はじめに
広報職は、テレビや雑誌の取材対応、プレスリリースの作成、SNS運用など、企業のブランディングを担う重要なポジションです。
その華やかな側面ばかりが注目されがちですが、実際には地道なメディアキャラバンや危機管理対応など、高度な折衝能力と知力が求められるプロフェッショナルな仕事です。
新卒採用においては、採用人数が極めて少ない「若干名」枠であることが多く、大手企業を中心に激しい学歴競争が繰り広げられているのは事実です。
しかし、中堅企業やベンチャー、あるいは広報代理店といったルートを選べば、学歴に関係なく広報としてのキャリアをスタートさせることは十分に可能です。
この記事では、広報を目指す学生が知っておくべき学歴の壁の正体と、それを乗り越えるための実践的なアプローチをお伝えします。
【広報 学歴】学歴フィルターの実態
広報職における学歴フィルターの有無は、目指す企業の「規模」と「採用形態」によって大きく異なります。
誰もが知る大手有名企業（メーカー、商社、IT大手など）の広報職は、全職種の中でもトップクラスの倍率となるため、書類選考の段階で強力な学歴フィルターが存在します。
ここでは、早慶上智や旧帝大といった最難関大学の学生たちが、わずか数名の枠を争うことになります。
企業側も、ブランドイメージを体現する人材として、高学歴かつコミュニケーション能力の高い学生を優先的に採用する傾向があります。
一方で、成長中のベンチャー企業や、企業の広報活動を代行する「PR会社（広報代理店）」においては、学歴よりも「行動力」や「発信力」が重視されます。
SNSでインフルエンサーとして活動していたり、学生時代にイベントを主催して集客した経験があったりする学生は、偏差値に関係なく即戦力候補として高く評価されます。
つまり、広報という職種全体が閉ざされているわけではなく、エントリーする企業の選び方次第でチャンスは無限に広がるのが実態です。
【広報 学歴】出身大学の傾向と特徴
広報職として働く人々の出身大学は、企業タイプによって明確なカラーの違いがあります。
伝統的な大手企業の広報担当者は、青山学院大学、立教大学、慶應義塾大学、早稲田大学、上智大学といった、いわゆる「ブランド力のある私立大学」の出身者が多く見られます。
これは、メディア関係者との人脈作りや、洗練された立ち居振る舞いが求められる文化的な背景も影響しています。
また、マスコミ業界（アナウンサー等）を目指していた学生が、併願として広報職を受けるケースが多いのも特徴です。
対して、ITベンチャーやスタートアップの広報では、出身大学は実に多様です。
日東駒専や女子大、地方国公立大学出身者も多く、大学での専攻も社会学、心理学、芸術系など多岐にわたります。
ここでは大学名という看板よりも、「自社のカルチャーにフィットするか」「SNSなどの新しいツールを使いこなせるか」といった適性が最優先されるため、学歴のバラエティが非常に豊かになっています。
【広報 学歴】学歴が話題になる理由
就職活動において、広報職ほど「学歴」や「容姿・属性」が噂される職種はありません。
しかし、企業が広報採用で学歴を気にするのには、単なるブランドイメージ以上の実務的な理由が存在します。
広報は経営陣と直結する仕事であり、対外的なリスク管理も担うため、企業側は採用に極めて慎重になります。
ここでは、なぜ広報職の採用において学歴という指標が重視される傾向にあるのか、その具体的な背景を4つの視点から紐解いていきます。
採用人数に対する応募者数の圧倒的な不均衡
広報職の新卒採用は、多くの企業で「若干名（1〜2名）」、あるいは総合職採用の中からの配属という形を取ります。
この極めて狭い門に対して、華やかなイメージを持つ何千人もの学生が殺到するため、倍率は数百倍から時には千倍を超えることもあります。
人事担当者が全ての応募者を面接することは物理的に不可能です。
そのため、効率的に候補者を絞り込むための「足切りライン」として、やむを得ず学歴が利用されるケースが大企業ほど多くなります。
これは個人の能力を見る前の、母集団形成の段階で行われる構造的な処理であり、人気職種ゆえの宿命とも言えます。
高度な文章力と論理的構成力の証明
広報の基本業務の一つに「プレスリリース」の作成があります。
これは新聞記者やテレビディレクターといった「言葉のプロ」に向けて発信する公式文書であり、誤字脱字がないことはもちろん、論理的で分かりやすく、かつ魅力的な文章構成力が求められます。
稚拙な文章は企業の信頼を損なうため、企業は高い基礎学力と国語力（リテラシー）を持つ学生を求めます。
難関大学の入試では高度な読解力や論述力が問われるため、学歴は一定レベル以上の「書く力」や「論理的思考力」が担保されている証拠として、採用担当者に安心感を与える材料となるのです。
メディア関係者や経営層と対等に渡り合う知性
広報担当者は、自社の社長や役員と直接打ち合わせを行い、経営戦略を理解した上で情報を発信する必要があります。
また、取材に来るジャーナリストや記者は、社会情勢や経済に精通した知識人であることが多いです。
こうした相手と対等に会話をし、信頼関係を築くためには、時事問題への感度や幅広い教養、そして瞬時に相手の意図を汲み取る知的なコミュニケーション能力が不可欠です。
企業は、学歴を単なる偏差値としてではなく、こうしたハイレベルなビジネスコミュニケーションに対応できる「地頭の良さ」や「教養の深さ」を推し量る指標として活用しています。
「企業の顔」としての信頼性とブランドイメージ
広報担当者は、メディアを通じて世間一般に露出する機会があり、その立ち居振る舞いや経歴がそのまま「企業のイメージ」として定着することがあります。
特にブランディングを重視する企業においては、広報担当者のバックグラウンドも含めて「信頼できる企業」「知的な企業」というメッセージを発信したいと考えます。
そのため、「〇〇大学出身の広報」という肩書きが、企業のブランド価値を高める一つの要素として機能する場合があるのです。
これは決して差別的な意図だけではなく、対外的な信用力を最大化するための経営戦略の一環として、学歴が考慮される側面があることを理解しておく必要があります。
【広報 学歴】学歴より重要な評価ポイント
ここまで学歴の重要性を説明しましたが、現場で活躍する広報担当者に最も必要なのは、学歴ではありません。
メディアを動かすのは「熱意」と「ネタの質」、そして「人間関係」です。
特に近年では、SNSの台頭により、従来のメディアリレーションズとは異なるスキルセットも求められています。
多くの企業は、偏差値が高いだけの学生よりも、泥臭く行動でき、情報の価値を最大化できるセンスのある学生を求めています。
ここでは、学歴の壁を越えて採用担当者を唸らせる、具体的な4つの評価ポイントを紹介します。
「書く力」と情報を魅力的に加工する編集力
広報にとって文章力は必須スキルですが、それは単に綺麗な日本語が書けるということではありません。
自社の製品やサービスの魅力を、「誰に」「どのように」伝えればニュースになるかを考え抜き、情報を加工する「編集力」が問われます。
エントリーシートや面接において、自分の経験を物語のように魅力的に語れるか、キャッチーな言葉選びができるかは厳しくチェックされます。
ブログやnoteなどで継続的に情報発信を行い、多くの人に読まれる文章を書いた実績があれば、それは学歴を凌駕する強力な実務能力の証明となります。
初対面の相手と即座に打ち解ける「愛嬌」と度胸
広報の仕事は、新聞社やテレビ局への「メディアキャラバン（訪問営業）」など、初対面の人に自社を売り込む場面の連続です。
多忙な記者に話を聞いてもらうためには、物怖じせずに飛び込む度胸と、一瞬で相手の懐に入る「愛嬌（人としての可愛げ）」が極めて重要です。
これは生まれ持った性格だけでなく、相手へのリスペクトや事前のリサーチに基づいた気配りによって作られるものです。
面接では、緊張した場面でも笑顔を絶やさず、面接官との会話を楽しみ、場を明るくするコミュニケーションができるかどうかが、広報適性の最重要判断基準となります。
トレンドを先読みする情報感度とミーハー心
優れた広報は、世の中の動きに常にアンテナを張っています。
「今、何が流行っているのか」「次に何が話題になりそうか」というトレンドを敏感に察知し、自社の情報と結びつける企画力が求められます。
そのため、良い意味での「ミーハー心」や好奇心の旺盛さは才能の一つです。
面接で「最近気になったニュースは？」「Z世代で流行っているアプリは？」と聞かれた際に、単に事実を答えるのではなく、「なぜそれが流行ったのか」という独自の考察を加えて話すことができれば、広報としてのセンスとマーケティング視点の高さを高く評価されます。
不測の事態にも動じない危機管理能力（レジリエンス）
広報の仕事は、楽しい情報発信ばかりではありません。
SNSでの炎上や製品の不具合など、ネガティブな情報への対応も重要な任務です（クライシスマネジメント）。
こうした有事の際に、パニックにならず冷静に状況を判断し、誠実かつ迅速に対応できるメンタルの強さが求められます。
採用選考では、学生時代の失敗談や困難な状況について深く掘り下げられますが、これはプレッシャーがかかる場面での対応力を見るためです。
失敗から逃げずに責任を持って対処し、タフに乗り越えた経験は、企業の守り神となる広報担当者として大きな信頼に繋がります。
【広報 学歴】学歴に不安がある人の対策
「広報になりたいけれど、学歴が足りないから無理かもしれない」と諦める前に、戦略を変えてアプローチしてみましょう。
新卒でいきなり大手企業の広報部に入るのは難関ですが、ルートを変えれば広報の仕事に就くことは可能ですし、実力をつけてからキャリアアップすることもできます。
重要なのは、「広報という職能（スキル）」を身につけるための最短ルートを選ぶことです。
ここでは、学歴のハンデを回避し、憧れの広報職への切符を手にするための具体的な4つの対策を提案します。
PR会社（広報代理店）をファーストキャリアに選ぶ
事業会社の広報部は採用枠が少なく倍率も異常に高いですが、企業の広報活動を支援する「PR会社（ベクトル、サニーサイドアップ、プラップジャパン等および中堅・ベンチャー代理店）」は、採用人数が比較的多く、学歴よりもポテンシャルを重視する傾向があります。
PR会社に入れば、若手のうちから複数のクライアントを担当し、メディアキャラバンやプレスリリース作成などの実務経験を圧倒的なスピードで積むことができます。
ここでプロとしてのスキルを磨けば、数年後に事業会社の広報へ「経験者」として転職する道が大きく開けます。
これは広報キャリアの王道ルートの一つです。
SNSやブログで発信力の実績を作る（ポートフォリオ化）
「発信力があります」という言葉に説得力を持たせるために、自分自身のメディアを持ちましょう。
Instagram、X（旧Twitter）、TikTok、noteなどを活用し、特定のテーマで情報を発信してフォロワーを増やしたり、反響を得たりした経験は、最強の自己PRになります。
単に日常を投稿するのではなく、「誰に向けて」「どんな価値を提供するか」を戦略的に設計して運用することが重要です。
「学生時代にSNS運用でフォロワーを1万人増やしました」「noteの記事がバズりました」という実績は、学歴の壁を破壊するだけの実務能力の証明として、採用担当者に強烈に刺さります。
長期インターンで「広報・SNS運用」の実務を経験する
新卒採用で広報枠を勝ち取る学生の多くは、実はすでに実務経験を持っています。
ベンチャー企業などで広報やSNS運用の長期インターンシップに参加し、社員同様に働いた経験があれば、未経験の学生とは比べものにならないほど有利になります。
プレスリリースの書き方やメディアリストの作り方など、現場の作法を知っていることは即戦力として評価されます。
また、インターン先で成果を出せば、そのまま内定をもらえるケースも多々あります。
「学生ですが、広報の仕事ができます」と言える状態にしておくことが、最も確実な内定獲得術です。
営業職やマーケティング職として入社し、社内異動を狙う
どうしても入りたい企業がある場合、最初から狭き門である広報職だけを狙うのではなく、採用人数の多い「営業職」や「販売職」として入社し、社内で実績を作ってから広報部への異動を希望するという戦略（キャリアパス）も有効です。
実は、現場を知っている社員の方が、商品や顧客への理解が深く、説得力のある広報ができるため、社内異動で広報になるケースは非常に多いのです。
面接では「将来的には広報として活躍したいが、まずは現場でお客様の声を聞き、製品の魅力を誰よりも理解した上で発信したい」と伝えることで、キャリアビジョンの明確さと謙虚さを同時にアピールできます。
【広報 学歴】よくある質問
広報職を目指す学生からは、学歴以外にも「見た目」や「資格」に関する質問が多く寄せられます。
キラキラしたイメージが先行している職種だけに、現実とのギャップに悩むことも多いでしょう。
ここでは、広報職志望の就活生が抱きがちなよくある質問に対して、業界のリアルな本音で回答します。
これらの疑問をクリアにし、表面的なイメージにとらわれない本質的な就職活動を進めてください。
やっぱり容姿端麗じゃないと採用されませんか？
「広報＝美人」というイメージは根強いですが、採用基準として「顔の造形」が評価されることはありません。
重要なのは「清潔感」と「親しみやすさ」です。
企業の顔として表に出る以上、だらしない服装や暗い表情はNGですが、それはモデルのような美しさを求めているという意味ではありません。
相手に不快感を与えない身だしなみ、明るい笑顔、ハキハキとした話し方といった、ビジネスパーソンとしての「好感度」が重視されます。
容姿を気にするよりも、表情筋を鍛えて最高の笑顔で面接に臨む方が、内定への確率は確実に上がります。
「PRプランナー」の資格は取っておくべきですか？
日本パブリックリレーションズ協会が認定する「PRプランナー」などの資格は、持っていて損はありませんが、新卒採用において必須ではありません。
資格を持っていることだけで内定が出るほど甘くはないのが現実です。
ただし、資格勉強を通じて広報の基礎知識や倫理観を体系的に学んでいることは、志望度の高さや学習意欲の証明になります。
もしアピールするなら、資格取得だけでなく、「なぜその資格を取ろうと思ったのか」「学んだ知識をどう活かしたいか」をセットで語れるようにしておくと、面接官の納得感を高める補助材料として有効に機能します。
新卒で広報になれる確率はどれくらいですか？
正直に申し上げて、大手企業の「広報専任職」に新卒で配属される確率は極めて低いです。
同期が数百人いても、広報配属はゼロか1〜2名という世界です。
しかし、中堅・中小企業やベンチャー企業、PR会社であれば、新卒から広報担当として採用されるケースは十分にあります。
最初から大手企業の広報部だけにこだわると「全落ち」のリスクがあるため、企業規模や業界を広げてエントリーするか、前述の通り「職種別採用」を行っている企業を探すことが重要です。
まずは「広報としてのキャリアをスタートさせること」を優先目標にすることをお勧めします。
広報の仕事は華やかで楽しいことばかりですか？
これは最大の誤解です。
広報の仕事の8割は、地味で泥臭い作業の積み重ねです。
メディアリストの更新、記事クリッピング、取材のスケジュール調整、原稿のファクトチェック、記者への電話やメールでの地道なアプローチなど、裏方としての事務作業や調整業務が膨大にあります。
また、時にはメディアから厳しい質問を浴びせられたり、社内の不祥事対応に追われたりと、精神的なプレッシャーも大きいです。
華やかなイベントや取材対応は氷山の一角に過ぎません。
「縁の下の力持ちとして会社を支える覚悟」がないと、入社後のギャップに苦しむことになります。
まとめ
本記事では、広報職における学歴フィルターの現実と、それを突破するための戦略について解説してきました。
確かに大手企業の広報職は高学歴層の激戦区ですが、PR会社やベンチャー企業、あるいは実務経験を武器にしたアプローチなど、学歴の壁を回避するルートはいくつも存在します。
広報の本質は「伝える力」と「関係を築く力」です。
大学名を変えることはできませんが、実績作りは今すぐ始められます。
「広報になりたい」という強い想いを、具体的な行動とアウトプットに変えてください。
明治大学院卒業後、就活メディア運営｜自社メディア「就活市場」「Digmedia」「ベンチャー就活ナビ」などの運営を軸に、年間10万人の就活生の内定獲得をサポート
