます。荷物を汚損させることもできないため、スピーディーかつ慎重に扱う必要もあります。12月や1月のような繁忙期は作業量が増加し、ストレスを感じる人も多いでしょう。

作業時間やノルマの設定は作業をきちんと完遂させるために必要なものですが、それをプレッシャーに感じるタイプの人にはきつい職場になります。

物流業界の大手企業10社

物流企業への就職を考えている人は、まず大手から企業研究をはじめてみるのが良いでしょう。大手企業は物流業界の中心であり、そこがどういう業務を手がけ、どういう方向に力を注いでいるかを知ることは、業界を理解する上での大きな助けとなります。

また、物流業界のメインストリームを知ることは、自身の就活にもプラスに働きます。大手企業が求めている人材の特徴やスキルは、大手ではない企業への就職希望者にも当てはまる部分が多いでしょう。

1:日本通運株式会社

物流業界を代表する企業で、トラックや鉄道を使った陸運から船舶を使った海運、航空輸送による空運までを網羅しています。

国内における流通施設は約2,300拠点、2020年の連結売上高は2兆792億円、海外拠点は47ヶ国733拠点に及び、海外での従業員数は21,520人に上ります。

また、関連する複数の領域でも事業展開しており、国内外で存在感を放つグローバルカンパニーといえるでしょう。

出典:日本通運、早わかり|日本通運株式会社

2:日本郵政株式会社

日本郵政株式会社は日本郵政・日本郵便・ゆうちょ銀行・かんぽ生命の4つの事業から成り、日本郵政を持ち株会社に、子会社の日本郵便が物流事業、ゆうちょ銀行が銀行事業、かんぽ生命が保険事業を扱う企業グループです。

物流事業を展開する日本郵便は日本最古の物流企業という信頼感もあり、メール便では他を寄せつけないシェアを誇ります。2021年の売上高は全体で2兆684億円でした。

近年は多様化する需要に対応すべく、物流ソリューションセンターを中心に3PLサービスの提供をはじめるなど、新たな取り組みにも積極的な姿勢を見せています。

出典:2021年3月期 決算の概要|日本郵政株式会社

3:ヤマトホールディングス株式会社

クロネコヤマトの宅急便で知られるヤマトホールディング株式会社は、業界3位の売上高を誇る大手企業です。宅急便以外でも複数の事業を展開しており、デリバリーやフィナンシャル事業など、事業領域を広げながら活躍の場を増やしています。

また2022年8月から国内ではじめて国産小型商用BEVトラックを導入するなど、カーボンニュートラル社会の実現を目指した取り組みも評価されています。

4:日本郵船株式会社

日本郵船株式会社は、定期船事業・航空運送事業・物流事業からなるライナー&ロジスティクス事業と、自動車輸送部門やエネルギー事業部門などからなる不定期専用船事業、不動産業などのその他事業と多岐に渡ります。

多様化する社会や事業環境に対応し持続的な成長を達成するため、新中期経営計画Staying Ahead 2022 with Digitalization and Greenを策定するなど、戦略的な経営スタイルにも注目が集まっています。

5:SGホールディングス株式会社

佐川急便の呼び名で知られるSGホールディング株式会社は、2022年の売上高が前年からすると約21.1%増加しています。コロナ禍においてBtoCサービスに力を入れた同社の戦略が功を奏した結果といえるでしょう。

また、ロジスティクス事業の売上増も顕著でした。混迷する事業環境の中でも安定してコンテナスペースを確保し、3PL関連の新規顧客の獲得につながった形です。

6:株式会社 商船三井

創業から130年以上の歴史を持つ株式会社 商船三井です。

老舗の物流企業でありながら、将来に向けての取り組みも盛んです。台湾大彰化洋上風力発電所向けのSOV事業への参画は、アジア初でした。

またトルコで行われた事業ですが、洋上でLNGを貯蔵・気化して陸上パイプラインへ送り出すFSRUプロジェクトに日本の物流企業として初めて参画しました。他にも自律運行船の実証実験を成功させるなど、新たな事業領域の開発に積極的です。

7:株式会社 日立物流

1980年代から3PLをはじめるなど進取の精神に富んだ経営が特徴的な株式会社 日立物流です。

中でもフォワーディング事業や自動車関連の物量が増えたことにより、国際物流の売上高は前年比約45%増と好調です。

8:川崎汽船株式会社

日本郵船、商船三井とならび海運大手三社に数えられる川崎汽船株式会社は、非財閥系ということもあり、グループ企業からのバックアップのないまま創業しました。

後ろ盾がない代わりに縛りもないので、日本初となる自動車船やLNG船の導入など、先進的で独自な取り組みでも知られています。

2022年の売上高は、経常利益・純利益も前年にくらべ大幅に向上しています。

9:株式会社 近鉄エクスプレス

近鉄エクスプレスの2022年の売上高は9804億4100万円で前年比61.0%増、営業利益は624億7500万円で前年比82.8%増、経常利益は647億3300万円で87.5%増と、いずれも前年から大場に数字を伸ばしています。

国際物流に強く、世界46ヶ国、312都市に717拠点を持つグローバル総合物流企業です。

出典:2022年3月期 決算説明資料 (2021年4月1日~2022年3月31日)2022年5月12日|株式会社 近鉄エクスプレス

10:セイノーホールディングス株式会社

セイノーホールディングス株式会社は国内に250拠点を持ち、貨物自動車運送事業や貨物利用運送事業が中心の物流企業です。幹線輸送ビジネスの先駆者としても知られ、BtoBサービスを牽引する存在といえるでしょう。2022年の売上高は607億657万円でした。

出典:2022年3月期 決算説明会資料 2022年 5月 20日|セイノーホールディングス株式会社

物流業界について理解を深めよう

物流という言葉には、トラックドライバーや配送センターで力仕事をする作業スタッフのイメージがつきまといます。それらはもちろん物流業界の一面を表してはいるのですが、そのイメージが強すぎて他にも重要な要素があることを見失わせてしまいがちです。

物流とは文字通り物の流れですから、荷主から消費者に物が移動するまでのすべての工程に関わってきます。さまざまな職種の人が関わり、多くの作業を経て行われる一連の流れには、合理化されていない部分があっても不思議ではありません。

現代の物流業界の特徴は、多様化する消費者やクライアント企業のニーズに合わせ、よりきめ細かい対応が必要になっていることです。それには、生産者である荷主と物流企業がきちんと情報を共有し、戦略的に物流を捉える必要があります。

その基本となるのがロジスティクスという物流の概念です。戦時の物資調達に端を発した考え方で、戦地に必要な物を素早く届けるための知識の積み重ねがもとになっています。

さまざまな工程を含む物の流れを一括して管理することで最適化し、必要な物を必要な相手に、必要な数量を、必要な時期に届けるということが現代の物流業界に求められています。

物流業界は今後も需要の拡大が予想されています。社会を支えるインフラとして非常に重要度の高い業界であるため、力仕事の一面だけではなく、その職種の多様さやITテクノロジーの活用による輸送技術の進化など、物流の未来にも目を向けてみましょう。

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