はじめに
IT人材の不足が叫ばれる昨今、エンジニア職は文理を問わず多くの学生から注目を集めています。
しかし、専門的なスキルが求められる職種であるため、「情報系の学部出身でないと不利ではないか」「偏差値の高い大学を出ていないと採用されないのではないか」という不安を感じている方も多いでしょう。
特に人気の大手IT企業やメガベンチャーとなると、その倍率は非常に高く、学歴が選考に影響するのではないかと懸念するのは当然のことです。
この記事では、エンジニア採用における学歴フィルターの有無や、企業タイプ別の傾向について、現場の実態を交えて詳しく解説します。
また、学歴以上に重視される「技術力」や「ポテンシャル」の示し方、未経験からでもエンジニアとしてキャリアをスタートさせるための具体的な対策についても触れていきます。
学歴という枠にとらわれず、実力で道を切り拓くためのヒントとして活用してください。
【エンジニア 学歴】学歴フィルターの実態
エンジニア業界における学歴フィルターは、目指す企業のタイプによって全く状況が異なります。
まず、従来型のSIer（システムインテグレーター）や大手メーカー系のシステム子会社では、依然として一定の学歴基準が設けられているケースが見受けられます。
これは、採用人数が多く、新卒を一括で教育するシステムが整っているため、基礎学力や学習習慣を重視する傾向があるからです。
一方、Web系ベンチャーやスタートアップ企業では、学歴よりも「何が作れるか」という実力が最優先されます。
ここでは、GitHubなどのポートフォリオや、独学で技術を習得したプロセスが評価対象となるため、学歴による足切りはほとんど行われません。
つまり、エンジニアの世界は実力主義の色合いが濃く、適切な場所を選べば、学歴に関係なく活躍できるチャンスが十分に広がっています。
【エンジニア 学歴】出身大学の傾向と特徴
エンジニアとして活躍する人々の出身大学は、非常に多岐にわたります。
Googleなどの外資系テック企業や、AI・機械学習を専門とする研究開発職においては、東京大学や京都大学などの旧帝大、あるいは海外大学の大学院（修士・博士）修了者が多くを占める傾向にあります。
これは、高度な数学的知識やコンピュータサイエンスの深い理解が求められるためです。
一方で、Webサービスの開発やアプリ開発を行う現場では、出身大学の偏差値による偏りは少なくなります。
MARCHや関関同立はもちろん、日東駒専、産近甲龍、さらには理系・文系を問わず幅広い大学の出身者が活躍しています。
また、専門学校や高等専門学校（高専）出身者も多く、彼らは若いうちから実務に近い技術教育を受けているため、即戦力として重宝される傾向があります。
このように、エンジニアという職種は、トップレベルのアカデミア人材から、現場叩き上げの実務派まで、多様なバックグラウンドを持つ人々が共存しているのが大きな特徴です。
【エンジニア 学歴】学歴が話題になる理由
エンジニア採用において学歴が話題になるのは、単なるブランド志向ではなく、エンジニアという仕事の特性や、企業が抱える採用課題が関係しています。
なぜ技術職であるエンジニアに学歴が求められる側面があるのか、その背景にある4つの理由を解説します。
論理的思考力と学習習慣の担保
プログラミングは、論理の積み重ねです。
複雑なシステムを設計し、エラーの原因を特定して修正するためには、高度な論理的思考力が不可欠です。
企業は、難関大学の受験を突破した経験を、この「論理的に物事を考える基礎能力」や「地頭の良さ」の証明として見ることがあります。
また、IT技術は進化のスピードが非常に速く、エンジニアになってからも一生勉強を続けなければなりません。
受験勉強を通じて、嫌なことや難しいことにも粘り強く取り組み、自ら学習する習慣が身についている学生は、入社後のキャッチアップも早いと期待されます。
このように、ポテンシャル採用が中心となる新卒採用において、学歴は「学習能力の高さ」を測るわかりやすい指標として機能しています。
コンピュータサイエンス（CS）の基礎知識
Webアプリケーションを作るだけであれば、独学やプログラミングスクールでも対応可能ですが、大規模なシステム開発や、OS・データベースのチューニング、アルゴリズムの最適化といった領域では、大学レベルのコンピュータサイエンス（CS）の知識が必要不可欠です。
特に情報工学系の学部・学科出身者は、プログラミング言語の背景にある仕組みや理論を体系的に学んでいるため、技術的なトラブルに直面した際の解決能力が高いと評価されます。
大手テック企業ほど、表面的なコーディングスキルだけでなく、こうした工学的な基礎体力を重視するため、結果として情報系の学部を持つ上位大学の学生が有利になる傾向があります。
人気企業への応募集中によるスクリーニング
メガベンチャーや有名ゲーム会社、大手SIerなどは、知名度が高く待遇も良いため、毎年数千人、時には万人単位の応募が集まります。
人事担当者が限られた時間の中で全ての応募書類に目を通し、技術力を精査するのは物理的に不可能です。
そのため、選考の初期段階において、学歴や所属学部によるフィルタリングを行わざるを得ないという現実的な事情があります。
これは個人の能力を否定するものではなく、確率論として優秀な学生が含まれている可能性が高い層を優先するための措置です。
ただし、こうした企業でも、圧倒的な技術力や実績があれば、学歴の壁を越えて特例的に評価されるケースは存在します。
先端技術領域における数学的素養の必要性
近年注目されているAI（人工知能）、データサイエンス、ブロックチェーンといった先端技術領域では、高度な数学（線形代数、微積分、統計学など）の知識が必須となります。
これらの知識は、一朝一夕で身につくものではなく、大学や大学院での専門的な教育課程を経て習得されるものです。
そのため、こうした領域を扱う企業や職種では、理系大学院卒を中心とした高学歴層の採用がメインとなります。
ここでは学歴そのものというよりは、「研究活動を通じて培った専門性」が評価されていると言えます。
逆に言えば、一般的なWeb開発や業務システム開発であれば、ここまでの数学的素養は求められないことが多く、文系出身者にも十分にチャンスがあります。
【エンジニア 学歴】学歴より重要な評価ポイント
エンジニア採用の現場で、最終的に合否を分けるのは学歴ではありません。
企業は「現場でコードを書き、価値を生み出せるか」を見ています。
学歴のハンデを覆し、内定を勝ち取るために重要視される4つの評価ポイントを解説します。
自ら手を動かして作った「成果物（ポートフォリオ）」
エンジニア採用において最強の武器となるのがポートフォリオです。
口頭で「やる気があります」「勉強しています」と伝えるよりも、実際に自分が作ったWebアプリやサービスを見せるほうが、数百倍の説得力があります。
採用担当者は、GitHubのコードや実際に動くアプリを通じて、あなたの現在の技術レベル、コードの書き方の癖、設計思想などを具体的に判断します。
スクールの課題で作ったありきたりなアプリではなく、「なぜこれを作ったのか」「こだわった点はどこか」を自分の言葉で語れるオリジナルの成果物があれば、学歴の不足を補って余りある評価を得ることができます。
わからないことを解決する「自走力」
実務の現場では、教わっていないエラーや未知の技術に遭遇することが日常茶飯事です。
そのたびに先輩に質問していては仕事になりません。
そのため、わからないことに直面した際に、自分で検索し、公式ドキュメントを読み込み、仮説を立てて解決策を導き出す「自走力（自ら走る力）」が極めて重要視されます。
面接では、「開発中にエラーが出たとき、どう対処しましたか？」といった質問を通じて、この能力が問われます。
安易に正解を求めず、泥臭く試行錯誤できる姿勢は、偏差値の高さよりも現場で重宝される資質です。
チームで開発を進める「コミュニケーション能力」
エンジニアの仕事は、一人で黙々とパソコンに向かうだけではありません。
デザイナー、プロダクトマネージャー、他のエンジニアとチームを組み、仕様を詰めたり、コードレビューをし合ったりしながら開発を進めます。
そのため、自分の考えを論理的に伝える力や、相手の意図を汲み取るコミュニケーション能力が不可欠です。
特に、技術的な内容を、技術に詳しくない人にもわかりやすく説明するスキルは高く評価されます。
面接官は、会話のキャッチボールを通じて、「一緒に働いていて気持ちの良い人物か」「チームの生産性を高められる人物か」を見ています。
技術に対する純粋な「好奇心と探究心」
IT業界は変化が激しく、3年前に主流だった技術が今は使われないということも珍しくありません。
そのため、エンジニアとして生き残るためには、新しい技術をキャッチアップし続ける必要があります。
企業は、義務感で勉強する人ではなく、「プログラミングが好き」「新しい技術に触れるのが楽しい」という純粋な知的好奇心を持った人を求めています。
例えば、「最近気になっている技術ニュースは？」といった質問に対し、目を輝かせて語れる学生は好印象です。
技術を楽しみ、自ら進んで情報をインプットする姿勢は、将来的な成長を約束する最大の要素となります。
【エンジニア 学歴】学歴に不安がある人の対策
学歴に自信がなくても、戦略的に行動すればエンジニアとしてのキャリアをスタートさせることは十分に可能です。
ここでは、学歴フィルターを突破し、実力で内定を勝ち取るための具体的な対策を4つ紹介します。
オリジナルアプリの開発で技術力を可視化する
前述の通り、ポートフォリオは学歴を覆す最大の武器です。
Progateなどの学習サービスを終えたら、できるだけ早くオリジナルのWebアプリケーション開発に取り組みましょう。
重要なのは「質の高さ」と「アウトプットの量」です。
単に動くだけでなく、AWSなどのクラウド環境にデプロイ（公開）し、実際にユーザーに使ってもらえるレベルまで作り込むことが重要です。
また、開発過程で学んだことや苦労した点をQiitaやZennなどの技術ブログに投稿し、インプットとアウトプットのサイクルを回していることをアピールしましょう。
これにより、採用担当者に「この学生は即戦力に近い」と思わせることができます。
長期インターンシップで実務経験を積む
学歴不問で実力を評価してもらいやすいのが、ベンチャー企業などでの長期インターンシップです。
アルバイト感覚ではなく、社員と同じように開発業務に携わることで、実務レベルのスキルやチーム開発の経験を積むことができます。
ここで「エンジニアとして働ける」という実績を作ってしまえば、本選考においては「未経験の学生」ではなく「実務経験のあるエンジニア」として扱われます。
インターン先でそのまま内定が出るケースも多いですし、他社の選考でも「実務経験あり」という事実は、学歴以上に強力なアピール材料となります。
基本情報技術者などの国家資格を取得する
資格は必須ではありませんが、学歴に不安がある場合、基礎学力と学習意欲を客観的に証明する良い材料になります。
特に「基本情報技術者試験」や、ワンランク上の「応用情報技術者試験」は、コンピュータサイエンスの基礎を網羅しており、SIerなどを中心に評価されやすい資格です。
また、クラウド技術に関心があるなら「AWS認定資格」なども有効です。
資格を持っていること自体が技術力の証明になるわけではありませんが、「目標に向かって計画的に学習し、結果を出せる人物である」という信頼を獲得することに繋がります。
ポテンシャル採用においては、この「努力できる才能」が評価されます。
技術力重視のベンチャーや中堅SIerを狙う
大手有名企業ばかりに目を向けるのではなく、採用基準が柔軟な企業に視野を広げましょう。
成長中のWebベンチャー企業は、学歴よりも「今何ができるか」「カルチャーに合うか」を重視する傾向があります。
また、中堅規模のSIerや、特定の技術領域（医療、物流、フィンテックなど）に強みを持つ企業も、優秀なエンジニアを求めており、学歴にこだわらない採用を行っていることが多いです。
さらに、スカウト型の就活サイトに登録し、ポートフォリオや技術ブログを充実させておけば、企業側から「ぜひ会いたい」とオファーが届くこともあります。
自分を求めてくれる企業を見つけるために、アンテナを高く張り、応募の母数を増やすことが大切です。
【エンジニア 学歴】よくある質問
エンジニアを目指す就活生から頻繁に寄せられる質問をまとめました。
文系出身者の悩みや、専門学校と大学の違い、学部卒と院卒の有利不利など、多くの人が抱く疑問に対して、就活アドバイザーの視点から回答します。
文系でプログラミング未経験ですが、なれますか？
結論から言えば、なれます。
実際に多くの文系出身者がエンジニアとして活躍しています。
ただし、理系や情報系学部の学生に比べてスタートラインで遅れていることは事実ですので、その差を埋めるための努力は必須です。
入社後の研修が充実している大手SIerなどを目指すのも一つの手ですが、入社前から独学やスクールでプログラミングに触れておくことを強く推奨します。
「未経験歓迎」という求人であっても、全く何もしていない人よりは、少しでもコードを書いたことがある人の方が熱意を評価されます。
「文系だから」を言い訳にせず、今すぐ学習を始める行動力が大切です。
専門学校と大学、どちらが有利ですか？
一概にどちらが有利とは言えませんが、目指すキャリアによって傾向が異なります。
大手SIerや大手メーカー系への就職を目指す場合、給与体系や昇進スピードの観点から大卒（特に院卒）が優遇されるケースがあります。
一方で、ゲーム業界やWeb制作などの分野では、専門学校で実践的なスキルを磨いてきた学生が、即戦力として高く評価されることも多いです。
専門学校は「手を動かすスキル」の習得に特化しているため、実務への適応が早いのが強みです。
最終的には「その学校で何を身につけたか」が問われるため、自分の目指すエンジニア像に合わせて進路や就職先を選ぶことが重要です。
大学院まで行かないとエンジニアになれませんか？
AI（人工知能）やデータサイエンス、高度なアルゴリズム開発などの研究開発職を目指すのであれば、大学院（修士以上）の学位が応募要件となっていることが一般的です。
しかし、一般的なWebサービスの開発エンジニア、インフラエンジニア、スマホアプリエンジニアなどの職種であれば、学部卒で全く問題ありません。
むしろ、Web業界は変化が速いため、早く社会に出て実務経験を積んだ方が、エンジニアとしての市場価値が高まるという考え方もあります。
自分が研究職志向なのか、サービス開発志向なのかを見極め、目的に応じて進学か就職かを判断するのが良いでしょう。
SES（客先常駐）は学歴不問ですが、やめたほうがいいですか？
ネット上ではSESに対してネガティブな意見も見られますが、一概に「やめたほうがいい」とは言えません。
確かに学歴不問で未経験者を採用するSES企業は多いですが、それゆえにエンジニアとしてのキャリアの第一歩を踏み出しやすい環境でもあります。
優良なSES企業であれば、多様な現場で経験を積むことができ、幅広いスキルを習得できます。
重要なのは、企業の教育体制や案件の質、キャリアパスの支援があるかどうかを見極めることです。
「SESだからダメ」と決めつけず、自分が成長できる環境かどうかを面接でしっかりと確認しましょう。
経験を積んでから、自社開発企業へ転職するというキャリアパスも一般的です。
まとめ
エンジニア業界において、学歴フィルターは一部の大手企業や研究職には存在しますが、Web業界や中小規模の企業を中心として、実力主義が浸透しています。
出身大学の偏差値よりも、ポートフォリオの質、自走力、コミュニケーション能力といった「現場で使えるスキル」が重要視されるのがこの職種の特徴です。
学歴に不安がある場合でも、オリジナルアプリの開発や長期インターンシップでの実務経験、資格取得などを通じて、自分の技術力と熱意を証明できれば、道は必ず開けます。
明治大学院卒業後、就活メディア運営｜自社メディア「就活市場」「Digmedia」「ベンチャー就活ナビ」などの運営を軸に、年間10万人の就活生の内定獲得をサポート
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