はじめに
就活の面接で研究内容について説明を求められることはよくあることです。
しかし、企業側の意図は、決して就活生の研究の成果に期待しているわけではではありません。
あくまで、就活生の社会人としての素質を見ることが一番の目的です。
ですから、説明内容を事前に準備して練習する際に、注意しておきたいいくつかのポイントがあります。
ここでは、内定を勝ち取るためのテクニックを盛り込んだ研究内容発表の仕方について紹介します。
面接で聞かれる研究とは
就職活動の面接で問われる研究内容は、主に大学での学びの成果を示すものです。
これには、文系学生が多く所属するゼミでの研究と、理系学生が中心となる研究室での研究活動が含まれます。
面接官は、学生がどのようなテーマに興味を持ち、どのように課題に取り組んだのかを知ろうとしています。
特に理系の研究は、専門性や論理的思考力が問われるため、その内容を分かりやすく伝えるスキルが評価の対象となります。
アピールすべきポイントを明確にしておくことが、面接準備の第一歩と言えるでしょう。
ゼミ研究
文系の学生が主に経験するゼミ研究は、特定の学問分野について、文献調査やフィールドワーク、ディスカッションを通じて探求する活動です。
面接官は、ゼミ研究に関する質問を通して、学生の知的好奇心や主体性、そしてチームで議論を進めるための協調性やコミュニケーション能力を見ています。
例えば、なぜそのテーマを選んだのかという問いからは、興味関心の方向性や問題意識の深さが分かります。
また、研究を進める上で他のメンバーとどのように協力したか、意見が対立した際にどう乗り越えたかといったエピソードは、入社後のチームでの働き方をイメージさせるための重要な判断材料となります。
成果そのものよりも、テーマに対する取り組み方やプロセスで得た学びをアピールすることが重要です。
理系の研究
理系学生の研究は、研究室に所属し、指導教官のもとで専門的なテーマについて実験や分析、考察を重ねる活動を指します。
面接官は、この理系の研究に関する質問から、学生の専門知識の深さはもちろん、論理的思考力、課題解決能力、そして粘り強さといった、仕事を進める上で不可欠な素養を評価しようとしています。
仮説を立て、実験で検証し、結果を考察して次のアクションにつなげるという研究のプロセスは、まさにビジネスにおけるPDCAサイクルそのものです。
そのため、研究の成果だけでなく、どのような壁にぶつかり、それをどう工夫して乗り越えたのかという具体的なエピソードを語ることが、ポテンシャルをアピールする上で非常に効果的になります。
【研究内容を面接で】聞かれる理由
なぜ面接官は、繰り返し研究内容について質問するのでしょうか。
その理由は一つではありません。
単に研究テーマに興味があるだけでなく、学生の内面にある様々な能力や人柄を多角的に評価しようという意図があります。
例えば、難しい内容を分かりやすく説明できるかという点からは、学生のコミュニケーション能力を測っています。
また、研究への取り組み方からは、論理的思考力や課題解決能力、粘り強さなど、仕事で必要となる基本的なスキルを見極めようとしています。
この質問の裏にある意図を正しく理解することが、面接官に響く回答を作成するために重要なります。
研究の経験を知りたい
面接官は、学生が研究という一つのテーマに、どれだけの熱意と主体性を持って取り組んできたかを知りたいと考えています。
研究活動は、単に与えられた課題をこなすだけではありません。
自ら問いを立て、仮説を構築し、試行錯誤を繰り返しながら答えを探求していくプロセスです。
この一連の経験を通して、どのように課題と向き合い、困難を乗り越えてきたのか、またその粘り強さや探求心は、入社後に未知の業務や困難なプロジェクトに直面した際の働きぶりを予測させる重要な指標となります。
研究の成果の大小以上に、そのプロセスで学生がどのように考え、行動したのかという経験そのものに価値があるのです。
研究内容を知りたい
もちろん、面接官は研究内容そのものにも興味を持っています。
特に、企業の事業内容と関連性が高い研究テーマであれば、専門知識が即戦力として活かせる可能性があるため、関心はより高まります。
しかし、ここで重要なのは、面接官がその分野の専門家であるとは限らないという点です。
そのため、専門用語を多用した詳細すぎる説明は逆効果になりかねません。
面接官が知りたいのは、その研究が社会や業界にとってどのような意義を持つのか、どのような新規性や可能性があるのか、といった大枠の部分です。
研究が持つ価値や面白さを、専門外の人にも理解できるよう、かみ砕いて説明する能力が求められているのです。
コミュニケーション能力を問うため
研究内容の説明は、コミュニケーション能力を評価する絶好の機会と捉えられています。
特に理系の研究は専門性が高いため、その内容を専門知識のない相手に分かりやすく伝えるには、高度なコミュニケーションスキルが必要です。
相手の理解度を推し量りながら、言葉を選び、話の構成を工夫し、時には例え話を交えるといった能力は、社内外の様々な人と連携して仕事を進める上で不可欠です。
面接官は専門的な話を一方的にするのではなく、対話を通じて相手に理解してもらおうと努力する姿勢があるかを見ています。
研究内容という複雑なテーマを扱うからこそ、本質的なコミュニケーション能力が浮き彫りになるのです。
仕事にどう活かすか知りたい
面接官が最も知りたいことの一つに、研究活動を通じて得た知識やスキル、経験を、入社後にどのように活かしてくれるのかという点があります。
例えば、地道なデータ分析で培った情報処理能力、実験がうまくいかない時に原因を特定し解決策を探った課題解決能力、参考文献を読み解き新たな知見を得た学習能力など、研究で得られるスキルは多岐にわたります。
これらが、志望する企業のどの様な業務で役立つのかを、自身の言葉で具体的に結びつけて説明することが重要です。
研究経験と仕事との関連性を明確にアピールすることで、単なる学生ではなく、将来的に企業に貢献してくれるポテンシャルを秘めた人材として評価されるでしょう。
プレゼンテーション能力を問うため
研究内容の説明は、短い時間で要点をまとめて分かりやすく伝える、プレゼンテーションです。
学会発表などを経験した学生も多いかもしれませんが、面接の場では、対象者が専門家ではないという点が大きく異なります。
面接官は聞き手の知識レベルを想定し、話の構成や時間配分を適切にコントロールできるかを見ています。
まず結論から話し、次にその背景やプロセスを説明し、最後に学びや今後の展望を語るといった、論理的で分かりやすい構成で話せるかどうかが評価のポイントです。
このプレゼンテーション能力は、顧客への提案や社内会議での報告など、あらゆるビジネスシーンで求められる重要なスキルなのです。
論理的思考力を問うため
研究活動の根幹をなすのは論理的思考力です。
ある事象に対して「なぜそうなるのか」という問いを立て、仮説を設定し、それを証明するために実験計画を組み、得られた結果を客観的に分析して結論を導き出す。
この一連のプロセス全体が、論理的思考力に基づいています。
面接官は、研究内容の説明の中から、その思考のプロセスを読み取ろうとしています。
研究の目的は明確か、目的達成までのアプローチは合理的か、結果に対する考察は筋が通っているか、といった点に注目しています。
話があちこちに飛んだり、結論と根拠が結びついていなかったりすると、論理的思考力が不足していると判断されかねません。
【研究内容を面接で】作成の準備
面接で研究内容を魅力的に語るためには、事前の準備が何よりも重要です。
行き当たりばったりで話そうとすると、要点がまとまらず、時間内に伝えたいことを伝えきれずに終わってしまいます。
まずは、自分の研究を客観的に見つめ直し、アピールすべきポイントを整理することから始めましょう。
具体的には、研究を通して身についたスキルを自己分析し、それを裏付ける具体的なエピソードを洗い出します。
さらに、そのスキルが企業の業務とどう結びつくのかを明確にすることが、説得力のある説明につながります。
ここでは、効果的な回答を作成するための具体的な準備ステップを紹介します。
自己分析をする
まずは、研究活動を通して自分がどのように成長できたかを深く掘り下げてみましょう。
単に「〇〇という研究をしました」で終わらせず、その経験から何を得たのかを言語化することが重要です。
例えば、「膨大な量の先行研究を読み込み、必要な情報を効率的に収集・整理する能力が身についた」「仮説通りに進まない実験に対し、粘り強く条件を変えながら最適解を探し出す忍耐力が養われた」など、具体的なスキルや能力に落とし込んでみましょう。
この自己分析が、オリジナルの回答を作成するための土台となり、自己PRの説得力を格段に高めます。
研究の具体例
自己分析で洗い出したスキルや能力を、より説得力のあるものにするためには、それを裏付ける具体的なエピソードが不可欠です。
例えば、「課題解決能力」をアピールしたいのであれば、研究中に直面した最も大きな壁は何だったのか、その原因をどのように分析したのか、そして、どのような工夫や試行錯誤の末にその壁を乗り越えたのか、という一連のストーリーを語れるように準備しましょう。
成功体験だけでなく、失敗から学んだ経験も人間的な深みや成長を示す貴重なエピソードになります。
数字やデータを用いて具体的に説明できるとより話の信憑性がさらに高まります。
これらの具体例は、回答にリアリティと個性を与える重要な要素です。
スキルとの関連付ける
自己分析で明らかになったスキルと、研究の具体例を準備したら、次はそのスキルが応募先企業でどのように活かせるのかを関連付けます。
企業のウェブサイトや採用ページ、OB/OG訪問などを通して、事業内容や仕事内容、求める人物像を徹底的にリサーチしましょう。
例えば、研究で培った「精密なデータ分析能力」は、品質管理部門での不良品発生原因の特定や、マーケティング部門での顧客データ分析に活かせるかもしれません。
また、「粘り強く試行錯誤を繰り返す力」は、新製品開発における困難な課題を乗り越える上で役立つでしょう。
このように、自分のスキルと企業のニーズを結びつけることで、企業にとって価値のある人材であることを具体的に示すことができます。
プレゼン資料を用意する
もし可能であれば、研究内容をまとめたA4一枚程度の資料(ポートフォリオ)を用意していくことを強くお勧めします。
特に、研究内容が複雑で口頭説明だけでは伝わりにくい場合、図やグラフ、写真などを用いた資料は、面接官の理解を助ける強力なツールになります。
資料があることで話の構成に沿って落ち着いて説明しやすくなるというメリットもあります。
ただし、長すぎる資料や専門的すぎる内容は逆効果です。
要点を簡潔に、視覚的に分かりやすくまとめることを心がけましょう。
面接官に「よろしければ、研究内容をまとめた資料をご覧いただけますでしょうか」と一言断りを入れてから提示するのがマナーです。
このような準備は、熱意やプレゼンテーション能力の高さを示すことにも繋がります。
逆質問を用意しておく
面接の最後には、ほぼ必ず「何か質問はありますか」という逆質問の時間が設けられます。
この機会を有効活用し、学生の研究内容と関連付けた質問を用意しておきましょう。
これは、企業に対して深い興味を持っていること、そして自分の専門性を活かして貢献したいという意欲を示す絶好のチャンスです。
例えば、「私の研究は〇〇という分野ですが、貴社の△△という技術開発において、私の持つ知見やスキルはどのように貢献できる可能性があるとお考えでしょうか」といった質問が考えられます。
このような質の高い逆質問は、他の就活生と差をつけ、印象を強く面接官の記憶に残す効果があります。
事前に企業研究をしっかり行い、的を射た質問を複数準備しておきましょう。
【研究内容を面接で】答える際のポイント
入念な準備を終えたら、いよいよ本番で話す際のポイントを押さえましょう。
どんなに良い内容を準備しても、伝え方が悪ければ魅力は半減してしまいます。
落ち着いて、自信を持って話すことが大前提ですが、それ以外にも意識すべき点がいくつかあります。
例えば、提出済みのエントリーシートとの一貫性を保つことや、聞き手の理解度に合わせて話すスピードを調整することなどです。
また、面接官からの深掘り質問を想定し、それに対する回答をあらかじめ準備しておくことで、より会話が弾み、評価はさらに高まるでしょう。
基本はESと同じ内容
面接での回答は、事前に提出したエントリーシートに記載した内容と一貫性を持たせることが基本です。
面接官は、手元の書類を見ながら質問をしています。
もし、ESと全く異なる内容を話してしまうと、「どちらが本当なのだろうか」「一貫性がない」といった不信感を与えかねません。
もちろん、ESに書ききれなかった詳細なエピソードや、その後の新たな気づきなどを補足して話すのは問題ありません。
むしろ、ESの内容をベースにしつつ、より具体的に、より深く掘り下げて説明することが求められています。
面接はESの内容を自分の言葉で証明する場であると捉え、記載した内容をもう一度よく読み込み、深掘りされても答えられるように準備しておきましょう。
研究内容の説明はゆっくり話す
面接本番、特に自分の専門分野である研究内容を話す場面では、緊張や「伝えたい」という気持ちが先行して、つい早口になってしまいがちです。
しかし、専門的な内容であるからこそ、意識してゆっくり、はっきりと話すことを心がけてください。
面接官は学生の研究分野の専門家ではありません。
普段、研究室で使っているスピードで話されると、内容を理解する前に話が終わってしまいます。
相手の表情を見ながら、理解度を確認し、時には「この部分は少し専門的になりますが」と前置きを入れるなどの配慮も有効です。
落ち着いて、間を恐れずに話す姿は、自信と誠実さの表れとして、面接官に好印象を与えるでしょう。
想定される質問の回答を準備
研究内容の説明が終わると、多くの場合、面接官からさらに深掘りする質問が投げかけられます。
「なぜその研究テーマを選んだのですか?」
「研究で一番大変だったことは何ですか?」
「その経験を弊社でどう活かせますか?」
といった質問は、頻出のものです。
これらの定番の質問に対しては、あらかじめ自分なりの回答を準備しておくことが不可欠です。
さらに一歩進んで、自分の研究内容に合わせて、「この部分について、もしかしたら突っ込まれるかもしれない」という質問まで想定しておくと、より万全です。
【研究内容を面接で】直前にする対策
面接直前になったら、これまで準備してきた内容を、様々な時間制限の中で話す練習を行いましょう。
面接では、「では、1分であなたの研究内容を説明してください」のように、時間を指定されることがよくあります。
このリクエストに柔軟に対応できるかどうかで、要約力やプレゼンテーション能力が試されます。
30秒、1分、5分といった複数のパターンで話す練習をしておけば、どんな状況でも自信を持って対応できます。
それぞれの時間で、何を話し、何を省略するのか。
その判断基準を自分の中に持っておくことが、直前対策の鍵となります。
30秒での答え方
30秒という短い時間で説明を求められた場合、詳細を語る余裕はありません。
ここでは、研究の「結論」と「魅力」を最も簡潔に伝えることに集中します。
構成としては、「①研究テーマの概要(何をしたか)」「②その研究の最も重要なポイントや成果(何がすごいのか)」「③企業への貢献可能性(どう活かせるか)」の3点を盛り込むのが理想です。
例えば、「私は〇〇という素材の耐久性を向上させる研究を行いました。
この研究により、従来比2倍の耐久性を実現する特定の条件を発見しました。
この知見は、貴社の製品の長寿命化に貢献できると考えております」のように、要点だけを抽出して話す練習をしましょう。
エレベーターピッチとも呼ばれるこのスキルは、ビジネスの世界でも非常に重要です。
1分での答え方
1分間の説明では、30秒バージョンに「背景・目的」と「学び」の要素を加えることができます。
これにより、話に深みと説得力が生まれます。
基本的な構成は、「①結論(研究テーマと概要)」「②研究の背景・目的(なぜそれに取り組んだのか)」「③最も重要な成果や工夫した点」「④研究から得た学びと、それをどう仕事に活かすか」となります。
背景を語ることで学生の問題意識を、学びを語ることで成長とポテンシャルを示すことができます。
1分は、面接で研究内容を説明する際に最も標準的な長さです。
この1分バージョンを完璧にマスターしておけば、多くの場面で応用が効くでしょう。
何度も声に出して練習し、時間内にスムーズに話せるようにしておきましょう。
5分での答え方
5分という長い時間が与えられた場合は、研究内容についてかなり詳しく話すことが期待されています。
これは、学生の専門性や論理的思考力を深く見極めたいという面接官の意図の表れであり、絶好のアピールチャンスです。
1分バージョンをベースに、さらに「具体的なプロセス(仮説→実験→考察)」「困難だった点と、それをどう乗り越えたかという具体的なエピソード」「今後の展望や課題」といった要素を肉付けしていきます。
ポートフォリオなどの資料を使いながら、研究の全体像をストーリーとして語ることを意識しましょう。
ただし、一方的に話し続けるのではなく、面接官の反応を見ながら、質疑応答の時間も意識することが重要です。
このレベルの説明ができれば、研究に対する深い理解と熱意が十分に伝わるはずです。
【研究内容を面接で】話す文の構成
研究内容を分かりやすく、かつ魅力的に伝えるためには、話の構成が非常に重要です。
聞き手が最も知りたいであろう「結論」から話し始めることで、相手の関心を引きつけ、その後の話もスムーズに理解してもらいやすくなります。
一般的にビジネスシーンで用いられるPREP法(Point, Reason, Example, Point)を参考に、研究内容の説明に適した構成を組み立てましょう。
ここでは、多くの面接官に響きやすい、結論から始めるストーリーテリングの構成要素を具体的に解説します。
この型を身につけるだけで格段に論理的で分かりやすくなります。
結論
まず最初に、「私は〇〇に関する研究をしています」と、研究のテーマと結論を簡潔に述べます。
ここで言う結論とは、研究全体を一行で要約するようなキャッチコピーをイメージすると良いでしょう。
例えば、「私は、次世代の太陽電池の発電効率を向上させるための新しい材料開発に取り組んでいます」や「AIを用いて、製造ラインにおける製品の異常を早期に検知するシステムの開発を行いました」のように、何について、何をしたのかが一言で分かるように伝えます。
この冒頭部分で、面接官は話の全体像を掴むことができます。
専門用語は避け、誰が聞いてもイメージが湧くような平易な言葉を選ぶことがポイントです。
目的
次に、なぜその研究に取り組もうと思ったのか、その「目的」や「背景」を説明します。
これにより話に深みと共感が生まれます。
例えば、「現在主流の太陽電池には〇〇という課題があり、より効率的なエネルギー利用の実現が社会的に求められています。
そこで私は、この課題を解決できる新しい材料の可能性に着目しました」のように、社会的な課題や既存技術の問題点を挙げることで、研究の意義や重要性を伝えることができます。
また、「指導教官からこのテーマを勧められ、その面白さに惹かれた」といった個人的な動機を語ることも、学生の知的好奇心や主体性をアピールする上で効果的です。
この目的が明確であるほど、研究への熱意が伝わります。
苦労したこと
研究のプロセスが常に順風満帆であることは稀です。
むしろ、予期せぬ問題や失敗の連続だったという人がほとんどではないでしょうか。
その中で、直面した最も大きな「困難」と、それを乗り越えるためにどのように「工夫」し、「努力」したのかを具体的に語りましょう。
このエピソードは、学生の課題解決能力、忍耐力、そして人間的な魅力を伝える上で最も重要なパートです。
「実験データが思うように得られず、仮説を何度も見直した」「必要な文献が英語でしかなく、専門用語を一つ一つ調べながら読解した」など、リアルな苦労話は、粘り強さと真摯な姿勢を雄弁に物語ります。
成功体験よりも、失敗から何を学び、どう次へ繋げたのかを語ることが高く評価されます。
学び
最後に、この研究活動全体を通して、何を学びどのようなスキルが身についたのかを述べ、それを入社後にどう活かしていきたいかで締めくくります。
これが、面接官が最も知りたい部分です。
「この研究を通じて、地道なデータ分析の中から法則性を見出す洞察力が身につきました。
この力は、貴社のマーケティング部門で顧客のニーズを分析する際に必ず役立つと確信しています」のように、得られたスキルと企業の業務内容を具体的に結びつけてアピールしましょう。
研究の成果だけでなく、そのプロセスで得たポータブルスキル(持ち運び可能な能力)を語ることで、専門分野以外でも活躍できるポテンシャルを持った人材であることを示すことができます。
【研究内容を面接で】例文3選
ここまでのポイントを踏まえて、具体的な例文をいくつか紹介します。
自分の研究分野やエピソードに合わせてアレンジし、オリジナルの回答を作成するための参考にしてください。
理系の研究を2パターン、比較として文系のゼミ研究を1パターン用意しました。
構成(結論→目的→苦労したこと→学び)がどのように文章に落とし込まれているかに注目しながら読んでみてください。
これらの例文をベースに自身の言葉でストーリーを肉付けしていくことが、面接官の心に響く説明への近道です。
理系の研究1
(結論)私は、リチウムイオン電池の長寿命化を実現するための新しい電解液添加剤に関する研究を行っています。
この研究により、電池のサイクル寿命を従来比で30%向上させることに成功しました。
(目的)スマートフォンや電気自動車の普及に伴い、高性能な電池の需要は高まる一方ですが、充放電を繰り返すことによる劣化が大きな課題となっています。
私は、化学の力でこの社会的な課題を解決したいと考え、電池の劣化メカニズムの解明と、それを抑制する新物質の探索に取り組み始めました。
(苦労したこと)最も苦労したのは、合成した添加剤が期待した効果を示さなかったことです。
当初の仮説が間違っていると考え、3ヶ月間、膨大な数の先行研究を読み直し、分子構造の設計から見直しました。
その結果、特定の官能基が劣化抑制に重要であることを突き止め、試行錯誤の末に今回の成果を得ることができました。
(学び)この経験から、粘り強く原因を追求し、仮説検証を繰り返すことの重要性を学びました。
この課題解決能力と化学の専門知識を活かし、貴社の材料開発部門で、より高性能な製品の開発に貢献したいと考えています。
理系の研究2
(結論)私は、AIの画像認識技術を用いて、工場の生産ラインを流れる製品の微小な傷を自動で検出するシステムを開発しました。
このシステムにより、従来は熟練の検査員でしか見つけられなかった0.1ミリ単位の傷を99%以上の精度で検出可能です。
(目的)製造業における品質管理は、製品の信頼性を担保する上で非常に重要ですが、人による目視検査には限界があり、見逃しや負担の大きさが課題でした。
私は、情報工学の知識を活かしてこの課題を解決し、日本のものづくりの品質向上に貢献したいと考え、この研究に着手しました。
(苦労したこと)開発当初、正常な製品の画像をAIに学習させただけでは、未知の種類の傷をうまく検出できませんでした。
そこで、様々なパターンの傷画像を人工的に生成して学習データに追加(データ拡張)するというアプローチを試しました。
この試行錯誤の結果、AIの汎用性が大幅に向上し、高い検出精度を実現できました。
(学び)この研究を通じて、机上の理論だけでなく、現場の課題に合わせて柔軟な発想で解決策を導き出す実践的な問題解決能力が身につきました。
貴社に入社後は、この情報工学のスキルを活かし、製造プロセスの効率化や品質向上に貢献していきたいです。
文系のゼミ研究
(結論)私は、現代日本の若者の消費行動の変化について、特にSNSが購買意欲に与える影響という観点から研究を行いました。
結論として、若者の消費は「所有」から「共感」へと価値観がシフトしていることを明らかにしました。
(目的)私自身、SNSの口コミを参考に商品を購入することが多く、その背景にある心理や社会的なメカニズムに興味を持ったのがきっかけです。
このテーマを深く探求することで、現代社会を理解し、企業のマーケティング活動にも応用できる知見が得られると考えました。
(苦労したこと)最も大変だったのは、100人へのアンケート調査と10人へのヒアリング調査の実施です。
仮説を検証するためにどのような質問項目を設定すべきか、ゼミの仲間と何度も議論を重ねました。
また、ヒアリングでは、相手の本音を引き出すための質問の仕方や、信頼関係の構築に苦心しました。
(学び)この研究を通じて、主体的に課題を設定し、周囲と協力しながら計画的に物事を進める実行力と、対話の中からニーズを的確に把握する傾聴力が身につきました。
これらの能力は、貴社の営業職として、お客様一人ひとりに寄り添った提案を行う際に、必ず活かせると考えております。
【研究内容を面接で】NGな伝え方
どんなに素晴らしい研究内容でも、伝え方一つで評価は大きく変わってしまいます。
特に、面接官に「分かりにくい」「独りよがりだ」という印象を与えてしまうと、その後の選考に大きく響きかねません。
ここでは、多くの学生が陥りがちな、研究内容を説明する際のNGな伝え方を3つ紹介します。
自分は当てはまっていないか、事前にチェックしてみてください。
これらのNG例を避けるだけで、面接官に良い印象を与えることができるでしょう。
専門用語が多い
最もよくある失敗例が、専門用語を多用してしまうことです。
毎日研究室で使っている言葉なので当たり前かもしれませんが、面接官がその言葉を知っているとは限りません。
むしろ、知らないことの方が多いと考えるべきです。
説明をせずに使ってしまうと、面接官は話についていけなくなり、話を聞くのをやめてしまいます。
必ず、誰にでも分かる平易な言葉に置き換えましょう。
内容が薄い
「〇〇という研究をしました。結果は△△でした」。
このように、研究の概要と結果だけを淡々と話すだけでは、魅力は全く伝わりません。
面接官が知りたいのは、結果そのものよりもその研究に「なぜ」取り組み、「どのように」困難を乗り越え、「何を」学んだのか、というプロセスと学生の成長です。
研究の動機や背景、苦労したエピソード、そこから得た学びなどが全く語られない説明は、内容が薄いと判断されてしまいます。
その研究にどれだけの情熱と時間を注いできたのか、そのストーリーを語らなければ、他の学生との差別化は図れません。
自分の経験を具体的に、そして生き生きと語ることを意識してください。
話が長い
伝えたいことが多いあまり、話が長くなってしまうのもNGです。
特に、時間を指定されていない場合に起こりがちです。
「1分程度でお願いします」と言われているのに3分も4分も話してしまっては、「時間を守れない人」「要点をまとめるのが苦手な人」というネガティブな印象を与えてしまいます。
また、話が長くなると、聞き手の集中力も途切れてしまいます。
大切なのは、まず結論から話すことです。
そして、決められた時間内に話をまとめる練習を事前に行っておくことが不可欠です。
詳細な部分は、面接官から深掘りの質問があった際に答えれば良いのです。
常に聞き手を意識し、簡潔で分かりやすい説明を心がけましょう。
【研究内容を面接で】質問を想定する
自分の研究内容の説明を準備するのと同時に、その説明に対して面接官からどのような質問が飛んでくるかを想定し、準備しておくことが非常に重要です。
完璧なプレゼンテーションができたとしても、その後の質疑応答でしどろもどろになってしまっては、評価が下がってしまいます。
むしろ、面接官は質疑応答での対応力を見て、論理的思考力やコミュニケーション能力を判断しています。
自分の説明を客観的に見直し、「もし自分が面接官だったら、どこに疑問を持つだろうか?」という視点で質問を洗い出してみましょう。
友人や大学のキャリアセンターの職員に聞いてもらい、フィードバックをもらうのも非常に有効です。
【研究内容を面接で】よくある質問
研究内容の説明に関しては、多くの学生が共通の悩みを抱えています。
ここでは、特に相談されることが多い3つの質問とその対処法について解説します。
これらの悩みは、抱えているものではありません。
事前に解決策を知っておくことで、面接本番でも余計な不安を感じることなく、堂々と自分自身をアピールできるようになります。
自分の状況と照らし合わせながら、不安を自信に変えるためのヒントを見つけてください。
深掘りされたらどうする
研究内容について次々と深く質問されると、「うまく答えられていないのだろうか」「圧迫面接なのかな」と不安に感じてしまうかもしれません。
しかし、これは全く逆です。
面接官が学生の話に興味を持ち、能力や人柄をもっと知りたいと思っているポジティブなサインです。
深掘りの質問は、アピールチャンスが増えたと捉えましょう。
慌てる必要は全くありません。
事前に準備してきた想定問答を思い出し、自信を持って、誠実に答えれば大丈夫です。
もし、すぐに答えられないような難しい質問が来た場合でも、「少し考えるお時間をいただけますでしょうか」と正直に伝える姿勢は、むしろ好印象です。
深掘りを恐れず、面接官との対話を楽しみましょう。
研究内容が薄いと思われそう
「自分はすごい成果を出したわけではないし、研究内容が薄いと思われたらどうしよう」と心配する学生は少なくありません。
しかし、面接官は研究成果の大きさや、学会誌に掲載されたかどうかといった実績だけで評価しているわけではありません。
重要なのは、成果の大小ではなく、その研究テーマにどのように向き合い、どのような試行錯誤を重ね、そのプロセスから何を学んだかです。
たとえ思うような結果が出なかったとしても、「〇〇という仮説のもと実験したが、うまくいかなかった。
その原因を分析した結果、△△という新たな課題を発見し、現在はそのアプローチを試している」と語れば、課題発見能力や粘り強さが十分に伝わります。
大切なのはプロセスを語ることです。
他の学生と比較してしまう
面接会場で他の学生の話を聞いて、「自分の研究より、あの人の方がすごいことをやっている」と自信をなくしてしまうことがあるかもしれません。
しかし、他人と比較して落ち込む必要は全くありません。
面接は、誰が一番優れた研究をしたかを競う場ではないからです。
大切なのは、自分の研究に自信と誇りを持ち、自分の言葉で、その経験を生き生きと語ることです。
背伸びをする必要はありません。
等身大の自身のストーリーを、誠実に伝えれば、その魅力は必ず面接官に届きます。
まとめ
今回は、就職活動の面接における研究内容の説明について、準備から構成、具体的な例文、NG例まで網羅的に解説しました。
面接官が知りたいのは、研究の成果そのものだけでなく、その研究にどう向き合い、何を学び、どう成長したかというプロセスです。
そして、その経験を入社後にどう活かしてくれるのかという再現性です。
この記事で紹介したポイントを押さえ、自身の言葉でストーリーを準備すれば、研究内容は他の誰にも真似できない、強力なアピールポイントになります。
自信を持って努力と情熱を面接官に伝えてください。
明治大学院卒業後、就活メディア運営|自社メディア「就活市場」「Digmedia」「ベンチャー就活ナビ」などの運営を軸に、年間10万人の就活生の内定獲得をサポート