目次[目次を全て表示する]
はじめに
転職の書類や面接で必ずといって良いほど問われるのが、転職の志望動機です。
なぜ現職を辞めてまでその会社に就職したいのか、そのベースとなっている意欲を評価されれば、たとえ経験が足りないと感じられても採用されるケースもあります。
それだけ重要な転職の志望動機ですが、いざ考えてみると思いつかないという人も少なくありません。
ここでは説得力ある志望動機を作成するため、考えを整理するステップと例文を紹介します。
【転職の志望動機がない】志望動機を書く4ステップ
転職に志望動機などないと考える人もいますが、転職という行動を起こすときに、まったくなんの動機もないということはありません。
現状への不満だけに考えが囚われてしまうことも多いのですが、冷静に自分の内面を探れば目指す未来への道が見えてくるはずです。
大切なのは不満から逃れることではなく、これから自分がどう生きていくかを決めることです。
転職にあたっては、やりたいことだけでなく「ありたい姿」を考えることが重要であり、それが明確になればおのずと志望動機も定まります。
それでは自分の内面を探り、志望動機を作成するための4つのステップを解説します。
仕事に対するこだわりや大切なことを明確にする
仕事は人生においてとても重要なウェイトを占める存在であり、納得のいかない状態で長期間耐えられるものではありません。
特に重要なのは、自分が仕事にどんなこだわりを持ち、どんなことを大切にしているかを自分自身で知り、それを実行できる環境で働くことです。
中には「今まで仕事をしてきたけれど、こだわりなど持ったことはない」と考える人もいるでしょう。
でも実際には無意識のうちにも仕事に対して自分なりの価値観は形成されていますし、そのものさしに合わないことが続くと、仕事に対する不満やストレスが募るのが一般的です。
仕事をする上で自分がどんなことを大切に考えているかを知るためには、これまでの職場経験で、やりがいや喜びを感じたことを思い出してみるのが一番でしょう。
モチベーションがアップした仕事、時間も疲れも忘れて熱中した業務など、今ままでの経験をリストアップしてみてください。
そして同時に、この人は社会人として魅力的に感じたという人物も思い出してみてください。
そこにあるのは理想の自分、ありたい自分の姿かもしれません。
こだわりや大切なことをベースに業界や企業を探す
自分の仕事に対する価値観が掴めたところで、次のステップは自分にマッチする業界や企業探しです。
転職先のターゲットを決めるためには、とにかく最新情報を研究するしかありません。
手軽にできるのは企業のWebサイト研究ですが、その他にも経済ニュースや各種メディアも駆使して、多方面からアプローチするのがポイントです。
特に経営者や主要人物のインタビュー記事などでは、普段は知り得ない深い部分まで掘り下げて知ることもできるでしょう。
また、便利に活用できるのが新卒採用のサイトです。
学生にもわかりやすいよう嚙み砕いて説明されていますので概要が掴みやすく、近年は社員の声なども多数掲載されていますので、OB訪問のような情報を得ることも可能です。
そして、上場企業であればIR資料に目を通すことで、経営状態も詳しく知ることができます。
その上で各企業と自分の仕事に対する価値観とを照らし合わせ、マッチする企業を絞り込むことがポイントです。
企業のこだわりと自分のこだわりの共通点を調べる
ターゲットとなる企業が定まったら、いよいよ実際に転職の志望動機を作成するためのステップに移りましょう。
まずすべきことは、企業のこだわりと自分のこだわりの共通点をリストアップすることです。
企業経営者にはこだわりがあり、それは理念や行動指針として掲げられているのが一般的ですが、その他の情報も含め企業研究で得た価値観と自分の価値観との共通性をまとめてみましょう。
相手企業が大切にしていることを挙げ、自分も同じ志を持っていることを伝えることで、転職の志望動機の軸ができます。
この内容は面接においても活用すべきものですので、いかなるときも語れるよう、自分でしっかり納得した状態にしておくことが重要です。
また、そうした価値観を持つに至った実体験のエピソードを準備しておくと、相手企業の理念に共感していることを説明するアピール材料になります。
ベンチャー企業や新設企業は、特に自社の理念とのフィット感を重視する傾向が強いため、説得力を持って語れるようにしておきましょう。
入社後、その会社で自分がどう活躍できるかを考える
企業の価値観と自分の価値観がマッチすることはとても大切です。
ただし、単にマッチするだけでは社員として採用するまでには至りません。
企業が人材を採用するのは、当然のことながら、入社後にその人の働きが自社にメリットをもたらしてくれる期待があるからです。
理念の理解や共感は大前提であり、その上でどのような働きをしてくれるかが見えなければ、企業側も採用したいとは考えないでしょう。
そこで転職の志望動機を作成するためには、自分がその会社でどう活躍し、どう貢献することができるかを具体的に考えなければなりません。
同じ価値観を持つからこそ、経験やスキルを活かして新しい提案ができる、顧客開拓ができるという入社後の活動イメージを伝えることで、企業側も期待できる人材とみなしてくれるでしょう。
どう活躍に結びつければ良いかわからない人もいるかもしれませんが、ターゲット企業の商品やサービスを分析し、こだわりを活かして他社との差別化などを提案することもできます。
実際に入社したつもりで企画提案してみるのも、志望度の高さをアピールする手法といえます。
【転職の志望動機がない】志望動機を書く際の4つのポイント
転職の志望動機を書く場合、いくつか押さえておくべきポイントがありますが、一番気を付けるべきなのは後ろ向きな印象を与えないことです。
現職に対してなんらかの不満があることが転職理由であることは否めませんので、転職にあたっては多かれ少なかれネガティブな要素が含まれるのは事実でしょう。
ただ、それをそのまま転職先に伝えたところで、良い印象になるはずはありません。
ここでは、志望動機を書く際に気を付けるべき点を4つ解説します。
転職理由と志望動機に一貫性を持たせる
転職理由がネガティブなイメージだからといって、まったく乖離した志望動機を述べると説得力が失われます。
とってつけたような動機を述べても信頼性がありませんし、採用担当者も人物に対して疑いの目を向けるでしょう。
ポイントは、転職理由と志望動機に一貫性を持たせることです。
たとえば、「今の会社では若手に裁量を与えない風土のため、年齢に関係なく責任ある仕事を任せる御社の経営方針に魅力を感じた」という内容であれば、納得できる一貫性があります。
転職理由は「責任ある仕事を任せてもらえない」こと、志望動機は「若くても裁量が与えられる」ことです。
採用担当者はこの人が何を不満に思い、何を求めて自社を志望しているかがわかりますし、同時に入社後に責任ある仕事を意欲的にこなしてくれるであろうという期待も持つことができます。
難しく考えず、辞める理由と移る理由を一つにつながて考えることで、自然に納得できる志望動機を作るのがポイントです。
ネガティブな志望動機をポジティブに変換する
今の職場に対する不満や怒りがあるのも事実かもしれませんが、それをそのままぶつけても相手企業としてはどうすることもできません。
転職理由と志望動機を一体化する上でどうしてもネガティブ要素に触れざるを得ない場合にも、ストレートな表現ではなくポジティブで正当な転職理由にまず昇華させることがポイントです。
たとえば、「非効率な古いやり方を強要する上司が嫌」という場合、「業務効率を上げて顧客満足度を上げる企画に時間を充てたいが、今の職場環境では実現が難しい」となります。
難しい理由は紛れもなく上司の強要のせいなのですが、そこにストレートに触れる必要はありません。
上司が悪い、会社が悪いというのではなく、あくまで「そうした環境ではない」という表現に徹すると良いでしょう。
この例では、「自分は顧客目線にこだわった仕事がしたい→今の職場ではそれができない」という順で伝わり、受け取るほうは非常にポジティブな意欲を感じることができます。
その会社だけしか言えない志望動機を作る
転職に限りませんが、企業側はなぜ自社を選んだかを知りたいと考えています。
同じ業界、同じ業種が数ある中で、どうして自社でなければならなかったのか、そこに説得力を求めることは少なくありません。
転職者を受け入れるときに企業側が懸念するのは、入社してもまたすぐ転職されてしまうのではないかということです。
どの会社にも通用するような動機だと、「この人は今の職場が嫌なだけで、転職できればどこでもいいのだ」「不満があればまたすぐ出ていくおそれがある」と捉える可能性があります。
志望動機には、その会社でなければならない理由が必要です。
そこでなければならない、そこに自分の未来があると感じたことを、しっかり相手にも伝えることがポイントです。
説得力があればどのようなことでも構いませんが、今までの職務経験やスキルが活かせるというアピールでも良いですし、自分の強みに合うというアピールでも良いでしょう。
経営理念や社風、戦略などに共感したことを伝える
経営理念や社風には、その企業が一番大事にしていることが表れています。
前述したステップでも、自分の価値観と企業の価値観のマッチングを重視するよう述べましたが、転職の志望動機として経営理念や社風、事業戦略への共感を述べるのも良い方法です。
ただし、浅い知識ではかえって逆効果になる恐れがありますので、語る以上は多方面からしっかり企業研究を行ってからにしましょう。
また、事業戦略についての共感を語る場合は、3Cを活用して分析するのもオススメです。
3Cは、Company(会社)Customer(顧客)Competitor(競合)から企業を分析するマーケティング用語ですが、顧客目線と競合目線で相手企業の立ち位置や戦略を分析することができます。
現在抱える課題や今後目指す方向性なども理解が深まるため、高い志望度を伝え、即戦力になることも伝えられるでしょう。
【転職の志望動機がない】志望動機のNGポイント
ここまで転職の志望動機に書くべきことを述べてきましたが、反対にNGとなるポイントはあるのでしょうか。
大前提としては、前述の通り「どこでも使い回せるもの」はNGですが、一見するときちんと成り立っているように見える内容でもふさわしくないものがあります。
この場合、新卒ではなく社会経験のある中途採用であるからこそのNGポイントもありますので、どこが気を付けるべき点なのかを解説します。
仕事内容に言及していない
すでに社会人としての就業経験がある以上、仕事とはどういうものか、職務とはどういうものかはわきまえていると考えられます。
にもかかわらず、志望動機に具体的な仕事内容が含まれていないのは大きなマイナスポイントです。
学生であればまだ許されなくもないかもしれませんが、たとえばその企業の商品やサービスへのファンレターのような内容では、採用されることはありません。
もちろんその企業が提供するものが好きだという気持ちは大切ですが、魅力ばかり熱く語っても、仕事をしてもらえる人物とは捉えられませんので注意してください。
中途採用者は企業にとって即戦力です。
入社したら商品やサービスをより発展させたり、より多く販売したり、まったく新しく生まれ変わらせたりする仕事を請け負わなければなりません。
今までの経験やスキルを活かし、どのように業績を上げていくつもりなのか、そこまで考えが及ばなければ納得を得ることはできないでしょう。
条件面のみの志望動機
転職者にありがちなのが、条件さえ合えばなんでも良いという考えです。
確かに現在の職場では、給与が安い、休日が取れない、残業が多いといった様々な待遇面での不満が募っているかもしれません。
転職先を選ぶ際にも、給与が高くて福利厚生が充実していて、休みやすいといった条件面が最優先されることが多いですが、これだけが志望動機では、相手企業から選ばれることはないでしょう。
自分らしく生きるためには、条件はもちろん大切です。
でも条件はあくまで条件、仕事は仕事です。
相手企業はその人がどんな仕事をしてくれるのか、どんな貢献をしてくれるのかを知りたいのであって、条件は納める仕事の質によって決まると考えなければなりません。
転職を考える際には順番を間違えてはいけませんので、①自分はどんな仕事を納められるか、②それに対してどれくらいの対価を支払ってくれるのか、という順序で考えてください。
どんな貢献をしてくれるかわからない人に、企業がお金を払うことはありません。
転職理由と志望動機に関連性がない
前の項でも書きましたが、転職理由と志望動機がまったく関係のない内容の場合、採用担当者はその人の人となりを疑問視し、信頼性が低い人物と捉えることが多いです。
職場に対する不満を隠すために関連のない動機を作ったのかもしれませんが、全体に矛盾が生じると一貫性のない主張として、書類の段階で蹴られてしまうのが一般的でしょう。
たとえば、転職理由は「専門性が磨けないから」、志望動機は「様々な業務に携われるから」と書かれていたら、二面性を疑うような文面です。
この人は何を目指してどうなりたいのか、仕事に何を求めているのかまったくわかりませんし、転職さえできればどこでも良いのだろうと捉えられても致し方ない内容といえます。
転職には転職の軸が必要で、誰が見ても客観的にそれが伝わる書き方であることが重要です。
真剣に自己分析したならこのような矛盾は起こるはずがありませんので、もう一度自分の内面と向き合ってみましょう。
【転職の志望動機がない】志望動機例
それでは具体的に転職の志望動機をどのように構成すれば良いか、例文を紹介します。
もちろん実際には、自分の意欲やビジョンを踏まえて作成してください。
また、同業種へ転職する場合と、まったく別の業種業界へ転職する場合とでは書き方も変わってきます。
エントリー時や面接時に使える例を紹介しますので、参考にしてみてください。
例文①
私は現在勤務している会社で4年間、生産管理の業務に携わった実績があります。
ここ数年業績が悪化したことから全社的な組織改革が行われ、昨年、すべての製造業務が海外へアウトソーシングされることが決定しました。
それに伴い生産管理から外注管理へと業務内容が変更されましたが、私は自身の専門性を高めるため、今まで培った生産管理の業務スキルが活かせる環境を探しておりました。
御社は国内外に自社の製造工場を持ち、業界内でも群を抜いて画期的な生産管理システムを構築しておられます。
御社に入社し、これまで身につけた業務スキルを現場で活かしつつ、新しい生産管理についても提案していきたいと考えております。
例文②
私は前職で飲食店の営業に携わっており、店舗経営や接客マナー、関連業者との交渉など多くのノウハウを学んできました。
入社5年めに入り経営的視点も身につけたことから、一つの店舗という限られた範疇ではなく、もっと大きなフィールドでさらに成長したいと思い、未経験ながら御社の営業職を志望した次第です。
初めての業界ではありますが、店舗運営で培ったノウハウは十分に活かせると考えております。
飲食店にとってはお客様一人ひとりがとても大切な存在ですので、顧客一人ひとりを大切にする御社の経営理念にも深く共感しております。
肉体労働で鍛えた体力にも自信がありますので、ぜひ御社に入社し、一人でも多く新規顧客を開拓して業績に貢献したいと思います。
例文③
私は前職ではソフトハウスでプログラマーをしておりましたが、その会社でプロモーション業務に携わる機会があり、広告業界に興味を持ち始めたのが転職のきっかけです。
すでに日本の広告もITプロモーションがテレビメディアと並ぶ大きな市場に成長していますが、この流れは今後さらに加速すると予測しています。
御社はITを活用したプロモーションにおいてはSNSを駆使した革新的な事業展開をされており、以前より大変強い魅力を感じておりました。
業種業界は異なりますが、今までに培ったプログラム技術は御社のプロモーション業務においても十分に活かせると自負しております。
ぜひ御社に入社し、プログラマーならではの工夫で新しい企画を打ち出し、さらに技術を伸ばしていきたいと考えます。
まとめ
転職の志望動機を考える際には、まず自分自身を改めて見つめ直すことが重要です。
現状の不満にばかりに心を捉われてしまうと、どうしてもネガティブな思考に傾いてしまいがちなので、少し時間を取って冷静に自己分析してみてください。
大切なのは、自分が将来どうありたいかのビジョンを明確にすることです。
それがしっかり見えればおのずと志望先の企業も見えて来ますし、伝えるべき言葉も湧いてくるでしょう。
後は相手企業に効果的に伝えるテクニックを押さえるだけです。
この記事を参考に、ぜひ採用担当者に響く志望動機を作成してください。
明治大学院卒業後、就活メディア運営|自社メディア「就活市場」「Digmedia」「ベンチャー就活ナビ」などの運営を軸に、年間10万人の就活生の内定獲得をサポート