はじめに
企業選びにお悩みの就活生の皆さん、志望する業界や企業の絞り込みは進んでいますでしょうか。
誰もが知っている企業や大企業などは応募の対象になりやすいですね。
しかし、なぜその企業を選んだのか、明確な志望理由を持ち合わせている人はそこまで多くないかもしれません。
ブランド力のある企業だから、興味本位や憧れが志望動機になってはいる方もいるでしょう。
好きな企業に好意を持つのは自然です。
しかし、企業への憧れは志望動機になるのでしょうか。
今回は志望動機における憧れの使い方や注意点を解説していきます。
【志望動機に憧れは使える?】憧れのみでは志望動機にはならない
志望動機に憧れは使えるのでしょうか?
結論からいうと、憧れのみでは志望動機としては不十分でしょう。
「昔から知っているのでぜひ入社したい」、「子供の頃から馴染みがあって憧れのある企業で働いてみたい」などの理由はあまりにも利己的で、企業の採用担当者には魅力的な人材と映らないことが想像されます。
憧れのみでは不十分な理由として、「抽象的すぎる」「仕事への熱意が見えない」「将来のビジョンが見えない」などが挙げられます。
抽象的すぎる
「企業に憧れているから」という理由は志望動機としては抽象的すぎます。
ただ単に憧れていることは誰にでもいえますし、そこにあなた独自のオリジナリティや具体性がなければ説得力に欠けるでしょう。
憧れは外部からの一般的な目線で、企業内部で働く社員の感覚とはやや乖離があるといえます。
憧れだけを志望動機にするのは、企業に対する理解や事前研究が足りないと捉えられる可能性もあるのです。
もちろん憧れを持って入社し、企業理念を深く理解したうえで誇りを持って働いている先輩社員も多いことでしょう。
しかし、それは憧れという土台にもとづいた、自己分析や将来展望がしっかりできていたことにほかならないのです。
仕事への熱意が見えない
憧れがあるだけでは、仕事に対して熱意が感じられないと思われてしまっても仕方がないでしょう。
その企業が好きだからといって、必ずしも最後まで責任を持って仕事を頑張れると言い切れるでしょうか。
企業への憧れだけで、仕事をしていく中であらわれるさまざまな困難や課題に立ち向かっていくには限界があります。
業界や企業、職種に対する言及がなければ、企業に対する憧れは独りよがりの概念になってしまいかねません。
企業で働くことは、もちろん仕事が中心です。 組織の中では自身の特性を活かし、チームで目標に向かって業務に励んでいくことが求められます。
志望動機として仕事内容に触れないのは、やや自己中心的といわざるを得ないでしょう。
将来のビジョンが見えない
憧れている企業に入社できたことで満足してしまい、自己研鑽やスキルアップを図ろうとせず、いわゆる入社ゴールとなってしまうケースが多くあるようです。
企業が就活生を判断する基準の一つとして、その人物が自社にとってどのようなメリットをもたらしてくれるかという点があります。
採用担当者は企業の社風にマッチしているか、将来的にどういった貢献ができるかという視点で応募者の一人ひとりを見ています。
愛社精神があるに越したことはありませんが、「企業がどれだけ好きか」は選考理由のコアにはなりません。
よって、入社が目的で将来のビジョンが明確ではない新卒採用者が、長期的に仕事をこなしていくのは難しいと考えられます。
そのため、選考段階で志望動機が企業への憧れのみの学生は、次々とふるいにかけられていくのです。
【志望動機に憧れは使える?】憧れを表現したい時のやり方
とはいえ、まったく憧れが志望動機に使えないわけではありません。
憧れを表現したい場合や、企業への熱い思いを必ず伝えたい場合もあるでしょう。
根本的に、憧れは企業選定の十分なきっかけになり得ます。 それをどのように志望動機に反映させるかが大事になってくるのです。
それでは、志望動機に憧れを表現したい場合の具体的なやり方についてご紹介していきます。
ポイントは次の5つです。
・具体的なエピソード
・客観的評価
・仕事への思い
・どう頑張るか
企業を知った理由として使う
その企業を知った理由として使ってみるのは効果的です。
無数にある企業の中から、志望する企業を絞り込む作業をするにあたっては、さまざまな方法があります。
自らの特性や性格、スキルなどから選択肢をピックアップするのも良いかもしれません。
その中で、「昔から憧れがあり深く調べてみようと思った」という企業研究のきっかけとしての使い方は、自然で理にかなっているといえます。
企業側も好意や憧れを持ったうえで企業研究の対象とされ、最終的な志望企業の一つとして応募してきてくれたことに否定的な感情は抱きにくいでしょう。
憧れているからさらに知りたい、深く知りたいと考えるのはいたって自然な行動であり、「好きではないが自分の目標が達成できるから」といった理由に比べるとはるかに好意的です。
憧れる原因となったエピソードを具体的に話す
憧れる原因となった具体的なエピソードがあると、根拠が生まれて志望動機として成り立つ可能性があります。
ただし、「実家の近くに御社の本社があり、学生時代に毎日通学する中で自然と目につくことが多かったのでなんとなく親近感があり、次第に憧れを抱くようになった」といった漠然としたエピソードは避けましょう。
例えば「いつも本社の前を掃除している社員さんと話をする機会があり、毎日掃除をする理由を尋ねてみたところ、地域の景観がきれいだと自らの心も浄化されて周りにやさしくなれるからという言葉に感銘を受け、ぜひそのような社員さんのいる企業で自らも働いてみたいと心底思うようになった」など、あなたならではの具体的なエピソードが好ましいといえます。
客観的な評価を用いる
憧れは、強ければ強いほど主観が際立ってしまいます。
自らが思う企業への評価は直線的で、本来企業側が意図する特徴や企業理念ではないかもしれません。
例えば、製品の開発サイクルがものすごく早い家電メーカーがあったとしましょう。
どんどん新製品を市場に投入するというスピーディーで革新的な一面が目につきますが、実は市場調査に長い時間をかけていたり、地道な試行錯誤を日々繰り返したりしている愚直な面があるかもしれません。
企業における内部の状況を全て推し量ることは難しいかもしれませんが、憧れという主観的な判断だけではなく、客観的な世間の評価も含めたうえで、憧れを志望動機に組み込むことをおすすめします。
そうすることで、憧れを多面的に捉えられるでしょう。
憧れ以外の仕事への思いも組み込む
憧れは、理想や幻想の域を抜け出せないことが多々あります。
学生時代に考えていた憧れが、いざ社会人になってみると全然違っていたケースも少なくありません。
きらびやかなイメージのメディア業界が、実は入ってみると昔ながらのしきたりにあふれていて幻惑したといった具合です。
憧れが強くて、理想を自ら具現化してしまっている人ほど、現実とのギャップを感じて、現場の状況に対応できなくなってしまうことが多くなる傾向にあります。
仕事内容についてもしっかりと考え、憧れの企業の中で自分がどのように仕事に向き合い、どのような目標を持って取り組んでいきたいのかという、将来へのビジョンと仕事への思いを組み込むようにするのが大切です。
企業でどう頑張るかを盛り込む
仕事への思いに加味した要素として、入社した企業でどう頑張るかという将来ビジョンは欠かせません。
憧れているからこそ、企業研究もはかどるのではないでしょうか。 その中で見えてきた企業の理念や社風、社会的意義、またビジネスモデルに対し、自らがどのような意識を持って取り組めるのかを整理して考えてみましょう。
憧れがあるのならば、達成したいビジョンもはっきりしてくるはずです。
自らの将来像や目標が明確な人ほど、自己をコントロールできます。
入社後も、目標に向かって努力して頑張っていける根拠を示すためにも、憧れにプラスして、自己目標をしっかり持っている人材であることを強くアピールしていきましょう。
【志望動機に憧れは使える?】憧れを用いる時の注意点
使い方によっては、憧れが志望動機に使えることをお伝えしてきました。
では、実際に憧れを志望動機に用いるにあたっての注意点について、もう少し深く掘り下げて考えてみましょう。
あなたの憧れと思っていることが実際には憧れではなく、一般的な世間の評価と何ら変わりないことがあるかもしれません。
また、たとえ憧れであったとしても、志望動機に組み込む憧れとしては不適切で、とても活用できる内容ではない可能性も考えられます。
製品が好きは憧れではない
企業の特定の製品を愛用していたことを、憧れとして活用するには疑問符がつきます。
なぜなら、その製品の開発や販売以外の職種に就いたとしたら、憧れのモチベーションを維持して仕事が続けられるのだろうかと思われてしまう可能性があり、あまり良い印象を持たれないからです。
しいていうなら、その製品を生み出す技術力に憧れを持ったという考え方であれば、企業に対する憧れと判断され、部署や職種を横断して活躍が見込めることをアピールできます。
ネームバリューは憧れではない
ネームバリューを憧れの根拠にするのは、はなはだ浅はかです。
誰もが知っている有名企業だから入社したいというのは、反対にその企業に入った自分が社会的に優位に見られたいとする、本能のあらわれとも判断されてしまうからです。
世界的にも有名な日本企業は複数あり、結局ネームバリューさえあればどの企業でも良いのかという考えにつながってしまいかねません。
ネームバリューがあるからというのは憧れではなく、いわゆる自己欲望ともいえるのではないでしょうか。
企業側もそのような応募者の心理は十分理解しているので、有名だからというだけの志望理由では、採用基準を大きく下回ります。
よって、ネームバリューを憧れに使うのは辞めておきましょう。
【志望動機に憧れは使える?】志望動機のポイント
志望動機に憧れを使う際のポイントを3つご紹介します。
1つ目は「なぜその企業に入りたいのかを差別化すること」、2つ目は「企業にどう貢献するのかを考えること」、最後の3つ目は「入社後どうなりたいかを考えること」です。
いずれも共通しているのは、単なる主観的な憧れの側面だけではなく、憧れをベースにして、なぜその企業でなくてはならないのか、その企業で何を達成し、どういった貢献ができるのかなどの採用企業側の視点を盛り込めるかどうかという点です。
これまでに述べた注意点と合わせ、憧れを志望動機に盛り込む際にはぜひ上記の3つのポイントを意識してみてください。
うまく憧れを志望動機に活用できれば、好印象を与えられるでしょう。
なぜその企業に入りたいのか差別化する
なぜその企業に入りたいのかを差別化しましょう。 志望動機で大切なことは「差別化」です。
他人と同じ理由、同じ視点では印象に残りません。 オリジナルな志望動機が選考の明暗を分けるといっても良いでしょう。
なぜその企業でないといけないのか、理由を突き詰めて考えてみてください。
憧れという理由だけで志望動機を構築しようとすると、差別化を明確にできません。
この企業だからこそできること、ほかの企業では達成できないことを、憧れというフィルターを通して見つけ出し、伝えることで好評価につながります。
差別化のコツは、同業他社と比較して相違点を見つけることです。
もしかしたら、その相違点こそが憧れの根拠になっているかもしれません。
企業にどう貢献するのかを考える
自分の特性、強みが企業にどう貢献できるかを考えてみましょう。
志望企業の積極的な営業スタンスが憧れのもとになっているような場合、自身のコミュニケーション能力は十分貢献できる要素となり得ます。
例えば、「人と話すのが得意なので、周りと積極的にコミュニケーションを取ることで早く職場に馴染み、新規の取引先にも臆せず訪問できます。
人との関わりを通じて円滑な人間関係を築くのが得意なので、いろいろな人を巻き込んで大きな仕事を達成できるものと考えます」といった具体的な貢献のアピールは非常に有効です。
自社に憧れを持ち、その中で自身が活かせることを明確に理解している応募者に、企業側は熱い視線を持って応えることでしょう。
入社後どうなりたいかを考える
入社後にどうなりたいか、何がやりたいのかといった将来ビジョンを持っていることは重要です。
憧れて入った企業だからこそ、その企業で自分がどういった成長をしていけるかといった長期的目線の有無が、企業の採用活動における選考の判断基準の一つとなっています。 ただし、志望する企業の教育システムや考え方はさまざまです。
自主性を尊重し、企業内での新規事業を推奨する社風の企業がある一方、協調性を何よりも重視し、チームワークを強化することで部署単位の業績を伸ばし、個人の成長を促す企業もあるでしょう。
あらかじめ企業研究を念入りに行い、自分の描いている将来ビジョンと志望企業の考え方に乖離がないことを示すことが求められます。
【志望動機に憧れは使える?】志望動機を作るためには
それで次に、実際に志望動機を作るための事前準備のポイントについて4点お話しします。
1つ目は「企業研究をしっかり行うこと」、2つ目は「SNSをチェックすること」、3つ目は「OB訪問を行うこと」、そして最後は「軸をしっかりさせること」です。
このポイントは、志望動機を作るにあたって最も重要で基本的な事項ですので、憧れを志望動機に盛り込む場合もそうでない場合も、しっかりと理解して漏れなくカバーしておくことが大切です。
企業研究をしっかり行う
企業研究を念入りに行うことは、就職活動の基本中の基本です。
そもそも、志望する企業がどのような会社かもわからずに入社を志すのは、根拠が乏しく、志望動機を作る材料に関しても大きく不足しているといえるのではないでしょうか。
企業研究のやり方はさまざまです。 説明会に参加するリアルな方法だけでなく、企業のホームページにはかなりの情報が公開されていますので、次に述べるSNSも含めたオンラインでの情報収集にもぜひ力を入れてみてください。
SNSをチェックする
企業のホームページでは、ある程度基本的な情報の収集は可能でしょう。
ただし、その企業で働く社員のリアルな感想や生の声は、ホームページ上ではなかなかわかりにくいものです。
そこで、ホームページで得た社長や役員の情報のみならず、各部門担当者のメッセージなどのコーナーで名前が掲載されていれば、そういった社員の情報からSNSを検索してみることをおすすめします。
普段の業務における何気ないつぶやきや本音など、公式な情報ソースではなかなか語られない本音が見え隠れしている場合もありますので、現場のリアルな情報が手に入るかもしれません。
収集した情報から企業の本質が垣間見えてくることもありますので、SNSはこまめにチェックしましょう。
OB訪問を行う
ホームページやSNSから情報を収集することの対極にあるのが、OB訪問を行う方法です。
機会があれば、ぜひ先輩社員にその企業に入社したきっかけや、入って良かったこと、また苦労している点や入社前と入社後のギャップなど、可能な限り幅広くヒアリングして生の声を聞いてみましょう。
入社前からの憧れがあったのかどうかを聞ければ、志望動機に憧れを使う際の大きな参考となるでしょう。
また、志望動機になるような憧れを持たぬまま入社していたとしても憂う必要はありません。
憧れがなかったにも関わらず入社したのなら、それを上回る志望動機があったはずです。
どのような志望動機にしたのかも聞ければ、これから志望動機を作る際のお手本にできるかもしれませんので、OB訪問を活用しない手はありません。
軸をしっかりさせる
事前準備の最後は、就活の軸をしっかりさせることです。
具体的には、過去の体験や自身の特性にもとづく自己分析と志望動機に一貫性があるかどうかです。
就活におけるポイントはほかにもいくつかあります。
長所をはじめとした自己PRやガクチカなど、自身が発する全ての情報について考え方がブレてしまうと、説得力がなくなってしまうでしょう。
とくに重要となる志望動機は、その根拠となる自己分析などに一貫性のある軸が欠かせません。
就活の軸は綿密で正しいやり方の自己分析で見つけられるので、いきなり志望動機を作ろうとはせず、自分自身を見つめ直して軸をはっきりさせるところからはじめてみるのが良いかもしれません。
【志望動機に憧れは使える?】例文
最後に例文を一つご紹介します。
私が幼少の頃、持ち運びのできる情報端末といえは主に携帯電話が主流でした。
携帯電話の台頭からスマートフォンが当たり前の時代に突入するまで、わずか数年間の圧倒的なスピードで、私たちの生活様式が様変わりしたことは驚きです。
今では国民の約8割が保有しているともいわれているスマートフォンを、はじめて世に送り出した御社の先見性と卓越した製品開発力に憧れを抱いていました。
企業研究とOB訪問を通じ、具体的な仕事内容と御社が取り組まれている社会的意義について深く知れたことは、自分の憧れを確信するとともに、御社でぜひとも働いてみたいという気持ちをさらに強くさせました。
現状に満足することなく新しいことに挑戦していく社風は、私の性格ともマッチしており、入社後は安定した社会基盤を維持しつつも、革新的な製品やサービスを作り上げることで御社に貢献したいと考えています。
まとめ
これまで企業への憧れは志望動機になるのかという点についてお話ししてきました。
結論は、憧れのみでは志望動機として不十分です。
志望動機を作る際の事前準備とセオリーをしっかり理解したうえで、憧れを志望動機に組み込むのが良いでしょう。
憧れは、企業を選ぶときの大きなきっかけにはなり得ます。
また、自社に好意的な印象を持つ応募者に対して、少なくとも否定的なイメージを持つ企業はありません。
熱い思いと同価値の憧れをうまく志望動機に組み込めるよう、ぜひこの記事を参考に試行錯誤を繰り返してみてください。
明治大学院卒業後、就活メディア運営|自社メディア「就活市場」「Digmedia」「ベンチャー就活ナビ」などの運営を軸に、年間10万人の就活生の内定獲得をサポート