はじめに
「自分のアイデアをカタチにして、多くの人に届けたい」。
そんなやりがいのある仕事として、企画職(商品企画、宣伝広報、マーケティングなど)は毎年就活生から圧倒的な人気を集めています。
しかし、華やかなイメージの裏で、新卒採用における企画職の枠は極めて少なく、数百倍の倍率になることも珍しくありません。
そのため、「結局は学歴フィルターで決まっているのではないか」と不安を感じる方も多いでしょう。
結論から言えば、企画職は学歴だけで決まるわけではありませんが、求められる能力の水準が高く、結果的に高学歴の学生が多く採用されている現実はあります。
しかし、「学歴が高い=企画ができる」わけではなく、企業が真に求めているのは学歴を超えた「ある能力」です。
この記事では、企画職における学歴の実態と、高学歴層との競争に勝ち抜くための具体的な戦略を、現場の視点から徹底解説します。
【企画職 学歴】学歴フィルターの実態
企画職における学歴フィルターの実態は、企業規模や業界によって大きく異なりますが、大手企業の総合職採用においては「存在感」が非常に強いのが現実です。
特に、食品、飲料、化粧品メーカーや大手広告代理店など、学生認知度の高いBtoC企業では、数万人のエントリーから選考を行うため、初期段階でMARCHや関関同立以上の学歴を基準にスクリーニングが行われるケースが散見されます。
採用枠が数名程度と極端に少ない企画職では、失敗のリスクを避けるために「実績のある大学」からの採用に偏りやすい傾向があります。
一方で、ITベンチャーやWebサービス企業、エンタメ業界の一部では、学歴よりも「何を作れるか」「どんな実績があるか」というアウトプット重視の採用が行われています。
ここでは、学歴不問でインターンシップの成果やポートフォリオの内容が最優先されるため、偏差値とは無関係に優秀な企画者が採用されています。
「新卒でいきなり企画職」という枠自体が狭き門であるため、学歴フィルター以上に「配属リスク」や「実力主義」の壁が高いことを理解しておく必要があります。
【企画職 学歴】出身大学の傾向と特徴
企画職に配属される新卒社員の出身大学を見ると、大手企業であれば東京大学、京都大学、一橋大学といった国立大学や、慶應義塾大学、早稲田大学の上位層が目立ちます。
特にマーケティング要素の強い職種では、高い論理的思考力が求められるため、これらの大学出身者が多くなる傾向にあります。
また、デザイン思考やデータ分析が重視される近年では、美大・芸大出身者や、理系大学院卒のデータサイエンティストが企画職として採用されるケースも増えています。
しかし、これはあくまで大手人気企業の話です。
中堅メーカーやIT企業、専門商社などでは、日東駒専や産近甲龍、地方国公立大学出身の企画担当者も数多く活躍しています。
こうした層に共通しているのは、学生時代にビジネスコンテストでの入賞経験があったり、長期インターンで実務経験を積んでいたりと、学歴以外の「プラスアルファの強み」を持っている点です。
出身大学の偏差値だけで可能性がゼロになるわけではありませんが、ボリュームゾーンとしては上位校が多いのが実情です。
【企画職 学歴】学歴が話題になる理由
企画職の就活において学歴が頻繁に話題に上がるのは、単に人気があるからだけではありません。
業務で求められるスキルの質が、受験勉強で培われる能力と高い相関関係にあることや、採用構造上の問題が大きく影響しています。
なぜ企画職=高学歴というイメージが定着しているのか、その背景にある4つの理由を詳しく解説します。
圧倒的な高倍率による機械的な絞り込み
企画職は、文系・理系を問わず多くの学生が憧れる職種であり、一つの求人に対して応募が殺到します。
大手メーカーの商品企画職などは、採用数名に対して数千人が応募することもザラにあります。
人事担当者のリソースには限りがあるため、エントリーシート(ES)を全員分精読することは現実的に不可能です。
そのため、一定の学力レベルを担保するための効率的な手段として、学歴によるフィルタリングが行われやすい構造にあります。
企業としては、確率論として「難関大学の学生の方が、基礎的な処理能力や地頭が良い可能性が高い」と判断します。
これは個人の能力を否定するものではなく、組織運営上のコストパフォーマンスを追求した結果です。
この「足切りライン」を突破しない限り、どれほど素晴らしいアイデアを持っていても面接のテーブルに乗れないという現実が、学歴論争の大きな要因となっています。
高度な論理的思考力(ロジカルシンキング)の必要性
「企画=ひらめき・センス」と思われがちですが、実際の業務の9割は地道な論理の積み上げです。
「なぜ今この商品なのか」「ターゲットは誰で、市場規模はどれくらいか」「競合他社に勝てる根拠は何か」といった問いに対し、客観的なデータに基づいて論理的に説明し、上層部を納得させなければなりません。
この「根拠を積み上げて正解を導くプロセス」は、難関大学の入試問題で求められる思考力と非常に似通っています。
感情や思いつきだけでなく、数字や事実ベースで物事を構造化して考える力は、偏差値の高い学生が得意とする領域です。
そのため、面接やグループディスカッションで論理的な破綻がないかを厳しくチェックされた結果、高学歴の学生が選考を通過しやすくなるという側面があります。
多様なステークホルダーを動かす「言語化能力」
企画職は、自分のアイデアを実現するために、営業、開発、製造、財務など、社内のあらゆる部署を巻き込んでプロジェクトを推進する必要があります。
立場の違う人々に意図を正確に伝え、協力を取り付けるためには、高い「言語化能力」と「コミュニケーション能力」が不可欠です。
抽象的なイメージを具体的な言葉に落とし込み、相手の理解度に合わせて説明を使い分ける知的な柔軟性が求められます。
この能力は、論文執筆やゼミでの議論、あるいは複雑な文章読解を通じて鍛えられることが多く、基礎教養の深さが問われます。
高学歴層は豊富な語彙力や背景知識を持っていることが多く、説得力のあるプレゼンテーションができる傾向にあるため、採用評価が高くなりやすいのです。
新しい知識を吸収し続ける「学習習慣」の有無
市場のトレンドは日々変化しており、マーケティングの手法やテクノロジーも進化し続けています。
企画職として成果を出し続けるためには、常に新しい情報をキャッチアップし、勉強し続ける姿勢が不可欠です。
受験勉強という長期的かつ過酷なプロジェクトを乗り越えてきた経験は、「嫌なことや難しいことであっても、目標のために学習を継続できる能力」の証明として評価されます。
企業はポテンシャル採用において、入社後の成長率を重視します。
過去に高いハードル(難関大合格)をクリアした実績がある学生は、入社後も自律的に学び、業務に必要な専門知識を素早く習得してくれるだろうという期待値が高いため、学歴がプラスの評価材料として機能します。
【企画職 学歴】学歴より重要な評価ポイント
学歴はあくまで「基礎能力の証明」に過ぎません。
実際の企画業務では、勉強ができるだけでは通用しない場面が多々あります。
高学歴でも採用されない学生がいる一方で、学歴の壁を越えて採用される学生には共通した強みがあります。
ここでは、企業が学歴以上に重視している4つの評価ポイントを紹介します。
「顧客視点」を徹底する想像力と共感性
企画職で最も危険なのは「独りよがりなアイデア」です。
自分が作りたいものではなく、「顧客が本当にお金を払ってでも欲しいものは何か」を徹底的に考え抜く力が求められます。
これには、自分とは異なる属性の人々の生活や感情をリアルに想像する「共感性」が必要です。
机上の空論ではなく、現場に足を運び、生の声を拾い上げ、顧客のインサイト(隠れた本音)洞察できる泥臭い行動力が評価されます。
面接では、「最近気になったサービスは?」といった質問を通じて、その視点が「消費者目線」で終わっているか、それとも「提供者目線」で分析できているかが見極められます。
頭の良さよりも、他者の痛みに寄り添い、それを解決しようとする強い想いと洞察力があることが、優れた企画者の条件です。
実現可能性を見極める「計数感覚」と「ビジネス視点」
どんなに面白い企画でも、利益が出なければ企業としては採用できません。
原価、販管費、損益分岐点などを計算し、ビジネスとして成立するかどうかを判断する「計数感覚」が必須です。
「面白いからやりたい」という情熱だけでなく、「これだけの投資対効果(ROI)が見込める」という冷静なビジネス視点を持っている学生は、即戦力候補として高く評価されます。
学生の企画案は「売上」ばかりに目が行きがちですが、コストやリスクまで考慮できているかどうかがプロとの分かれ目です。
数字に強いことはアピールになりますが、それは数学的な難問が解けることではなく、「商売としての勘所」を数字で説明できることを指します。
周囲を巻き込み推進する「リーダーシップ」と「調整力」
企画職はプロジェクトの旗振り役ですが、自分一人では何も作れません。
開発部門には技術的な制約をクリアしてもらい、営業部門には販売戦略を共有してもらうなど、各部署の利害を調整しながらゴールへ導くリーダーシップが求められます。
自分の意見を通す強引さだけでなく、相手の立場を尊重し、妥協点を見つけながらチームを前進させる「調整力」や「人間力」が重要視されます。
選考のグループディスカッションなどでは、自分のアイデアに固執するのではなく、メンバーの意見を統合し、より良い結論に導けるファシリテーション能力が見られています。
優秀な孤高の天才よりも、チームのパフォーマンスを最大化できる「愛されるリーダー」であることが、組織で働く企画職には不可欠です。
トレンドをキャッチし独自の視点で切り取る「情報感度」
世の中の動きに敏感で、流行の兆しをいち早くキャッチする「アンテナの高さ」も重要な才能です。
しかし、単に流行っているものを知っているだけでは不十分です。
「なぜこれが流行っているのか」「次はどう変化するか」という独自の仮説を持ち、それを企画に落とし込む力が問われます。
ネットニュースやSNSの情報だけでなく、街中の観察や異分野の知識を組み合わせ、オリジナルの視点を提示できる発想力が評価されます。
面接官は「君ならではの視点」を期待しています。
誰もが知っている情報から、誰も気づいていない価値を発見するセンスと、それを面白がって語れる熱量があれば、学歴のハンデを覆す強力な武器になります。
【企画職 学歴】学歴に不安がある人の対策
企画職は狭き門ですが、学歴フィルターを突破する方法は存在します。
真正面からのスペック競争ではなく、実務能力や熱意を具体的な形(アウトプット)で示すことが鍵となります。
学歴に自信がない学生がとるべき、効果的な4つの対策を解説します。
完成度の高い「自主企画書」をポートフォリオとして持参する
口先だけで「企画力があります」と言うのは誰にでもできますが、実際に企画書を作って持参する学生はごくわずかです。
志望企業の課題を分析し、具体的な新商品や新サービスの企画書を作成して面接やOB訪問で見せてください。
「ここまでやってくる学生はいない」という驚きを与え、実務レベルの思考力があることを物証として提示できれば、学歴の壁を一気に越えられる可能性があります。
企画書は、ターゲット設定、コンセプト、収支計画、プロモーション戦略まで網羅した本格的なものである必要があります。
完成度はもちろんですが、そこまでやる「熱意」と「行動力」自体が、企画職に最も必要な資質として評価されるのです。
長期インターンシップで「企画の実務経験」を積む
ベンチャー企業などの長期インターンシップに参加し、実際にマーケティングや企画の実務に携わり、数字としての成果を残すことが最強の対策です。
「SNS運用でフォロワーを〇万人増やした」「新規事業の立ち上げに関わり売上〇万円を作った」という実績は、どの大学を出ているかよりも遥かに説得力があります。
企業は即戦力を求めているため、学生時代にビジネスの現場でPDCAを回した経験は、ポテンシャル採用の枠を超えた評価対象となります。
実務経験があれば、面接での回答も具体的になり、深みが出ます。
「サークルのリーダー経験」などのありきたりなガクチカではなく、ビジネスの共通言語で語れる「実務の実績」を作ることに全力を注ぎましょう。
ビジネスコンテストに参加し客観的な評価を得る
学外のビジネスコンテストや、企業主催のアイデアソンなどに参加し、入賞などの実績を作るのも有効です。
第三者機関から企画力やプレゼンテーション能力を認められたという事実は、学歴を補完する強力な「証明書」になります。
たとえ優勝できなくても、そこで得たフィードバックをもとにブラッシュアップし続けたプロセス自体が、面接でのアピール材料になります。
コンテストへの参加は、他大学の優秀な学生と切磋琢磨する機会でもあります。
自分の井の中の蛙レベルのアイデアではなく、市場で通用するレベルまで視座を高める経験は、企画職を目指す上での必須科目のひとつと言えます。
「営業職」など別職種から社内異動でのキャリアを狙う
新卒でいきなり企画職に配属されるのは、超難関大学の学生であっても運が絡むほど難しいものです。
そこで、まずは採用枠の多い「営業職」や「販売職」として入社し、現場でお客様の声を徹底的に学んでから、社内公募制度などを利用して企画職への異動を狙うという現実的なルートをおすすめします。
実は、現場を知らない企画者よりも、営業でお客様のニーズを肌で感じてきた社員の方が、優れた企画を出せるケースが多いのです。
面接でも「まずは営業として現場の最前線で顧客心理を学び、将来的にはその経験を活かして企画職に挑戦したい」と語ることで、キャリアビジョンの解像度が高いと評価されます。
「新卒カード」での配属にこだわりすぎず、中長期的な視点で企画職への道のりを設計する戦略性を持つことが重要です。
【企画職 学歴】よくある質問
企画職を志望する学生からは、センスの有無や配属リスクに関する切実な質問が多く寄せられます。
ここでは、就活アドバイザーとしての経験に基づき、学生の疑問に対してオブラートに包まず回答します。
現実を知った上で、正しい対策を行いましょう。
センスに自信がないのですが、企画職は務まりますか?
結論から言えば、企画職に「天才的なセンス」は必ずしも必要ありません。
ビジネスにおける企画とは、アート作品を作ることではなく、課題を解決することだからです。
必要なのは、情報を収集・分析し、論理的に組み合わせる「編集能力」や「構成力」です。
これらはトレーニングによって誰でも習得可能です。
もちろん、斬新な発想ができるに越したことはありませんが、それ以上に「なぜそれが売れるのか」を説明できるロジックの方が重視されます。
センスがないと悩む暇があれば、マーケティングのフレームワークを学び、世の中のヒット商品がなぜ売れているのかを分析する習慣をつけることをおすすめします。
「企画職採用」を行っている企業はありますか?
一部のITベンチャーや専門職採用を行っている大手企業を除き、新卒で「企画職確約」の求人は非常に少ないのが現状です。
多くの日本企業は「総合職」として一括採用し、研修後の適性を見て配属を決定します。
そのため、どうしても新卒から企画職に就きたい場合は、職種別採用を行っている企業を探すか、小規模でも裁量権のあるベンチャー企業を選ぶ必要があります。
ただし、「企画職確約」を謳っていても、実態は営業に近い業務からスタートする場合もあります。
求人票の文言だけで判断せず、OB・OG訪問などで実際の配属状況や若手の業務内容を詳しく確認することが不可欠です。
学歴以外で有利になる資格や学部はありますか?
直接的に「この資格があれば採用される」というものはありませんが、マーケティング・ビジネス実務検定や、ITパスポート、Googleアナリティクス個人認定資格(GAIQ)などの知識は、実務への関心を示すアピールになります。
また、学部に関しては、経営学部や商学部(マーケティング専攻)、社会学部(メディア・行動心理など)は親和性が高いですが、必須ではありません。
むしろ近年は、データに基づいた意思決定が重視されるため、統計学やデータサイエンスを学んでいる理系学生や、心理学を専攻している学生が評価されるケースも増えています。
重要なのは学部名や資格名そのものではなく、「その知識を使ってどんな課題を解決できるか」を語れることです。
まとめ
企画職は確かに高学歴層が集まる難関職種であり、大手企業ではある程度の学歴フィルターが存在することも否定できません。
しかし、企業が求めている本質は「偏差値の高さ」ではなく、「論理的思考力」「顧客視点」「実現させる行動力」です。
学歴に不安がある場合でも、完成度の高い企画書の持参や、長期インターンでの実務実績、あるいは営業職からのキャリアステップなど、戦略的にアプローチすることで道は拓けます。
明治大学院卒業後、就活メディア運営|自社メディア「就活市場」「Digmedia」「ベンチャー就活ナビ」などの運営を軸に、年間10万人の就活生の内定獲得をサポート











